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the Mansion Of the Violet
「菫の館」


シナリオの目次:


シナリオのスペック:

タイプ:特殊型
リミット:可変
PL人数:1人
プライズ:なし

シナリオの舞台:

 このシナリオは「暗黒のヴィクトリア」のセッティングを使用します。
 シーン表はこのシナリオ用の『館シーン表』を使用します。このシナリオの舞台となるヴァイオレット館は、イギリスの片田舎に立つ、いかにもそれらしいヒースの荒れ野に囲まれた土地を想定していますが、GMの好みで館が経つ場所を任意に変更可能です(あまりに都会の場合はシーン表にそぐわない場合があります)。

このシナリオについて(GM向け):

 本シナリオはよくある幽霊屋敷を調査するものですが、『スミー』というかくれんぼを行いながらそれをすることになります。
 シナリオに登場する重要人物であるはずの館の主アーサー・ヴァイオレット、及びその妹のエリザベスについてはハンドアウトが存在せず、調査の対象となっていません。
 これにより、シナリオによって彼らの役割が大きく変わることになり、PCによって調査されるハンドアウトによって、シナリオは大きく『科学ルート』『オカルトルート』に分岐します。
 GMはPCのハンドアウトによって、現在のルートがどちらにあるのか把握する必要があります。

 また、PC@には4つのタイプのハンドアウトが用意されています。それぞれの目的に合わせて、ある程度ハンドアウト『スミー?』や、ルートの調整をしておくとよいかもしれません。

背景:

 PC@はヴァイオレット館で行われる『スミー』というゲームに参加することになり、暗闇の館の中を徘徊することになります。
 そこでPC@は幽霊と思えるような存在に遭遇し、その正体を巡って調査することになります。

狂気:

 このシナリオでは、『迷信』(暗黒のヴィクトリア用の狂気)、『盲目』、『パニック』、『広がる恐怖』を使用してください。

導入フェイズ:

 PC@に対する導入シーンとなります。

ヴァイオレット館

 PC@は今、ヴァイオレット館に招かれています。
 主であるアーサー・ヴァイオレットはここのところ体調を崩しており、その気晴らしにと親しい者が集まってパーティを開くことになりました。
 ごく親しいものの集まりであり、彼の親類や、年の離れた妹も館に招かれています。
 そんな中、クリスマスも近いある日、誰かが言い出します。
「スミーをやろう」

スミーとは?

 スミーは普通のかくれんぼを複雑にしたものです。
『イッツミー(私が鬼)』が訛ったもので、最初に参加者全員に紙を一枚ずつ配ります。その中の一枚にだけ、『スミー(SMEE)』と書かれています。
 当然、スミー以外は誰がそれを受け取ったかは分かりません。それから灯りが消されると、スミーは部屋を抜け出して隠れます。
 しばらく後、参加者はスミーを探し始めます。探す相手が分からないので、出会った人に『スミー』と呼びかけます。
 相手はスミーでなければ、『スミー』と必ず答えます。本当のスミーは、返事をしてはいけません。その場合、声を掛けた方はスミーのそばに立って黙って手をつなぎます。
 次の人も同様に手をつないでいき、やがて、最後に見つけた人の輪が出来るまで続けられます。
 最後になった人は罰ゲームが待ち受けています。

スミーの開始

 晩餐の後、提案のとおりにすぐにゲームが開始されます。
 唯一、食堂の灯りだけが残され、あとは館の特別な場所以外の灯りは全て消されます。参加者全員で館を回って、館が暗闇に包まれていることを確認した後、紙が配られます。
 PC@が引いたものは白紙でした。
 全員が確認し終わると、食堂で唯一の灯りも消され、暗闇の中で誰かがそっと食堂から抜け出したことが察せられます。
 スミーに参加しないことを決めていた館の主、アーサーが合図をします。
 スミーの開始です。

 GMは、ハンドアウト『スミーに参加しない』と、『スミー?』9枚を公開してください。

メインフェイズ:

ヴァイオレット館の怪異

 各サイクルの終了後、マスターシーンとしてシーン間怪異表を振り、PC@が怪異に遭遇する、館を探索するシーンを挿入します。
 またはシーン表とシーン間怪異表を組み合わせて、各サイクルのシーンの演出としてもよいでしょう。

ルートの分岐

 GMの好みのルートにするのも可能ですが、ハンドアウトが調査された場合にそれぞれのルートに分岐します。
 もしも、これらのハンドアウトが調査されなかった場合は、『オカルトルート』にするのがよいですが、GMの好みで『科学ルート』をデフォルトのルートとしても問題ありません。

 ハンドアウト『封印された部屋』が調査された場合 → 『オカルトルート』
 ハンドアウト『地下室』が調査された場合 → 『科学ルート』

なにが起こっているのか?

 このマスターシーンは、PC@がハンドアウト「地下室」「封印された部屋」の両方を調査した場合、そのサイクルの終了時に行います。
 このシーンでは、館の秘密を調査したPC@の考えをはっきりとさせ、シナリオのルートを確定させます。

 PC@は館を歩き回りながら、考えます。

 館のあちこちで黒い姿の少女を見かける。あれはなんなんだろうか?
 A. 館に招かれている客の一人だ。黒いドレスなんて珍しくもない。
 B.あんな少女を見たことはない。あれは、この館に憑りつくものが人間の姿をとっているのだ。

 アーサーはここのところ体調が悪いと言っていた。これは、この館で感じる何か霊的なもののせいだろうか?
 A. いや、そんなことはない。彼ももう若くないし、気苦労も多い。疲れているだけだ。
 B.そうだ、この館は何かおかしい。霊的なものが影響をしているのだ。

 先ほどから振りかかる怪異の数々は一体なんだ?
 A.怪異の多くは勘違いと見間違いだ。この古い館の雰囲気と、スミーという場がそういったものを助長しているのだ。
 B.間違いない。この館に憑りつくものが害意を現しているのだ。悪霊の類だといってもいい。

 Aを2つ以上選んだ場合、『科学ルート』へ。
 Bを2つ以上選んだ場合、『オカルトルート』へ。


クライマックスフェイズとエピローグ:

 GMはクライマックスフェイズの開始の仕方と、現在のルートで分岐させてください。

スミー(ミセス・レジーナ)を発見した場合:

(PCからクライマックスフェイズに進んだ場合)
※この選択の場合、クライマックスフェイズはなく、エピローグに進みます。

エピローグ

 次第にスミーに繋がる輪は大きくなりますが、かなりの時間が経っても全員が揃いません。
 これは何かおかしいと誰かが言うと、待つのに飽きた人々が、今度はその見つからない参加者の捜索を行うことになります。
 静かなスミーではなく、今度は騒がしい捜索によって見付かった二人から、また別の問題が持ち上がります。
 彼らは、スミーを見つけたと主張するのです。しかし、肝心の彼らのスミーはその場には居ません。
『隠れることも、逃げることも絶対に出来ない場所のはずなのに、その黒いドレスを着た少女は消えた』
 皆が首を傾げながら、がやがやと騒がしくしながら、食堂に戻ります。
 その後、アーサーの指示で館が再び、今度は使用人たちを使って手加減なしの捜索が行われますが、やはり誰も見付かりません。
「まあ、仕方ない。ここに居る13人のうちの誰かの悪戯なんだろう」
「13人?ここには12人しかいないじゃないか」
「待って。私はあの娘から名前を聞いた。この中の誰かだろう?
 少女はエリザベス・ヴァイオレットと名乗ったんだ」
 その名を聞いたアーサーの顔が蒼白になります。
「冗談はそこまでだ。
 それは、この館でスミーの最中の事故で、首の骨を折って死んだ私の妹の名だ」

※PCA、Cはこのエンディングを迎えた場合、使命は失敗になります。

礼拝所を調査した場合(オカルトルート):

(ハンドアウトを調査後、自動的にクライマックスフェイズに進みます)

