スレッドD 病めるお嬢様、雅子
このスレッドは、再び黒澄綾の存在を感じ取った山県雅子が、彼女を探して欲しい、と探索者に依頼することから始まります。
綾の影を追い掛けつつ、雅子は自身の音楽を奏でることに目覚め、偶然に聞いた彼女の口笛によって、その才能を開花させてしまいます。
雅子は綾とも、雪子とも異なる、『音楽』の一端を再現してしまうのです。
雅子の依頼を果たす為には、綾に雅子と会う約束を取りつけ、段取りを行なうことが必要になります。
綾が、『綾の影』スレッド等で登場した際に、これらのことを行なえばよいでしょう。
探索者が綾に対して含むものがあり、これを餌にして彼女を捕らえようとしたり、あるいは何か不穏な考えがある場合、それを察して綾はその場には現われません。
キーパーへ:
早い段階ならば問題ないと思われますが、シナリオの後半以降になる探索者の考えが煮詰まって来て、雅子との依頼にかこつけて綾との約束を取り付けた後、単純で暴力的な手段に出る可能性があります。
綾を陥れようとしている場合、これを逆用して探索者側を不利にしたり、あるいはやはり単純な暴力として綾の護衛役としての「ザイクロトルからの怪物」をぶつけるのもよいでしょう。
綾は単純なロジックとして「自分を陥れようとする相手は同じように陥れて構わない。自分を害する相手を害しても問題ない」を考えます。
- このスレッドでの登場人物(NPC)
- 山県雅子の依頼(スレッドの起動部)
- 雅子が綾を真似る
- 銀座、黒澄綾に遭遇する
- 雅子が『音楽』を奏でる
- 雅子と綾の二重唱
- スレッドの終了後
このスレッドでの登場人物(NPC)
このスレッドの登場人物を紹介します。
別のスレッドにも登場する可能性も皆無ではありませんが、本スレッド以外では大きくシナリオに関わらない為、ここでの紹介とします。
山県雅子(やまがた・まさこ)、病めるお嬢様
桜嶺女学院のお得意様とも言える、お嬢様です。
『天球賛歌事件』から復帰後、再度『帝都狂想曲』で狂気を発症しましたが、折りよく(?)女学院は夏休みに突入しており、秘密裡に自宅にて静養している状態です。
彼女は前回の事件において黒澄綾がまだ帝都に、自分の近くに居ることを確認し、その捜索を探索者に依頼してきます。
前回は鬱的な状態で遠慮の無い態度は影を潜めていましたが、シナリオ中に躁状態へと以降し始め、同時に綾の影響、自身も様々な経験と綾への憧れから手慰みにピアノを奏でていたものが、シナリオ中、その狂気と重なり、ついには異世界の音楽を奏でるようになってしまいます。
STR 8 CON 10 SIZ 12
INT 15 POW 12 DEX 16
APP 17 EDU 10 SAN 19
耐久力 11 ダメージボーナス +0
技能:図書館 50%、信用 80%、博物学 60%、芸術:歌唱 50%、芸術:文学 30%、芸術:礼儀作法 80%、芸術:社交ダンス 50%、乗馬 40% 、(シナリオ中に、芸術:歌唱 50→80%、芸術:ピアノ 1→75%)
諏訪白(すわ・しろ)、雅子に仕える女中
山県家に仕える女中で、雅子の身の回りの世話をしています。
年若く、山県家へ女中として入ったばかりだったのですが、雅子の状態を鑑みて歳が近く、ある程度は気安い仲となることを期待して雅子の身の回りの世話を任されています。
当初は、回復の見込みが無い雅子に対して、下手をやらかしてすぐに解雇しても問題ない若手を付けたはずだったのですが、雅子の気紛れに振り回されながらも、家人からも遠ざけられつつある彼女のフォローをしっかり行なっており、雅子の用事は白を通してから、という妙な暗黙の了解も出来上がりつつあります。
どこへ行くにも雅子に付いて回っており、半ば邪険にされながらも良い関係を築いています。
白自身は、雅子に憧れのような感情を抱いていますが、使用人としての立場を弁えており、そこが雅子の甘えとなると同時に、踏み込めない一線ともなっています。
STR 16 CON 11 SIZ 9
INT 10 POW 16 DEX 8
