神性、神話的生物、あるいは魔術的生物、怪物

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 帝都モノガタリの為の、日本やアジアに根付く怪物や、あるいは神性を『クトゥルフの呼び声』のクリーチャーとして紹介します。
 また、単なるモンスターではなく、すでに『比叡山炎上』で行われていますが、新たな神話的な解釈で再定義を行っているものもあります。

神性、神話的生物、あるいは魔術的生物、怪物 項目一覧
■白面金毛九尾の狐、ニャルラトテップの化身
■式神、下級の奉仕種族
■件、下級の奉仕種族
■学天則、独立種族?
■水虎、下級の奉仕種族
■猫又、独立種族
■餓鬼、独立種族
■付喪神、独立種族
■八雷神、上級の奉仕種族
■雪女、イタクァの化身
■カタキラウワ、下級の奉仕種族

■白面金毛九尾の狐、ニャルラトテップの化身
「瑯邪代酔に古今事物考を引て云、『商の妲己は狐の精なり』と云々。その精本朝にわたりて玉藻前となり、帝王のおそばをけがせしとなん。すべて淫声美色の人を惑す事、狐狸よりもはなはだし。」
──────── 鳥山石燕 『今昔図画続百鬼夜行』

『白面金毛九尾の狐』は『赤の女王』の一形態であり、『ニャルラトテップの化身』の一つです。
 その名の通り、白い顔に金色の毛に覆われた、九つの尾を持つ狐で、その姿は不気味と言うよりもむしろ神秘的とも言えます。
 中国、殷で妲己として、天竺では華陽夫人として、再度、中国の周の褒ジ(→女に以)として、そして日本では玉藻前として時の権力者をその色香、才気でたぶらかし、様々な悪行を行わせました。
 日本では玉藻前として鳥羽上皇に仕えますが、上皇が病を得たところにその正体を見破られ、九尾の狐の正体を表して宮廷を去ります。
 その後、下野那須野に現れて今度は面倒な手段を取らずに旅人や住人を食い殺した為、鳥羽上皇より追討令が下り約8万の軍勢が那須野に殺到、激しい戦の末討ち取られますが、死ぬ前に九尾の狐は殺生石に姿を変え、死してなお、死をもたらす存在となります。
 その後、室町時代に玄翁和尚によって殺生石は砕かれますが、その破片は全国へ飛散しました。

魅了のオーラ:白面金毛九尾の狐は常に美しい女性の姿を取ると同時に、誘惑の効果を持つオーラを発しています。彼女の30m以内にいる者全ては(女性を含む)POWの対抗ロールに失敗すると、彼女に魅了されてしまいます。
 この魅了は自殺や、親しいものを傷つける等の無理な命令でない限り、彼女に従い、また彼女の為になることならば多少の無理をしてしまうようになってしまいます。
 この魅了は1D20日持続し、《精神分析》ロールに成功することで魅了を解除することはできますが、彼女の30m以内にいる間には解除できません。
 通常、白面金毛九尾の狐は、直接的に手を下すことはあまり行わず、魅了されている者などに守られています。様々な呪文を使うことができますが、基本的に真の姿をさらすことを避けます。
 彼女は耐久力が0になるか、自ら望めばその白面金毛九尾の狐の姿を表します。この姿になると自動的に魅了の効果は解除されます。
カルト:白面金毛九尾の狐は崇拝されておらず、特にカルトは存在しません。ただ、『三国妖婦伝』等に物語としての記述を見ることができます。

白面金毛九尾の狐、玉藻前
能力値人間の姿狐の姿
STR2050
CON1550
SIZ930
INT2525
POW2020
DEX2040
APP18N/A
EDU25N/A
移動812/飛行 20
耐久力1240
ダメージ・ボーナス+1D4+4D6
武器:あらゆる武器(人間の姿) 武器の基本値+25% 武器による
かぎ爪(怪物の姿) 85% 1D6+db
噛みつき(怪物の姿) 65% 1D6+db
装甲:人間の姿ではありませんが、通常の武器では玉藻の前を傷つけることはできません。
怪物の姿の場合は、3ポイントの体毛に加え、毎ラウンド耐久力を1D6ポイント再生しますが、通常の武器で傷を付けることができます。
呪文:《悪夢》、《アザトースの呪詛》、《萎縮》、《記憶を曇らせる》、《恐怖の注入》、《クトゥルフのわしづかみ》、《視覚を奪う》、《ヨグ=ソトースのこぶし》、その他、キーパーの望む呪文を知っています。
正気度喪失:女性の姿の玉藻前を見ても喪失はありません。
女性の姿から白面金毛九尾の狐への変身を見て失う正気度ポイントは1/1D4。
白面金毛九尾の狐の姿を見て失う正気度ポイントは1/1D8。

