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雑踏に囁くもの the Whisper in the Crowd

トップページ->帝都モノガタリ->雑踏にささやくもの

the Whisper in the Crowd

「雑踏に囁くもの」

たしかに私の顔でした。御覧のごとくの、この顔でした。
似ているとか、むずかしい言葉でいう、錯覚とかの問題でない。
たしかに、誤りなく私自身の顔でした……その男の顔でした……
────────── 畑耕一『怪異草紙』より


注意、あるいはお約束:
プレイしてみたい人、プレイするかも知れない人は読まないでください。読んで良いのはキーパーか、またはプレイする予定のない人だけです。うっかり目次を見てしまった人は、「記憶を曇らせる」の呪文でも使って忘れてください。万が一そのままプレイに参加したりすると、貴方の悪徳に誘われて隣のプレイヤーにイゴーロナクが憑依するかも知れませんよ。

そして当然ですが、このシナリオはフィクションです。
現実のいかなる人物、団体、そのほかもろもろのものと一切の関係はありません。

 本シナリオは下記のような構造となっています。
 まずはすぐ下の目次に目を通し、それからはじめにシナリオの概要と読み進み、シナリオの本体へ進むのが良いでしょう。


目次

■はじめに
 □シナリオのスペック
 □始める前に
  シナリオの傾向
  シナリオの舞台
  PC作成時の注意、立場
  PC同士の関連付け
 □シナリオの概要、真相(キーパー向け)
 □登場人物(NPC紹介)
■シナリオ
 □導入部
  PCB:上野駅にて
  PC@:銀座にて
  PCB:浅草〜上野間の地下鉄工事
  PCC以降:その他の導入部
 □探索部:
  銀座編
   ■五十目を目撃する:
   ■銀座三奇人:
  上野・浅草編
   ■情報収集:
     □浅草公園の交番:
     □公園彷徨者たち:
     □地下鉄について:
   ■地下坑:
   ■あばら屋、ミ=ゴの隠れ家:
  咲子編
   ■上京初日:
   ■上京二日目:
   ■上京三日目:
   ■上京四日目以降:
  武川編
   ■武川、特務部隊の行動:序盤
   ■武川、特務部隊の行動:中盤
   ■武川、特務部隊の行動:終盤
   ■特務部隊隊員のデータ
 □終幕部
  ミ=ゴと交渉する
  ミ=ゴの隠れ家を急襲する
  地下坑のミ=ゴと対峙する
   ■寺田の協力を取り付けていない:
   ■寺田の協力を取り付けている:
   ■地下抗のミ=ゴ:
   ■ミ=ゴ達が守ろうとしたもの:
 □事件の後、正気度の報酬
  五十目のその後
  咲子のその後
  武川のその後
  学天則のその後
  地下鉄のその後
  正気度の報酬
 □データセクション
  地下鉄
  早川徳次
  特務部隊『平野機関』
  ミ=ゴ達
  学天則
■謝辞、あるいは参考資料:


はじめに

シナリオのスペック

 本シナリオは、『クトゥルフ神話TRPG』向けであり、大正時代を取り扱った『クトゥルフと帝国』あるいは、本『帝都モノガタリ』を対象としたシナリオです。
 プレイヤーの人数は3〜5人を想定しており、作りたてから、1〜3度程度の探索を経験した探索者向けにデザインされています。
 プレイ時間はキャラクターの作成を含まず、2〜4時間程度を想定しています。
 また、シナリオの探索自体の難度は高くありませんが、いわゆる『箱庭型』に近いシナリオ構造をしている為、シナリオ自体の再構成を検討する必要があることや、探索に対する時間管理等、キーパーには取り回しが不親切な部分があります。毎度のことですが、その点はご了承ください。

始める前に

 実際のセッションを始める前に、これらのことに注意するか、プレイヤー達に直接告げてください。

シナリオの傾向

 本シナリオは、探索が中心となるシナリオとなります。探索者の行動、方針によって戦闘が発生したり、あるいは交渉で事件が解決する場合もあるでしょう。
 キーパーは探索者の行動から、シナリオの流れを変化、対応させることが望ましいです。それによってシナリオは地味で地道なものか、あるいは戦闘の連続するようなシナリオになる可能性もあります。
 シナリオ内で提示される「謎は解かれなければならない」必要はありませんが、「手がかりは提示する」必要はあります。
 情報は全て出し尽くす、というのが理想的ですが、探索者の選択、行動によって得られない情報も発生することでしょう。ある程度、キーパーの方から誘導、あるいは具体的にこうすれば?と提示することも必要になってきます。
 キーパーは適宜(特に探索者の行動が止まってしまった場合等)、探索者を誘導するようにしてください。

シナリオの舞台

 シナリオは帝都での探索のみとなり、時期は震災後、昭和2(1926)年9月初旬となります。

PC作成時の注意、立場

 探索者の作成時には、下記のように作成するようにしてください(FEAR的なあれですが、クトゥルフの弱点である導入部の弱さを補うには非常に有効な手段だと思われます)。

PC@ 推奨職業:探偵、退役軍人等の肉体派(背景情報より、大陸浪人は非推奨):
 いわゆるシナリオの主人公(?)的な位置づけとなります。
 6、7年前は現役の軍人であり、五十目和英とともにシベリア出兵に出征しています(プレイヤーの希望によっては、現役軍人でも可)。
 その際に五十目には恩があり、彼が行方不明になったことを気に掛けています。
 また、五十目の家族とも交流があり、今回の五十目咲子の一時上京の際にも面倒を見ることになっています。

PCA 推奨職業:特になし(新聞記者等、一般的な職業を推奨):
 五十目の親戚筋となります。
 幼い頃の咲子と会ったことがありますが、和英に会った事はありません。
 今回は、PC@とともに、咲子の面倒を見て欲しい、と五十目の家から頼まれていることになります。
 五十目の家の関係や、あるいは軍人としての関係等から、PC@とは知り合いとなります。

PCB 推奨職業:特になし(浅草、上野に関係が出来る職業を推奨):
 浅草〜上野間の地下鉄工事の関係者か、直接関係はなくとも、何らかの影響を被っている探索者になります(上野をねぐらにする浮浪者とか・・・)。
 あるいは、それらに興味を持つ新聞記者など、地下鉄に関係があるか、興味を持っていることになります。
 現在、ほぼ地下鉄のトンネル工事は完了しているのですが、上野〜浅草を繋ぐ直前の箇所である事件が起こり、トンネルが開通しない状態となっています。
 特に調査、解決の依頼があるわけではありませんが、関係者として何らかの協力をしたいと思っています。

PCC以降:
 いわゆるその他のPCとなります。
 PC@、A、Bとの絡みや、職業的なこと、私的な理由から、五十目家の人間、あるいは探索者と絡みを作る必要があります。
 例えば、PC@の同僚や友人で、五十目の話を聞いている、PCBの友人で地下鉄工事の関係者等、といったもので問題ありません。

PC同士の関連付け

 基本的に自由です。シナリオに参加する理由付けを作るようにしてください。
 プレイヤーから提案を積極的に受け入れて、シナリオに参加する理由付けを作成するようにしてください。


シナリオの概要、真相(キーパー向け)

 このシナリオは、シベリアで行方不明になった五十目和英を、上野駅で目撃するところから始まります。
 五十目に関わる探索者たちはその追跡を行い、全く同じ人物を、銀座、上野、浅草と目撃し、時には時系列で並列であることもあります。
 そして、何故か彼が地下鉄の工事現場に関わっていることを知り、さらには浅草で全く同じ姿の五十目を複数目撃することとなります。
 そう、彼の外観をした何者かが、複数存在しているのです。
 事件の真相を確かめる為に、そのものたちのアジトに侵入するか、はたまた、地下鉄に関わる彼らと対峙するかは探索者次第です。

 五十目和英は、シベリア出兵の際、ロシア語の才能を買われて特務、『平野機関』への協力を命令されました。
 それはシベリアの凍土に埋まっていた、『クトーニアンの卵』を掘り出し、秘密裡に日本へ持ち帰る、という任務でした。
 最初は真相も知らずにただ言われるままに協力していたのですが、持ち前の探索者的な性格、技能を持って真相を掴みました。
 その後、日本へ卵を持ち帰ると、永久に口封じをされそうになったこともあり、特務機関から卵を奪って逃走、浅草の辺りに潜伏していました。
 潜伏期間は3年近くに及びましたが、追っ手は特務機関のみでなく、シベリアの地で一戦交えた『ミ=ゴ』も加わっていました(彼らが敵対しているおかげで、五十目は逃げ切れたこともありますが)。
 そして、関東大震災が帝都を襲い、五十目が浅草に隠していた『卵』は行方不明となります。
 五十目は『卵』を失った後、『ミ=ゴ』に捕らえられてしまいます。しかし、『ミ=ゴ』たちも『卵』の為、最初は脅しとして五十目を解体手術することをほのめかしていたのですが、特務機関の追っ手が迫るうちに、五十目自身の安全の為、脳の摘出を受けるように勧め始めます。
 結局、長らくの逃亡生活に疲れ、精神の平衡も失いつつあった五十目は『ミ=ゴ』の申し出を受けるとともに、『卵』の捜索に協力するようになります。
 五十目和英の皮を被っているのは、震災後の東京を調査している『ミ=ゴ』たちです。
 彼らは、関東大震災が東京の地盤に与えた影響の調査をしていたのですが、シベリアから『卵』が運び込まれたことを知ると、それを第一の目標として帝都を跋扈するようになります。
 捕獲した五十目の協力の下、『卵』が発見されるまでは良かったのですが、それは上野〜浅草間の地下鉄工事の最終地点であり、そして『卵』は今まさに孵化する様子を見せていると言う状態です。
『ミ=ゴ』たちは『卵』を安全に孵化させた後、クトーニアンの幼生をシベリアに持ち帰る計画を立て、その為に地下鉄工事を妨害しています。

※五十目については、『ミ=ゴ』に協力する立場で、脳缶詰になっていることになっていますが、キーパーの判断によっては脳缶詰になっていなくとも、また『ミ=ゴ』に協力する立場でなくとも構いません。但し、その場合は、シナリオを大幅に再構成する必要があります。


登場人物(NPC紹介)

五十目和英(いそめ・かずひで)、生きていれば36歳

 秋田の生まれ、生きていれば36歳になる元軍人です。
 PC@のシベリアでの上司で恩人です(いわゆる先任軍曹的な)。何故かロシア語に堪能で、それを買われて『特務』の任務に随行、行方不明になっています。
 軍人らしい軍人ではないですが、過酷な環境でも生き残る屈強の男であり、実は探索者的な人物です。
 世間的にはシベリアで行方不明、あるいは脱走したということになっています。

