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曳間の肖像 Portrait of Hikuma

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Portrait of Hikuma

「曳間の肖像」


ピックマンはいかなる意味においても───構想と表現において───
徹底した、骨身をおしまない、ほとんど科学的といっていいほどの現実主義者だったんだ。
────────── H・P・ラブクラフト「ピックマンのモデル」


注意、あるいはお約束:
プレイしてみたい人、プレイするかも知れない人は読まないでください。読んで良いのはキーパーか、またはプレイする予定のない人だけです。うっかり目次を見てしまった人は、「記憶を曇らせる」の呪文でも使って忘れてください。万が一そのままプレイに参加したりすると、貴方の悪徳に誘われて隣のプレイヤーにイゴーロナクが憑依するかも知れませんよ。

そして当然ですが、このシナリオはフィクションです。
現実のいかなる人物、団体、そのほかもろもろのものと一切の関係はありません。

 本シナリオは下記のような構造となっています。
 まずはすぐ下の目次に目を通し、それからはじめにシナリオの概要と読み進み、シナリオの本体へ進むのが良いでしょう(今回は一つのファイルに納めてみます)。


目次

■はじめに
 □シナリオのスペック
 □始める前に
  シナリオの傾向
  PC作成時の注意、立場
  探索者同士の関連付け
■シナリオの概要、真相(キーパー向け)
■登場人物(NPC紹介)
■シナリオ
 □導入部
  曳間の捜索の依頼
  曳間の部屋
 □探索部:
  塚本治朗への聞き込み
  青山墓地
   タクシーの中での怪談(1回目)
   タクシーの中での怪談(2回目)
   タクシーの中での怪談(3回目)
   タクシーの中での怪談(4回目)
   青山墓地にて
   死体を発見する
   青山墓地からの帰り
  日比谷図書館にて
  曳間の個展
 ■終幕部
  □夜の青山墓地
  □曳間の肖像
 ■事件の後
 ■データセクション
  □エログロナンセンス
  □青山墓地
  □日比谷図書館
  □はぐれ食屍鬼
  □『食屍鬼写本』(日本語版)
■謝辞、あるいは参考資料:


はじめに

シナリオのスペック

 本シナリオは、『クトゥルフ神話TRPG』向けであり、大正時代を取り扱った『クトゥルフと帝国』あるいは、本『帝都モノガタリ』を対象としたシナリオです。  プレイヤーの人数は2〜4人を想定しており、基本的に作りたての探索者向けにデザインされています。
 プレイ時間はキャラクターの作成を含まず、2〜3時間程度を想定しています。

 また、シナリオ自体は『クトゥルフ神話TRPG』のプレイに慣れることを目的の一つとしています。
 以下のリンク先の赤虫療養所様に掲載されている技能カードを活用することで、さらにプレイアビリティの向上を図ることができるでしょう。

 赤虫療養所様 http://members.jcom.home.ne.jp/terakotta 
  スキルカード http://members.jcom.home.ne.jp/terakotta/archive/skillcard/skillcard.htm

 シナリオに記載されている使用技能は以下の通りです(もちろん、キーパーの判断で適宜、その他の技能ロールを使用する場合があります)。

 <言いくるめ>
 <医学>
 <隠れる>
 <機械修理>
 <聞き耳>
 <忍び歩き>
 <心理学>
 <説得>
 <図書館>
 <目星>

 シナリオ自体はいわゆる初心者向けですが、毎度の通り、シナリオの取り回しはキーパーに大きく依存します。ご注意ください。

始める前に

 実際のセッションを始める前に、これらのことに注意するか、プレイヤー達に直接告げてください。

シナリオの傾向

 本シナリオは、探索が中心となるシナリオとなりますが、探索の要素も少なく、シナリオの流れはオーソドックスな(?)「来た、見た、狂った」的なシナリオとなっています。
 最後に戦闘はありますが、ひどく恐ろしい状況も無い、かなり地味で地道なシナリオです。
 「謎は解かれなければならない」必要はありませんが、「手がかりは提示する」必要はあります。
 情報は全て出し尽くす、というのが理想的ですが、探索者の選択、行動によって得られない情報も発生することでしょう。ある程度、キーパーの方から誘導、あるいは具体的にこうすれば?と提示することも必要になってきます。
 キーパーは適宜(特に探索者の行動が止まってしまった場合等)、探索者を誘導するようにしてください。

 また、特に今回は、青山墓地とその他の探索が並行するようにする必要があります。この点には特に注意してください。
 シナリオ中に『岡山』についての言及が多く出てきますが、本シナリオ中は岡山に行く必要はありません。
 曳間は帝都を去っていますが、岡山に行く必要は無い、ということを伝えてください(次のシナリオ『曳間の追跡(仮題)』で岡山が舞台になります)。

PC作成時の注意、立場

 探索者の作成時には、下記のように作成するようにしてください(FEAR的なあれですが、クトゥルフの弱点である導入部の弱さを補うには非常に有効な手段だと思われます)。

探索者@ 推奨職業:雑誌編集者、記者等:
 いわゆるシナリオの主人公(?)的な位置づけとなります。
 導入として、探索者@は『怪想社』という出版社の社員であり、澤田大輔と同僚となります。曳間とは直接の面識はありませんが、同じ編集部員として、あるいは澤田の友人としてその行動をともにする立場となります。
 ちなみに『怪想社』はその名前の通り、ミステリ(当時は探偵小説)や怪談、奇談を扱った雑誌を出版している会社で、マイナー指向の一部のマニアに大うけ的なところを狙っている出版社です。

探索者A 推奨職業:私立探偵、退役軍人、大陸浪人等肉体派:
 澤田、あるいは探索者@の個人的な友人という位置づけになり、シナリオの開始時に、澤田から依頼を受けることになります。
 暇人、趣味人である場合は、『怪想社』が出版する雑誌の愛読者であり、『食事をする食屍鬼』を雑誌掲載時に見たものとしても問題ありません(その場合は、正気度を減らしても問題ありません(笑))。