APP 11 EDU 10 SAN 80
耐久力 10 ダメージボーナス +1D4
技能:応急手当 60%、聞き耳 50%、精神分析 30%、説得 55%、心理学 30%、目星 50%、武道:柔術 40%、家事全般:35%
山県雅子の依頼(スレッドの起動部)
探索者達は山県雅子から直接、黒澄綾を探して欲しいという依頼を受けることになります。
山県雅子は前回の『帝都狂想曲』において、再び狂気を顕在化させており、自宅療養中となっています。今回の狂気は前回の躁的な状態ではなく、鬱的な状態となっており、前までの威圧感はすっかりなりを潜め、儚げで頼りない印象を与えるようになっています。
彼女は、前回の『帝都狂想曲』において綾がまだ帝都に居ることを知り、そしてあの音楽によって彼女とまだ繋がっているのだ、と妙な確信(狂人の洞察に近いものだと思ってください)を得た為、雅子は探索者に綾の捜索を依頼する為に、四谷区にある自宅へと招待します。
この招待は女学生探索者を通じたものでも、探偵探索者に直接の依頼があっとしても問題ありません。導入部としてキーパー、探索者の好みの方を取ってください。
雅子に招かれて四谷区にある山県邸を訪ね、その来意を告げれば何の問題もなく雅子の部屋へと通されます。
ここで、《アイデア》、《目星》、あるいは《心理学》に成功した場合、使用人の様子が何かを諦めたようなものになっており、末期の病人の為に何か出来ることをしてやろう、という雰囲気に気が付きます。
雅子の部屋へ通されると、普段どおりの洋装ではありますが覇気のない様子で椅子に座ったまま探索者を待っています。おそらく雅子と歳が同じぐらいの若い女性の使用人がかたわらに控えています。
「わざわざお越しいただいて、ありがとう。
このような不調法で申し訳ないのだけれど、何をするのも億劫で」
全く元気のない、覇気のない声で山県雅子は探索者に挨拶をします。
雅子は探索者に単刀直入に「黒澄さんを探してください」と依頼します。
「あの事件のとき、確かに私はあの人の歌をまた聞いたの。
遠いところに行ってしまったと思っていたのだけど、でも、きっとすぐ近くにいるはずだわ」
そう語るときだけ、彼女の口調には熱がこもり、どこか気だるげな、陰鬱な雰囲気は消えます。
この雅子の依頼を受けるかは探索者次第ですが、特に受けなくとも問題はありません(後に、雅子が不幸になるだけですが)。
依頼を受けた場合、彼女は大変な感謝とともに、費用についてはそちらの言い値で払うと約束します。
雅子は具合が悪いので見送りに立たない事を詫び、付き添っていた使用人が部屋の外へ一緒に出ます。
雅子の部屋から離れると、その使用人は次のように探索者に語ります。
「今日は、本当にありがとうございました。
申し遅れました、私、雅子様に御仕えしております諏訪白と申します。
よろしければ、また雅子様の様子を見に来て差し上げてください。ここのところ、またお加減がよろしくなくて。
あの黒澄綾という方の話をするときだけ、あのように夢中なのです」
諏訪は探索者に尋ねられれば知っていることを話しますが、彼女は雅子が前の前の事件(天球賛歌事件)の後からは鬱的であり、前の事件(帝都狂想曲)の後に症状が重くなっていることや、屋敷の中では完全に病人扱いになっていることを憤るぐらいです(病人は病人なのですが)。
探索者が白に協力を頼めば、彼女は雅子に何か変わった様子があれば探索者に連絡することを約束してくれます。
雅子が綾を真似る
探索者が雅子をもう一度訪ねるか、諏訪から連絡を受けるなどして再び山県邸を訪れた場合、山県邸からは明らかに下手くそなピアノが聞こえてきます。
《芸術:(音楽に関係するもの)》か、《アイデア》/2に成功すると、このピアノの演奏は黒澄綾の音楽を模したものですが、本来のそれからは何億光年も隔たったものであると分かります。そして、綾の音楽が唯一無二のものであると改めて実感します。
探索者の対応には今回は諏訪が直接出てきます。白は探索者を雅子の部屋ではなく、その近くにある別の広い部屋へと案内します。
