スレッドF 三村、清水二人の脚本家
二人の脚本家は、別々の書物から、ほぼ同一の筋書きの台本を書いています。
同時に、二人は同じ役割を『黄衣の王』から受け取り、奇妙なシンクロを見せるようになっています。
彼らは『黄衣の王』の劇中の役割はなく、その役目は脚本を書いた時点で終了しており、黄衣の王に魂を弄ばれています。
彼らの台本は、清水は『黄衣の王』を、三村は『黄色の写本』を元に書き上げています。これらの本は、黄衣の王に回収されるか、自ら処分してそれを忘れているかで、すでに失われています。
- 『黄衣の王』の行方
- 清水の自宅
- 三村も行方不明
- 龍門亭
- 「生ける神の手に落ちるのは恐ろしいことであるぞ」
『黄衣の王』の行方
台本を書いたのは、少女歌劇の主要メンバーに確認すれば、特にロールの必要もなく、オペラ座館所属の清水宗司が書いたものだと教えてもらえます。
それとともに、清水は最近行方不明になっているとも教えられます。
脚本家ゆえの気楽さか、本を上げた後はしばらく劇場に姿を見せないことも珍しくはありませんが、これだけ長い間姿を見せてないのは珍しい、病気でもしているのではないか、と言われます。
逆に、訪ねた探索者に様子を見に行ってくれないか、と頼まれます。
清水の自宅
清水の自宅は浅草の隣の下谷区で、浅草にも程近い場所です。
田舎にわざわざ小さいながらも瀟洒な洋館を建てていますが、訪ねてみても全く人気がありません(ちなみに、清水は独り者です)。
近所住民に尋ねてみた場合、もともと生活が不規則である為、あまり目撃することが少ない人間だったが、確かにここのところ、家から出るのも、帰ってくるのも目撃していないという証言を得ることができます。
家に入ろうとした場合、特に鍵が掛かっていないことに気が付きます。
中には全く人気はなく、しばらく生活をした様子もありません。
元々、生活拠点としての家ではなく、創作活動の拠点と連れ込み宿の兼用だったことは、住居の中を見て回ると確認できます。
創作活動を行なっていた書斎を確認した場合、意外と綺麗に片付いており、最近は使用した形跡はありません。
特に机の中を調べる等の宣言をした場合は、机の引き出しから『黄衣の王』の台本の手書きの原稿を発見することができます(この原稿はただの製本されたものと特に違いはありません)。
その他、白い粉が発見できます。
これは、いわゆる麻薬の類です。浅草やその周辺の辺りで聞き込みを行なったり、官憲や、医療関係者に当たった場合、芸術家達の間で流行っている、「創造性増幅薬」と呼ばれるものだと分かります。
この薬を飲むと、強い幻覚作用と感覚器と、認識能力の極端な向上を起こし、現実をまともに把握できなくなる薬です(それこそ、音が見える、臭いが聞こえると言った類の現象を感じます)。
また、書棚を調べた場合、《目星》に成功すると、おそらくそこに1冊あったであろう書物がなくなっていることに気が付きます。その他、書棚には演劇関係の本と、フランス文学関連の本が置かれており、特に目を引くものはありません。
寝室を確認すると、そこでベッドの上に死後、何日か経過した清水の死体を発見します。
彼の死体に外傷はありませんが、その死顔は恐怖に歪んでいます。この死体を目撃した探索者は、0/1D4の正気度を喪失します。
特に争った跡や、死体におかしな点はありませんが、そのすぐそばに例の白い粉と、水が入っていたと思しきコップが落ちています。
《医学》に成功した場合も、心臓麻痺の類としか判断できません。
特に日記の類は残されていませんが、メモ書きが一枚落ちており、それには「生ける神の手に落ちるのは恐ろしいことであるぞ」と書かれています(清水の筆跡で)。
三村も行方不明
調査の経過報告の為、三村の家を訪れると、不在にしているようです。
彼も独り者ですが、清水と異なりアパートに一人住まいをしています。
こちらも近隣住民に話しを聞くと、最近見ていないと言われます。
浅草の芸能関係者らしいことは自ら吹聴している為、その辺りで生活が不規則なので、見ないのは珍しくない、とも言われます。
家に入ろうとすると、鍵は掛かっていません。中は最近流行の欧風のアパートであり、ちょっと小洒落た感じですが、薄汚れており家事全般をしていないのが見て取れます。
こちらも机の引き出しを確認すると、彼の書いた『黄色の王』の原稿を発見できます。また、同様に白い粉「創造性増幅薬」を発見できます。