 五十目和英は、シベリア出兵時にそのロシア語の能力を見込まれて『特務』に協力させられ、シベリアの凍土の下に埋まっていた『クトーニアンの卵』を掘り返し、日本に持ち帰る手伝いをしています。
 帰国後、秘密保持の為に消されそうになった為、『卵』を浅草に隠して、逃亡、『卵』を探しに来たミ=ゴに捕獲、説得、合意のうえ、脳缶詰になっています。

 浅草に隠した卵は、関東大震災によって大体の位置しか分からなくなっています。
 この為、ミ=ゴ達は適当な当たりをつけて掘り返しており、それが今回の地下鉄工事とかち合っている状態です。

※脳缶詰の場合
(『クトゥルフワールドツアー 忌まわしき古代遺跡』P.30のミ=ゴの脳収容器のルールを適用)
STR 0 CON 0 SIZ 6
INT 12 POW 14 DEX 0
APP 0 EDU 20 SAN 34
装甲:12(脳収容器自体の装甲) 耐久力:20(脳収容器自体の耐久力)
技能:オカルト 80%、機械修理 70%、聞き耳 35%、クトゥルフ神話 38%、信用 30%、説得25%、電気修理 75%、図書館 75%、ロシア語 70%、目星 35%、学問系を全て50%
 ※肉体を使用する技能は基本的に0%となります。
  機械修理、電機修理は知識のみで、手を動かす作業は行なうことは出来ません。
  彼はあまりにも暇なので、生活(?)の時間を知識習得に割いています。

 五十目が脳缶詰になっている場合、キーパーの判断で何らかの呪文を習得していることにしても構いません(ミ=ゴたちから習ったことに)。
 五十目が脳缶詰になっていることを知った探索者は、その関係の深さに応じて、1/1D2〜1/1D6の正気度を失います。
 今回の場合、PC@と咲子が1/1D6、PCAが1/1D3、それ以外の探索者が1/1D2となります。

※普通の場合
STR 14 CON 15 SIZ 11
INT 12 POW 14 DEX 13
APP 12 EDU 15 SAN 54
耐久力 13 ダメージボーナス +1D4
技能:オカルト 55%、回避 39%、隠れる 70%、聞き耳 70%、クトゥルフ神話 16%、忍び歩き 60%、信用 60%、説得 50%、追跡 70%、図書館 75%、ロシア語 70%、目星 70%、サーベル 65%、拳銃 60%、こぶし 70%

五十目咲子(いそめ・さくこ)、和英の妹、12歳

 秋田から上京してくる和英の歳の離れた妹です。来年の春から、東京にある桜嶺女学院に入学することが決まっており、その視察を兼ねての上京となります(同時に、東京で信用の置ける人物との面通しの意味も)。
 袴にブーツというハイカラさんスタイルで、良いところのお嬢様風に見えますが、結構なアウトドア派であり、乗馬と長刀を趣味としています。また、実はお兄さん大好きであり、影で健気にロシア語を勉強しています。
 割合素直、というよりも、田舎者ゆえのすれてない性格でもあるので、なるべくそういった面を表に出さないように心がけています。

 和英については、シベリアで行方不明(あるいは、脱走)の件を気にしており、積極的に話題にはあげようとはしません。今回は、視察の意味もありますが、和英の件もあり、気晴らしの観光の意味もあります。
 上野で五十目和英を目撃し、その行方に疑問を抱いています。

STR 13 CON 10 SIZ 9
INT 12 POW 11 DEX 13
APP 14 EDU 6 SAN 55
耐久力 10 ダメージボーナス +0
技能:隠れる 30%、聞き耳 50%、乗馬 60%、信用 70%、追跡 50%、図書館 50%、ロシア語 11%、長刀 50%

武川源(たけがわ・はじめ)、特務将校、32歳

※キーパーの判断で、武川は登場させなくとも構いません。
 陸軍の特務機関の将校(中尉)です。
 特務、平野機関は日本版デルタグリーン的なものですが、組織の性格としてはカルト集団に近いものもあり、いわゆる、抗神話組織的なものではありません。
 彼自身、目的の為には手段を選ばず、という性格であるとともに、組織自体もそういった性格です。
 シベリアで『クトーニアンの卵』の発掘の指揮を執り、日本に持ち帰るまでは良かったのですが、協力した五十目和英を消そうとしたことで、全て御破算になってしまいました。
 五十目の逃亡後も、五十目と『クトーニアンの卵』の行方を追って活動を進めていますが、この事件が組織に与えた影響は大きく、彼自身の信用も特務機関の中で揺らいでおり、あまり協力が得られる状況でもない状態です(この為、『クトーニアンの卵』の捜索にも、特務の他の人員がほとんど割かれていません)。

STR 13 CON 8 SIZ 10
INT 15 POW 11 DEX 13
APP 11 EDU 18 SAN 44
耐久力 9 ダメージボーナス +0
技能:いいくるめ 70%、オカルト 70%、回避 42%、隠す 50%、隠れる 60%、聞き耳 70%、クトゥルフ神話 12%、忍び歩き 80%、信用 50%、目星 60%、日本刀 60%、拳銃 70%、抜刀術(居合い) 60%
武器:
 日本刀 60% 1D10+DB
 十四式自動拳銃 70% 1D8(1ラウンド3射、8発装填)
装甲:
 鎖帷子:1

銀座の三奇人

 帝都の銀座には奇人変人有名人が多いようですが、その中でも、寺田寅彦(てらだ・とらひこ)、今和次郎(こん・わじろう)、早川徳次(はやかわ・のりつぐ)の3人が『銀座の三奇人』などと称され有名でした(?)。

・寺田寅彦
 今回の有名ゲストNPCその1。いわずと知れた帝大理学博士。
 震災後には、大河内正敏の理化学研究所、東京帝国大学地震研究所の所員を兼務し、シナリオの時期にはかなり忙しかったことは想像に難くありませんが、様々な交友関係を通じ、『銀座三奇人』の一人として、早川から地下鉄工事の相談を受けて、工事にロボットを使うことを提案します。

・今和次郎
 今回の有名ゲストNPCその2。こちらも言わずと知れた民俗学者、考現学者。
 変わった学者先生として有名で、つねに坊主頭にジャンパー、ズック靴という姿で、様々なフィールドに出没するフィールドワーカーです。
 この時期は震災のバラック研究の後、銀座辺りのフィールドワークを行なっていた時期からも少し外れていますが、まだ銀座で調査を行なっている、ということで(この時期は、新宿紀伊国屋で『考現学展』を開いており、調査結果のまとめを行なっていた時期のようです)。
 今回の事件では、寺田、早川との繋ぎ役であり、また、銀座で路上観察を行っており、『群集の人』をしばしば目撃しています。

・早川徳次
 今回の有名ゲストNPCその3。同姓同名のシャープの創業者ではなく、日本の地下鉄の産みの親です。
 大正3年にイギリスを訪問した際に、現地に敷設されていた地下鉄に衝撃を受け、以降、帝都に地下鉄を引くことに腐心します。
 今回の上野〜浅草間の工事のトラブルの解決に奔走しています。

西村真琴(にしむら・まこと)

 今回の有名ゲストNPCその4。水戸黄門で有名な西村晃の父親です。
 長野の松本に生まれ、広島高等師範学校で博物学を学び、生物学者として満州に渡り、次には渡米して博士号を取り、その後北海道で毬藻の研究で理学博士号を取得しました。
 この当時は、北海道帝国大学を退官し、毎日新聞社に入社し、『学天則』の製作に心血を注いでいました。


シナリオ

導入部

 探索への導入部となります。
 シナリオの導入部は、探索者毎の個別の導入となりますが、主要な探索者(PC@、A)以外は、事件への絡みが難しくなっています。
 積極的に探索へ参加を促すとともに、職業へ技能から探索への動機を作るようにしてください。

PCA:上野駅にて

 上野駅は、東北地方から玄関口であり、東北方面からの列車は必ずここへ行き着きます。
 そんな中、PCAは五十目咲子の出迎えに、上野駅の雑踏の中に立っていることになります。五十目咲子は、来年から帝都の名門、桜嶺女学院に入ることが決まっており、その下見と、関係者への挨拶や、親戚などの信用の置ける人々への面通し、そして暇があれば帝都の見物を目的としています。
 咲子の乗った列車は、時間よりも少し送れて到着します。それを知ったPCAに対して、《アイデア》を要求してください。
 成功した場合、ごった返す駅の群集の中で、『五十目和英』らしく後姿を目撃することになります。ただし、それは一瞬のことで、他人の空似の可能性が高いとその時は思います。
 列車が到着し、咲子と合流した直後、《アイデア》に成功すると、彼女が妙なものを目撃したように首をかしげることに気が付きます。
 そして、ぽつりと「兄様?」と咲子が呟くのを聞くこととなります。
 もしも、咲子にこのことを聞いた場合は、「兄に似た人を見ました。でも、他人の空似だと思いますわ」と答えます。
 この後、上野駅からタクシーで咲子の寄宿先へ行くこととなりますが、上野から浅草への地下鉄の工事を行っており、その辺りで交通渋滞に巻き込まれたり、道路が水浸しになったり、陥没して危険な目にあったりとか、散々な目に合うことになります。

キーパーへ:
 ここで、『五十目和英』を目撃したのはPCAと、咲子だけではありません。彼を追っている特務の『武川源』もここで目撃することとなります。
 ここから武川の所属する特の務部隊も動きだすことになり、同時に関係者である『五十目咲子』を知り、調査を始めます(そして、すぐに『五十目和英』の妹であることが発覚します)。

PC@:銀座にて

 PC@は銀座に出てきています。それは、 依頼人と会う為か、仕事でのことか、あるいは単なる気晴らしでも構いません。適当な理由付けを行なってください。
 そんな中、の暑いのにしっかりと正装の男を目撃します。しかも、それは行方不明のはずの五十目和英だと、PC@にははっきりと分かります。
 追いかけようとした場合は、《追跡》ロールを行なってください。成功した場合、見失うことはありませんが、彼はそのまま市電に乗り、姿を消します(距離の問題で追いつけません)。
 失敗した場合は、見失った後ろを市電が通り過ぎ、それに乗っている五十目和英を目撃することになります。

 五十目を見失ったところで、路傍に妙な男を発見します。
 ジャージ姿でノートを広げて、道行く人の格好をスケッチしつつ、碁石を使ってその数をカウントしているようです。
 この奇妙な男は、今和次郎です。彼は日がな一日、同じ場所に座って、銀座の街を行く人々をスケッチし、カウントし、分類しているのです。
 今に対して、五十目のことを聞いた場合、「この暑い時期にあの格好だから目立つね。一日に何回も市電に乗ったり降りたりを見るよ」ということを聞けます。
 また、どの市電かと聞いた場合、北の方、上野とか浅草方面をよく使っている、とのことです。
 彼はここで観察をしているだけなので、知っていることはそれだけですが、探索者が好意的に接した場合は、ある程度調査の協力をしてくれます(とは言っても、銀座の定点観測の結果を教えてくれるのがメインですが)。