「今日は雅子様はご機嫌がよろしいのか、ピアノを弾くと申されましてこちらに居られます」
通された部屋はかなり広く(雅子の私室も広いのですが、その2倍はあります)、日当たりの良い大きな窓を備えた部屋で、その一角に置かれた立派なピアノの前で雅子が鍵盤を叩いているのが分かります。
雅子は探索者が入ってきても気が付く様子はありません。諏訪がそれを告げようと雅子に近付くと、彼女は鍵盤を叩きながら、歌を歌い始めます。
それは前に聞いた雅子の歌う『天球賛歌』のようであり、桜嶺女学院で聞いた『異世界通信機』に合わせて歌ったもののようでありながら、どこか異なる、通常の音楽からは外れた独特の調子を持つ、黒澄綾や、あるいは探索者がすでに安藤雪子の異界のフルートの演奏を聴いている場合はそれを想起させるような音楽です。
この音楽を聞いた場合、《アイデア》に成功すると0/1D2の正気度を喪失します。失敗している場合は、単に下手な音楽にしか思えない為、正気度の喪失は起こりません。
これを聞いた諏訪は恐怖に打ちひしがれながら、すがる様に探索者の方を見ます。探索者が雅子を止めるまで、この音楽は続けられます。
探索者が雅子を止めると、彼女ははっとした様子で探索者を見詰めます。そして、気を取り直すように言います。
「あ、ああ、いらしていたんですの。気が付かなくてごめんなさいな」
悪戯が見つかった子供のような様子で、雅子はピアノから立ち上がります。
この音楽について探索者が訪ねた場合、彼女は「ああ、ピアノを弾くのは冗談みたいなものよ。全く、上手くなくって」とごまかします。
この場で雅子を《説得》するかすれば、彼女は以下のように語ります。
「私がピアノを弾こうとするのは、遠く及ばないけれど黒澄さんの真似事かもしれない。
何か、霊感のようなものが、私に音楽を奏でるように囁きかけるわ。
私には音楽の才能は無いけれど、黒澄さんのようには行かないけれど、でも、あれは私の音楽なの」
《心理学》に成功しなくとも、この言葉は綾との繋がりが音楽によって保たれていると雅子が考えていることが分かります。
山県邸を辞するとき、やはり諏訪が見送りに立ちます。
この時、彼女は何か躊躇うようにしていますが、意を決したように探索者に話します。
「あれは、あの音楽は雅子様が悪夢の中で聞いたものだと思います。
よく夜半に目を覚まされて、あのような音楽を我知らず、口ずさんでおられました」
また、探索者に雅子のためにまた来て欲しいと頼みます。
銀座、黒澄綾に遭遇する
音楽を奏でることが山県雅子にとって良いことなのか、悪いことなのか、それとも一種の作業療法にでもなっているのか、少しずつ回復の兆しを見せ始めた雅子は、探索者がまた訪ねてくると、「今日は天気もよいことですし、銀座の辺りにでも遊びに行かなくて?」と誘ってきます。
山県家の車に乗り、銀座へと繰出した探索者と山県雅子、諏訪白は何故か上機嫌の雅子に引っ張りまわされるように銀座を散策することになります(ちなみに、お代は全て雅子持ちです)。
はしゃぐ雅子を尻目に、諏訪はおろおろと雅子と探索者に交互に視線を向けてきます。彼女は帝都生まれではありますが、こういった場には馴染みが無く、雅子に付いて様々な店に入るのも初めてです。
探索者が《精神分析》に成功した場合、雅子は精神的に衰弱していることは変わりないのですが、鬱から躁の状態へ移行しつつあることが分かります。
そんな中、雅子が急に立ち止まります。《聞き耳》に成功した場合、どこからともなく「口笛」が聞こえてきます。
これを聞いた雅子は、急に立ち止まり何かを探すようにきょろきょろと辺りを見回し、遠くに一人の黒ずくめの長身の姿を発見します。
《聞き耳》に成功している場合、雅子と同時にこの黒い姿を発見し、そしてそれが黒澄綾であることに気が付きます。
一瞬、驚愕の表情を浮かべた後、「黒澄さんよ、追いかけて!」と白に命令しますが、そもそも綾に会ったことが無い白は誰が黒澄綾なのか分かりません。
白が戸惑っているうちに、黒澄綾は銀座の裏通りへと消えていきます。