■式神、下級の奉仕種族
「一瞬、体じゅうの毛穴がぎゅっと締まるような快感が、恵子を襲った。しかし次の瞬間には、耐えがたい激痛が手の甲をしびれさせた。
 つづいて、同じ茂みから、橙色の貌があらわれた。裂けた口。まるで象の鼻のように長く、皺だらけの鼻。蜥蜴のように膨らんだ眼球。ひくひくうごめく赤い髭が顎のまわりに密生していた!
『鬼!』恵子が叫んだ。」
──────── 荒俣宏 『帝都物語』

 陰陽師たちに使役される目に見えぬ鬼です。
 職神とも書かれ、またその起源の一つにある大工が人手不足の為に木人形をこしらえて働かせた、というものもあり、式神は人の手による使役の魔物なのです。
 式神たちはその魔物としての姿は擬人化された鬼、あるいは小さな子供のような鬼です。その他に自然の動物達の姿に擬態をすることができますが、目が一つ目だったり、手足が奇数だったり、左右のバランスを著しく欠く等の外見的な異常を持ちます。
 通常は陰陽師に使役されてますが、神仏習合、宗教のごった煮が進んでいる為、修験者や僧侶、果ては宮司までが式神を使役したり、あるいは仏教系の使役神である護法童子を陰陽師が使役することもよくあることになっているようです。

式神、人工の鬼
能力値ロール平均値
STR4D614
CON3D6+616〜17
SIZ4D614
INT3D610〜11
POW4D614
DEX4D614
移動 10    耐久力 15〜16
平均ダメージ・ボーナス:+1D4
武器:爪 40% 1D6+db
噛みつき 50% 1D4+db
装甲:3ポイントの弾力性のある皮膚。
呪文:POWが13以上の式神は、1D6個の呪文を知っています。呪文はキーパーが適切なものを選びます。
正気度喪失:式神を見て失う正気度ポイントは1D2/1D8

■件、下級の奉仕種族
「その時、僕の見たもの、それは、──赤い京鹿子の振袖を着て、綸子の座布団に坐り、眼をまっかになきはらしている──牛だった!体付きは十三、四の女の子、そしてその顔だけが牛だった。額から二本の角がはえ、鼻がとび出し、顔には茶色の剛毛が生え、目は草食獣のやさしい悲しみをたたえ──、そしてその口からもれるのは、人間の女の子の、悲しい、身も消えいらんばかりの泣き声だった。片方の角の根もとには、血のにじんだ繃帯がまかれ、顔を蔽ったその手にも、五本の指をのぞいて、血と膿のにじんだ繃帯が、二の腕深くまかれてあった。ぷん、と血膿の臭いがした。そして家畜の臭いも。──僕は息をのみ、目をむいたまま、その怪物を前に立ちすくんでいた。
『見たのね』その時後で冷たい声がした。障子をピンと後手にしめて、おばさんが立っていた。能面のような顔の形の影に、かすかに憂悶の表情をたたえながら。
『とうとう見てしまったのね。その子は──くだんなのです』」
──────── 小松左京 『くだんのはは』

 その『件』の名の通り、人と牛を一つにした形をした怪物です。
 件は凶事の始まりとともに生まれ、凶事の終わりとともに死に、その間の一切を予言すると言われています。
 牝牛から生まれるとも、人から生まれるとも言われていますが、牝牛から生まれた場合は人面の牛、人から生まれた場合は牛の顔を持った人なるようです。
 ヨグ=ソトースの異形の子供達の一つであり、ウェイトリィの双子の兄弟のように巨大で不可視の怪物であるわけでもなく、積極的に『父親』を呼び出そうとするわけではありませんが、『父親』の時空を越える力の一部を受け継いでおり、それで予言を行います。
 その外見から生まれると同時に親に殺されるか、あるいは一生を土蔵などに隠されて暮らすことがほとんどですが、生まれると同時に予言を始め、また凶事を予言するものの、その生まれた家を守るとも言われています。
 関東大震災の前にも生まれ、予言をしたと言われています。