PCB:浅草〜上野間の地下鉄工事

 PCBは、浅草〜上野間の地下鉄工事の関係者か、あるいは現場近しい人間として、現在、ほぼトンネルは開通しているのに近いにも関わらず、最後の部分を掘り進む工事が遅れており、工事全体のスケジュールにも影響を及ぼしている、ということを同僚か、あるいは上司から聞き及びます。
 会社としてもこれが遅れれば遅れるほど損害が出る、という状態で、また工事自体、周辺住民への影響を考えても問題がある、遅れている、というのがよろしくない、という話が出ます。
 しかも、単純に技術的な問題等で工事が遅延しているという訳ではなく、実際に坑道に潜っている労働者に怪我人が出ていること、そして化け物が出る、という噂が立っており、これらについてPCBは調査、あるいは単純に興味を持って見に行く等になります。

キーパーへ:
 PCB以降は探索への参加の動機が弱い探索者となります。探索者自身の設定を利用するか、五十目やその他のNPCとの繋がりを作って、探索への動機を作るようにしてください。
 もちろん、探索者同士の繋がりを動機にするのも問題ありません。

PCC以降:その他の導入部

 PCC以降は個別の導入を用意しません。
 キーパーの方で各探索者に合わせたものを用意するか、PC@〜Bまでの導入の同行者、あるいは関係者としてしまうのもよいでしょう。
 探索者への動機付けを行なうようにしてください。

探索部:

 シナリオのメインとなる探索部です。
 探索を行なう場所や、シナリオの進行具合によって探索の内容が異なります。
 シナリオの進行はキーパーの判断と、探索者の動きに合わせて動かすのが理想です。非線形のシナリオとして動かすのがよいでしょう。

銀座編

 銀座は関東大震災で建築物の約80%が倒壊、または焼失するという甚大な被害を受けましたが、これを幸い(?)と都市計画整備が進んだことも確かです。
 復興は速やかに進み、次々と大型の百貨店が進出し、モダンな街並みが発展していきます。
 銀座では主に五十目を目撃するとともに、銀座の三奇人から地下鉄工事の情報を得ます。
キーパーへ:
 五十目をよく目撃する銀座編ですが、ミ=ゴたちが銀座で何をしているかは詳細は設定しません。
(上野、浅草への乗り換え地点として利用されている、というのが実際なのですが…)。
 単純に乗り換え地点であるとしてもよいですが、彼らの人間としての顔の拠点が銀座にあるとか、あるいは『佐比売党』を絡めるのもよいでしょう。
 キーパーは任意に銀座の探索イベントを追加してください。
 また、あまりにも探索者が銀座での五十目=ミ=ゴの目撃にこだわる場合は、NPCの『銀座三奇人』を使って押し進めるのも一つの手です。

■五十目を目撃する:
 五十目を目撃するのは、基本的に電車に乗り込もうとするところか、あるいは乗っているところとなります。
」  五十目を何度か目撃した場合、《目星》あるいは《アイデア》ロールに成功すると、彼が常に同じ格好であること、無表情でほとんど周囲へ反応が無いことに気が付きます。

 導入で登場した今和次郎の協力や、あるいは今と共に定点観測を行なうことで、ある程度の法則性を持って五十目が現れることに気が付きます。
 これに気が付いた場合、《幸運》のロールに成功することで、彼と同じ電車に乗り込むことができます。
 話しかけた場合、全く反応がありません(五十目の名を呼んでも、全く無視されます)。五十目であることを確認した場合は、どこかくぐもった声で「人違いではないか」と言われるだけです。
 話しかけたりせずに、じっくりと観察した場合、彼が極端な無表情、というレベルを越えて全く表情が動かないこと、ほとんど瞬きをしないことに気が付きます。また、9月頃の暑い、とは言わないものの、正装では暑い車内にも関わらず、汗一つかいていないことも分かります。
 込み合った車内を利用して、五十目に触れてみた場合、彼の体が妙に硬い箇所と、人の体とは違った柔らかい感触を持つ箇所があることに気が付きます。
 五十目=ミ=ゴは、探索者の方が極端な行動を取らない限り、特に何らかのアクションを取ることはありません。そのまま電車に乗って浅草まで行き、そして降りて人ごみに紛れて行きます。

 もしも、探索者が強硬手段に出た場合、五十目はとりあえず逃げようとします。これが無理な場合は、五十目の皮を脱ぎ捨てて、その上で飛行して逃げようとします。

■銀座三奇人:
 今和次郎と仲良くしている場合、彼とまた路上で話をしていると二人連れの紳士に声を掛けられます。
「やあ、今さん。お連れさんですかな」
 二人の紳士は、寺田寅彦と早川徳次です。まだ暑い中でも、しっかりと三つ揃えを着込んで扇子を使っており、ラフなジャージ姿の今とは対照的です。しかし、三人は親しげに挨拶を交わすと立ち話もなんだからと連れ立って近くのカフェだかバーだかに入っていこうとします。
 探索者達が特に遠慮しない限り、今の友人としてコーヒー、または食事を一緒にすることになります。

 この会合の場では、探索者は今から寺田、早川を紹介されます。
 寺田は有名な理学博士でありますが、早川は今帝都で話題の東京地下鉄道の早川です。
 食事をしながら、早川が地下鉄工事の進み具合を語ります(探索者達は、今の友人ということで信用されています)。
 その話は、ほぼ上野から浅草までのトンネルは掘れているのだが、それを繋げる箇所で工事に事故が起こって遅延している、ということで、この事故が不可解な現象である、と言葉を濁します。
 この事故の件について、早川は寺田の智恵を借りたい、と申し出ます。事故の詳細については、口で説明するよりも実際に見てもらった方が早いし、信じられる、ということを言います(地下鉄の工事現場に『鬼』が出る、という現象をはっきり言えないのです)。
 探索者達が同行を申し出た場合は、早川としては鬼が出るという事象について、第三者的な立場の人間にも見てもらいたいという気持ちもあり、特に断ってきません。
 日程をその場で調整して、後は銀座三奇人の最近の銀座についての研究的な雑談に流れていきます。
キーパーへ:
 探索者達が、この場で地下鉄の件に関わっていく動機が弱い可能性が高いです。
 今和次郎だけなく、教授や、書生等の学校関連の職業の探索者が居る場合は、寺田寅彦を見知っているのもよいですし、今話題の地下鉄、ということで興味や、あるいは新聞ネタ等として探索者への引きにしてください。
(この場をPCBが居る状態で行なって、ある程度強引に関わらせる、というのがよい気もします…)

上野・浅草編

 この逞しい下町は、関東大震災によって壊滅した直後から、瓦礫の残る中でバラック小屋を立てて、即座に活動写真の上映を再開しました。
 以降、復興を続けながら活動を続け、衰亡しつつあった浅草オペラを絶滅においやり、活動写真の隆盛を早めたのでした。
 相も変らぬ人出は、震災からわずか2年でも震災前よりも変わらぬものとなっています。
(この時期にはすでに凌雲閣、十二階は解体済みで、十二階下も官憲の手で追い散らされていました)

 浅草は平日、休日、昼夜に関わらず、そこの娯楽を享受する人々でごった返しています。震災前に比べ、女性も増え、様々な人々が往来を行き来しています。
 ここで《幸運》のロールを行い、成功した場合は、それらの群集の中にまだ暑いこの時期だというのに、正装をした五十目を目撃することとなります。
 群集の中である為、《追跡》を行なう場合は、-20〜40%の修正が加わります。探索者の行動や、待ち伏せ具合等を合わせて、複数回の遭遇においての対応を鑑みて、修正を増減させてください。
 成功した場合、五十目は人気の無い方面へと進んでいきますが、昼である場合は、上野方面へと消えていきます。そうでない場合は、人気の無い路地へと入り込んでいきます。『■あばら屋、ミ=ゴの隠れ家』を参照してください。

 探索者達が上野〜浅草で情報収集を行なった場合、その最中に幾人かが頭痛を訴えたり、地震を感じたりします。
 探索者もPOW×1のロールに成功すると、「揺れた気がします」。ただ、多くの人が、震災の経験からまだそんな気がするのだろう、と言います。
 同様に、POW12との対抗ロールに失敗すると、『クトーニアンの卵』からの電波を受信してしまい、1/1D3の正気度を喪失するとともに、頭の中に子供が泣き叫ぶイメージが沸きます。

■情報収集:
 浅草、上野の辺りで情報収集を行なう場合、以下のような場所や人物に当たるのがよいでしょう。
 探索者のコミュニケーション手段に合わせて、各ロールを行なわせてください。

 □浅草公園の交番:
 浅草公園内には交番が存在し、常に警官が詰めています。
 彼らに話を聞くか、あるいは周辺の警察関係から情報を得ようとした場合は、以下のようなものを得ることができます。

 ・五十目らしい男はよく目撃する。公園に目的がある訳ではなく、通過する姿を目撃する。
 ・特にこれといって怪しい訳ではない。普通のサラリーマン風に見える。まだ暑いというのに正装なので、暑そうだ、ぐらいにしか思わない。
 ・浅草で特に変わった事件は無い。強いて挙げるなら、地震を感じる住人が多いが、体感できる地震は無い。
 ・一部の住民が、頭痛や、幻聴を訴えることがある。地下鉄工事のガス漏れとかと関係があるのではないか、とも言われている。

 □公園彷徨者たち:
 浅草、あるいは上野の辺りには、いわゆる公園彷徨者、浮浪者が多数居ます。この時期は震災の影響に加え、昭和2(1927)年の昭和金融恐慌と大正の狂騒は最早跡形も無く、不景気が進み、昭和4年には「大学は出たけれど」が流行語にもなりました。
 探索者の中に浮浪者が居るか、これらの地域で情報収集を行なおうと考えた場合、この公園彷徨者達に話を聞くことを考えるか、あるいはキーパーから示唆をしてもよいでしょう。
 これらの公園彷徨者からは以下のような情報を得ることができます。

 ・五十目らしい男をよく目撃する。何かを探しているようなそぶりで、上野から浅草の広範囲で見る。
 ・五十目のような男をあちこちで目撃する。まるで同じ男が複数いるようにも感じる。
 ・昼間はあちこちで見るが、日が落ちてからは浅草か、浅草方面に向かう姿をよく見る。
 ・赤ん坊の泣き声のような幻聴を訴える奴がたまに居る。
 ・地震を感じることがあるが、実際には揺れてない。震災の影響で、敏感になっているか、錯覚しやすくなっている。
 ・地下鉄工事は遅れているらしい。一部で化け物が出るとか言う噂が立っている。
 ・地下鉄工事の割りに、銃を持った一隊が地下坑道に入るのが目撃されている。