ちなみに探索者が追いかけようとした場合、綾の方でもそれに気が付いて逃走(足早に退散)します。
雅子は綾の消えた方角をしばらく眺めた後、「帰るわ」とぼそりと呟きます。
諏訪は機嫌を損ねたかと恐る恐る雅子を見ますが、彼女はどこかぼんやりした様子で綾の去った方角を眺めたままです。
「あ、あの、(探索者)様がたは…?」
「あ、ああ、そうね。一度、家まで一緒に来ていただくか、ここで車を手配して頂戴」
雅子は心ここにあらずという様子で、彼女の手がそわそわと落ち着き無く動いています。それは、ピアノか何かを叩いている様子に思えます。
彼女は、綾の口笛から何か音楽の霊感を得るか、源泉に触れたようでその様子からまた音楽を奏でたくなっていることが分かります。
キーパーへ:
ここでの綾と雅子の遭遇は偶然です。
綾の口笛も、彼女の音楽の表現が溢れ出たものであり、何らかの意図があったり、雅子に聞かせる為のものではありません。
たまたま聞いた音楽が、雅子に霊感を与えてしまっているのです。そういう意味でも、雅子は綾の音楽の影響を色濃く受けていると言えます。
雅子が『音楽』を奏でる
銀座での黒澄綾との邂逅の後、雅子はまるで一時の黒澄綾のように音楽の作成に没頭し、寝食を惜しんでピアノに向かうようになります。
音楽は聞くもので、演奏するものではなかったはずの、全くの素人であった彼女が、音楽の天使が舞い降りてきたように急激にその才能を開花させます。
銀座で分かれた後、しばらくは雅子、あるいは諏訪の方から連絡はありません。探索者が訪ねた場合も、遠くからピアノの音色が聞こえる他は、雅子は今は忙しいと奥に引っ込んだままになります。
諏訪の方からも、雅子様が見ていて心配になるぐらいに演奏に没頭している、日に日に鬼気迫るものになっている、という連絡をしてきますが、雅子を止める術を白は持っていません。
キーパーの判断の期間後、探索者が山県邸を訪れると青白い顔をした諏訪が探索者を出迎えます。
「ああ、よかった。皆様、雅子様を止めてください!」
扉を開けて探索者を白が出迎える時、次の描写を行なってください。
諏訪白が扉を開けて探索者達を出迎えた途端、そこには青く『見える』音が溢れていた。
それは前に桜嶺女学院や、帝都全域を覆っていた青い音であり、白が扉を開けた途端に外部を侵食し始めたのだ。探索者達の視界も青く染まり始め、音が世界を侵食しているのが分かる。
奥から響いてくるその音楽は、回転する機械のような唸る音が三段階の音階に変わりながら脈動する音に似ているが、前のそれはただの音であったのに対して、おそらく雅子が奏でているであろうそれは間違いなく音楽にまで昇華されてピアノと歌と、それ以外の何かで構成されていた。
そして、やはりそれは青い音の生物、スグルオの住人を翻訳していた。
青い音に紛れるスグルオの住人は、すでに鱗を持った爬虫類のような揺らめく青い姿となっており、これを目撃した探索者は0/1D4の正気度を喪失します。
スグルオの住人は特に探索者や、山県邸の家人には興味を示していません。まるで彼らは酩酊するがごとく青い音の中をたゆとうており、音楽のする方向へとゆっくりと足を運んでいます。
すでに何度か雅子の部屋に通されていることもあり、また白の案内もある為に、山県邸を探索する必要なく、雅子の居るピアノのある部屋は分かります。
探索者の手元に楽器が無いと思われますが、この場合、白に何か楽器は無いのかと聞けば、山県邸にある大きな道具入れのような部屋に案内され、好みの楽器を手に入れることができます(これは全て、雅子の趣味で手に入れるだけ手に入れて使っていないものです)。
前の『帝都狂想曲』同様、スグルオの住人に対しては「正しい音楽」でダメージを与えることが出来ます。手持ちで移動可能な楽器である場合、1D6から1D10のものとなります(ただし、山県邸に溢れているスグルオの住人は積極的に探索者へは襲い掛かってきません)。
雅子が居るのは前に通されて事もある彼女の私室の奥にある日当たりの良い大きな部屋です。