件、ヨグ=ソトースの落とし子
能力値ロール平均値
STR2D67
CON1D6+69〜10
SIZ1D6+69〜10
INT2D6+613
POW2D6+613
DEX2D67
移動 6    耐久力 10
平均ダメージ・ボーナス:-1D4
武器:なし。ただし、キーパーは適切な武器技能を持たせることもできます。
装甲:なし。
呪文:件は1D20個の呪文をINT×3%の確率で知っています。この中には《ヨグ=ソトースの招来》が含まれます。
技能:隠れる 70%、忍び歩き 65%、泣き叫ぶ 80%、不吉な予言を行う 100%、この他、キーパーは適切な技能を件に持たせることができます。
正気度喪失:件を見て失う正気度ポイントは1/1D8

■学天則、独立種族?
「この人造人間は、全身が金色に輝く金属製の巨人である。人間に似ているかといえば、下半身はまったく似ていない。彼の下半身は車輪のついた箱である。この箱い蓄電装置と圧搾空気室、ならびに手足を作動させる筋肉の役を果たす無数のゴム管の統合部などが収められている。
 しかし、上半身はまさに中世の騎士を思わせる凛々しさだ。頭部は人間のほぼ三倍、手は四倍も大きい。この巨人を完全に組み立てると、高さが九尺半に達する。
(中略)
 まず、額から目にかけては、白い肌のヨーロッパ人だ。くちびると鼻は、特徴あるアフリカ黒人のそれ。頬と耳は黄色いアジア人に似せて、インド人を象徴するために眉間に赤い点を打った。そして髪の結い方がインディアンである。」
──────── 荒俣宏 『帝都物語』

 大正期には世界各地でその地域初のロボット、人造人間が生み出され、日本もその例外なく、西村真琴博士によって日本のロボット第一号『学天則』が生み出されました。
 当時の多くのロボットがギクシャクとした機械の動きをしているのに対して、学天則は空気圧によってなめらかな生物の動きを模しました。
 多くのロボットが人間の労働の代替手段を目的としていましたが、学天則は文字を書くロボットであり、しかも表情を変えることができました。
 最初は昭和天皇即位を記念する昭和3(1928)年の京都博覧会に出展され、続く昭和4年の廣島市鳥瞰昭和産業博覧会、朝鮮博覧会にも出品されました。
 その後は、売却されてドイツに渡りましたが、故障等が相次ぎ、行方不明になってしまいました。

学天則、無機質な人造人間

能力値
STR15
CON20
SIZ25
INTN/A
POWN/A
DEXN/A
移動 5    耐久力 23
ダメージ・ボーナス:+1D6
武器:(取り付けた武器) 30% 武器ダメージ+db
   体当たり 50% 1D6+db
装甲:1ポイントの外装
呪文:なし
正気度喪失:学天則を見て失う正気度ポイントは0/1D2
(大正時代の日本人、それに近しい場合のみ正気度の喪失があります。現代人は見ても喪失を起こしません)

■水虎、下級の奉仕種族
「かたちは小児のごとし。甲はリョウ(→稜の禾が魚)鯉のごとく、膝頭虎の爪に似たり。もろこしソク(束にさんずい)水の辺にすみて、つねに沙の上に甲を曝すといへり」
──────── 寺島良安 『和漢三才図会』

 元は中国の河伯と呼ばれる河川の神であったと言われていますが、日本に輸入されて以来、河童との混同が進むと同時に、水辺の魔物、山の魔物との混合までされ、魍魎同様、正体不明の魔物にまでなっていますが、江戸時代の河童研究が進んだ中で、「河童の類」と一言で切り捨てられている場合もあります。
 最初の頃の河童の特徴を残すと同時に、名前に虎の字を付けられた為、山猫のような特徴を持つ河童という訳の分からない外見を与えられています。

 河童と同じく、『深きもの』の系列に属するものですが、あまりにも遠い親戚である為、別系統としての進化を果たしています。
 『深きもの』と異なり、ダゴン、ハイドラのような巨体となった祭司の頭が存在しない為、個々に独自にクトゥルフを信仰している種族となっています。