探索者B 推奨職業:作家、芸術家、高等遊民等、芸術に関係がある職業:  探索者@の担当作家、関係がある作家、芸術家、あるいは知り合いとなります。
 暇と言うわけでもないですが、『食事をする食屍鬼』で有名となった曳間のことを知っており、興味を持っている、という立場であり、編集者である探索者@、あるいは澤田とも関係があるので、事件に関わっていくことになります。

探索者C以降:
 いわゆるその他の探索者となります。
 探索者@、Aとの絡みや、職業的なこと、私的な理由から、曳間や澤田、あるいは探索者@ABへ関わる理由を作る必要があります。
 例えば、探索者@の同僚や友人で、曳間に興味を持っている、探索者Aの友人で同じく曳間に興味がある、探索者Bの知り合いで、面白そうなことがあるので、と言った理由でもよいでしょう。

探索者同士の関連付け

 基本的に自由です。シナリオに参加する理由付けを作るようにしてください。
 プレイヤーから提案を積極的に受け入れて、シナリオに参加する理由付けを作成するようにしてください。


シナリオの概要、真相(キーパー向け)

 シナリオは帝都と、そこにある青山墓地が舞台となります。
 年代的には震災後、大正末期から昭和初期となります。世情が不景気となり、戦争への不安に向かう中での出来事です。
 事件は怪想社の挿絵を描いている、一部の読者に大人気の曳間篤人が失踪するところから始まります。
 帝都での調査の結果、彼はよく青山墓地へ出かけていた、ということです。
 時を同じくして青山墓地では、墓荒らしが出現しており、まるで大型の犬がそれをやったかのように見えます。そしてそれは、彼が最近好んで題材にしていた『食屍鬼』の仕業であるようにも、探索者達には思えます。
 探索の途中、『食屍鬼写本』を発見し、曳間に迫る探索者達。
 しかし、曳間の姿はなく、そこには彼の最後の作品と、そのモデルが残されていただけでした。

事件前の、曳間の動きの時系列

 ここで、シナリオ前の曳間の動きを時系列でまとめて示します。

 3年前  怪想社の挿絵画家としてデビュー。
 2年前  イギリスへ留学。
 1年前  帰国する。
 半年前  再び怪想社で仕事を始める。
 3ヶ月前 『食屍鬼写本』を読んでみる。
      APPは14の為、14週間で変身が完了する。
      青山墓地で最初の墓荒らし。
 2ヶ月前 青山墓地で、はぐれ食屍鬼と邂逅する。
 1ヶ月前 岡山の施餓鬼寺へ地獄図絵を見に行く。
      『食事をする食屍鬼』を発表する。
 2週間前 行方不明。
      怪想社他、連絡を絶っている状態であり、帝都には居る。
 現在   完全に食屍鬼化し(正気度は残っている)、岡山へ。


登場人物(NPC紹介)

曳間・“リチャード”・篤人(ひくま・−・あつと)、怪奇画家

(本シナリオではその影が登場するだけでが・・・)
 20台半ばの不健康な印象を受ける、どことなく厭世的な雰囲気を漂わせる皮肉屋です。
 2年前にイギリスに留学し、現地で"リチャード"というあだ名を付けられています。
 留学中、『食屍鬼写本』を発見するとともに、その題材に憑かれています。
 帰国後は、流行りのエログロナンセンス系の挿絵を描き、ニッチな『怪想社』の雑誌読者に大うけしています。
 特に、『食屍鬼』をテーマにした作品は受けがよく、なかでも『食事をする食屍鬼』は官憲から注意を受けるほどです。
『食屍鬼写本』の影響により、食屍鬼化していますが、それ以前に元々食屍鬼の血筋でもあり、また岡山に行ったことで目覚めています。

 本来はそこそこに人付き合いのできる性格でしたが、食屍鬼化が進むにつれて人との接触を避けるようになり、岡山、次いで青山墓地で同族に邂逅することで、食屍鬼の世界、暗黒の世界へと帰ることを決心します。
 正気度が残っている状態である為、むしろ進んで暗黒へ帰っています。

※曳間は未登場である為、データは示しません。

澤田大輔(さわだ・だいすけ)、怪想社の編集部員、曳間の担当

 曳間の編集担当の、怪想社の編集部員です。
 根っからの怪談好きで、また、曳間の行方不明が怪想社に限らず、今後の怪奇作家界(?)にとって大きな損失だ、とか言ってしまう人です。
 怪談や、自分の好きなこととなると冷静な判断が出来ず、今回のように独断で曳間の捜索を行ってしまうような行動力を発揮しますが、普段は物静かな怪談好きです。
 探索者@Aに曳間の捜索を依頼してきます。

 STR 11 CON 12 SIZ 12
 INT 14 POW 13 DEX 9
 APP 12 EDU 12 SAN 65
 耐久力 12 ダメージボーナス ±0
 技能:
  言いくるめ 50%、写真術 30%、心理学 60%、説得 60%、母国語 90%、歴史 80%、民俗学 70%、怪談を語る 80%

塚下治朗(つかもと・じろう)、怪奇作家

 最後に曳間を目撃した人物です。
 『墓場の住人』という作品で、曳間が挿絵を担当した小説の作者であり、プライベートでも多少の付き合いがありました。
 怪奇作家ですが、気さくな性格で、ホラーと言うよりは怪談、というものがしっくり来るものを書き、人気もそこそこです。
 怪想社の中では中堅組で、短編から、数ヶ月にわたる中編をほぼ毎月掲載しています。
『墓場の住人』については、曳間の絵を見て霊感を得た、とも言っていますが、海外の小説等を読んで、そういう構想があったことも確かです。