奥にあるピアノには雅子がまるで自動演奏機械にでもなったかのように、無表情に瞬きもしない様子で演奏を続けています。そして、そのピアノの周りには3体のスグルオの住人がその音楽に合わせるかのように、あるいは酔っ払いが真っ直ぐに身体を保てないようにゆらゆらと蠢いています。
雅子をピアノから引き剥がして演奏を中止させれば、このスグルオの住人の翻訳は止まります。
この場において、ピアノの周りに居るスグルオの住人は演奏の邪魔をしようとする者に対して攻撃を仕掛けますが、それ以外の行動は特に取りません。
雅子を止めない場合、彼女の音楽による青い領域の侵食は確実に進み、スグルオの住人が次々と翻訳されていきます。探索者には、雅子を中心に青い領域の侵食が進んでいることを教えるとよいでしょう。
雅子をピアノから引き剥がす場合、彼女にSIZ12とSTRの対抗判定が必要になりますが、雅子の側に行けばスグルオの住人の攻撃を受けます。
スグルオの住人は基本的に1対1で探索者を足止めしようとします。攻撃を受けながらの場合は、ロールには1/2のペナルティを受けます。
スグルオの住人:
スグルオの住人A STR N/A CON N/A SIZ 20 INT 21 DEX 21 POW 25 DB+N/A 耐久力 POWと同じ
スグルオの住人B STR N/A CON N/A SIZ 19 INT 19 DEX 16 POW 23 DB+N/A 耐久力 POWと同じ
スグルオの住人C STR N/A CON N/A SIZ 17 INT 22 DEX 23 POW 26 DB+N/A 耐久力 POWと同じ
武器:音響攻撃 25%、ダメージ 1D6
装甲:なし。但し、彼らは物理ダメージを全て無効である。INTかPOWに影響がある呪文の効果は通常通り受ける。
スグルオ人に対して、『正確な音』による攻撃を行なった場合(《芸術:(何らかの楽器、歌唱等)》)、楽器の音響の大きさに合わせて、1D6から2D10までのダメージを与える。
正気度喪失:
青い鱗を持った爬虫類のような姿のスグルオの住人を目撃した場合、0/1D4の正気度を喪失する。
雅子をピアノから引き剥がすか、あるいはダメージを与えて演奏を止めたのに成功した場合、音楽は止み、侵食が止まると同時に、スグルオの住人も姿が薄れはじめ、影響力を失っていきます。
音楽を止めるのに失敗した場合、彼女は正気を失うまで演奏を続け、最後に気絶した後に二度と意識が戻らなくなります。
雅子は演奏を止めると同時に気絶しており、探索者の《医学》か、《応急手当》によっても一瞬意識を取り戻しますが、またすぐに気絶してしまいます(探索者がこれらの技能を持たない場合は、白が手当てを行ないます)。
音楽が止むことで山県邸の家人達も正気に戻りつつあり、白の方から、「申し訳ありませんが、この場はお引き取りください。後日、改めて連絡致します」と面倒が大きくなる前に探索者に山県邸より退去することを勧めます。
以降、雅子は自室に軟禁状態となり、雅子を連れ出す為には家人に見付からないように連れ出す必要があるようになります(諏訪と仲良くしている場合は、彼女の協力を得ることも可能です)。
もしも、雅子にダメージを与えて演奏を止めた場合は、諏訪白が非難を込めた目で探索者を見つめた後、「お引取りください」とだけ言って、雅子の手当てを始めます。
以降、雅子には会わせてもらえなくなります。
雅子と綾の二重唱
この場面は探索者が雅子の依頼を受けており、その為に綾が雅子に会う段取り、約束を作った場合のみ行なってください。
綾を見た瞬間、雅子はなりふり構わず駆け出します。
探索者が止めない場合、雅子は綾にすがり付こうとしますが、その手前で足がもつれて転びそうになります。
まるでそれが分かっていたかのように綾は前に出ており、雅子を抱き止めてから、探索者のほうを見ます。
ここで探索者は二つの選択肢を迫られます。
1.雅子の望むまま、綾の傍で会話をさせる。