 □地下鉄について:
 工事が行なわれている区間は、浅草〜上野間で、着工は大正14(1925)年9月で、完成したのは昭和2(1926)年12月です。
 この浅草〜上野区間というのは、もっとも乗車を見込める、ということで決定したといわれています。
 日本発の地下鉄敷設工事であり、当初、東京の地盤はゆるい為、地下鉄など無理という話もありましたが、土質に問題はなく、心配されたほど水が出なかったこともあり、当初の工事ではあまり問題はありませんでした。
 しかし、工事を進めると工法や、トンネルの深度などから地盤が大きく崩壊したり、ガス管を破損、引火する事故を起こしたり、豪雨により掘り出した土砂が流れ出し道路を陥没させるなど、通行の妨げになること夥しい状態でした(まあ、何しろ街中で工事をしているのですから)。
 当然、近隣住民から苦情が殺到し、その対処にも追われたと言われています。

 シナリオの時期的には、昭和2年の晩夏なので工事はかなり完成に近い状態で、最後の一手の辺りでミ=ゴによる工事の妨害が発生しています。
 ミ=ゴたちは、五十目の協力により、『クトーニアンの卵』を発見したまではよいのですが、震災によって複雑に崩落した上に、孵化寸前の状態の為に、卵を安全にシベリアに送り返すことができず、孵化を待ってからその幼生をシベリアに送ることにしました。
 この為、卵が孵化するまでの間、ミ=ゴたちが卵を守る為に工事を妨害しているのです。

■地下坑:
 浅草側か、あるいは上野側かは流動的にキーパーが決めても問題ありませんが、地下鉄の工事現場となる地下抗です。
 現在、もう少し掘り進めば貫通、というところまで来ているのですが、工事に思わぬ妨害が入っており、滞っている状態です。
 ミ=ゴたちが工事を妨害しているわけですが、彼らは直接的に姿を現すのではなく、噴霧器に幻覚を起こす作用を持った薬品を詰めて使用することで、工事をある程度穏便に妨害しています(五十目からの要請と、事を荒立てると面倒が増える、という忠告を受けている為)。

□初回、シナリオの初期:
 シナリオの初期において、探索者達が工事現場に通りかかるか、PCBの関係で現場を見に行った場合等、地下抗から作業員達がトロッコを使って運び出されて来る場面に出くわします。
 現場は騒然としており、部外者である探索者達も見咎められることはありません。
 運び出された作業員達は、ものすごい力でもって引っかき傷や、噛み付かれた跡で血だらけになっており、口々に「化け物が」、「鬼が」とか呻いています。
 この光景を目撃した探索者は、0/1の正気度を喪失します。
 《医学》のロールに成功した場合、それらが人間か、それに近いものが引きこしたものだと気が付きます。
 同時に、『アイデア』ロールに成功すると、作業員達の手の爪が血だらけになり、剥がれているものすらあることに気が付きます。
 作業員たちはそのまま担架に乗せられて運ばれて行き、残った作業員や現場監督は呆然とそれを見送ります。
「まただ」と現場監督は呟き、「『鬼』・・・」と呻きます。
 ここではまだ探索者は基本的に部外者であり、外から眺める以外には特に出来ることはありません。強行した場合は、官憲に取り押さえられることになります。

□寺田と会見後:
 銀座で寺田、早川と会見した後、ともに地下抗の様子を見に行くこととなります。
 暗い坑道に、工事用に敷設された路線の上を、トロッコがゆっくりと走っていきます。
 坑道には工事用の暗い電灯の他、トロッコの先に取り付けられたランプのみが明かりとなります。
 トロッコは本来は土砂の運搬用のものですが、早川、寺田と現場監督、探索者達、そして陸軍払い下げの三十式歩兵銃で武装した作業員が4人乗り込んでいます。
 現場監督の指揮の下、件の鬼が出現する箇所の手前でトロッコは止められ、作業員達が現場へと踏み込んでいきます。
 寺田も後に続こうとしますが、早川と現場監督に止められてしまいます。
 探索者は止められはしませんが、作業員達の最後尾よりもさらに後ろを、現場監督とともに付いて行くことになります(前に出ようとすると、現場監督から止められます)。
 坑道は暗いとともに、霧のような靄が掛かっています。探索者達が進んでいると、前方から発砲音と、悲鳴、激しく動き回る気配が伝わってきます。
 現場監督は驚いてその場に立ち尽くしますが、探索者達がさらに進もうとした場合は、CON14との対抗ロールを行なってください。成功した場合は、一瞬くらっと来ますが、視界が悪くなった他の影響は特に受けません。失敗した場合は、下記の描写のような光景を目撃することとなります。

 銃を持った作業員の一人が悲鳴をあげた。何者かに足元をすくわれたのだ。
 地中から突き出された、橙色の光を放つ子供の腕のような、しかし剛毛に覆われた極端に長い腕に足を掴まれたのだった。
 そしてその腕が地中から伸び、小鬼が全身を現した。
 怒号と悲鳴が交わされ、時折銃声が響き、作業員達は小鬼たちに掻き毟られ、齧られる。
 作業員達は必死に小鬼達を払い除けているが、小鬼達は次々に沸いてくる…

※CONの対抗ロールに成功している場合、この光景は作業員同士がお互いを掻き毟りあっている光景に見えます。
 そして、靄の向うに何かが蠢いているのを目撃します。

 CONの対抗ロールに失敗している場合、この異様な光景を目撃し1/1D6の正気度を喪失します。成功している場合は、幻覚を見て狂気に駆られている様を目撃する為、0/1D3の正気度を喪失します。
 しばらくすると作業員達は動けなくなるか、撤退を開始します。現場監督と探索者、まだ動ける作業員達は、倒れている作業を運び出し、トロッコまで戻ります。

「この昭和の新時代に鬼だと」と、早川は呟きます。
 探索者が前回と同じように、《医学》と《アイデア》ロールによって、それらの傷が作業員達がお互いを掻き毟って出来た傷であることに気付かないか、指摘をしない場合は、寺田から「これらの傷は、お互いを傷つけあって出来たものです。おそらく、集団幻覚か何かですな」と言います。
 これに対して、早川は「鬼を見た作業員は多いし数、けが人まで出ている。実際に鉄砲で鬼を撃ち殺したことまである」と反論しますが、寺田が「では、鬼の死骸は存在しますか?」と冷静に聞き返します。

キーパーへ:
 この寺田の指摘は正しくもあり、間違っています。
 坑道内ではミ=ゴ達がクトーニアンの卵を守っているのですが、その為に彼らは冷気の噴霧器を改良した、幻覚を引き起こす霧を噴射する噴霧器を備え、それを使って坑道に侵入するものに対して幻覚を見せ、撃退しているのです。
 また、こちらのルートに進んだ場合、ミ=ゴを強襲し、戦闘する可能性が高いので、寺田が西村に協力を仰ぐかはキーパーの判断で決めてください。

「まあ、鬼であれ、集団幻覚であれ、工事上の問題であることには違いはありませんがね」と、黙った早川に対して寺田は言うと、「何か策はありませんか?」と早川は聞き返します。
「人間だからこそ、幻覚を見たり、鬼に襲われたりするのです。
 人間でない、人間を使う。つまり、人造人間です」と、寺田は得意げに言い放ちます。
「大阪で行なわれた工業博覧会に出品された『学天則』を、この工事に使うことです。
 幸い、私は西村さんとは面識があります」
 早川はこの突飛なアイデアに面食らった様子ですが、この尋常でない状況を打破するために覚悟を決めて、寺田に全てを任せると頷きます。
 この場で、寺田は『学天則』の産みの親、西村真琴にこの工事に学天則を使うことを説明、依頼することを請け負います。

■あばら屋、ミ=ゴの隠れ家:
(このパートはある程度探索が進んでから行なってください)
 単純な《追跡》ロールだけでなく、彼らの行動パターンをある程度分析した上で、浅草が怪しいと当たりをつけた上で 探索者が五十目の尾行に成功した場合、彼が人気の無いバラック小屋の並ぶ辺りへ入っていくのを目撃します。
 狭い通りではあるものの、震災前の十二階下のような細い路地が入り乱れ、十字路だかそれ以上だか分からないような入り組んだ路地の一つから、影のようにもう一人五十目が現れ、探索者の前を歩いている五十目に合流します。

 狭い路地を行く五十目の脇の路地から、人影が現れた。
 それは、寸分も違うところが無い、五十目自身だった!
 何から何までそっくりであり、鏡からもう一人が出てきたような、おかしな錯覚を起こす光景だった。
 着ているものは言うに及ばず、動作に至るまでがそっくりであり、故障した活動写真さながらに寸分の狂いも無く、同じずれを持って動く五十目達だった。

 この光景を目撃した探索者は、1/1D4の正気度を失います。
 そして、さらに後に一人を加えて、3人になった彼は、バラック街の奥にある人気の無いバラック小屋へ入っていきます。
 時間差で同じ人物が全く同じようにその家に入る光景は、悪夢以外に何者でもありません。

 このバラック小屋はミ=ゴの浅草における活動拠点であり、五十目の脳缶詰が保管されている場所でもあります。
 夜間にはミ=ゴが3体戻ってきますが、昼間の間は無人(?)となります。
 バラックの玄関には、簡単な南京錠が掛かっています。
《鍵開け》の+20%のロールに成功するか、装甲1、耐久力10の物体として破壊すると、扉を開けて中に入ることができます。

 バラックの中は入ってすぐが軽く廊下のようなもので、二部屋が並んでいるだけの構成です。
 各部屋の中は以下のような構成になっています(部屋Aが手前、部屋Bが奥になります)。

 部屋A:
 こちらの部屋は、ミ=ゴの皮の装着、格納部屋です。
 部屋の中央部には直径1m程度、高さ30Cm程度の丸い機械と、それに付属するコンソールが設置されています。奥にはロッカーのようにも見える装置が置かれており、それらは全て閉じられています。
 夜、ミ=ゴがいる時間帯に忍び込んだ場合は、自動的にミ=ゴと遭遇します。探索者が有無を言わさず襲い掛かった場合、当然ですが戦闘となります。
 もしも、探索者が交渉を望んだ場合は、彼らはぶんぶんとうなる発声装置を使って交渉に応じます(まあ、その前にミ=ゴを目撃したことによる正気度ロールの結果も重要ですが)。

 それは背丈が5尺もある、桃色の甲殻類のようだった。胴体には馬鹿でかい背びれか、羽が生えており、関節肢が複数組付いている。
 甲殻類ならば頭のある箇所には、非常に短い触手に覆われた渦巻状の楕円体が付いていた。
 それがときどき奇妙な振動音を発し、彼らが会話か、それに近いことをしているのだということが分かる。

