スレッドO その他
便宜上、その他スレッドとしていますが、ここに記載された内容はスレッド型ではありません。
主に各スレッドの補強やつなぎ、どこにも属さない単発的な情報、というよりも震災へと流れる雰囲気を醸し出すのが主となります。
「綾の影」スレッドと同じく、特に場所も特定していませんので、シナリオのところどころに挿入していったり、場面の枕に使ってください。
- 街頭演説、再臨運動
- 街頭演説、社会主義思想
- 街頭の唱歌、船頭小唄
- 怪しげな噂、件の噂
- 震災の予兆
街頭演説、再臨運動
探索者が人ごみを歩いていると、どこからともなく再臨を説く声が聞こえてきます。
それは「天球賛歌事件」において秋山智生が説いたものと同一ではないですが、それの元になったものだということは自動的に気が付きます。
街頭で再臨の教えを叫んでいるのですが、道行く人々はまったく相手にしていません。中には、彼らが予言した年が越えていることを揶揄する野次まで飛ばすものも居ます。
「この世の終わりの十の徴はすでに世の中に現われています」
「キリストは死なれた。
キリストは蘇えられた。
キリストは再臨する」
「キリストは地上に帰ってきて、敵を裁き、忠信なる者に報いを与え、万物を神の支配の下に従わせる」
内村鑑三による熱狂的な再臨運動があったのは大正8(1918)年から翌年の話で、この時点ではあまり流行っていません。
一部、カルト化した再臨運動が世界滅亡を謳って活動を続けていることもありますが、これも現代の世界滅亡の予言を謳うカルトと同じように、予言の年が過ぎるとまた違う予言を始めるような状態で、カルトの方も同様に世間からは見捨てられた状態です。
街頭演説、社会主義思想
探索者が人ごみを歩いていると、ちょっとした人だかりを発見します。
見れば付近に制服の警官の姿も数人おり、最近流行の社会主義思想について語っているようなのですが、その辺りはぼかしつつ、現在の議会、加藤友三郎内閣への攻撃を行なっているのが聞けます。
警官の様子を見ても、明らかに何かあれば中止を宣言するつもりであることが分かります。
演説は熱が篭っては居るものの何か奥歯に物の挟まったような状態で続き、ついには実力行使を持って議会を倒す、ということを宣言しようとした矢先、警官より「中止!」、続けて「解散!」を叫ばれます。
まだ演説を続けようとする演壇の男を警官が無理やり引き摺り下ろしながら、「解散!解散!」と叫び、辺りは混乱に包まれます。
もしも、この場に探索者が留まる場合は、《幸運》に失敗すると検挙されてしまい、少なくとも1日は拘留されることになります。
前年、大正11(1922)年に共産党が結党され(現在の日本共産党は全く関係はなく、政治団体というよりは思想団体に近いものです)、「赤化」(共産主義思想に染まること)が流行語にもなりました。
当時、革命近し、と左翼思想者は本気で思っており、そのための活動に明け暮れていたのでした。
この年の6月に一斉検挙が行なわれた第一次共産党事件など、公安側も敏感になっていた時代です。
ちなみに、加藤友三郎総理は震災の8日前、8月24日に急死しており、震災当時はなんと総理不在、急遽、山本権兵衛を任命しました。
街頭の唱歌、船頭小唄
探索者がある程度人の多い場所を歩いていると、どこからともなく船頭小唄が聞こえてきます。
当時、船頭小唄は大流行していた為、特に《知識》等のロールがなくとも、これが船頭小唄であることに気が付きます(女学生などの対場の場合、学校によってはこれを歌うのを禁じていたところもある為、知らない可能性はありますが、よほど世間知らずではない限り知っていて問題ないでしょう)。
船頭小唄は、大正11(1922)年に野口雨情作詞、中山晋平作曲で発表されましたが、翌年の大正12年になってから世間に流布、急速に広まりました。