水虎、河童の一族
能力値ロール平均値
STR4D614
CON3D610〜11
SIZ1D3+13
INT3D610〜11
POW3D610〜11
DEX3D6+616〜17
移動 10/泳ぎ 16    耐久力 7
平均ダメージ・ボーナス:+0
武器:噛みつき 40% 1D6+db
装甲:1ポイントの硬い皮膚、背後からの攻撃に対しては3ポイントの甲羅。
呪文:POWが12を超える河童は1D4個の呪文を知っています。呪文は海や水、天候に関係したものです。
正気度喪失:水虎を見て失う正気度ポイントは0/1D6

■猫又、独立種族
「それというのも、猫は謎めいた生きものであり、人間には見えない不思議なものに近いからだ。猫はアイギュプトスと呼ばれた太古から流れるナイル河の魂であり、古代エチオピアのメロエやアラビア南部はオフルの忘れ去られた邑の物語をいまに伝えるものである。密林の支配者の血縁であり、蒼枯たる不気味なアフリカの秘密を継承するものでもあるのだ。スフィンクスの遠戚にあたり、猫はスフィンクスの言葉を解するが、スフィンクスよりも齢を重ね、スフィンクスが忘れたことをおぼえている。」
──────── H・P・ラヴクラフト 『ウルタールの猫』

 猫の中でも特に長生きしたものが尾が分かれて『猫又』となるとも、非業の死を遂げた主人の血をなめて『化け猫』になるとも、あるいは神として祀られて『猫神』となるとも、猫が神性を得るとこの『猫又』になると言われています。
 特に長生きをした猫が、叡智を蓄え、またバーストに愛されたものが『猫又』になるとも言われていますが、『猫又』と『バースト』の関係を示すものは無く、猫らしく独立した種族であると言われています。
『猫又』は通常は尻尾を一つにして、普通の猫同様振る舞います。家で飼われていることや、野良猫のボスになっていたりすることも少なくありません。何か彼を怒らせることや、恨まれるようなこと、主人を傷つけたり、お気に入りの何かを汚したりすると怪物的な姿を表して復讐をします。
 彼らは猫としては珍しくドリームランドよりも覚醒世界での活動を主にしており、ドリームランドで目撃されることはほとんどありません(ドリームランドでは普通の猫として振舞っている可能性もあります)。
『猫又』は通常の猫の姿の時に耐久力が0になると、自動的に怪物的な姿を表します。また、当然ですが『猫又』は任意に怪物的な姿に変わる事ができますが、彼らはよほどの事が無いと怪物的な姿を表さず、そのようなことがなる前に逃げていきます。
『猫又』は『土星からの猫』や、『冥王星からの猫』のようにどこかの惑星に棲息している猫の可能性もあります。
 外見的な類似性の他に、猫と呼ばれる怪物達にはある種の類似性が見られると言われています。それら“ネコ性”とも言えるものは 地球で進化したものではなく太陽系のすべてに当てはまる原理なのかもしれません。
祟る:『猫又』は相手の周辺にいるだけで、その呪いの対象及び、その血族に『祟り』の現象を起こすことができます。
 彼、彼女に祟られている対象は、その半径1km以内に『猫又』がいる場合、あらゆるロール(その中にはもちろん、正気度ロールを含みます)に対して、-20%のペナルティを負います(このことは、対象には分かりません)。また、特に幸運ロールを行う場合は、1/2のペナルティとなります。
 また、耐久力、MPの自然回復が常に半分になり、ダメージ、正気度喪失が+1されます(何らかのダメージ減少の手段、正気度ロールに成功した場合は、+1はありません)。

猫又、化け猫
※通常の猫に化けている場合
能力値ロール平均値
STR1D32
CON3D610〜11
SIZ11
INT2D6+613
POW3D6+616〜17
DEX3D610〜11
移動 8    耐久力 10
ダメージ・ボーナス:-1D6
※怪物的な猫の場合
能力値ロール平均値
STR3D6+616〜17
CON3D610〜11
SIZ1〜3D6の範囲で可変
INT2D6+613
POW3D6+616〜17
DEX4D614
移動 10    耐久力 10
ダメージ・ボーナス:+1D4
武器:引っ掻く 60% 1D4+db
噛みつく 50% 1D6+db
装甲:なし。MPを1ポイント消費することで耐久力を1ポイント回復させることができます。
呪文:猫又は1D3個の呪文を知っています。INT、POWの両方が15を超える場合は、1D6個の呪文を知っています。呪文には、夢に関するものが中心となります。
 猫又はドリームランドの猫同様、空間を超え別の世界に行く能力を持っています。
技能:愛らしい仕草 80%、回避 DEX×2+30%、隠れる 70%、気配を感じ取る 60%、忍び歩き 65%、跳躍 50%、追跡 60%、昼寝する 90%
正気度喪失:通常の猫の振りをしている猫又を見て失う正気度ポイントはありません。
猫又を見て尻尾が分かれていることに気づいた場合、失う正気度ポイントは1/1D2。
猫又の怪物的な姿を見た場合、失う正気度ポイントは1/1D4。