 シナリオ初期にさらっと出てくるのと、ヒントを出しに登場するNPCとして活用してください。
 また、探索者@とは同僚であり、探索者BCが作家とかの場合、知り合いでOKです。

 STR 14 CON 12 SIZ 14
 INT 15 POW 11 DEX 12
 APP 13 EDU 16 SAN 55
 耐久力 13 ダメージボーナス +1D4
 技能:
  オカルト 70%、信用 60%、心理学 75%、人類学 50%、説得 70%、図書館 80%、博物学 50%、歴史 50%

菘絢乃(すずな・あやの)、日比谷図書館の司書

 図書館の番人とも言える人物で、重度のビブリオマニアです。
 特に事件に絡んでいませんが、図書館の対応に出てくる女性で、本に関することの記憶はずば抜けて良く、目立つ風体の曳間のこともよく覚えています。
 こちらも探索者が行き詰った場合のアドバイザーとして使用しても良いでしょう。

STR 8 CON 7 SIZ 11
INT 16 POW 18 DEX 13
APP 15 EDU 15 SAN 62
耐久力 9 ダメージボーナス ±0
 ※彼女は正気度が下がる書物を多数読んでいる為、正気度が減少すると共に、<クトゥルフ神話>技能を得ています。
  ただ、彼女がフィールドに出ることは無い為、本物の神話的な事案に関わったことは一度もありません。
 技能:
  オカルト 80%、化学 50%、クトゥルフ神話 28%、経理 70%、考古学 80%、心理学 80%、人類学 80%、生物学 60%、地質学 70%、図書館 95%、博物学 90%、物理学 50%、歴史 70%、本について語る 90%
 ※キーパーは絢乃に任意の呪文を持たせても構いませんが、彼女はそれを知っているだけで、実際に使ったことはありません。


シナリオ

導入部

 シナリオの導入部に当たる、曳間の捜索のきっかけを作る場面です。
 事件の発端として、曳間がどういう状態にあるのか、ということを探索者に印象付けるとともに、探索者同士の関係や、事件に対する興味を持たせる場面でもあります。

曳間の捜索の依頼

 ここ2週間ほど、曳間から怪想社に連絡がない状態です。
 約1ヶ月前に岡山から戻ったという連絡の他、『食事をする食屍鬼』、いくつかの作品を引き渡した後から、連絡が取れなくなっているとのことです。
 今のところは、送ってきた作品でなんとかなっていましたが、ここ2週間は作品も送って来ず、担当の澤田も姿を見ていない状態です。
 持病が悪化した、と本人が言っていることもありますが、部屋に戻っていることもなく、ついに行方不明状態と怪想社は判断しました。

 なお、岡山に曳間の実家があると言うわけでもありません。
 岡山にある、『施餓鬼寺』に地獄絵図を見に行ったとかいう話です。
(『施餓鬼寺』ですが、本来は何か〜山〜寺とか立派な名が付いていたらしいのですが、今はただ『施餓鬼寺』と呼ばれているらしいです)
 それに霊感を受けて、「食事をする食屍鬼」を作成したという話を、澤田は聞いています。

 この『施餓鬼寺』は、次のシナリオ『曳間の追跡』に続く伏線です。
 この時点ではPCには、岡山は今のところ関係ない、曳間は帝都に居るんだよ、というアピールとを忘れないようにしてください。
(プレイヤーが変に勘ぐった場合は、『今回は』関係ないと言い切ってしまいましょう)

 この連絡が途絶えた曳間を探す為、怪想社の担当編集部員だった、澤田大輔より、探してほしいと依頼がそれぞれの探索者の元へ依頼が来たり、話を聞いたりします。

探索者@
 怪想社の編集部員である為、社内ですでに連絡途絶、行方不明は話題に上がっています。
 担当であり、またその画力に引かれた澤田は、「曳間先生を失うのは、怪想社にとっても、画壇に対しても大きな損失です!」と大声で主張し、積極的に捜索すべきだと主張しますが、一方で別の編集者は「彼は病気だった。良い機会だから、失踪を理由に何か企画をやって、そこで終わりにするのもアリだろう」と言います。
 そんな話が出た為、澤田は「じゃあ、僕が探します!」と主張し、ついでに探索者@にも協力を求めます。

探索者A
 探索者@を確保した後、探偵である探索者Aへ、澤田が依頼に来ます。
 とは言っても、澤田も貧乏な編集部員です。まともな報酬は示せませんが、探索者@と知り合いでもあり、澤田とも知り合いであることを強調して、協力をするようにしてください。

探索者B
 作家、美術、あるいはなんらかの文芸に携わっており、澤田とも知り合いである為、澤田が聞き込みに来ます。
 ただ、探索者Bは特に曳間の情報は持っていません。最近、『食事をする食屍鬼』で一躍有名になったぐらいです。

探索者C以降
 こちらは特に振りはありません。
 この為、導入のどこかで登場して、事件に自分から絡んでいく必要があります。
 それぞれの探索者の職業や、興味を絡めて、あるいは曳間のファンである、絵に興味がある等を理由に、探索に参加させてください。
(もちろん、探索者@〜Bに対して協力をする、でもOKです)

曳間の部屋

 探索者をとりあえず曳間の捜索に駆り出すと、澤田はとりあえず、曳間が部屋に戻っていないか、確認しようということになります。
 曳間の部屋は深川区にあり、震災によって立て替えられたモダンな雰囲気のするアパートの一室です。住居兼用のアトリエとなっています。
 部屋には鍵が掛かっており、入れません。
 近所住民に聞き込みを行う場合、探索者の手段に併せて<説得><信用><言いくるめ>等のコミュニケーション系のロールを行わせてください。
 成功した場合は、近所付き合いの悪い欧化された住民達から、得られる情報は以下の通りです。