クライマックスフェイズ

 礼拝所は、元々あった古代の異教(おそらく、ドルイド、ケルトの流れをくむ異教と融合したキリスト教)の祭祀場であった場所に作られています。
 この礼拝所に仕掛けられているのは処刑の為の仕組みであり、長年に渡って犠牲者の血を吸い続けてきた機構です。
 屋敷を包む怪しげな雰囲気、この館を継いだヴァイオレット家の血筋に振りかかる不幸の数々は、おそらくこの礼拝所にあるはずです。
 PC@が礼拝所に近づくと、そこに黒い影が浮かび上がります。
 屋敷の中で見た少女です。
 しかし、館で見た、暗黒の塊であった少女の表情はその時は読み取れなかったのですが、今、目の前の彼女の顔には憎悪に満ちた表情が浮かんでいます。
 礼拝所の中を、まるで嵐が吹き荒れるような轟音とともに、そこにあった椅子や祭具が木の葉のように巻き上げられ、それらはそのまま、PC@に襲い掛かってきます。

 クライマックスの戦闘の開始となります。黒い少女の幽霊は、ポルターガイストと同じデータを使用してください。ただし、生命力を6点持つものとします。
 また、戦闘の他、儀式判定『祭壇を破壊する』を行うことも可能です。

儀式判定『祭壇を破壊する』
段階 手順名 指定特技 参加条件 ペナルティ
1 暴風を突破し、祭壇に近づく 効率 なし 生命力を1点失う
2 手近なものを破壊する 破壊 なし 正気度を1点失う
3 祭壇本体を破壊する 霊魂 なし 生命力か正気度を1点失う

 幽霊を倒すか、儀式に成功した場合、その黒い少女は霧散し、気絶したエリザベスがその場に残ります。
 彼女は幽霊の依り代となっていたようです。
「ああ、助かったのですね。
 あの子、私を利用して生贄を探していたのですわ。
 ヴァイオレット家は呪われた家系、あの子は一番新しい犠牲者で、その姿を借りられていたのです」

エピローグ

 幽霊から解放されたエリザベスは、彼女は憑りつかれていたことを語ります。
 あの祭壇の下には、異教の祭祀の跡があり、それは生贄の儀式を伴う原始的なものでした。
 ヴァイオレット家にこの館が渡る前に、一人の少女がそこで死に、それがきっかけとなって再びこの祭壇の怪異が猛威を振るようになりましたが、PC@によって少女は解放されて、祭壇も破壊されました。
 この地は浄化された、とは言い難いですが、怪異は小さくなることでしょう。

 エリザベスも救出された当初は衰弱していましたが、若いこともありめきめきと健康を取り戻し、無事にロンドンへ帰っていきます。
 アーサーも心配事がなくなったせいか、前よりも元気になったように見えます。

礼拝所を調査した場合(科学ルート):

(ハンドアウトを調査後、自動的にクライマックスフェイズに進みます)

クライマックスフェイズ

 礼拝所は、元々あった古代の異教(おそらく、ドルイド、ケルトの流れをくむ異教と融合したキリスト教)の祭祀場であった場所に作られています。
 そこは屋敷の敷地の中心であり、様々な場所に通じる隠し通路の唯一の入り口であり、そしておそらく、処刑を行うための場所であったようです。
 PC@が礼拝所のその秘密に気が付くと、いつの間にか礼拝所の入り口にはアーサーの妹、エリザベスが立っています。
 彼女は黒いドレスに身を包んでおり、それは屋敷の中で見た少女の幽霊のようです。
 いや、彼女が、幽霊の正体なのです。
 その手には何故か手斧が握られており、見た者を凍り付かせるような笑みを浮かべたまま、PC@に言います。
「館の秘密を知ってしまったのね。
 そうよ、兄さまを殺そうとしているのは私。兄さまもそれに気が付いている。
 この私の為に、死んでくれるのよ」
「そうそう、前にもこの秘密に気が付いた子が居たわ。
 ふふ、その子は、地下室で死んでいたわね」

