緑魔 Green Devil


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Green Devil
「緑魔」



このごろのわたしは、友人の家に蔦が生えていたりすると、すぐにそれを切り取れと催促するようになった。
自分ながら、この件には神経質になりすぎているようだ。
────────── J・P・ブレナン 、『スティルクロフト街の家』より


注意、あるいはお約束:
プレイしてみたい人、プレイするかも知れない人は読まないでください。読んで良いのはキーパーか、またはプレイする予定のない人だけです。うっかり目次を見てしまった人は、「記憶を曇らせる」の呪文でも使って忘れてください。万が一そのままプレイに参加したりすると、貴方の悪徳に誘われて隣のプレイヤーにイゴーロナクが憑依するかも知れませんよ。

そして当然ですが、このシナリオはフィクションです。
現実のいかなる人物、団体、そのほかもろもろのものと一切の関係はありません。

 本シナリオは下記の目次のような構造となっています。
 まずははじめに、シナリオの概要と読み進み、シナリオの本体へ進むのが良いでしょう。

シナリオの目次:

はじめに

シナリオのスペック

 本シナリオは、『クトゥルフ神話TRPG』向けであり、大正期の岡山の山奥を想定しており、大正時代『クトゥルフと帝国』あるいは、本『帝都モノガタリ』を対象としているシナリオです。
 プレイヤーの人数は3〜5人、作成したてから、数回の探索による成長の探索者を想定したデザインとなっています。
 プレイ時間はキャラクターの作成を含まず、1〜2時間程度を想定しています。

始める前に

 実際のセッションを始める前に、これらのことに注意するか、プレイヤー達に直接告げてください。

シナリオの傾向

 本シナリオは、単純なシナリオにデザインされており、探索の要素も少なく、静かな前半に探索、後半でアクション、戦闘を行なうシナリオとなっています。
 最後に戦闘はありますが、ひどく恐ろしい状況も無い、かなり地味で地道なシナリオです。
「謎は解かれなければならない」必要はありませんが、「手がかりは提示する」必要はあります。
 情報は全て出し尽くす、というのが理想的ですが、探索者の選択、行動によって得られない情報も発生することでしょう。ある程度、キーパーの方から誘導、あるいは具体的にこうすれば?と提示することも必要になってきます。
 キーパーは適宜(特に探索者の行動が止まってしまった場合等)、探索者を誘導するようにしてください。

PC作成時の注意、立場

 本シナリオにおいて、よほど無理のある探索者以外は探索に参加させられることになります。
 探索者全員は、シナリオに登場する古井と何らかの関係があり、保養目的で麻里村へと来ていることになっています。

PC同士の関連付け

 基本的に自由です。シナリオに参加する理由付けを作るようにしてください。
 プレイヤーから提案を積極的に受け入れて、シナリオに参加する理由付けを作成するようにしてください。
 NPCの古井が事件に絡む鍵となるので、探索者の職業に合わせて、関係を構築すると楽になるでしょう。

シナリオの概要、真相(キーパー向け)

 探索者達は職業や、血縁関係、あるいはプライベートな関係から古井に招かれて岡山の山奥にある、麻里村へと赴いています。
 この山奥の閑静な、何も無い村で暇を持て余している探索者達は、暇潰しがてらに村を探索することになります。
 怪しげな村のルーツを横目に見ながら、古井の親戚が住むという『音無館』の噂を聞き、探索者達はそこへ踏み込むことになります。
 巨大な植物に覆われた『音無館』で、探索者達は何を見ることになるのでしょうか。

『音無館』は元々は祭祀の森であった『音無森』の跡に建てられたものです。
 この『音無森』は明治維新のどさくさに紛れて焼き払われたものですが、そこには村の祭祀の中心である『地獄の植物』が存在していました。
 この『地獄の植物』は焼き払われただけでは完全に活動を停止しておらず、復活の機会を窺っていましたが、『音無館』が建てられそこに住まう三戸の生命を吸うことで復活を果たします。
 復活した『地獄の植物』は『音無館』を取り込み、徐々に周りの土地も飲み込みつつあります。

登場人物(NPC紹介)