■餓鬼、独立種族
「慳貪と嫉妬の者、飢餓道に堕つ」
──────── 『正法念処経』

 餓鬼は元は食屍鬼であったものがさらに独自に進化を果たしたものです。
 食屍鬼と言えど基本的に群れで生活し、彼ら独自の文化と社会を形成していることはすでに知られていますが、餓鬼は基本的に単独で行動、生活をします。
 食屍鬼は生きたままの人間を食べることでその能力や記憶を受け継ぐことができると言われており、その中でなんらかの欲求の激しいものを食べてしまったことで、この餓鬼が生まれてとも言われています。
 食屍鬼以上に常に飢えていますが、その飢えは生理的欲求によって食べるのではなく、ただ、その欲望を満たす為に行動を起こします。しかし、強烈な飢餓感は同時に無気力も生むという矛盾した心理を持っています。
 食屍鬼と同様に日の光を嫌い、地下の、食屍鬼達よりもさらに奥深くの地獄に近い場所に食屍鬼達からも隠れ住んでいます。
妄念の放出:餓鬼からは強烈な欲望の妄念が放たれており、餓鬼の10m以内に近づいた人間は、餓鬼のPOWと対象のINTの対抗ロールを行って、その影響を受けたかの判定が必要になります。
 この判定に失敗すると、対象の中にある願望の一つを激しく呼び起こしその欲求を満たそうとします。この欲求を抑える為には、正気度ロールが必要で、成功した場合は正気度を1点喪失して行動を抑えることができますが、失敗した場合は後先考えずに欲求を満たす行動を取ります(この場合は正気度の喪失はありません)。
 この効果は餓鬼から離れても1D10時間は継続し、キーパーが場面が変わった、と判断する度に同じロールが必要になります。また、《精神分析》のロールに成功することで通常の状態に戻すこともできます。

餓鬼、食屍鬼の成れの果て
能力値ロール平均値
STR3D610〜11
CON2D6+613
SIZ3D610〜11
INT2D6+613
POW3D6+313〜14
DEX3D610〜11
移動 7    耐久力 12
平均ダメージ・ボーナス:+0
武器:かぎ爪  60% 1D4+db
   噛みつき 40% 1D4+1D4(牙でいたぶる)
装甲:火気と飛び道具はロールで出た値の半分のダメージを与えます(端数は切り上げ)。
呪文:D100をロールし、出た目が餓鬼のINTより高かった場合、餓鬼は一つも呪文を知りません。INT以下だった場合は、出た目と同じ数だけの呪文を知っています。呪文はキーパーが適切なものを選びます。
技能:穴掘り 70%、登攀 80%、隠れる 70%、跳躍 50%、聞き耳 80%、忍び歩き 80%、目星 70%、欲望を嗅ぎ取る 70%
正気度喪失:餓鬼を見て失う正気度ポイントは1D3/1D8+1

■付喪神、独立種族
「物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑す、これを付喪神と号すと云へり。是れによりて世俗、毎年、立春に先立ちて、人家の古道具を払ひ出だして、路吹に棄つる事侍り、これを煤払と云ふ。これすなはち百年に一年たらぬ付喪神の災難にあはじとなり。又新玉の始め、楡柳の火を切り、若水をむすび、衣装家具等にいたるまで、みな新らしく、声華やかなる事、たゞ富貴の家のおごれるよりおこりたると思ひたれば、かの付喪神をつゝしみて、新を賞しけりと、今こそ思ひ合はせて侍れ。」
──────── 御伽草子 『陰陽雑記』