 □戦闘を仕掛けた場合:
  ミ=ゴA STR10 CON10 SIZ8 DEX16 POW14 DB+0 耐久力9 噴霧器装備
  ミ=ゴB STR11 CON14 SIZ12 DEX11 POW12 DB+0 耐久力13
  ミ=ゴC STR11 CON11 SIZ12 DEX15 POW10 DB+0 耐久力12 バイオ装甲装備
  武器:
   カニバサミ 30% 1D6+組み付き
   噴霧器   80% CON14の対抗ロールに失敗すると、2D10ラウンドの間幻覚を見る
  装甲:
   なし。但し、貫通する武器は最低限のダメージになる。
   ミ=ゴCはバイオ装甲を装備し、殴打、高温、低温、電撃に対して8点の装甲を持つ。

 □交渉を望んだ場合:
  ミ=ゴ側の要求としては、地下鉄工事を1週間遅らせ、その間は地下に誰も潜らないこと。そうすれば、用事は済む、ということを探索者に伝えます。
  ただ、その理由については教えてくれません。
  また、五十目について訊ねた場合は、彼は今、このバラックの中に居る、と言います。探索者が望めば、脳缶詰とそれに付随する装置が隣の部屋から運ばれてきます。
 (五十目との会話については、部屋Bを参照してください)。

 部屋の中央に置かれている奇妙な機械は、皮を電気的に圧着させる機械であり、皮を被っていない状態でこの機械の上に乗って作動させた場合、1D6のダメージを受けるとともに、CON15の対抗ロールに失敗すると電気ショックにより気絶します。
 部屋の脇に置かれているロッカーのような装置の中には、『予備の五十目のパーツ』が格納されています。この予備パーツ、本物そっくりの五十目の手足、皮、顔、服を目撃した場合、1/1D4の正気度を失います。

 部屋B:
 こちらの部屋はミ=ゴたちの待機部屋であり、五十目の脳缶詰が置かれている部屋です。
 天井からビニールで出来た網のようなものが3つぶら下がっており(この網のようなものは、ミ=ゴの休息用のハンモックです)、部屋の隅のテーブルの上には、丈夫そうなバケツ、あるいは大きな缶詰、小さなドラム缶とも言えるようなものが設置されており、その脇に丸メガネを掛けたように見える装置と、スピーカーとマイクのような装置が置かれ、バケツとコードで繋がっています。
 探索者が部屋の家捜しを開始すると、この装置が動作を始め、機械的な声がスピーカーのような装置から発せられます。
「おや、人間を見るのは久しぶりだ」
「ん、そこに居るのは、PC@じゃないか」
 この発声に合わせて各装置が明滅します。《アイデア》、あるいは《電機修理》+20%のロールに成功した場合、メガネのような装置がこちらを見ていること、スピーカーから発声されていることを認識します。
 五十目は自身の境遇を理解している為、探索者達に対して自分は元人間で、訳あって今の脳缶詰になっていることを説明します。もちろん、PC@、Aのことも覚えており、彼らしか知らないようなこともはっきりと言うことが出来ます(シベリアの出来事とか、五十目家のこととか)。
 五十目が脳缶詰になっている事実に気が付いた探索者は、PC@、咲子は1/1D6、PCAは1/1D4、それ以外の探索者は1/1D2の正気度を失います。

 五十目からは、脳缶詰の境遇の説明を受けたあとは、一通り、シベリアで特務の手伝いで『クトーニアンの卵』を掘り出したこと、日本への移送までを手伝ったが、その後特務に消されそうになったので、卵を奪って逃げたこと、浅草辺りに潜伏中に震災が起こり、卵が行方知れずになったこと、特務に襲われて動けなくなったところでミ=ゴたちに捕まり、いろいろと話しているうちに、脳缶詰になって安全を保証してくれることを約束してくれた為、脳缶詰になったことと、事件の経緯を話してくれます(脳缶詰にならないと死ぬぐらいの怪我だったことも)。
 ミ=ゴたちの目的についても、彼らは卵をシベリアに移送することだったが、卵の孵化が近いことを知り、移送を諦めて孵化後に幼生をシベリアに運ぶことにした、ということを教えてくれます。
 また、特務については五十目も実は詳しいことは知りません。彼が知っているのは、陸軍管轄の組織であり、単純な軍組織ではなく、非公式な結社の後ろ盾の元、いわゆる『神話的な事案』に対しての対処、解決に当たる組織である、ということだけです。ただ、目的の為には手段を選ばない、特に公益の為に活動している組織ではないことは確かであると明言します。

 五十目自身はミ=ゴに協力する立場、というよりも最早彼らの仲間です。探索者達が説得してミ=ゴに立ち向かうということも悪くないですが、五十目としては脳缶詰から元に戻れないことを勘案すると、探索者達とミ=ゴが争わないよう探索者に事情を話し、説得する方向にするのが良いでしょう。五十目は、探索者とミ=ゴが交渉する仲立ちに立ってくれます。
 また、咲子が居る場合には、「俺は見ての通りだ。死んだものだと思ってくれ」と言います(咲子はショックのあまり声も出ない状態です。探索者に促されて人形のようにかくかくうなずくだけです)。

咲子編

※シナリオにおいて、さらにキーパーの負荷を上げる存在であると判断した場合、咲子は導入部以外は無理に登場させる必要はありません。

 咲子は帝都内を以下のようなスケジュールで動きます。
 先導役であるPCAが誘導しない場合、あるいは忙しいからと親戚に押し付けた場合等、咲子は特にスケジュールを変えることはありません。

■上京初日:
 上野でPCAと合流、五十目を目撃した後は、工事による通行妨害もあって親戚の家に送り届けた後、特に動きはありません。
 しかし、この五十目を目撃したことは咲子にとって、帝都で彼を探す動機となります。

キーパーへ:
 彼女は兄をとても慕っていることに加え、親族からは脱走の疑いを匂わされている為、その疑念を晴らす目的もあります。
 お嬢様風ではありますが、不言実行の性質であり、そして行動力もあるので探索者の誘導に使うのもよいでしょう。

■上京二日目:
 この日、彼女はまずは桜嶺女学院へ挨拶に赴くことになります。PCAの手が空いているか付き合う気ならPCAが付き添いとなります。
 最初は理事クラスの偉い人への挨拶となりますが、その後は入学後に寝泊りすることとなる寄宿舎へ案内され、舎監の『真田幸』への挨拶となり、その後は真田に連れられて軽く校内の案内を受けます。
 この桜嶺女学院の訪問は午前中には終わり、以降の予定は特にないのですが、袴姿の咲子を見た真田から、「少し早いかもしれませんが、制服を買って置くのもよいかもしれませんね」と言われ、銀座辺りの品の良い店を紹介されることとなります。
(大正末期辺りから、こういった女学校では制服、セーラー服を導入するところが増え、いわゆるハイカラさんスタイルは廃れていくこととなります)

 特に無目的である為、真田の勧めに従って咲子は銀座を訪れることにします(もちろん、帝都で最も高級、お洒落な街銀座をぶらぶらする、というのは咲子にとっては上京したらやってみたいことの一つです)。
 銀ブラ、とまでは行きませんが、真田に教えられた服飾店で制服のサイズを測ったり、そこらへんをうろついていると、またも咲子が固まります。
 彼女は、今度は間違いなく、はっきりと五十目を目撃します。
 しばし呆然とした後、いきなり駆け出し、人ごみを掻き分け、道路に出たところで咲子の視線を追うと、電車に乗って遠ざかる五十目を目撃することとなります。

■上京三日目:
 この日は、帝都にいる親戚(基本的には遠い親戚です)に顔見せ、挨拶回りとなります。
 前日同様、PCAの手が空いているか付き合う気ならPCAが付き添いとなります(一応、親戚筋も同行しますが)。

 この日は特に事件も無く過ぎていきますが、前日以上に咲子は黙り込み、考え事に没頭しているように見えます。
 その途中、咲子の気が塞いでいる様なので気晴らしに浅草辺りに行くのはどうか、ということを親戚筋が言い出します。
 特に反対意見が無ければ、そのまま浅草に赴くこととなります。

 浅草では、咲子は努めて明るくするようにしていますが、《心理学》か、《アイデア》のロールに成功した場合は、それが表面上だけでやはり兄のことが気になって仕方ないことが分かります。
 《心理学》に成功した場合は、それに加えて、兄が脱走兵である可能性がある、ということがさらに塞ぎ込む原因となっていることに気が付きます。
 また、浅草では通常の浅草探索と同じく、謎の頭痛や、五十目を目撃する可能性があります(キーパーの判断で、咲子は自動的に気が付くことにしても問題ありません)。

■上京四日目以降:
 ここまでで、探索者達の咲子への扱いが悪い場合、彼女は探索者達のことをあまり信用せずこの日から単独での行動を開始します。
 そうでない場合は探索者と同行し、探索の補助を行ないます(連れていない場合、同様に単独で行動します)。

 咲子が単独で行動する場合、彼女は基本的に五十目の後を追う為、ミ=ゴに関わることになります。
 探索者が特に注意を払わない場合、彼女の行く末は以下のどれかになります。キーパーは探索者に合わせて決めてください(押しや引きにするのがよいでしょう)。

 1. ミ=ゴの探索を行い、まともな手掛かりを得られずに銀座、浅草、上野辺りをうろうろしているだけになる。
 2. 五十目の尾行に成功し、ミ=ゴの隠れ家を発見する。その後、隠れ家に乗り込む。この場合、さらに以下のパターンに。
  2-1. ミ=ゴが居ない状態で、脳缶詰となった五十目を発見し、持って逃げ、浅草辺りに潜伏する。しかし、打開策が無いので探索者を頼ってくる。
  2-2. ミ=ゴに遭遇する。この場合、さらに以下のパターンに分かれます。
   2-2-1. ミ=ゴに遭遇した結果、逃げ出し、対応策を練るものの、打開策が無いので探索者を頼ってくる。
   2-2-2. ミ=ゴに遭遇し、無謀にも戦闘を挑む。結果、脳缶詰になり、五十目の隣に並ぶことになる。
 3. 五十目、ミ=ゴ周りの探索をしているうちに、武川の特務とかち合う。この場合、さらに以下のパターンに。
  3-1. 武川の特務とやりあい、逃亡する。結局、打開策は無いので、探索者を頼ってくる。
  3-2. 武川に誘拐され、探索者の交渉のダシにされる。あるいはミ=ゴとの交渉に使われる。
    (ミ=ゴとの交渉に使われた場合は意味は無いので、救出のタイミングによって2-2-2.同様、脳缶詰になる)

