ハンドアウト 雪子からの手紙2 ああ、お姉様!私のお姉様! お助けください。 ひどく自分が恐ろしいのです。 あの曲、稲葉先生から頂いたあの曲! 先生の遺作にもなる新曲が、私宛に、私に演奏するようにと送つて参りました。 曲は大変に難しひものでしたが、なんとか演奏することができました。 その時、恐ろしき声のやうな、笑い声のやうなものが聞こえてくるのです。 演奏に合わせて何かが応えるやうな、そして自分の耳元でも何か大きな虫が飛ぶやうな音が聞こえてきます。 もちろん、私の傍には人も虫などおりません。その音は、おそらく私の頭の中に直接聞こえてくるのです。 演奏を途中で止めようとも思ひましたが、勝手に私の手が曲を奏でるのです。 でも、何よりも恐ろしいのは、その曲、恐ろしい曲を奏でているは筈ですのに、私はとても楽しひのです。 今でも、曲を奏でてなくても、その音楽が、応える声が、羽音が私の耳には聞こえます。 お姉様、どうか私をお助け下さいませ。どうぞお願ひ申し上げます。 私の唯一の愛する御姉様に 妹の雪子より