 その名の通り、物に憑く精霊で、歳を経た古い器物が手足を生やして、その表面には漫画のような単純な顔が浮かんでいるような外見をしています。
 九十九神とも書き、あらゆるものに霊が宿ると言うアニミズムに基づく精霊です。
 普通はまったく無害であり、夜中に付喪神の集会を開いたり、街を練り歩いたりして、朝起きるとその道具の位置が変わっているとか、覚えの無い汚れや傷が付いているとかと言った程度です。
 ただし、粗末に扱われたり、彼らを怒らせるような行動を取った場合は、夜中に大きな音を立てて騒いだり、他の物の位置を変えたりと無害とは言えない行動に出ることもあります。
器物化:付喪神は元となった器物にいつでも戻ることができます。
 この器物の状態では、付喪神の耐久力を減らすことはできませんし、完全に破損しても付喪神はその破損した姿のまま動き回ります。

付喪神、動く器物の精霊

能力値ロール平均値
STRN/A
CONN/A
SIZ物体による
INTN/A
POW1D105〜6
DEXN/A
移動 8   耐久力 1D10(5〜6)

ダメージ・ボーナス:N/A
武器:噛みつき 30% 1D4
引っ掻き 20% 1D4
体当たり 40% 形状による ※武器等の形状をしているもののみ
装甲:物体によりますが、0〜3点程度です。
呪文:なし。
正気度喪失:元の器物の状態の付喪神を見ても正気度の喪失はありません。
付喪神を見て失う正気度ポイントは0/1D4ですが、《アイデア》ロールに失敗した場合は、いまいちその状態が認識できない為、失う正気度は1/2になります。

■八雷神、上級の奉仕種族
「そうすると、御殿のいちばん奥に、女神は寝ていらっしゃいました。そのお姿をあかりでご覧になりますと、おからだじゅうは、もうすっかりべとべとに腐りくずれていて、臭い臭いいやなにおいが、ぷんぷん鼻へきました。そして、そのべとべとに腐ったからだじゅうには、うじがうようよとたかっておりました。それから、頭と、胸と、お腹と、両ももと、両手両足のところには、そのけがれから生まれた雷神が一人ずつ、すべてで八人で、怖ろしい顔をしてうずくまっておりました。」
──────── 鈴木三重吉 『古事記物語』

 伊邪那岐命が死んだ妻の伊邪那美命を迎えに黄泉に下ったときに、決して見てはいけないと言われた伊邪那美命の死体から生じた神で、女神の怒りを表す、雷(神鳴)であると言われています。
 伊邪那美命の頭に大雷(おおいかづち)、胸に火雷(ほのいかづち)、腹に黒雷(くろいかづち)、陰部に折雷(さくいかづち)、左手に若雷(わかいかづち)、右手に土雷(つちいかづち)、左足に鳴雷(なるいかづち)、右足に伏雷(ふせいかづち)が宿っていたと言われています。それぞれ、雷を表したり、その特徴を表すものです。

 八雷神はヨグ=ソトースの一部が剥離した存在であり、無形の落とし子とも呼べ、父親のように自由にあらゆる時空、次元に行くことは出来ず、ある程度の時空、次元にまでしか移動できませんが、小さな存在である故に、星辰の影響を無視してヨグ=ソトースが顕現不可能な時空、次元にまで存在しうることが可能です。
 その名の通り、雷やプラズマのような、『炎の精』と同じような、エネルギーの生命体です。『炎の精』と同様に接触によって相手のMPを奪うことでその存在を維持しますが、維持できなくなってもただ別の次元へ帰っていくだけです。
 八雷神は通常『《八雷神》の召喚』によって呼び出されるか、何かの拍子に開いた門を通じて顕現するかでしか地上に現れることはありません。
 その場合は明確な目的を持って行動することはもっぱらなく、単純に周囲を破壊、焼き尽くします。
二重の攻撃:八雷神は対象に接触することで攻撃を行います。接触に成功した場合、電撃によるダメージを決める為、2D8を行い、その結果をCONの対抗ロールを行い、失敗した場合はロールで出た目と同じダメージと、スタンの効果を受けます。成功した場合は、その半分のダメージを受けるだけで済みます。
 同時に、この攻撃によって八雷神は対象からMPを吸収します。八雷神の現在のMPと対象のMPで対抗ロールを行い、失敗した場合は1D10のMPが吸収されます。成功した場合は、八雷神のMPが1点失われます。
 八雷神の接触攻撃が命中した場合は、この電撃のダメージとMP吸収の二回のロールが必要になります。
《八雷神》の召喚/従属の呪文:八雷神1D8匹を呼び出す呪文です。MPの消費は任意で、1ポイントに付き成功率が5%上昇します(ロールの結果が96〜00は自動的に失敗します)。呪文を掛ける為には1D8ポイントの正気度、POWを1ポイント消費する必要があり、余分にPOWを1ポイント消費する毎に10%成功率が上昇します。
 この呪文はどこでも効果を発揮し、成功した場合虚空から突然、八雷神が湧き出ますが、八雷神を収容できるだけの空間が無い場合は、その分だけSIZが減少します。
《八雷神》(神道の呪文):術者の頭、胸、腹、陰部、両手、両足、合計8個の雷を宿します。8ポイントのMP、1D3ポイントの正気度も消費し、《神道》のロールに成功すると、術者の体に雷が宿ります。
 雷はそれぞれ1D8のダメージを与えるとともに、与えたダメージ×2と対象のCONの対抗ロールを行い、失敗した場合はスタンの効果を与えます。この雷は準備してある射撃武器として扱い、1ターンに3回の射撃が可能です。
 また、防御にも扱うことができ、《回避》ロールの代わりに、残っている雷×10%のロールに成功すると相手の攻撃を雷にそらせることができます。攻撃をそらせることに成功した場合、雷が命中したのと同じダメージを負い、雷が1体消費されます。