 ・2、3日前から姿を見ていない。
 ・全く近所付き合いは無い。

 曳間の情報は得られませんが、逆に2、3日前には部屋に戻っていた、ということは分かります。

 さすがに、打ち破って入るのは最終手段、ということで、中に入るのは遠慮しよう、と澤田に言われます(彼はまだ曳間が帝都に居ると思っていることもあり、思い切った手段は最後にしようと思っています)。
 もしも、『説得』『言いくるめ』等の手段に出た場合、先に曳間の部屋の中を行ってもよいですが、打ちこわしの最中に、管理人が来るとしても問題ありません。
 また、管理人を連れてくるとかいう場合は、何日か部屋を空けるのも珍しくないうえに、ついこの間見た、という話もあるので、さすがに空けるのは無理、と言われます。
 やはり、ここで『説得』『言いくるめ』等がある可能性がありますが、そこまで探索者がこだわった場合は、先に曳間の部屋を見せてしまいましょう。

探索部:

 曳間が部屋に居ないことを確認しましたが、2、3日前の目撃証言がある為、帝都に居る可能性は高いと澤田は判断しています。
 とりあえず、最後の目撃者と思われる、作家の塚本治朗の元へ聞き込みに行きます。
 塚本は曳間が挿絵を担当した小説の著者であり、『墓場の住人』という、食屍鬼をテーマにした作品を、怪想社の雑誌で発表しています。

塚本治朗への聞き込み

 怪想社に寄稿する作家であり、関係者の中では曳間の最後の目撃者でもあります。
 曳間には、『墓場の住人』で挿絵を描いてもらったこともあり、あまり親しくは無いですが、プライベートでも付き合いがある人物です。
 塚本は協力的であり、隠し立てすることも持っていない為、特にコミュニケーション系のロールは必要ありませんが、探索者の技能の経験を増やしたい場合は、+20%程度の上方修正付きでロールをさせても問題ないでしょう。
 塚本から得られる情報は以下の通りです。

 ・東京駅の近くで彼を見た。人目を避けていたようだが、何故人が多いところに居たかは分からない。
 ・病気なのか、大きなマスクをしていた。また、何故か長靴を履いていた。
 ・寒いらしいのか、かなりの厚着だった。

 最近ではないですが、岡山に行った辺りの話題を出した場合、以下の情報を得られます。

 ・この間行った岡山で、かなり面白いものを見たとか。今の作品にも深みが増した。
 ・今の病気が悪化しているので、療養の為に岡山へ行くことを考えていると聞いた。

 『墓場の住人』について訊ねた場合、以下の情報を得ることができます。

 ・曳間は急にと言うわけではないが、3ヶ月ぐらい前から食屍鬼を描き始めていた。
 ・特に意識したわけではないが、曳間とテーマが被ってしまった。一緒に青山墓地に行ったせいかもしれない。
 ・青山墓地にはよく行っているらしい。
 ・日比谷図書館で何度か見かけた。結構難解な本を読んでいた気がする。

青山墓地

 青山墓地に向かうことになった場合、さすがに交通の便の関連から、タクシーを使うことになります。
 青山墓地には何度か向かうことになると思われます。タクシーを使う回数に応じて、以下の「怪談」を行ってください。

 これらはあまりにも有名な、青山墓地のタクシーに乗る幽霊です。
 この手の怪談は、かなり早い時期からあったようですが、正確な時期は分かっていません。

タクシーの中での怪談(1回目):
 そう言えば、と澤田がタクシーの怪談を始めます。

 雨の降る夜、柳の下に白い服を着た女が居て、手を挙げてタクシーを止めた。
 乗り込んできた女は、「青山霊園まで・・」と言う。
 青山霊園の中央部の道路を走り、タクシーを止めた運転手が後ろを振り向くと・・・。
 女の姿は無く、女がいたシート部分は水に濡れていた。

 この話を聞いた場合、正気度ロールを行い、0/0点の正気度を失う可能性があります(減りません!)。

タクシーの中での怪談(2回目):
 ところで、とまた澤田がタクシーの怪談を始めます。

 雨の降る夜、青山墓地の前で、白い服を着た女がタクシーを止めた。
 女はある住所を告げた。
 タクシーは女に言われた通り走り、その住所で止めた。
 タクシーを止めた運転手が後ろを振り向くと・・
 女の姿は無く、女がいたシート部分は水に濡れていた。
 不振に思った運転手が、その家の住人に聞くと、非常に驚かれ、そして逆に特徴を聞かれた。
 運転手は訳が分からなかったが、覚えていた特徴を告げると、家人はさらに驚き、こう告げた。
「それは、うちの娘です。1ヶ月ほど前に事故で死んでしまいましたが・・・」

 この話を聞いた場合、正気度ロールを行い、0/0点の正気度を失う可能性があります(減りません!)。

タクシーの中での怪談(3回目):
 思い出したんですが、とまたまた澤田がタクシーの怪談を始めます。

 ある日、タクシーの運転手が出勤してすぐにエンジンを掛けた。
 すると、悲鳴とともにガタガタと鈍いがボンネットから響いた。開けてみると、下半身が引きちぎれた子猫の姿が。
 暑さ、寒さをしのぐ為に、エンジンルーム近くに猫が入り込むことは珍しいことでもなかったので、本来は点検が必要だったが、その日は怠っていたのだった。
 次の日、運転手がタクシーに乗ろうとすると、近くで猫の鳴き続ける声が聞こえたが、そのまま仕事へ出た。
 その日は、売り上げも上がらず、深夜に会社へ戻ろうとしたところ、会社の近くで、手が上がった。
 乗り込んできたのは白い服を着た20代後半ぐらいの女性で、赤ん坊を抱いている。走り始めて間もなく、赤ん坊が大きな声で泣き始めた。
 運転手は、「おなかが空いてるんじゃないですか?」と声を掛けたが、女性は「さっき、お乳をあげたばかりで、おなかはすいていないはずなんですけど・・・」と、少し怒ったように言う。
 気がつくと、赤ん坊の泣き声は猫のように思えてきた。
 だが、運転手は気にせず、気さくに「ああ、それなら、オムツじゃないですか」と、続けた。
「違います。これ、見てください」と、女性は赤ん坊を差し出す。
 赤ん坊のお腹から下には何も無かった。
「お前のせいだ」