 エリザベスと戦闘となります。彼女のデータは、殺人鬼と同様ですが、脅威度2とし、生命点8、特技【装甲】なしとします。
 戦闘中、エリザベスは速度6固定です。

エピローグ

 エリザベスは、アーサーの継母の連れ子でした。
 長男としてヴァイオレット家の何もかも手に入れるアーサーに対して、何も残らないエリザベスがこの状況を利用して家の財産を手に入れようとしていたのです。
 アーサーを悩ませていた館で起こる怪異は、すべてエリザベスの仕業でした。
 彼女は自身が発見した館の隠し通路や仕掛けを利用して、あたかも幽霊が怪異を起こしているように見せかけていたのです。
 地下で感じた風や、生き物以外の音はそれだったのです。

 エリザベスは、官憲の手に渡り、その後は精神病院で過ごしているといいます。
 アーサーの苦悩は、より深くなるばかりです。

黒い少女を調査した場合(オカルトルート):

 ハンドアウト『黒い少女』の調査をしたサイクルの終わりに、マスターシーンが挿入されます。

 その黒い少女の存在は希薄です。
 貴方が握っている手は冷たく、氷のように感じます。
 ふと少女が動いたように思うと、彼女の姿は隠れていたカーテンをすり抜けて、PC@の前に立っています。
 彼女の顔は…、暗黒です。そこには何もありません。
 しかし、それにも関わらず、彼女が口の端を歪めて笑うのがPC@には分かります。

 黒い少女の幽霊(ポルターガイストと同じ扱い)と戦闘になります。
※この戦闘はクライマックスフェイズの戦闘ではありません。

 戦闘に勝利した場合、自動的に黒い少女の居場所を獲得します。
(それ以外のものを得ることはできません)

 戦闘に敗北した場合、≪霊魂≫で恐怖判定を行います。
 その後、黒い少女の『スミー?』のハンドアウトを再び未調査として場に戻し、未調査のハンドアウトをシャッフルしてください。
 再度、黒い少女の『スミー?』のハンドアウトが調査された場合に、クライマックスフェイズに突入します。
※この時点で、『オカルトルート』が確定し、以降、他のハンドアウトの調査によってルートが変わることはありません。

 戦闘に勝利した場合、自動的にクライマックスフェイズに進みます。

クライマックスフェイズ

 黒い少女は笑い声を上げながら屋敷の中を逃げていきます。
 しかし、その笑い声は無邪気とは言い難い、死神の声のようにPC@には思えます。

 ここで黒い少女の幽霊を発見する為の儀式判定『暗闇の追いかけっこ』が始まります。
 この儀式判定を2段階に進めるまで、少女に追い付くことはできず、戦闘を行うことはできません。

 儀式の準備として、黒い少女のハンドアウトを未調査にし、未調査のスミーのハンドアウトと混ぜてシャッフルし、再び配置してください。
 黒い少女のハンドアウトが調査された場合、黒い少女に追い付いたことになり、儀式の段階2の判定が可能となります。

 儀式判定を2段階に進んだ場合、少女に追い付き、戦闘を行うことが出来ますが、儀式を続行することも可能です。
「もう、追いかけっこはおしまいね。
 前の子は、追いかけっこの最中に階段から落ちて動かなくなってしまったけれど。
 さあ、次は何をして遊ぶの?」


儀式判定『暗闇の追いかけっこ』
段階 手順名 指定特技 参加条件 ペナルティ
1〜 黒い少女を探す(調査判定)。
※ハンドアウト『黒い少女』を引くまで続く。
任意 なし 生命力か正気度を1点失う
2 黒い少女の要望を聞き入れ、遊びを続行する1 悦び なし 正気度を1点失う
3 黒い少女の要望を聞き入れ、遊びを続行する2 夢 なし 狂気を1枚得るか、1枚顕在化する

エピローグ(儀式判定に成功した場合)

 黒い少女の遊びに付き合うと、彼女の姿がどんどんと薄れていくことに気が付きます。
 そして、最後には彼女は消えてしまいます。
 死神のように思えた少女も、最後にはあどけない表情をした幼子のように思えます。
 彼女が消えたのは、館の地下室でした。
 館を包んでいた異様な霧もすっかり晴れ、何故かすっきりとした気持ちで朝を迎えます。
 …そう、すでに夜明け。日が昇っています。
 スミーはどうなったのでしょうか。