古井耕市(ふるい・こういち)、高等遊民

 探索者を麻里村へ招いた人物です。いわゆる高等遊民で、暇人。相当な資産家であり、全く働いていません。
 麻里村は彼の先祖のルーツであるとともに、故郷への還元も兼ねて『東児館』という立派な別荘を建てました。この為、元村の庄屋的な存在であり、今は村へ相当な金を落としている資産家である為に村への影響力も大きくなっています。
 親戚の三戸とは仲は良くありません。同じ一族を先祖に持つものの、かたや成功した資産家、かたや零落して先祖の地所に逃げたこともあり、なるべく顔を合わさないようにしています。

 STR 10 CON 13 SIZ 13
 INT 14 POW 15 DEX 12
 APP 13 EDU 16 SAN 75
 耐久力 13 ダメージボーナス ±0
 技能:運転(自動車) 50%、芸術(文学) 60%、心理学 50%、信用 80%、説得 75%、その他の言語(英語) 60%、図書館 50%、拳銃 50%

三戸不等人(みと・ふらと)、高等遊民、古井の親戚

 古井の親戚で、同じ先祖を持っています。
 麻里村に戻るまではほとんど交渉を持っていませんでしたが、古井が『東児館』を建てた後はお義理程度ではありますが、行き来が復活しています(とは言いますが、何か事故があった時の為に、お互いの館の鍵を交換している程度です)。
 こちらの一族は、帝都での事業に失敗し、逃げるように村へ戻っています。

※三戸はほぼ死亡している為、能力を示しません。

導入部

 探索者達はすでに共通の知り合いである古井によって、保養目的に麻里村へ招かれています。
 村に到着してからすでに何日か経っており、探索者同士の関係もすでに出来ているなどとすれば導入を短縮することもできます。
 細かい導入や、個別の導入がしたい場合は、キーパーに任せます。

麻里村

 麻里村のゼネラルマップを探索者に示し、各施設の簡単な紹介を行ってください。


『麻里村』MAP

広場

 村の中心部となる広場。特にこれと言ったものは無い。

待合

 駅馬車の待合所で、現在で言えばバス停の施設のようなものである。
 村には日に二回、朝と昼過ぎぐらいに駅馬車が来る。
 この駅馬車に1時間ほど揺られると岡山の端の方の人里っぽいところまで出られ、そこから列車で1時間も乗ると岡山市内となる。

東児館

 探索者を麻里村に招いた古井の建てた別荘で、敷地内には温泉も引かれている。

音無館

 広場から辛うじて見える小ぢんまりとした洋館で、荒れた印象を受ける。

黒獅子屋

 村で唯一の民宿兼食堂兼居酒屋のような場所。

倉田商店

 村で唯一の簡易な食料品や雑貨を扱う店。

村役場

 近隣の村までを含めた役場だが、かなり小さい。

探索部:

 シナリオのメインとなる探索部です。

 麻里村は閑静な、そして何も無いといってもよい村です。
 江戸期においては飢饉の被害に「何故か」遭わずにいましたが、明治、大正期と直撃。しかし、帝都に居ながらも村を援助する古井の一族のおかげで、村はそこそこの繁栄を保つと同時に、近隣の村々の中心部として田舎としては栄えています。

 探索者達は特にこの村での目的はありません。保養に来ているのです。
 娯楽も無い村で、ただ、ひたすら、保養することになります。要するに暇です。
 探索者は村をぶらぶらと歩き回る=探索をすることになります。

 探索者に提示した麻里村のゼネラルマップのどこへ行くか、とキーパーは確認し、各場所での探索の演出を行ってください。
 マップに無い場所へ行っても良いが、そこには何もありません。そして、遭難するほどの山奥でもない為、ただ散歩することになります。
 キーパーは多少場所の融通を利かせたり、あるいは道端で誰かに遭遇するなどして、探索者の行動に対して何らかのリアクションを行なうように心がけてください。

東児館

 古井が建てた洋館です。元々、古井の家の本宅があった場所で、村への還元も兼ねて別荘を建てています。
 敷地内に温泉を引っ張ってきており、落ち着いた雰囲気を持つ、居心地の良い和洋折衷の館です。
 使用人も何人かおり、基本的に不自由しません。食事も館で摂っても、黒獅子亭へ行ってもよいことになっています。