 この話を聞いた場合、正気度ロールを行い、0/0点の正気度を失う可能性があります(減りません!)。

タクシーの中での怪談(4回目):
 さすがにネタ切れです、と澤田は降参します。
 ただ、この手の怪談はバリエーションが多く、ちょっとだけ細部が変わっている話が多いです、と言い、怪談のバリエーションの講義がタクシーの中で続けられます。

青山墓地にて:
 青山墓地の探索に関しては、探索の進み具合、時間の具合等でキーパーが適当思う時期に死体の発見を行ってください。

 青山墓地では、3ヶ月ほど前から墓荒らしが出ている為、探索者達が来ると、管理人が念の為、何しに来たのか、と確認に出てきます。
 墓参りとかそういうことを言えば問題はありませんが、正直に話した場合は、管理人から愚痴を聞かされることになります。
 管理人の愚痴は以下の通りです。

 ・3ヶ月前から墓荒らしが断続的に出ている。
 ・野犬が増えているようで、それが原因だと思っている。
 ・警察が来たり、新聞記者が来たり、大変だ。

 墓地で<目星>やらのロールを行う必要はありません。
 特に何も無い、というのは分かります。
 歩き回っても有名人の墓があったり、たまに墓参りの人を見掛けるだけです。
 特に手がかりは無さそうだ、と帰ろうとした場合、<聞き耳>のロールを行ってください。
 成功した場合、遠くで犬が吼えるような声に気が付きます。さらに、<アイデア>ロールを行い、これも成功した場合は、この声が「まるで人が呼び交わしている」ように思えます。
 これに気が付いた場合、正気度ロールを行い、0/1点の正気度を失う可能性があります。

死体を発見する:
 青山墓地に来た場合、キーパーの判断でこのパートを行ってください。中盤か、あるいは探索者がだれてきた場合に行うのが良いでしょう。
 犬のような遠吠えを聞いた後、掘り返され、荒らされた墓を発見します。
 そして墓の傍には、大型犬に食い荒らされたような死体が投げ出されています。
 この凄惨な死体を見た場合、正気度ロールを行い、1/1D4+1点の正気度を失う可能性があります。
 死体を目撃し、<アイデア>に成功した場合、一見、大型犬に食い荒らされたような死体ですが、損壊の状況や、形状から犬ではないと気が付きます。
 <追跡>ロールをした場合、確かに足跡は残っていますが、それは人間と犬を合成したような奇妙な足跡です(大型犬の足跡、と常識的には判断されます)。
 なお、この足跡を辿っての追跡は不可能です。

 この後、警察を呼ぶなりして、事情聴取を受けますが、得られる情報は特になく、管理人同様、ここ最近、こういった墓荒らしが増えている愚痴を聞けるだけです。

青山墓地からの帰り:
 青山墓地からの帰りに、タクシーが『何故か』故障し、道端で止まってしまいます。
 タクシーの運転手は、「あれ、おかしいな。朝の点検では何ともなかったのに・・・」と言います。
 しばらく運転席でエンジンの再始動を試みていますが、動かないようなので、外に出てボンネットを開けて修理を行おうとします。
 探索者が手伝う場合は、<機械修理>のロールを行わせてください。
 ロールの成否に関わらず、タクシーは動き出しません。成功していた場合、運転手は「おかしいな。故障なんてなにもしてないの・・・」と呟きます。
 しばらく経つと、勝手にまたエンジンが回り始めます。探索者達が乗り込むと、滞りなく目的地までタクシーは行き着きます。
 料金を受け取りながら運転手は、「いやあ、たまに青山墓地に行くとあるんですよね」と言い、タクシーは去っていきます。

日比谷図書館にて

 曳間が調べものに通っていたらしい図書館です。あの目立つ風体なので、司書もよく覚えています。
 また、『食屍鬼写本』の日本語版は閲覧のみ可能な本で、司書の立会いの下に読んでいることもある為、こちらでも記録されています。
 司書の菘絢乃が探索者達の対応を行います。ここでも探索者の手段に応じて、<言いくるめ><信用><説得>のロールを行ってください。
 絢乃から得られる曳間に関するは、以下の通りです。

 ・岡山の山奥の寺に関する資料を探していた。
 ・地獄図絵の資料を探していた。
 ・『食屍鬼写本』を閲覧していた。

 この『食屍鬼写本』について、絢乃は「元は英語らしいのですが、それを日本語に翻訳したものです。元々が発禁本であり、ただでさえ珍しいものをわざわざ翻訳したものであるので、当館にある本の中でも特に珍しいものです。もしかしたら、世界に一冊だけかもしれません」と言います。
 閲覧のみ可能であり、貸し出しはしていません。閲覧時は図書館職員の立会いが必要となります(つまり、絢乃が立ち会います)。
 また、世間話がてら、「一部の好事家が、『食屍経典儀』なる発禁本を持っているらしいのです。当館の『食屍鬼写本』とはまた異なったものらしいですが、珍しいものなので、一度は目にしてみたいものですね」と屈託無く話します。
(彼女は重度のビブリオマニアであり、本に関する話題には非常に饒舌です。それ以外に関しては、あまり乗ってくる様子はありませんが、探索者の調べものの助言は与えてくれます)

 とりあえず本を漁ってみるだけなら<図書館>ロールの-40%となりますが、絢乃に話を聞いてからの場合は、+20%となります。
(一度<図書館>ロールをしてから、絢乃と話した場合は、日が暮れ閉館時間となりますので、再度の<図書館>ロールは次の日となります)
 <図書館>ロールによって得られる情報は以下の通りです。