この船頭小唄を使った小唄映画なるものまで作られ、粟島すみ子、岩田祐介の共演で人気であったと言われています。
「おれは河原の枯れすすき、同じお前も枯れすすき
どうせ二人はこの世では、花の咲かない枯れすすき
「死ぬも生きるもねえお前、水の流れになに変わろ
おれもお前も利根川の、船の船頭で暮らそうよ」
震災後、世間ではこの歌は地震を予知していたものだったのだ、という都市伝説まで流布し、幸田露伴などはこのような退廃的な歌が流行ったから震災が起こったのだ、などと言いました。
また、添田唖蝉坊がこの歌を「焼け出され」と替え歌を作って歌っています(歌詞が全文分かりません…)。
怪しげな噂、件の噂
街角で怪しげな号外が売られています。
これらの号外は本来はタダなのですが、新聞社などから配られたものを受け取って、街頭にて数銭で売っているものがあるのです。
本来は何か大きな事件があった場合にこういった号外が発行されるのですが、何故か、ゴシップ記事のような号外(ただし、昔の瓦版のようなものですが)が売られています。
探索者が2銭を払ってこの号外を手に入れた場合、岡山の山奥で人の顔に牛の身体を持った『件』が生まれた、という記事を読むことになります。
『件』は生まれた三日後に死んでしまった、と記事にはありますが、生きている間に帝都を未曾有の危機、天変地異とも言える大災害が襲うと予言した、と書かれています。
『件』はその文字の通り、人と牛を掛け合わせたような姿をしており、予言をすると言われている妖怪です。
歴史的事件や、大きな災害の前に生まれて予言をしたと言われています。
震災の予兆
これらの場面は、シナリオの後半で行なうようにしてください。
独立したものとして扱わず、それぞれの場面の枕として、あるいは新聞を読むなどの世間の情報を手に入れようとしたついでなどで提供していくのもよいでしょう。
また、これらの現象について、特に赤い月などは探索者に直接体験させるのもよいかもしれません。その場合は、適宜、正気度を減少させてください。
・井戸が濁る
品川の某所において急に井戸が濁ったという話。
地震の前触れではないかと中央気象台へ連絡したが、井戸が濁る原因は様々である為、放置されたという。
・魚の異常行動
蒲田の松竹撮影所に勤める人がその帰り道で小さな池の水面一杯に魚が跳ねているのを見つけた。
早速、撮影所に戻って友人と網などの道具を持ってきてこれを掬ったが、四斗樽に半分もの魚が取れたという。
・不気味な雲
帝都の空にまるで大蛇のような不気味な雲が現われたという。
・逃げるネズミ
6月には南葛飾で、7月にも練馬石神井でネズミの大量に郊外方向へ移動していくのが目撃されたが、今度は江戸川の市川橋の下に渡されている水道管を伝って逃げる姿が目撃されている。
人が逃げるのを遮るようにしても、夢中で逃げていたという。
・帝都の空の謎の発光現象
帝都の空でまるで雷のような発光現象が何度も観測される。
雷のような音もなく、あまりにも何度も光る為に、不気味に思い屋内に避難した人も居たという。
・品川沖合いの謎の発光現象
品川の沖合いに漁に出ていた船が、稲妻のようだが、無音の光を南西方向(帝都の方向)に目撃した。
夜間のことだったが、この光で新聞が読めるほどだったという。
・赤い月
不気味な血の色のように真っ赤に染まった月を見たという。
錯覚などではなく、帝都に住まう多くの人々が目撃している。
キーパーへ:
関東大震災、大正12(1923)年9月1日の月齢は19.7で、満月から欠けつつあるものです(月齢15が満月です)。
つまり、震災の6日前が満月の時期なので、このあたりで探索者自身に赤い月を目撃させるとよいでしょう。
この不気味な月を眺めた探索者は0/1D3の正気度を喪失します(すでにミ=ゴから悪夢が送られた後の場合は、それを髣髴とさせる為に正気度の減少が+1されます)。