 古井に麻里村について聞いた場合、実は彼もこの村には詳しくないことが分かります。
 彼の一族は確かにこの村の出身ですが、明治維新の辺りから一族は帝都に出てきており、彼自身はこの村で暮らしたことは無いのです。
 ただし、『音無館』について尋ねた場合は、以下のような情報を得ることが出来ます(特にロールの必要はありません)。
「あれは三戸の家だよ。
「実は、あれは私の二番目の従兄弟なのだ。
 あの家の鍵も持っている。まあ、使うつもりは無いがね。私は個人の自由は認めるし、敬意を払っている」
「ここ数年、彼は病気がちで今は隠者も同然だよ。めったに姿を見かけないそうだ。
 閉じこもりっきりで、庭も荒れ放題。困ったものだ」

黒獅子屋

 村唯一の食堂兼パブのような場所です。しかも、近隣の村々の中でも唯一の外部の人間が泊まることの出来る施設となっています。
 昼間から暇な人間、村の老人、同じく保養に来た人間が飲んでいます。
 料理はまあまあですが、この田舎にしては日本酒に、ビール、洋酒の類まで酒の種類も一通り用意されています。満足には遠いが不満もない、という食堂です。
 親父も愛想が良く、一階の食事が出来る場所では、いかにも村の古老という老人と、保養に来たらしい黒獅子屋に泊まっている客の姿が見えます。

 黒獅子屋の親父も暇にしている様子もあり、世間話には付き合ってもらえます。
 村の一般情報ぐらいは持っていますが、大正期に外部から来た人間である為、村の事情には詳しくありません。

村の古老

 古老、とは言うものの60歳ぐらいの老人で、農民特有の老け込みかたをしています。
 明治以降、麻里村は飢饉に襲われることも多くなり、苦労が重なっていることもあることが窺えます。
 古老とは言いますが、『音無森』での祭祀があった頃にはまだ子供であり、それ自体の存在は知っていますが参加したことはありません。
 この為、それが邪悪なものであるということを察してはいますが、はっきりとしたことを言うことは出来ないのです。
 彼に『音無館』について聞いた場合、以下のように答えます。
「あの館には近付かないほうがいい。
 あそこは『音無森』の跡に立っている」

 それでもさらに話を聞こうとした場合、《説得》によって以下の情報を得られます。
「あの館は、わしの記憶が確かなら『樹』があったところに建っているんじゃ。
 御一新のときのどさくさであの森は焼き払われたはずじゃが、それで『樹』が死んだとはわしには思えぬ。
 近付くのはお止めなされ」

保養に来た人間

 普通に話は聞けるが、やはり世間話になります。
 世間話の延長として、『東児館』は立派だが『音無館』の方は荒れている、と言う話になります。
 キーパーの判断で、この保養客はすでに『音無館』の方を見に行っていることにして、その荒れ具合を探索者に伝えたり、探索者が『音無館』に興味を持たない場合、興味を持たせるような話をするのもよいでしょう。

倉田商店

 麻里村だけでなく、近隣の村々で唯一の商店です。
 週に一度、市街地まで物品調達に行くほか、郵便の取り扱いも行なっています(配達は行なっておらず、郵便物は基本的にこの商店へ預ける、取りに来ることになります)。
 店は大正期になってから村に来た一家が切り盛りしており、食料品から雑貨、農作業具まで様々なものが売られています。キーパーの判断で、ここで探索者が必要なものを手に入れてもよいでしょう。あまり田舎になさそうなものならば、《幸運》を要求してください。

 店主は村のことはあまり知りませんが、ここが村唯一の雑貨店である為、『音無館』のことを訪ねた場合は、「週に一度程度、食料や日用品を買出しに三戸がやってくる」ということが分かります。
 また、「最近は調子が悪そうにしており、姿を見ていない」ということも教えてもらえます。

村役場

 小さな村役場ですが、近隣の村の役場も併合されています。
 職員は数人いますが、皆忙しそうにしており、探索者がただの保養客であることはすでに知っている為、特に対応には出てきません。
 役場には小さな図書館(図書室)が併設されていますが全く利用されていない上に、明らかに雑多な本が適当に詰めてあるだけです。
《図書館》に成功すると、以下の本が発見できます。

『麻里村史』、最近の本

 大正期になって発行された麻里村及び近隣の村の紹介や歴史の本です(要するに役場が受け持っている地域の村の複合本)。
 内容は薄く、普通に読んでも1時間程度、斜め読みで10分。正気度の喪失はありません。
 得られる内容は以下の通りです(要約)。