武川編

※シナリオにおいて、さらにキーパーの負荷を上げる存在であると判断した場合、武川は無理に登場させる必要はありません。

キーパーへ:
 武川の所属する特務、『平野機関』はクトーニアンの研究、可能ならばその応用(地震兵器的な)か、あるいは彼らと交渉することでなんらかの利益を得ることが目的でした。
 しかし、シベリアから日本軍は撤退、卵は失われるという失態から平野機関自体の存在が危ぶまれることのあり、これ以上の追跡は無用、というのが組織内部での無言の認識となっていますが、武川は自身の失態を取り戻すために、独自に探索を進めている状態です。
 この為、人数を駆り出して来るのは、よほどの事態か、自信があるときに限り、基本は特務であることをチラつかせながらの、威圧的な交渉となります。

■武川、特務部隊の行動:序盤
 この段階での武川、特務の動きは初動調査であり、五十目の探索、尾行及び、接触を持った人間の洗い出し、そして咲子の上京理由等の調査となります。
 この為、直接的に武川が探索者の前に現れることはありませんが、聞き込みや、自宅に戻る等の行動で、探索者自身が調査の対象となっている、ということを知る可能性があります。
 この場合、探索者にコミュニケーション系のロールによって探索者を調査しているのが「軍人らしい」「五十目についても聞かれた」という情報を得ることができます。
 これによって、探索者が尾行者達を見つけようとする可能性がありますが、この場合は、「彼らは直接的に探索者に関わらないようにしているようだ」ということを告げ、今の時点ではそれが難しいことを教えてください。
 探索者がこの調査者、尾行者に気が付いた場合、この調査は、咲子や、その周辺に及んでいることも分かります。

 キーパーの判断で、この段階では探索者が《幸運》ロールに失敗した場合に、20%の確率で1D2人の特務隊員に遭遇するとして問題ありません。

■武川、特務部隊の行動:中盤
 シナリオがある程度進むと、特務の調査も進み、探索者達が自分達と同様に五十目を追っていることや、咲子が単純に女学校の為に上京してきたことや、五十目の妹であることを掴みます。
 ただ、まだこの段階でも特務は直接的に姿を現すことはありません。探索者の方からちょっかいを掛けたり、あるいはPC@の関連で軍部から情報を引き出す等の行動を取った場合は、相手が特務であることを教えてください。
 ただし、これは諸刃の刃であり、特務にも探索者にそれが知られたことが伝わります。
 この場合、特務が直接的な行動に出る可能性がありますが、それまでの探索者の対応によって手段が荒いか、柔らかいかを決めてください。
 当然ですが特務は基本的にクレバーに動きます。五十目=ミ=ゴのように何も考えていない、ということは無く、襲い掛かる場合は最も戦闘力の無いものから、可能であれば単独で、というように隠密戦闘を開始します。
(いきなりそれをやると探索者側が大いに油断している可能性があるので、可能であれば犠牲者NPCをでっち上げる等がよいでしょう)

 キーパーの判断で、この段階では探索者が《幸運》ロールに失敗した場合に、30%の確率で1D3人の特務隊員に遭遇するとして問題ありません。

■武川、特務部隊の行動:終盤
 特務とすでにやりあっている状況であっても、探索者が五十目を発見した場合(ミ=ゴの隠れ家に侵入し、脳缶詰を発見した)、特務側は一旦戦闘を中止し、探索者へ交渉を行ないます。
 いまさら感はありますが、特務の指揮者として武川源が探索者と交渉に直接出てきます。
 武川はここに至り、特務であるということを明かし、その権威を持って威圧的な交渉を掛けます。
 彼は「五十目は脱走兵であり、特務の機密に関わるものを持ち逃げした」と探索者に告げます。なお、持ち逃げしたものについては、「機密に属することなので明かせない」と言います。
 ただ、探索者の方からクトーニアンの卵について言及するか、匂わせる発言をした場合は、探索者側がそこまで情報を掴んでいることを察して(誤解して)、積極的に情報交換を行ないます(そして、この場合は探索者が危険人物のリストに入ることになる訳ですが)。
 武川は五十目について探索者の持っている情報を全て明かすこと、この件から手を引き、今後一切関わらない、口外しないことを要求します。
 要求を呑まない場合、探索者自身だけでなく、その周辺にまで影響が及ぶ可能性があるということを暗に匂わせます。
 なお、武川からは特に情報を引き出すことは出来ません(キーパーの判断で、武川=特務の動きや目的をある程度明かすのは可能です)。

 武川の以降動きは交渉の結果如何となります。短絡的に特務を敵に回すか、あるいは決断に時間をもらうとかで時間稼ぎをする、あるいは五十目の脳缶詰と相談する、脳缶詰だけ持ち出してミ=ゴに武川をぶつける等、様々な動きになると思われます。
 キーパーは探索者の行動や意思を考えて、武川の動きを決定してください。
 あるいは、咲子の行動によっては人質になっていたりするので、そこら勘案するのを忘れないように気をつけてください。

■特務部隊隊員のデータ
 武川は6人の部下を持っています。彼らは基本的に武川=特務の為に働くと同時に、あまり自らものを考えないようにしています。
 基本的に武川の指示通りに動き、現場判断はナシ、作戦続行不能は撤退という行動基準です(ただ、現場判断が無いので、作戦続行不能の判断は誰がするのか、という状態にはなりますが…)。
 彼らは一律、下記のようなデータを持ちます。

STR 14 CON 13 SIZ 13
INT 10 POW 10 DEX 11
APP 10 EDU 12 SAN 40
耐久力 13 ダメージボーナス +1D4
技能:オカルト 50%、回避 32%、隠れる 50%、聞き耳 60%、クトゥルフ神話 7%、追跡 60%、目星 60%、サーベル 60%、拳銃 60%
武器:
 サーベル 60% 1D8+1+DB
 十四式自動拳銃 60% 1D8(1ラウンド3射、8発装填)
装甲:
 鎖帷子:1

終幕部

 探索者の行動、判断によるところが大きいですが、シナリオの結末は以下のどれかになる可能性が高いと思われます。
 ただ、ミ=ゴ、咲子、あるいは武川と協力するパターンについては記載しませんので、キーパーは探索者の行動に合わせて結末を変えてください。
 また、シナリオのメインとなるミ=ゴとの対応のみとなっているので、咲子、武川については任意に処理を行なってください。

ミ=ゴと交渉する

 五十目か、咲子を介してか、あるいは探索者が望んで隠れ家に居るミ=ゴとの交渉を望んだ場合、彼らは基本的に探索者の指定の場所へ、五十目の皮を被った状態で現れます。
(もしも、複数の五十目の同時目撃をしていない場合、この五十目を複数目撃したことで、1/1D4の正気度を失います)
 彼らは妙にくぐもった、蓄音機から聞こえるような声で話します。特に不審なそぶりはありませんが、探索者が敵対的な行動を取った場合は容赦はありません。

 ミ=ゴ側は基本的に工事を1週間停止し、その間は地下に誰も入らないことを要求します。
 彼らはその間に、クトーニアンの卵が孵化し、幼生をシベリアに返すことを目的としています。必要であれば、ある程度探索者にこの目的を教えて、理解を求めることも問題ありません(ただ、クトーニアンの幼生についてはあまり詳細には教えてくれません)。
 探索者の要求については、上記の条件が呑まれるのであれば、大方、ミ=ゴ側は譲歩します(彼らにとっては、クトーニアンの幼生の安全が第一なのです)。
 五十目についても、探索者が引渡しを要求すれば、あっさりと渡してくれます。

 交渉の結果、工事を止めることになった場合、探索者達は関係者を説得に回る必要があります。
 この場合、探索者の説得のスタイルに合わせて、《説得》《信用》《経理》等で関係各所を押さえてください。
 この関係各所の説得に失敗した場合、キーパーの判断で工事が再開され、再び地下での事故が起こるうえに、積極的にミ=ゴが反撃に出ている状態となります。
 交渉が決裂すれば、必然的にミ=ゴは探索者他、人間を敵として認識し、積極的に排除に出るようになります。

 交渉、関係各所への説得が成功した場合、1週間の工事休止期間があり、その間に小さな地震が浅草〜上野で発生し、その夜に謎の発光体が工事現場の周辺住民に目撃されます。
 その後は、一切の事故や不振な事件もなく、工事は滞りなく進みます。

ミ=ゴの隠れ家を急襲する

 探索者の判断によっては、ミ=ゴの隠れ家を装備万端で攻撃する可能性もあるでしょう。
 その場合は、単純に隠れ家のミ=ゴ3体との戦闘となります。

 この後、五十目をどうするか、という問題もありますが、キーパーの判断で戦闘に巻き込まれて脳缶詰は破損してしまった、ということにしても問題ありません。
 この場合、脳缶詰が五十目だと気が付いている場合、1/1D4の正気度を喪失します。
 この襲撃によって、ミ=ゴは3体まで減少しますが、彼らは卵死守の為、地下に詰めっぱなしになります。
 地下のミ=ゴをどうするかは探索者次第で(そもそも、気が付いていない可能性もありますが)、放っておいた場合は、地下での闘争は激化し、約1週間後に小さな地震が発生し、謎の発光体を近隣住民が目撃した後は、怪現象もぴたりと止み、工事は滞りなく進むようになります。

地下坑のミ=ゴと対峙する

 ミ=ゴとの対決は、寺田に協力を取り付けているかによって大きく異なります。
(まあ、そもそもミ=ゴと対決にまで至るか、という問題もこのシナリオにはありますが…)。

■寺田の協力を取り付けていない:
 寺田から、人造人間『学天則』を使う提案を受けていない場合、探索者達は地下鉄工事の地下坑道をトロッコに乗って進み、ミ=ゴと直接対峙することになります。
 この際、トロッコには、三十式歩兵銃で武装した作業が二人随行し、探索者達の援護に当たります。随行の作業員は、全てのロールに対して50%で成功することとし、キーパーは判定を行なってください。
 事故が起こっている箇所に来たら、まずCON14の対抗ロールが必要になります。成功した場合は、濃い靄が掛かっているように見えるだけですが、失敗した場合は、『鬼』の幻覚を見始めます。
 この幻覚は2D10ラウンドの間継続し、その間は幻の『鬼』と格闘することになります。味方の探索者を含め、ランダムな相手に攻撃を仕掛けることになります。
 随行の作業員は直接の戦闘には参加しませんが、ライフル銃で援護射撃を行ないます。そしてもちろん、幻覚に巻き込まれた場合、後ろから銃弾が飛んでくることになります(これが厳しい場合、キーパーは幻覚の範囲から外れているか、援護自体が望めないことにしてもよいでしょう)。
 探索者のCON対抗ロールの結果に関わらず、ミ=ゴ達は孵化間近の卵の防衛の為、積極的に打って出てきます。

探索者が幻覚を見ている場合:
 前に見たときと同じように、地面から次々と小鬼たちが沸いてくる。
 畸形じみた歪んだ長い腕、短い足の矮躯に、類人猿にも似た唇をめくり上げた口の端には、小鬼に相応しい牙がはみ出している。
 そして、全く同じように憎悪を剥き出しに、きーきーと耳障りな声を上げ、鋭い爪を振り回しながら迫ってきた。