 ・吸血鬼や、食屍鬼、生ける死人、蘇る死人といった伝説や伝承、小説をよく読んでいたようだ(書棚の傾向とかから)。
 ・食屍鬼について意見を求められたが、地域によって大きく異なる、ということを教えた。
 ・食人や、それに類する習慣についての海外の民俗学の本を漁っていた。

『食屍鬼写本』については、絢乃の立会いの下でしか確認できません。
 時間の関係から斜め読みになると思われます。
 読むには<日本語>のロールが必要です。また、斜め読みに掛かる時間は12時間なので、探索者の一人は2日間、図書館に張り付く必要があります。 

曳間の個展

 探索がある程度進むと場合、澤田が曳間の個展が勝手に開かれていることを探索者達に教えます。
 場所は銀座の裏通りの一角にあるこぢんまりとした画廊で、行方不明になったことを良いことに、怪想社が勝手にやっている状態です。
 とはいえ、一応、管財人の許可は得ているらしいとのことで、単純に担当編集者であった澤田に知らされていなかった為、勝手に、という表現を使っているだけです。

 とは言え、一部で有名なだけなので、あまり客は入っていません。
 例の『食事をする食屍鬼』については、官憲から注意を受けたこともあり、一度は見に来るようなものとなっています。

 主な曳間の作品は以下の通りです。

「食事をする食屍鬼」
 タイトル通り、食事、つまり、屍体を喰らう食屍鬼の絵です。

「神隠し」
 すやすやと窓辺で眠る赤子の絵ですが、その窓の外には食屍鬼の影があります。

「教え」
 攫って来た子供を食屍鬼にする為の教え、屍肉を食わせる絵です。

「宴」
 洞窟の様な薄暗い空間で、多数の食屍鬼たちが宴を開いている絵です。
 もちろん、その宴の主食は屍体ですが・・・。
 なお、この洞窟の絵は、実は岡山に存在する洞窟です。この絵は、曳間の岡山行きの後に描かれています。

 これらの絵を見た場合、正気度ロールが必要となり、1枚見る度に正気度ロールを行い、0/1D4点の正気度を消失する可能性があります。
 なお、合計で4点までで、それ以上の喪失はありません(合計で4点を喪失すると、これらの絵には最早慣れた状態になります)。

 なお、この他の絵は雑誌で使われた挿絵だったり、テーマが食屍鬼以外のものであったりします。
 初期の頃の曳間は、怪奇だけでなく、風刺画らしいものも描いていたようで、ユーモアのある怪奇画もありますが、次第に怪奇なもののみとなっていくのが、作品の年代を見れば分かります。

 また、ここで澤田は「曳間先生の作品は大体あるけれど、今の最新作はないみたいだ」と言います。
 失踪前に澤田と会った曳間が、今、連作を描いていると言ったのですが、それらしいものは画廊にありません。

 画廊の担当者は、怪想社でよくこういったイベントを開く場合に使う会社の人間で、ただの雇われ人なので特に情報を得ることはできません。
 イベントについて、「もっと閑散とした状況になるかと思っていたが、意外に途切れることなく人の入りがある。ただ、二度来る人はあまり居ない」、ということだけを聞けます。

終幕部

 探索者の方から特に提案が無ければ、澤田の方から「夜の青山墓地はどうだろう」と言われます。
 曳間はよく夜の青山墓地に行っていたと、澤田は言います。

夜の青山墓地

『食屍鬼写本』を読み、曳間の情報をある程度得てから、探索者達が「夜の青山墓地へ行こう」と行った場合となります。

 夜の青山墓地はまた昼間とは違った雰囲気があります。
 探索者達が墓地の奥へ移動を開始した場合、<聞き耳>を行わせてください。
(より正確なルール適用を行う場合は、キーパーはスクリーンの裏で行う必要があります)

 成功した場合は、ひたひたと犬が歩くような足音に気が付き、それは探索者たちを尾行しているように思えます。
 失敗した場合は、食屍鬼に不意打ちを受けることになります。

 ここで、<隠れる>を行った場合、やり過ごすことができます。この場合はもちろん、『食屍鬼』を目撃することになりますので正気度ロールが必要となります。
 正気度ロールに成功すれば、不意を突くことも可能です(もちろん、手を出さないのも問題ありません)。
 失敗した場合は、驚きで声をあげてしまい、気付かれてしまうとしても問題ありません(この場合は、普通に戦闘になるだけです)。

 食屍鬼と遭遇した、気付かれた場合、戦闘となります。彼は餓えており、殺せば死体、という発想を持っています。

 食屍鬼をやり過ごした場合、少し後に、彼が向かった方向から、男の悲鳴が上がります。
 昼間に会った管理人が、食屍鬼に襲われているのです。
 助けに向かった場合も、同様に戦闘になります。
(一応、見捨てて逃げる、というのもOKなのですが・・・)

 食屍鬼を目撃した場合、正気度ロールを行い、0/1D6点の正気度を失う可能性があります。

『はぐれ食屍鬼』
 STR:17
 CON:14
 SIZ:16
 INT:17
 POW:12
 DEX:15
 移動 9 耐久力 15
 ダメージボーナス +1D6
 武器:かぎ爪 50% ダメージ 1D6+DB
   噛みつき 40% ダメージ 1D6+牙でいたぶる(1D4)
 装甲:火器と飛び道具はダメージを半減。
 技能:穴掘り 60%、登攀 85%、隠れる 70%、跳躍 80%、聞き耳 70%、腐敗を嗅ぎ取る 75%、忍び歩き 80%、目星 60%、ナビゲート 0%