 江戸期より何も無い村々。温泉が出ることもあったが、あまりにも田舎のうえに湯量も少なかった為、湯治場となることも無い。
 岡山の山奥でほぼ飢饉に遭うこともなく、不思議と麻里村とその周辺は飢えることが無く、それも鎮守の森『音無森』のおかげだと言われている。
 伝説では『音無森』は江戸期に飢饉に苦しんでいた村へ旅の六部が訪れ、民を救う為に仏に祈ったところ森が出現した、というのが起源と言われている。
 廃藩置県によってもさしたる影響を受けず、現在に至る。
 代々、古井の家が庄屋として周辺の土地を仕切り、鎮守の森での祭祀を司ってきたが、明治維新のどさくさで失火によって鎮守の森であった『音無森』が焼失した。
 以降、古井の家は帝都へ進出して土地は村の人間に払い下げられた。

『麻里文書』、古文書

 怪しげな古文書で、読むには《日本語》が必要です。
 研究に平均1ヶ月、斜め読みで3日掛かります。1/1D4の正気度を喪失します。呪文はなし。

 伝説では六部とされているが、飢饉で苦しむ村を訪れた怪しげな風体の男を村人が追い詰めたところ、突如その身体の中から植物が飛び出し、苗床にするかのように『樹』に成長した。
 恐れた村人はその『樹』に近付かなかったが、『樹』を中心に徐々に森が広がっており、焼き払う相談をしていたところ死んだはずの男が現れ、毎年人身御供を奉げれば森の侵食は止まり、村は安泰で農作物の成長も約束される、という。
 村人は悩んだ末、毎年、『音無森』の『樹』に人身御供を奉げるようになったと言う。
 これが麻里村の『音無森』で行なわれていた祭祀の正体であると言われている。

音無館

 三戸が建てた洋館。小ぢんまりとしたもので、村の広場からかろうじて見えるぐらいの位置に建っています。
 元々は祭祀の森があり、焼失した土地の跡に建てられています。

 音無館のその敷地は様々な植物が繁茂しており、明らかに自由に自然に任せて、つまり全く手入れがされていない状態で放置されているように見えます。
 館自身も窓も含めて、巨大な蔓に覆われており、かろうじて出入り口だけがそれを免れていることが分かります。
《聞き耳》か《目星》に成功した場合、2階に老人らしく影を見たような気がします。

 遠くから眺める分には害は無いですが、近寄ってみると、《聞き耳》で風も無いのに何かが擦れるような這いずるような音を聞くことになります。
 観察をした場合、《目星》によって、蔦が動いたように思えます。この現象を目撃した場合、0/1D2の正気度を喪失します。

 経過観察した場合は、日に日にこれらの蔦が多く、館を厚く覆っていくように思えます。
 また、庭の植物の繁茂も激しくなっています。

終幕部

 終幕部では、探索者達は古井に同行して『音無館』へ踏む込むことになります。

キーパーへ:
 キーパーの判断で、古井は同行せず、『音無館』の探索を探索者主導で行なわせるのもよいですが、その場合はプレイ時間が延びます。
 本シナリオでは同行することを前提とする為、『音無館』の地図はキーパーが自作してください。

 しばらくの後に(探索者が1回ずつぐらい行動を行なった後)、『東児館』で古井が探索者に対して相談します。
 あるいは、探索者の方から『音無館』の様子がおかしい、ということを相談した場合、古井は『音無館』へ踏み込むことを決意します。
「ああ、困ったことだ。
 村の商店じゃあれがここのところ買い物に来ないし、郵便も溜まっているというのだ」
「ああ、何か手を打たなければならない、ということか。
 いいだろう、明日、行って戸を叩いてみよう。この鍵を使うことが無いことを祈るね」

 ここで探索者がどのような準備をして行くか、キーパーは確認してください。
 オイルランプや、手斧等の単純な道具でかつ、普通に手に入るものは『東児館』に置いてあるものとします。
(ものによっては、倉田商店で手に入るとしてもよいでしょう)

 次の日、『音無館』を訪ね、扉を叩くが反応がありません。
「仕方ない、こんなことはしたくないんだがね」
 と言いつつ、古井は扉を鍵で開けます。
 開けた途端、扉の隙間から館の内部にまで蔦が這いこんでいることが分かります。それはまるで、樹木の内部にでも這いこんだかのように思えます。
 館の中は妙な臭気、枯葉と青臭い葉の臭い湿気を含み、健康的なはずなのに不健康な臭いが充満しています。
 この異様な光景と臭いを嗅いだ探索者は、0/1D3の正気度を喪失します。