(この場合、探索者には綾と雅子の会話は聞こえない可能性があり、もしも綾が雅子に対して害意がある場合は対応が難しくなる)
2.雅子と綾にある程度の距離を持たせるか、探索者も近い場所で会話をさせる。
(この場合、探索者にも綾と雅子の会話は普通に聞こえ、雅子への対応も問題ない)
選択に関わらず、雅子は綾に必死に何か問いかけようとしますが、声が出ません。あまりにも激しい感情が、彼女の言葉を一時的に奪ってしまったのです。
1.を選んだ場合、この様子を見た綾は雅子に微笑みかけた後、女学生探索者を手招きします(女学生探索者の雅子や綾の扱いがひどい場合、これは無く、2.を選んだ場合と同様になります)。
2.の場合、綾は雅子に何か囁きかけた後に去って行きます。これは遠い距離であるにも関わらず、探索者には何も聞こえません。
雅子の代わりに、女学生探索者が質問を行なう場合、大体の質問の回答は以下の様になります。
事件(『天球賛歌事件』)の後はどうしていたのか?:
「ある方の下で、音楽の勉強をしていました。少し不自由でしたが、様々な勉強をさせてもらい、音楽にも幅が出ました」
あの音楽(『天球賛歌』、あるいは『禍歌』)は何なのか?:
「貴方が聞いたあの音楽は『天球音楽』であり、『先触れの音楽』と言えるものです。私の求める音楽はさらにその後に来るものです」
綾の求める音楽とは?:
「完全にして、唯一なる音楽。『天球音楽』を奏でる天蓋の外、第八天球の外からの音楽であり、天蓋の内を満たす音楽に調和し、この世界の内と外を満たす、世界そのものである音楽です」
「私はその音楽の為の楽器を作り、それが奏でられる為の場を設ける為に、今は過ごしています」
この後はどうする(どうなる)のか?:
「そうですね。音楽だけが私の自由になるものなのです。
ただ、音楽の為だけに、それが私の成す事です」
この会話が終わった後、綾は不意に微笑むと雅子を見つめたまま歌い出します。
それは彼女の音楽ではなく、誰にでも理解できる、そして桜嶺女学院の声楽部でも歌われたことのある合唱曲です。歌い続けながら、綾は雅子にも「歌ってください」と促します。
この二重唱を聞いた探索者は、《芸術:(音楽に関連するもの)》か、《精神分析》に成功した場合、綾のこの歌は精神の安定を促すものであり、彼女の言う完全な音楽からは程遠い揺らぎを持った音楽であることに気が付きます(綾はわざわざ雅子の為にこの歌を『普通に』歌っているのです)。
この二重唱は、探索者の正気度を1D3点回復させるとともに、「音楽恐怖症」を発症している場合、音楽に対する恐怖心が薄れて、今後の治療によって恐怖症を克服することが可能となります。
歌が終わると雅子はゆっくりと崩れ落ちます。綾が抱きとめて、そのまま女学生探索者の方へ任せてから、探索者の方を一瞥して去っていきます。
雅子はいつもの憂いに満ちた、悪夢を見ている様子ではなく、満ち足りた顔をして穏やかな寝息を立てており、歌うことに疲れて寝ているだけだと分かります。
キーパーへ:
このスレッドにおいて、綾に雅子を会わせた場合、綾は雅子から『天球音楽』の影響を受け取るとともに、雅子が持っている『音楽』の情報を知ります。
この為、このスレッドを最後まで進めた場合、終幕部において綾の『完全な音楽』が奏でられる可能性が上昇します。
(つまり、綾と雅子を会わせるのは、彼女の音楽の完成に協力したことになります)
スレッドの終了後
山県雅子はスレッドの終了後、関東大震災の前に病気療養を理由に軽井沢へ移ります。
スレッドの起動時に山県雅子の依頼を受けていないか、黒澄綾に会わせていない場合、彼女は軽井沢からさらに山奥のサナトリウム、アサイラム的な場所へ閉じ込められ、精神の安定を欠いたままその後を送ることになります。
彼女が黒澄綾と再会した場合、軽井沢の地で健康を回復し、多少精神的に不安定ではありますが通常の生活に復し、軽井沢を本拠にして生活を送ります。
そして、綾と『二重唱』を歌った場合は精神的にもすっかり回復し、そのまま軽井沢の地で生涯の伴侶を見つけて、帝都と軽井沢を往復する生活を送ることになります。