同じく書棚を確認した場合、《目星》に成功すると、演劇関係の本と、フランス文学、英文学関係書物の中に、おそらくそこに1冊あったであろう書物がなくなっていることに気が付きます。
清水、三村の書棚の両方を見て、《図書館》に成功すると、清水、三村の書棚の傾向はほぼ同じであり、置いてある本にも共通のものが多いことに気が付きます。
この後で、清水の『黄衣の王』と、三村の『黄色の王』を比較研究する場合は、《母国語》か、《芸術:文学》×2倍のロールを行なう必要があります。
成功した場合、これらの手書きの原稿の内容は、ほぼ同一であることに気が付きます。強いて挙げるならば、『黄色の王』の方がカルコサの宮殿の内部に詳しい程度です。
ざっと確認をしただけでも、登場人物や舞台の固有名詞、2幕ある章立てがほぼ同一であることが分かります。
龍門亭
三村の行方は判然としません。
彼は、『黄色の写本』を抱えたまま、言い知れぬ恐怖から逃れているのですが、すでに黄衣の王に夢で接触を受けており、その魂は風前の灯です。
探索者が三村のことを気に掛けていた場合や、浅草周辺で彼の消息を尋ねた場合、彼の仲間の脚本家や、関係のあった劇団関係者から、彼を十二階下辺りで見かけた、という話が聞かれます。
《信用》か、《言いくるめ》と、《幸運》のコンビネーションロールによって、何故か彼が竜門亭と呼ばれる銘酒屋に出入りしているということを聞けます。
龍門亭は酒も出すし、女も抱ける、という浅草の十二階下によくあるものです。
昼間、龍門亭を訪れても、営業時間外で閉まっており人の気配も在りません。夕方、夜のみの営業のようです。
周辺も同様の店が多い為、人を探して話を聞くことも可能です。その場合は、《言いくるめ》か、《信用》のロールが必要になります。
成功した場合、三村らしき風体の男は確かに龍門亭に出入りしており、ぼろぼろになって憔悴していたが、金を持っているのでそれほど悪し様に扱われてはいないという情報を得ます。
「生ける神の手に落ちるのは恐ろしいことであるぞ」
竜門亭へ夜に来た場合、十二階下の怪しげな雰囲気を存分に味わうことになります。
そういったところを切り抜けて、龍門亭までやってくるとちょっとした騒ぎが起こっています。よくある酔っ払いや与太者同士の喧嘩騒ぎという感じではありません。
ちょっとした人だかりが龍門亭の前に出来ており、中からは誰かが暴れるような音が聞こえてきます。
「王だ。王が、来る!」
切羽詰った、恐怖の声とともに、龍門亭の中からぼろぼろになり、憔悴しきった三村が出てきます。
そして、様子を見ていた人々を見ると、何故かさらに恐怖の度合いを高め、悲鳴を上げながら走り去っていきます。
DEX 8との対抗ロールに成功した場合、彼に追いつくことができます。そうでない場合は、見失ってしまい、《追跡》に成功する必要があります。
彼に追いついた場合、探索者がまるで別のものに見えているように(と言っても、彼の目の焦点は微妙に合っていませんが)、「やめろ、やめろ。近づくな、僕を見逃してくれ!」と叫びます。
(彼には、探索者が(正確には自分に近づく人間が)黄衣の王に見えています)
探索者が近づけば近づくほど、彼の恐怖と恐慌の度合いは激しくなり、手が触れられる距離まで来ると、恐怖のあまり泡を吹いて倒れこみます。
そして、死にそうな声で必死に、「ああ、ああ、近づくな。近づかないでくれ。僕の一部をくれてやる、見逃してくれ!」と叫ぶなり、自らの頭髪を一掴み力任せに引き抜き、探索者に投げて寄越します。
この異様な光景を見た探索者は、0/1の正気度を喪失します。
もし、探索者が三村に触れた場合、彼の恐怖は最大限に高まり、異様な恐怖の表情を浮かべ、絶叫を上げて死亡してしまいます。彼の恐ろしい死に様を目撃した探索者は、1/1D6の正気度を喪失します。
触れなかった場合、彼は恐怖のあまり気絶してしまいます。気絶後は、触れても問題ありませんが、彼の狂気の進行具合は変わりません。目が覚めてから、《精神分析》が行なわれない場合、全く同様の事を繰り返します。
(あるいは、気絶しているうちに病院へ運び込むのもよいでしょう)
彼は『黄色の写本』を所持していません。探索者が上手く正気づかせた場合、この話題に触れるとまた錯乱し始めます。
この後、彼は精神病院に収容され、しばらくは入院することになります(幸い、金はあるので、そういった心配はありません)。