探索者が幻覚を見ていない場合:
 濃い靄の中から、次々とキノコの化け物のようなものが姿を現す。
 そいつらは、背丈が5、6尺はあるピンク色のキノコのようなものだが、その体は甲殻類のようでもあり、胴体にはわさわさと細い足が生えており、背中には馬鹿でかい背びれか、羽のようなものが生えている。
 時折、頭部の色が変わり、低い唸るような音で会話を交わしているようだった。
 しかも、性質の悪いことに、奴らは奇妙な機械で武装しており、明らかに殺る気だった。

■寺田の協力を取り付けている:
 寺田から、人造人間『学天則』を使う提案を受けている場合、早々に大阪から西村真琴と、『学天則』がやってきます。
 西村は、「学天則をお役に立てろ、と寺田先生に促されましたからな、意気込んでやってきましたよ」と言い、やる気は十分です。
 早川も当初はこの人物と『学天則』を信用してよいものか悩んでいるように見えますが、午後の作戦会議の頃にはすっかりと打ち解け、西村をすっかり信用します。
 午後の作戦会議には探索者も参加することになります。
 その内容はこの工事に『学天則』が駆り出された理由の説明と、『学天則』が担う役割がメインとなります。
 作戦会議、とは言いますが非常にシンプルに、今、鬼が出る区間、人で掘ろうとしている箇所を、『学天則』を使って穴を掘り、ダイナマイトを仕掛けて爆破する、というものです。

 工事現場で組み立てられた『学天則』は、以下のようなものです。

「この人造人間は、全身が金色に輝く金属製の巨人である。人間に似ているかといえば、下半身はまったく似ていない。彼の下半身は車輪のついた箱である。この箱に蓄電装置と圧搾空気室、ならびに手足を作動させる筋肉の役を果たす無数のゴム管の統合部などが収められている。
 しかし、上半身はまさに中世の騎士を思わせる凛々しさだ。頭部は人間のほぼ三倍、手は四倍も大きい。この巨人を完全に組み立てると、高さが九尺半に達する。
(中略)
 まず、額から目にかけては、白い肌のヨーロッパ人だ。くちびると鼻は、特徴あるアフリカ黒人のそれ。頬と耳は黄色いアジア人に似せて、インド人を象徴するために眉間に赤い点を打った。そして髪の結い方がインディアンである。」
──────── 荒俣宏 『帝都物語』より

『学天則』を見た探索者は、0/1D2の正気度を喪失します(大正時代人から見れば、かなり異様なものであるので)。

 組み上げが終わった『学天則』は、今回の工事の為に、背中から遠隔操作用の配線が、下半身にトロッコが、腕にはドリル、鶴嘴の工事用の装備がされています。
 遠隔操作用の操作盤を何度か試し、それに応えて『学天則』が動くさまを確かめると、「よし」と西村は頷きます。
 それを確認した早川によって、作戦の開始が告げられ、『学天則』を載せたトロッコが、前進を開始し、50メートルほどの距離を置いて、西村、寺田、早川と探索者を載せたトロッコが発進します。
 問題の地点が近づくと、また例の靄が出始め、薄暗い坑道の中を学天則を載せたトロッコが進み、いつもなら鬼が出る地点を通過しても、『学天則』は時折蒸気を上げながら、問題なく進んでいきます。
 50m程度の距離を置いて、双眼鏡でその様子を観察しながら、西村は『学天則』を操作し、より濃くなった靄の中で、『学天則』はダイナマイトを仕掛ける為の穴を掘り始めます。
 穴を掘る音、『学天則』の出す蒸気の音が、坑道特有の低い轟きとなって探索者達のトロッコまで届き、それがしばらく続きます。
「順調だ」
 誰ともなく呟いた次の瞬間、靄の中から大きな甲殻類のハサミのようなものが出現し、学天則の攻撃を始めます。
 その場に居る全員が何事かと色めく中、靄の中から浮かび上がるようにそのハサミの持ち主が姿を現します。

 そいつは、背丈が5、6尺はある、甲殻類が立ち上がっているようだった。胴体には腹脚と思しきものが数対付いており、背中には馬鹿でかい背びれか、羽のようなものが生えている。
 甲殻類の頭部に当たる場所には、短い触手に覆われたキノコのような楕円形が渦を巻いていた。
 靄の中から、同じような奴らが次々と姿を現す。性質の悪いことに、奴らは奇妙な機械で武装しており、殺傷能力の高い武器を備えているものが混じっているようだった。

 距離を取っている為、その場にいる全員が幻覚の影響を受けずに、ミ=ゴを直接目撃し、0/1D6の正気度を喪失する可能性があります。
 ミ=ゴ達を見た西村、寺田、早川は動揺しますが、「このままでは…」と呟く早川に対して、「せめて、爆破ができれば」と寺田が応じ、西村は動揺しつつも『学天則』の操作を続けます。
 ミ=ゴ達の集中攻撃の中、表情も変えずに(人造人間なので当然なのですが)、血の代わりに蒸気を噴出しつつ、平然と作業を続ける『学天則』の姿は異様であり、いくら人間を模したものとは言え、それが作り物であり、機械と言う底知れぬ闇、近代がもたらす闇を見ることになります。この異様な光景を目撃した探索者は、《アイデア》ロールを行い、成功した場合は、0/1D3の正気度を喪失します。
 爆破用の穴を掘り終え、ダイナマイトを設置と同時に、ミ=ゴの一撃により『学天則』の頭の半分が吹っ飛び、大きな放電が起こります。
 しかし、西村は振り返るとともに、「爆破を!」と叫びます。早川が「それでは学天則が」と言いますが、「構わない、早く!」と促します(西村は、『学天則』が無機質な存在であることに気が付いています)。
 西村の決意を見た早川が、導火線の点火スイッチを押し、轟音とともに大量の土砂が辺りに飛び散ります。《幸運》のロールに失敗した場合、土砂だけでなく大きめの石が当たってしまい、1D6のダメージを被ります。
 轟音が収まり、パラパラと砂が落ちる中、ダイナマイトの爆風はその場に掛かっていた靄を吹き飛ばします。
 そして、どうやったか分かりませんが、ミ=ゴ達はぼろぼろながらも3体生き残っており、彼らが居た土壁は吹っ飛んでおり、その後ろに空間があることが分かります。ミ=ゴ達はまだ、そこを守ろうとしているのです。

■地下抗のミ=ゴ:
 一応、ミ=ゴFがリーダー格となりますが、彼が倒れてもミ=ゴ達は撤退もしなければ、動揺もしません。基本的には殲滅戦となります。
(キーパーが厳しい、と感じた場合は、ミ=ゴFが一際体格がよく、リーダーのようだ、と探索者に教え、彼を倒した時点でミ=ゴ達が撤退することにしても構いません)

 西村の協力を得ている場合、『学天則』のダイナマイト爆破によりミ=ゴの数は半減し、生き残りはミ=ゴC、E、Fとなり、耐久力も半減しています。

 □地下坑道のミ=ゴ:
  ミ=ゴA STR10 CON10 SIZ8 DEX16 POW14 DB+0 耐久力9 噴霧器装備(冷気)
  ミ=ゴB STR11 CON11 SIZ10 DEX11 POW12 DB+0 耐久力11
  ミ=ゴC STR14 CON11 SIZ15 DEX15 POW10 DB+1D4 耐久力13 バイオ装甲装備
  ミ=ゴD STR13 CON12 SIZ13 DEX16 POW14 DB+1D4 耐久力13
  ミ=ゴE STR12 CON14 SIZ11 DEX11 POW12 DB+0 耐久力13
  ミ=ゴF STR15 CON13 SIZ16 DEX14 POW13 DB+1D4 耐久力16 噴霧器装備(幻覚)
  武器:
   カニバサミ   30% 1D6+組み付き
   噴霧器(幻覚) 80% CON14の対抗ロールに失敗すると、2D10ラウンドの間幻覚を見る
   噴霧器(冷気) 80% 1D10の寒気   装甲:
   なし。但し、貫通する武器は最低限のダメージになる。
   ミ=ゴCはバイオ装甲を装備し、殴打、高温、低温、電撃に対して8点の装甲を持つ。
  正気度喪失:
   ミ=ゴを見て失う正気度は0/1D6。

■ミ=ゴ達が守ろうとしたもの:
 ミ=ゴを退けた場合、その後ろに空間があることに気が付きます。
 その空洞へ探索者が入ると、その中央部に晶洞石のようなもので出来た『卵』と形容する以外に無いものがあり、探索者達の目の前でその卵にひびが入り、孵化を開始します。
 割れた卵から、大きなミミズのようなものがのたくって出て、それと同時に探索者達は軽い頭痛を感じます。POW×1のロールに成功した場合、何故か親を探し求める子供のイメージが頭に浮かびます。
(クトーニアンの孵化したばかりの幼生は、正気度の喪失を引き起こしません!)
 この孵化したばかりのクトーニアンの幼生の耐久力はわずか1ポイントであり、装甲も持たず、水でも火でも、あるいは踏み潰すだけでも死んでしまいます。
 このクトーニアンの幼生をどうするかは探索者次第ですが、これまでの調査によっては、この幼生が何なのか分からない場合もある為、その場合は寺田が引き取ることにしてもよいでしょう。

事件の後、正気度の報酬

 事件の結果は、探索者の動きによって大きく異なりますが、典型的なストーリーゴールとして事件のその後を示します。
 事件の推移と、関わったNPC達の行動、結果によってキーパーをその後を決めてください。

五十目のその後

 ミ=ゴへの対応や、あるいは探索者達の動きによって、五十目のその後は変わってきます。
 五十目をどうするかは探索者次第ですが、場合によって脳缶詰を引き受ける展開になることも有り得ます。その場合は、脳缶詰の面倒の見方自体は五十目自身が知っているので、特に問題はありませんが、咲子への説明や、あるいはさらにその後については、探索者達に決めさせるのがよいでしょう。
 ただ、五十目の意思で脳缶詰になっていることもあり、ミ=ゴ達に同行する、探索者達には連絡手段を残す、というのがよいかもしれません。
 探索者の元に五十目の脳缶詰が残った場合は、彼の世話をしつつ、その知識(主に《クトゥルフ神話》)に頼るようにすればよいでしょう。

咲子のその後

 咲子が事件にどれほど関わるかはキーパー次第ですが、事件で大きな傷(精神的なものを含め)でも負わない限り、彼女は表面上は平静を装い、滞在期間が過ぎれば秋田の実家へ帰っていきます。
 そして、その後、また帝都に桜嶺女学院の生徒として戻ってきます。
 この事件が彼女に与える影響は非常に大きく、桜嶺女学院に戻ってきた咲子は女学生らしからぬ勉学に励むとともに、得意の長刀にも磨きを掛けて、明らかに探索者らしい技能を磨いていることが見て取れます。
 もしも、探索者達が五十目の脳缶詰を預かっている場合、たまに面会に訪れるとともに、先輩として探索者達から話を聞こうとするなど、危ない道に入り込む気が満々となります。