八雷神、穢れの雷

能力値ロール平均値
STRN/AN/A
CON3D6+616〜17
SIZ3D610〜11
INT4D614
POW3D6+616〜17
DEX3D6+616〜17
移動 12(飛行)    耐久力 15

ダメージ・ボーナス:N/A
武器:接触 80% 2D8+スタン+MP吸収
包み込み 60% 1D8+スタン+MP吸収×2
放電 50% 2D8+スタン 半径5mの範囲
装甲:なし。物理的な方法では八雷神を傷つけることは出来ません。また、金属等で攻撃を行った場合、接触と同じダメージを被ります。
ただし、八雷神は接触等によって相手にダメージを与える度に耐久力が1D3減少します。
また、1MPを消費毎に1D3の耐久力を回復させることが出来ます。
呪文:POWが18を越える八雷神は、1D10個の呪文を知っています。この中には《ヨグ=ソトースの召喚》が含まれます。
正気度喪失:八雷神を見て失う正気度ポイントは1/1D8

■雪女、イタクァの化身
「顔に雪がさかんに降りかかるので、巳之吉は目をさました。小屋の戸は無理にこじ開けられて、小屋のなかに一人の女───すっかり白い装いをした女がいるのが、雪明りで見えた。女は茂作のうえに身をかがめて、息を吹っかけていた。───その息は、きらきらする白い煙のようであった。ほとんどそれと同時に、女は巳之吉のほうをふりむいて、彼のうえに身をかがめた。巳之吉は声を立てようとしたが、すこしも声が出なかった。白い女は、彼のうえに、だんだんとかがみこんできて、とうとう、もうすこしで、女の顔が巳之吉に触れそうになった。見ると、その女は、目はこわかったが、たいへん美人だった。女は、しばらく巳之吉をじっと見つづけていたが、やがて、にっこりと笑って、ささやいた。」
──────── 小泉八雲 『怪談』

 雪女と一口に言われますが、その形態は様々で、小泉八雲の『怪談』でも語られる、白い着物を来た美白美人、というものが一般的ですが、地方によっては赤子を抱いてくれと迫ったり、凍死させるのではなく吹雪で道を誤らせ、崖から転落させるものや、あるいは単なる雪山に出る山姥、鬼婆までかなり幅の広いものとなっています。
 雪女はイタクァの化身であり、小型で女性型のウェインディゴです。外見は若い美しい女性から老婆、怪物的な老婆(鬼婆)まで幅がありますが、爛々と輝く目を持つことは共通しています。
 イタクァと同じく、風に乗って自分の縄張りを飛び回ります。その際に、高い笑い声を上げることがあります。
 雪女は自分で決めた縄張りを出ることは滅多にありません。基本的には縄張りを荒らすものに対しても無関心に近いのですが、何らかの関心がある場合、吹雪を起こしたり、あるいは女に化けて近づきます。
 雪女はイタクァと同じく天候を(特に荒れる方向へ)コントロールすることが可能で、彼女のいる地域は基本的に豪雪となります。
カルト:雪女を崇拝するカルトは存在しません。