 この食屍鬼は、曳間が目撃した食屍鬼です。
 曳間を同族と見なしており、襲ったりはしなかったようです。また、岡山の情報もこの食屍鬼から得ています。

 戦闘に勝利した場合、近くに墓場の管理人が倒れています。
 彼は気絶しているものの、まだ息があり、<医学><応急手当>のロールによって、耐久力を回復させることが出来ます。

 食屍鬼と遭遇後、澤田は「曳間先生は、おそらく『本物』を写していたのですね・・・」と呟いた後、何かに気がついたように、はっとします。
 そして、「先生の部屋へ行きましょう」と言います。

曳間の肖像

 今回は澤田も積極的に部屋を開けるよう、管理人を説得します。
 なんらかのコミュニケーション系のロールに成功すれば、部屋を開けさせることが可能です。
 失敗してしまった場合は、機会を見て忍び込むことになります。

 部屋の中は饐えた獣臭がしますが、それほどきついものではありません(曳間が出て行って時間が経っているので)。その他、絵の具の匂いや、食べももの腐った匂いなどが混じって、なかなかひどい有様です。
 中は6畳のリビングと4畳の寝室、2畳の台所となっており、あちこちに荷物が雑然と詰まれ、絵描きの道具、スケッチ、絵の資料、画集、趣味の本、汚れ物から食べ物のカスまで、様々なものが落ちています。
 リビングはアトリエと兼用になっており、6枚の絵と、架台に置かれたまま布が掛かっている7枚目があります。
 曳間がこの部屋を出る前に書いていた作品であり、書きかけの連作、『回帰』です。
 書きかけとは言え、ほぼ完成しており、6枚の絵は曳間に似たモデルが徐々に食屍鬼に変容する様子が書かれています。
 架台で布が被せてあるものが最後の一枚ですが、これをめくると、そこには鏡があるだけです(絵の並びは明らかなので、最後が鏡になっていることは明白です)。
 つまり、曳間は自身が食屍鬼に回帰する様を、鏡を眺めながら描いていたのです。
 澤田は、「曳間先生は、暗黒に帰っていったのですね・・・」と呟きます(もちろん、元ネタを知っている探索者に呟かせるのもOKです(笑))。

 本物の食屍鬼を見ている、あるいは、曳間の『食事をする食屍鬼』等の絵を見ていた場合、<アイデア>ロールに成功すると、この連作の意味に気が付いてしまい、1/1D6点の正気度を失う可能性があります。
 <アイデア>ロールに失敗した場合は、単に不気味な絵であるとして、1/1D3の正気度を失います。
 なお、『食屍鬼写本』を読んでいた探索者は、さらに大きな衝撃を受ける為、正気度ロールの成否に関わらず+1点の正気度がさらに減少します。

 もしも、上記以外の状態でこの『回帰』を見てしまった場合は、単純に恐ろしい絵であるということで、0/1D2点の正気度を失うだけで済みます。
 ただし、シナリオが進行することで、青山墓地等で本物の食屍鬼を目撃した後、事件を回想するか、もう一度『回帰』を見た場合に、1/1D6点の正気度を失う可能性があります(合計6点以上は正気度を失うことはありません)。

 この他、曳間の部屋を家捜しする場合は、<目星>で行います。
 ロールに成功した場合、雑多な絵の資料や、英語の雑誌、本の中から、『食屍鬼写本』(英語版)を発見できます。
 曳間は、イギリスでこれを発見していたようです(図書館では、同一の内容であることを確認していただけです。その為、斜め読みで何回か読んだのみです)。

 食屍鬼の遭遇と、曳間の『回帰』を見た時点で、澤田は曳間が去っていったことを悟り、捜索の打ち切りを探索者達に告げ、シナリオは終了します。
 あるいは、あまりにも探索が冗長となり、探索者が飽きてきた場合は、強制的に打ち切ってください。

 このシナリオはここで一旦終わり、岡山へ行く『曳間の追跡』に続きます。
 しかし、それは探索の結果に左右されます。

事件の後

 『食屍鬼』との戦闘結果、あるいはその前の行動によって事件のその後は変化します。
 シナリオ終了時の正気度報酬と合わせて、変化後を行ってください。

青山墓地で食屍鬼を倒し、『回帰』の意味を理解した場合:
 墓場で食屍鬼と遭遇し、打ち倒した場合です。
 ほぼ完全に『回帰』の意味を理解し、曳間が暗黒へ帰ったことを知った探索者達は、2D6+1点の正気度を得ることが出来ます。
(この正気度の報酬には、食屍鬼を打ち倒した分も含まれています)
 この後、澤田は「曳間先生は暗黒へ帰っていったんだ。きっと、その鍵は岡山だと思う」と言います。
 曳間をさらに追うかは探索者次第ですが、澤田は「残念だけど、僕はもう手伝えない。でも、編集部に掛け合って、何か取材の口実を作れば、ある程度の経費は出ると思うよ」と言います。

青山墓地で食屍鬼を目撃し、『回帰』の意味を理解した場合:
 墓場で管理人を見殺しにした場合がこちらです。基本の正気度の報酬は1D6+1となります。
 危機を回避したと見るか、非情に徹したと見るかにより、キーパーは食屍鬼を倒した場合に与える報酬を-2〜+2点の範囲で加減してください。
 この後、澤田は「曳間先生は暗黒へ帰っていったんだ。奴らの仲間として・・・」と言います。
 曳間をさらに追うかは探索者次第ですが、澤田は「残念だけど、僕はもう手伝えないし、青山墓地に近づくこともできない」と言います。

食屍鬼を目撃せず、『回帰』を見た場合:
 青山墓地をスルーした場合、事件の真相や意味には特に気付かず、単純に怖い体験しただけになってしまいます。
 正気度の報酬は1D4+1点となります。
 澤田は「結局、曳間先生の行方は分からなかったですね。曳間先生はどこに行ったのだろうか」と言われます。
 今後、岡山に曳間を追うことも無いでしょう。