武川のその後

 武川自身がこの事件の中で死亡するか、あるいは行方不明等になっている可能性が高いですが、生き残っている場合は以下のようになります。
 この事件でクトーニアンの卵の奪還に失敗している場合、帝都での無許可の作戦行動に加え、あたら部下を失った無能な指揮官として『平野機関』の内部で処断されます(つまり、探索者の前には二度と姿を現しません)。
 成功した場合は、無許可での作戦行動を不問に付され、通常任務に復帰することとなります。探索者達と協力していない場合は、その脅威の度合いに応じて追撃を掛けるか、脅しを掛けるか、放っておくかが決まります。
 協力している場合は、積極的に武川の方から関わってくることはありませんが、軍部のしかもその暗部とも言える場所へのコネが出来たことになるので、武川を半ば強請るようなことになりますが情報源や協力者として使えるでしょう。
(あるいは、武川の方から極秘の依頼等があってもよいかもしれません)

学天則のその後

 学天則はその翌年、昭和3(1928)年の昭和天皇即位記念、大礼記念京都博覧会に出展されます。
 西村が帝都へ運んだのはプロトタイプであり、その後の期間に再度、学天則の組み上げを行なったのでした。
 博覧会の後も、各地の博覧会を転々としますが、西村が望むような「天則(自然)に学ぶ」という学天則の概念、機械一辺倒ではなく、機械も自然の一部という考え、未来を啓蒙するようなものではなく、ただの見世物として扱われました。
 その後、ドイツへ売却されましたが、故障が相次ぎ、行方不明になりました。
 そして西村の方は、この後はもうロボットを作るなどもせず、盛んだった文筆活動も控え、保育、教育活動へと邁進して行きます。

地下鉄のその後

 上野〜浅草間の地下鉄は、その後も大小の事故があったものの、それら全てを乗り越えて昭和2年12月30日に開通を果たします。
 その後も、地下鉄工事は拡張が進められますが、主に資金繰りの問題で思うように進まなかったようですが、早川は、単純に地下鉄工事だけでなく、従来の鉄道路線の乗り入れや、定期券のサービス、路線近隣のデパート等との直結等で資金を得るなど、サービス面、経営的にも画期的な案を次々と実行しました。
 東京地下鉄道は昭和9(1934)年に新橋駅まで開通しましたが、昭和15(1940)年、他路線との権益、規格の問題、鉄道省の思惑等が絡まり、早川は地下鉄事業から去ることとなりました。
 その後、早川は故郷の山梨に帰り、昭和17(1942)年にひっそりと61歳で亡くなっています。

正気度の報酬

 事件を生き延びた探索者は以下の正気度を獲得します。

 ミ=ゴの対処(戦闘でも交渉でも可)に成功した探索者は、1D8点の正気度を獲得します。
 ミ=ゴを倒している場合は、追加で1D6点の正気度を獲得します。
 地下鉄工事を成功させている場合、追加で1点の正気度を追加で獲得します。
 咲子を助け、五十目の行方を探し当てている場合、追加で1点の正気度を追加で獲得します。
 武川ら特務『平野機関』の妨害に成功している場合、追加で1点の正気度を追加で獲得します。
 その他、キーパーの判断で、良い機転を利かせた探索者と思われるは、追加で1点の正気度を追加で獲得します。


データセクション

 シナリオ中で使用されるデータや、その他の項目をまとめたものです。

地下鉄

 シナリオ中でも解説されていますが、帝都、日本発の地下鉄道は上野〜浅草間に昭和2年に敷設されています。
 この目的の為に、早川徳次は大正9(1920)年に東京地下鉄道を設立し、資金集め、各所への運動を開始します。
 一旦は工事の開始に漕ぎ着ける目途が立ったところで震災が直撃し、工事の開始は震災後まで引き伸ばされ、結果、上野〜浅草間は昭和2年に開通となり、その後、順次工事は進み、昭和9(1934)年に新橋まで開通しました。
 しかし、この新橋開通後に、他の鉄道との直通運転を絡めて、鉄道会社同士の株の買占め合戦の利権争いが生じ、そこへ鉄道省の思惑が絡み、昭和15(1940)年に鉄道省の調停を持ってこの争いは幕を閉じましたが、早川は相談役として事実上経営権を奪われ、その翌年には東京地下鉄道は半民半官の帝都高速度交通営団へ吸収されました。

早川徳次

 念のため、同姓同名のSHARPの創業者の早川徳次を紹介します。
 明治26(1893)年の東京府生まれで、明治45(1912)年に「徳尾錠」で特許を取り、独立を果たします。
 この後、大正4(1915)年に「早川式繰出鉛筆」の名でシャープペンシルを売り出します。ただ、その当時、国内ではあまり評価は得られず売れ行きは芳しく無かったのですが、第一次世界大戦時の海外での物資不足の折に海外で売れるようになり、それよって国内でも評価が高まり、売れるようになりました。
 この後、国内では珍しい流れ作業を行なう工場等を立てましたが、関東大震災によって大打撃を受け、大正12(1923)年に大阪へ移りました。この後、国産初の鉱石ラジオの開発に成功し、ラジオ事業を確立、家電メーカーへの道を歩み始めました。
 ちなみに、社名を「シャープ株式会社」に変更したのは昭和45(1970)年で、それまでは「早川電機工業株式会社」でした。

特務部隊『平野機関』

 表向き(?)は陸軍に属すると特務部隊で、『平野機関』と言う名前は俗称です(ちなみに、正式名称はありません)。
 組織自体はデルタグリーン的な抗神話組織の側面と、神話的存在や、オカルト的な事象を兵器転用、軍に役立てるという任を負っています。
 ただ、単純な軍組織ではなく、様々な予算が流れ込んでおり、秘密組織化が進んでいます。
 以下は『平野機関』の一般隊員のデータで、機関の指揮官の下、「イーッ!」と突撃してくる戦闘員です。

STR 14 CON 13 SIZ 13
INT 10 POW 10 DEX 11
APP 10 EDU 12 SAN 40
耐久力 13 ダメージボーナス +1D4
技能:オカルト 50%、回避 32%、隠れる 50%、聞き耳 60%、クトゥルフ神話 7%、追跡 60%、目星 60%、サーベル 60%、拳銃 60%
武器:
 サーベル 60% 1D8+1+DB
 十四式自動拳銃 60% 1D8(1ラウンド3射、8発装填)
装甲:
 鎖帷子:1
※その他、キーパーの判断でより重武装な場合も。

ミ=ゴ達

 本シナリオに登場するミ=ゴ達のデータです。
 基本的にルールブック、P191のものと同じです。探索者の錬度やメタ知識によって簡単に蹴散らされる(その逆の)可能性も皆無ではないので、キーパーは適宜データを変更してください(もちろん、登場する数を調整するのも問題ありません)。

 □隠れ家のミ=ゴ:
  ミ=ゴA STR10 CON10 SIZ8 DEX16 POW14 DB+0 耐久力9 噴霧器装備
  ミ=ゴB STR11 CON14 SIZ12 DEX11 POW12 DB+0 耐久力13
  ミ=ゴC STR11 CON11 SIZ12 DEX15 POW10 DB+0 耐久力12 バイオ装甲装備

 □地下坑道のミ=ゴ:
  ミ=ゴA STR10 CON10 SIZ8 DEX16 POW14 DB+0 耐久力9 噴霧器装備(冷気)
  ミ=ゴB STR11 CON11 SIZ10 DEX11 POW12 DB+0 耐久力11
  ミ=ゴC STR14 CON11 SIZ15 DEX15 POW10 DB+1D4 耐久力13 バイオ装甲装備
  ミ=ゴD STR13 CON12 SIZ13 DEX16 POW14 DB+1D4 耐久力13
  ミ=ゴE STR12 CON14 SIZ11 DEX11 POW12 DB+0 耐久力13
  ミ=ゴF STR15 CON13 SIZ16 DEX14 POW13 DB+1D4 耐久力16 噴霧器装備(幻覚)

  武器:
   カニバサミ   30% 1D6+組み付き
   噴霧器(幻覚) 80% CON14の対抗ロールに失敗すると、2D10ラウンドの間幻覚を見る
   噴霧器(冷気) 80% 1D10の寒気   装甲:
   なし。但し、貫通する武器は最低限のダメージになる。
   ミ=ゴCはバイオ装甲を装備し、殴打、高温、低温、電撃に対して8点の装甲を持つ。
  正気度喪失:
   ミ=ゴを見て失う正気度は0/1D6。

学天則

 西村真琴によって開発された人造人間であり、労働や人間の助けとなるのを目的としたロボットとは一線を画し、創作を行なうことを目的としたものでした。
 昭和3(1928)年に昭和天皇の即位記念の京都で開催された大礼記念博覧会に、毎日新聞社から出品されました。
 シナリオは昭和2年なので時期がずれますが、完成していたプロトタイプが工事に使用された、ということで。

STR 15 CON 20 SIZ 25
INT N/A POW N/A DEX N/A
移動 5 耐久力 23 DB:+1D6
武器:(取り付けた武器) 30% 武器ダメージ+DB
   体当たり 50% 1D6+DB
装甲:1ポイントの外装
呪文:なし
正気度喪失:学天則を見て失う正気度ポイントは0/1D2
(大正時代の日本人、それに近しい場合のみ正気度の喪失があります。現代人は見ても喪失を起こしません)


謝辞、あるいは参考資料:

 今回の参考作品はH・P・ラブクラフト『闇に囁くもの』、荒俣宏『帝都物語3、4』、E・A・ポー『群集の人』、芥川龍之介『歯車』等となっています。
 初期の頃はスタンダードな(?)脳缶詰ネタの予定だったのですが、卵ネタを盛り込んだことで、シナリオのボリュームが大幅に増加してしまいました。
 箱庭と呼ぶには自由度が無い、と言われるかもしれませんが、あくまで箱庭型なので、ご了承ください。
 毎度ですが、本シナリオのテストは大阪でお世話になっているサークル様で実施しています。関係の方々に感謝を。

最後にちょっとだけ:

 ようやく、元ネタが『帝都物語』のシナリオです。
 『帝都物語』を元ネタにしようとすると、毎回、「そういや、加藤さんは戦後まで日本に居ないんだよなあ…」となり、二の足を踏んでいたのですが、まあ、加藤さんの出番は無しのシナリオで。
 …まあ、加藤さんはちょこちょこと帰ってきてはいるので、そのうちに、探索者が「かとおぉーっ!」と叫ぶシナリオがやりたいなあ、とか思っているのですが。