雪女、冷たき死の誘い、女ウェインディゴ
能力値若い女性 老婆  鬼婆 
STR182530
CON152025
SIZ13820
INT18108
POW201510
DEX151820
APP1883
EDU20100
移動8610
耐久力161725
ダメージ・ボーナス+1D4+1D6+2D6

武器:鉈(老婆、鬼婆の場合) 60% 1D6+db
引っ掻く(鬼婆の場合) 70% 1D4+db
吹雪 90% 1D4+吹き飛ばし(対象を1D10メートル任意の方向へ移動させます)
冷たい吐息 50% 1D10(装甲を無視します)、CON、STR、DEXに1D3、APPに1D2
装甲:なし。ただし、通常の武器では傷つけることは出来ません。
鬼婆の場合は、通常の武器で傷つけることができますがあらゆる武器のダメージが最終的に半分になります。
熱湯や、炎等の高温のもので攻撃した場合、1D6のダメージを与えることができます。
呪文:なし。通常、雪女は呪文を使いませんが、キーパーが望む呪文を知っているしてことにしても構いません。
雪女は呪文ではなく能力として天候を操作できます。
正気度喪失:若い女性の雪女を見て失う正気度ポイントは0/1D4
老婆、鬼婆の雪女を見て失う正気度ポイントは1/1D8+1
吹雪の中で雪女の笑い声を聞いて失う正気度ポイントは0/1D2

■カタキラウワ、下級の奉仕種族
全身まるはだかだから、蛍光をおびた体かたちがきわだって見える。しかしわたしを最大の恐怖におとしいれたのは、なんといってもそいつの貌つきだった。そいつは、ブタの顔を持っていた。
──────── W・H・ホジスン 『異次元を覗く家』

 片耳豚と表記される、沖縄、奄美大島で語られるその名の通りの片耳の無い豚です。また、ミンキラウワ(耳無豚)や、ムィティチゴロ(片目豚)という体のどこかが欠損した豚の魔物が同じように語られています。
 この豚の魔物に行き遭った人は、股の下を潜られると遠からず死亡するとか、性的不能になると伝えられています。
 片耳豚は普通の豚のように近寄ってくるのですが、この豚には影がない為に、普通のものと区別を付けることができると言われています。

 このブタに似た怪物はサーイティーに仕え、神を犠牲者へと導く役目を持っており、神が到来する前の豚に似た鳴き声をもたらします。この鳴き声は普通は聞こえることはないのですが、神と接触可能な次元においてのみ聞くことができます(豚の鳴き声が聞こえない時はサーイティーが接触できないか、犠牲者を不意打ちする為に静かにしているかのどちらかになります)。
 この存在はブタ人間(『マレウス・モンストロルム』P.104)の変種とも言える存在ですが、ブタ人間がサーイティーに仕えることもなく異次元の地下に潜む存在であるのに対し、神に仕え、異次元の淵に潜むこのブタの怪物はむしろ原種と呼べる存在なのかもしれません。
股の下を潜る:
 カタキラウワに股の下を潜られない為に、この攻撃が命中した後にDEXの対抗ロールを行います。対象がこの対抗ロールに勝利した場合、上手くカタキラウワを避けるか、素早く股を閉じることによって潜られるのを防いだことになります。
 カタキラウワが対抗ロールに勝利した場合、股を潜られた対象はサーイティーへのマーキングがなされたことになります。そしてカタキラウワはそのまま姿を消します。
 2D10日後に、サーイティーの接触が開始されます。

カタキラウワ、異次元の豚

能力値ロール平均値
STR2D67
CON1D6+69〜10
SIZ1D3+13
INT3D610〜11
POW3D610〜11
DEX3D6+313〜14
移動 10/瞬間移動 4 耐久力 6〜7

平均ダメージ・ボーナス:-1D6
武器:
 噛みつき 40% 1D6+db
 股の下を潜る 80% 特殊
装甲:
 なし
技能:
 回避 80%、普通の豚のふりをする 75%、地面を嗅ぎまわる 80%
呪文:
 全てのカタキラウワは≪サーイティーとの接触≫、≪サーイティーの招来≫を知っています。
 POW、又はINTが12を越えるカタキラウワは1D3個のさらに他の呪文を知っている可能性があります。
正気度喪失:
 カタキラウワを普通の豚と同じと勘違いしている場合、正気度の喪失はありません。
 カタキラウワが普通の豚ではないことに気が付いて失う正気度ポイントは0/1D4。