「上、かな」
 古井が記憶を探りながら、言います。
「確か、彼のお気に入りの部屋は上階だったはずだ」
 上階へ行くと臭気はますますひどくなります。
「たぶん、その扉だ」
 と右側の扉に立ちますが、扉は開きません。
「参ったな。私もこの館の鍵すべてを持っているわけではないんだ」

 斧などで扉を破壊した場合、扉を叩き割ることになります。その結果、ドアには鍵が掛かっていたのではなく、蔦が絡み付いている為に開かなかったことが分かり、斧で断ち切られた蔦からは赤い樹液が滴るとともに、それは何か湿った、切るのでは引きちぎる様な嫌な感触を味わいます。
 この光景を見た探索者は、0/1D3の正気度を喪失し、斧を振るった探索者は喪失する正気度が+1されます。
 部屋の中に踏み込んだ場合、以下の描写を行ってください。

 部屋の中は緑色に染まり、きらきらと輝くもののある薄闇の中でかつて人間だったものが窓から少し離れ場所にある椅子に座っていた。
 巨大なぱたぱたとはためき、波のように揺れる、五つの子葉からなる大振りな蔦の葉の群れにそれは覆い隠されていた。見えるのは輪郭だけだ。
 そして、それは動き出した。椅子から立ち上がり、細く、なかば息が詰ったような叫び声がその口からほとばしり出た。
 それは、伝説のマンドレークの叫びのようだった。そいつは椅子に身体を戻したが、叫びは止まなかった。
 なにやら肉体めいた紫の蔦が迫る。その大振りな蔦は飛び出した眼球と牙の生えた唇のない口で覆われていた。

 この叫び声を聞いた探索者は1/1D4+1の正気度を喪失します。
 さらに、動き出した『地獄の植物』を目撃することによって、1/1D10の正気度を喪失します。

 ここで館の中で『地獄の植物』との戦闘とりますが、館自体がすでに植物化している為、館のどこに居ても『地獄の植物』の攻撃を受けることになります。
 その基本的に目標は一人ですが、キーパーの判断でこの巨大に育った植物が複数の対象に攻撃を仕掛けることにしても構いません。
 ただし、その場合、この植物との戦闘は厳しいものとなります。キーパーは探索者の武装や、戦闘技能の取得具合を確認し、検討してください(もちろん、プレイヤー自身の錬度も重要です)。

地獄の植物(詳細はマレウス・モンストロルムP.51を参照)
 STR 20 CON 50 SIZ N/A INT 8 POW 18 DEX 13
 移動 0 耐久力 120+2D6毎ラウンド成長する
 DB N/A
 武器:
  まきひげ 80% 1D6+毎ラウンドSTR1点吸収
  絡み付かれると、飲み込み、自動的に死亡する
 装甲:
  なし。貫通する武器は最低限のダメージになる。
  地獄の植物自体は不燃性だが、火によって通常通りのダメージを与える。
  今回は館と融合しているので、普通に燃える。
 呪文:
  天候を変える、農作物を枯らす/農作物に祝福を与える

 この後は探索者の対応次第ですが、主な対応方法は以下の通りです。あるいはキーパーによっては探索者の解釈や対策を採用してもよいでしょう。

館に火を放つ

『地獄の植物』自体は耐火性ですが、館は耐火性ではありません。館と融合している為に、『地獄の植物』は燃えてしまいます。
 火を放つのに適切な判定と、逃亡するのに判定を行なう必要があります。
 探索者が周到にオイルランプ等、着火可能な道具を用意している場合、それを《投擲》することで着火することにすればよいでしょう。マッチ等、即座に火が点きそうにないものしかない場合、《幸運》や、落ち着いて行動できるかなどをPOWのロールなどを行ってください。
 着火後は逃亡すると同じになりますが、館内に充満した煙により、3ラウンド後から窒息の行程が始まります(窒息の行程はルールブックP.62を参照)。
 また、火を付けられた『地獄の植物』の攻撃は1/2の40%の命中率となります。