『回帰』を見なかった場合(依頼を途中で破棄した場合等):
 今回の探索は失敗となり、正気度の報酬を得ることは出来ません。
 澤田は「結局、曳間先生の行方は分からなかったですね。青山墓地の墓荒らし、曳間先生の失踪、謎の書物・・・、いろいろとあったけれど、何も分からずじまいで残念です」と言われます。
 今後、岡山に曳間を追うことも無いでしょう。

 さらに、下記の正気度のボーナスを探索者に与えてください。
 ・その他、『食屍鬼写本』を読んだ探索者に+1点。
 ・その他、キーパーの判断で、良い動きをした探索者に+1点。
 ・その他、「曳間は暗黒に帰って行った」と呟いた探索者に+1点。
 ・その他、タクシー怪談で、リアルに驚いた探索者に+1点。


データセクション

 シナリオ中で使用されるデータや、その他の項目をまとめたものです。

エログロナンセンス

 大正末期から昭和初期までの不景気、世情不安の中で流行った文化です。
 文字通り、エロ、グロ、ナンセンスをテーマ、あるいはミックスしたもので、猟奇的とか、扇情的とか、ばかばかしいと様々に言われ、ひとまとめに、『低俗』であるとされています。
 ただ、現代でもサブカルチャーとしてこの流れを引き継いだものは多く(まあ、エロについては文化が発生してから脈々と受け継がれているものですが)、一過性の文化とも言い難い面があります。

青山墓地

 明治5(1872)年に、美濃(現在の岐阜の辺り)の郡上藩々主だった青山家の下屋敷跡に開設され、当初は神葬祭墓地でした。
 明治7(1874)年の9月1日に、市民のための公共墓地となり、その後の明治22(1889)年に、東京府から東京市に移管されます。
 大正15(1926)年に斎場の建物のすべてが東京市に寄附され、日本で初めての公営墓地となりました。

日比谷図書館

 舞台となる年代は大正期の震災後ですが、戦時に閉鎖しようとして市民から苦情が殺到したこと、建物自体は戦後まで残っていた記述が見えることから、大震災によって大打撃を受けたものの、建物も蔵書もしっかり残っていたようです。
 敷居が高い帝国図書館に対して、市民がよく利用する図書館でした。
 なお、当時は司書というのは資格を持った図書館の職員を指すのではなく、単純な図書館やそれに類する場所で働く公務員をそう呼んだらしいです。

はぐれ食屍鬼

 本シナリオに登場する食屍鬼です。
 彼は本来、岡山の群れに属していましたが、数奇な運命を辿り、帝都の青山墓地周辺まで流れ着いています。その為、技能の一部が増加しています。
 元々は警戒心も強く、人が多い地域には近寄らないようにしていたのですが、帝都の辺りとなると近づかざるを得ないのと、飢えをしのぐ為に、青山墓地に出没するようになります。
 知能が若干高い、一部、技能が増加している他は、特にこれといった特徴は無いので、各種のルールブックを参照し、食屍鬼のデータを変えてもらっても問題ありません。

 STR:17
 CON:14
 SIZ:16
 INT:17
 POW:12
 DEX:15
 移動 9 耐久力 15
 ダメージボーナス +1D6
 武器:かぎ爪 50% ダメージ 1D6+DB
   噛みつき 40% ダメージ 1D6+牙でいたぶる(1D4)
 装甲:火器と飛び道具はダメージを半減。
 技能:穴掘り 60%、登攀 85%、隠れる 70%、跳躍 80%、聞き耳 70%、腐敗を嗅ぎ取る 75%、忍び歩き 80%、目星 60%、ナビゲート 0%

『食屍鬼写本』(日本語版)

 詳細は『マレウス・モンストロルム』のP.250を参照してください。全く同じ内容となっています。
 研究には6週間、斜め読みに12時間が必要です。
 この書物を読むには<日本語>ロールが必要です(つまり、日本人の場合は、EDU×5のロールでOKです)。
 この『日本語版』は何故存在するのか、何故日比谷図書館に収まっているのか、一切の来歴が不明です(一説には、岡山のある寺から流れてきたとも言われています)。
 その為か好事家達の間でも、全く噂になっていないという状態です(一部の好事家や古書マニアはその存在を知っていますが、贋物か、酔狂なマニアが作ったものかと思われています)。
 日本人に感性に合わせて分かりやすく書かれており、文字は独特のいやらしいものですが、かなり読みやすいものとなっています。
 この為、『日本語版』独自の特性として、『斜め読みの場合でも、通常と同じく食屍鬼となる可能性がある』ようになっています。


謝辞、あるいは参考資料:

 この後は、岡山に行く『曳間の追跡(仮題)』に続きます。
 本シナリオはもちろん、HPLの『ピックマンのモデル』を元に作成されています(なので、”リチャード”・篤人・曳間なのです)。こちらも『猟犬』同様、キーパーなら一度は、と思う神話的存在を持ってきました。

 このシナリオに登場する『食屍鬼写本』はかなり面白い魔道書です(探索者にとってははた迷惑な脅威なのですが・・・)。
 影響を受けると食屍鬼になってしまうのは、APPとダイス運によるところはもちろんありますが、大体の場合において正気を保ったまま食屍鬼になる、というパターンが出来上がります。
 食屍鬼の戦闘能力を手に入れた探索者(デルタ・グリーン!)という単純なものも良いですが、『クトゥルフ神話TRPG』らしい(らしくない?)、人間的な苦悩を持った食屍鬼という探索者が出来上がるので、キャンペーンでの活躍が楽しそうだと思います。

 今回は、かなり前になりますが、シナリオの原型時にF.G.のメンバーに、改版後、再改版後の2回を大阪でお世話になっているサークル様にて行っております。
 関係の皆様に感謝です。