三戸を攻撃する

 すでに乾涸びていますが、『地獄の植物』は三戸と融合し、その養分を得ている為、三戸を攻撃することによって『地獄の植物』を止めることが出来ます(主根、幹への攻撃と同じ扱いになります)。
 三戸は《回避》等は行ないませんが、『地獄の植物』は三戸を守るために探索者を攻撃します。
 三戸の耐久力は8点としますが、『地獄の植物』化している為、貫通する武器の場合は最低限のダメージしか与えられません(斧等、植物にダメージを与えられそうなものは例外的に通常通りのダメージを与えるとしてもよいでしょう)。
 三戸はダメージを受ける度に叫び声を上げます。これを聞いた場合、最初の叫びと同じく、1/1D4+1の正気度を喪失します(累積で5点以上喪失しません。すでに慣れた状態となります)。

『地獄の植物』を倒す

 適当に『地獄の植物』を攻撃しても効果はありません(一応耐久力は低下しますが、『地獄の植物』の耐久度は120からスタートし、毎ラウンド2D6増加します)。
《生物学》か、キーパーの判断で植物の栽培に関わりがある《芸術》、あるいは《アイデア》に成功した場合、これらの植物の枝を攻撃しても大きなダメージにはならず、主根か、あるいは幹となる部分を見つけ出して攻撃すれば、息の根を止められる可能性があることに気が付きます。
 主根、幹を見つける為には、先と同じ技能と《目星》、《アイデア》とのコンビネーションロールが要求されます(この動作には1ラウンドがかかる、あるいはキーパーの判断によって、館の中のどこかを指定して探す必要があるとするのもよいでしょう)。
 主根、幹の耐久力は15点とし、3点の装甲を持ちます(『地獄の植物』本体と異なり、貫通する武器でも通常通りのダメージを与えます)。

逃亡する

 逃亡を試みた場合、探索者が3ラウンドの間、『地獄の植物』の攻撃に晒されることになります。
『地獄の植物』の攻撃が命中した場合、蔦に絡め取られたことになり、逃亡は阻害されます。
 館の外まで退避できた場合、蔦は蠢いているものの、探索者を捕らえるほどの力は無くなっており、有効なダメージを与えることもなくなります。
 この後、この館をどうするかは探索者次第です。

事件の後

『音無館』で起こったことに付いては、村の有力者である古井の影響力によって不問に付されます。
 三戸についても、事故死、あるいは衰弱死(自然死)とされて、それ以上の追求は受けません。

 キーパーは探索者のその後を、下記の方向性でそれぞれ演出してください。

・『地獄の植物』を撃退した場合:
 古井は探索者に感謝し、あの土地はしっかりと整地し、『地獄の植物』を封印することを誓います。

・逃亡した場合:
 その後、古井の手引きで村人によって『音無館』は焼き払われ、整地されたと聞くことになります。

正気度の報酬

この事件を生き延び、『地獄の植物』を撃退した場合、1D10点の正気度を獲得します。
『地獄の植物』から逃亡している場合、1D6点の正気度を獲得します。

データセクション


 シナリオ中で使用されるデータや、その他の項目をまとめたものです。

地獄の植物

 この神話生物が麻里村に送り込まれた経緯は不明です。
 ただ、この怪物が天候を変える等の村に豊穣をもたらす呪文を備えていることを考えると、単純に罠として送り込まれていたわけではなく、何らかのカルトが絡んでいる可能性もあります。

地獄の植物(詳細はマレウス・モンストロルムP.51を参照)
 STR 20 CON 50 SIZ N/A INT 8 POW 18 DEX 13
 移動 0 耐久力 120+2D6毎ラウンド成長する
 DB N/A
 武器:
  まきひげ 80% 1D6+毎ラウンドSTR1点吸収
  絡み付かれると、飲み込み、自動的に死亡する
 装甲:
  なし。貫通する武器は最低限のダメージになる。
  地獄の植物自体は不燃性だが、火によって通常通りのダメージを与える。
  今回は館と融合しているので、普通に燃える。
 呪文:
  天候を変える、農作物を枯らす/農作物に祝福を与える

謝辞、あるいは参考資料

 本シナリオは、マッド・サイエンティスト(創元SF文庫)に収録されているブレナン『スティルクロフト街の家』が参考となっています。
 当初より、短編、簡単な形式を目指して作成されています。
 毎度ですが、本シナリオのテストは大阪でお世話になっているサークル様で実施しています。関係の方々に感謝を。

最後にちょっとだけ

 並行している作業が完全に別方向、珍しくどれだけ盛るか、に走っている為に、完全に逆方向のどれだけ削るか、というシナリオになっています。
 非常に簡単なシナリオになっていますので、演出方法、方向を各キーパーで検討するとよいでしょう。