エピローグ(幽霊との戦闘に勝った場合)

 咆哮のような怨嗟の叫びとともに、黒い少女は消え去ります。
 その声は館を揺るがし、次第にその揺れは大きくなります。
 窓ガラスが割れたかと思うと、館の外にあった濃い霧が侵入を始めます。
 その霧は、ときには苦しみもがく人の姿にも見え、ときには憤怒に狂う人に見え、そして人ならざるものの姿にも見えます。
 館の揺れはさらに大きくなり、そしてどこかからか、何かが崩れる大きな音が聞こえてきます。

黒い少女を調査した場合(科学ルート):

(ハンドアウトを調査後、自動的にクライマックスフェイズに進みます)

クライマックスフェイズ

 この黒い少女には見覚えがあります。
 しかし、この冷たい手の説明は付きません。彼女は幽霊なのでしょうか。
 PC@がそう信じ始めたところで、少女から忍び笑いが聞こえてきます。
 …そうです、この少女は…。

 儀式判定『少女の正体』を行います。このクライマックスフェイズでは戦闘を行うことはできません。
※GMの判断で、少女をしばく展開でもよいですが…。

儀式判定『少女の正体』
※この儀式判定は、3回連続で失敗すると自動的に儀式判定に失敗したことになります。
段階 手順名 指定特技 参加条件 ペナルティ
1 黒い影のような幽霊 物理学 なし なし
2 冷たい手 手触り なし なし
3 屋敷の中で見たものは? 情景 なし なし
4 誰? 驚き なし なし

 それぞれの段階の指定特技の判定に成功した場合、以下の描写を行ってください。
 段階1『黒い影』
「彼女は必ず月明りの無いところか、あるいは効果的に暗闇を利用して自らの存在を幽霊のように見せている。今、目の前にした彼女は普通の黒い服以上に闇の溶け込む、あまり光沢のない服をわざわざ着ているのだ」
 段階2『冷たい手』
「脇の下を圧迫して血管を無理やり止めれば、通常の人間よりも冷たくなるし、脈もなくなる。そして、屋敷の中は寒い。しばらくの間ぐらいは外で冷やした手でもごまかされるだろう」
 段階3『屋敷の中』
「屋敷を熟知した人物なら、この暗闇の中を自由に動き回れる。それだけではない。妙な空気の揺らぎや扉の音、足音から、屋敷には隠し扉や、通路があるはずだ」
 段階4『誰?』
「そうだ、屋敷の内部を熟知し、様々な手品のような知識、そして悪戯好きなのは…。アーサーの年の離れた妹、エリザベスだ」

エピローグ(儀式判定に成功)

「あら、やっとお気づきになられて?
 お久しぶりです。エリザベスですわ」
 彼女は黒子のようなベールを外して、悪戯っぽく微笑み、スカートの裾を摘まんで優雅に一礼します。
「この姿で、あの子を殺した犯人を驚かせて反応を見ていたのです。
 どうです、本物の幽霊みたいでしょう?」

 この屋敷で黒い少女として怪異を起こしていたのは、アーサーの妹、エリザベスです。
 彼女は、アーサーも知らない館の秘密の通路や仕掛けを独自に解明しており、それを利用して怪異のような現象を起こしていたのでした(もちろん、本物の怪異も混じっている可能性も否定はできませんが、彼女は『すべて、私のやったことですわ』と断言します)。
 それは以前、この屋敷で殺された少女の犯人を燻り出す為で、今回、招かれた客の中に犯人が居るのだと言います。

 エリザベスは、PC@の協力によってその犯人を見つけ出すと、殺された少女の復讐を果たすのだと言って聞きません。
 犯人をどうするかはPC@次第です。

エピローグ(儀式判定に失敗)

 目の前の少女は幽霊としか思えません。
 PC@が少し注意を逸らすと、その少女はいつの間にか消えています(まるで幽霊のように!)。
 PC@はスミーを見つけられなかった為に、罰ゲームを受けることになります。


ハンドアウト:

 このシナリオで使用するハンドアウトです。

ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
PC@:館に招かれた客 ショック:なし PC@(A):館に招かれた客 ショック:全員
 貴方はこの屋敷の主人に招かれて今日のパーティに参加している。
 貴方の使命は【スミーを楽しむ】ことだ。
 貴方には秘密は無い。
 貴方の使命は、『シナリオが終了するまでに調査したハンドアウトの数』によって功績点が変わる。
 貴方はこの屋敷の主人に招かれて今日のパーティに参加している。
 貴方の使命は【スミーを楽しむ】ことだ。
 貴方は実はこの館で噂される死んだ少女の血縁だ。
 貴方の本当の使命は【少女の死の原因を探る】ことだ。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
PC@(B):館に招かれた客 ショック:なし PC@(C):館に招かれた客 ショック:全員
 貴方はこの屋敷の主人に招かれて今日のパーティに参加している。
 貴方の使命は【スミーを楽しむ】ことだ。
拡散情報。
 貴方は実はかなりの臆病者だ。貴方の本当の使命は【正気度を減らさない】ことだ。
 ただし、それと悟られない為に、調査等の行動を破棄することはできない。
 貴方の使命は『残った正気度』によって功績点が変わる。
 貴方はこの屋敷の主人に招かれて今日のパーティに参加している。
 貴方の使命は【スミーを楽しむ】ことだ。
 貴方は実は幽霊狩人だ。
 貴方の本当の使命は【屋敷に出現する幽霊を調査する】ことだ。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
スミーに参加しない ショック:全員 スミー? ショック:なし
 馬鹿々々しい。こんな子供の遊びに付き合っていられるか。
 屋敷の灯りが消され、館へ人々が散っていくのを見ながら、貴方は食堂に残ることにした。
※このハンドアウトは1サイクル目の終わりに破棄される。
 参加者全員が館の闇に散った後、再び食堂には灯りが灯され、スミーの間でもその灯りだけは消さないはずだった。
 貴方と、残った館の主アーサーの前で、灯りが消え、食堂は暗闇に包まれる。
「ああ、彼女が来てしまったようだよ」
 ≪死≫で恐怖判定を行う。
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
「スミー!」
 その人影から答えが返ってくる。どうやら、スミーではないようだ。
 あちらもこちらがスミーではないと分かると、また館の闇の中に紛れていった。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
スミー? ショック:全員 スミー? ショック:全員
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 その人影からは答えが返ってこない。
 スミーだ!近寄った瞬間、どこかに潜んでいた人影が急に現れ、貴方を驚かせる。
「スミー!」
 貴方を驚かせた二人は人が悪そうに笑いながら、館の暗闇に紛れていった。
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 その人影からは答えが返ってこない。
 スミーだ!近寄ろうとすると、その人影は影よりも濃い闇であることに気が付く。
≪霊魂≫で恐怖判定を行う。
 影はまるで溶けるように、館の暗闇へ消えていった。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
スミー? ショック:なし スミー? ショック:なし
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 その人影からは答えが返ってこない。
 スミーだ!近寄ろうとすると、その人影は必死に手を振って何かを訴えかけている。
 …邪魔にならないように隠れていた使用人だった…。
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 その人影からは答えが返ってこない。
 スミーだ!隠れていたのはミセス・レジーナだった。よく見れば彼女の周りにはすでに何人かが数珠つなぎになっている。
(任意のタイミングでクライマックスフェイズに進むことができる)
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
スミー? ショック:全員 スミー? ショック:なし
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 その人影からは答えが返ってこない。
 窓際に立つ黒いドレスの、おそらく少女はカーテンの後ろに隠れており、その姿を伺い知ることはできなかった。
 少女が小さく笑った気がした。
 ハンドアウト『黒い少女』が公開される。
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 人影を求めて扉を開け部屋の中へ入った瞬間、貴方の身体は宙に浮き、そのまま階段を転げ落ちてしまった。生命力を1点失う。
 使用人たちが使用する、地下への通路の扉を開けてしまったようだ。
 ハンドアウト『地下室』が公開される。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
スミー? ショック:なし スミー? ショック:なし
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 人影を求めて歩き回った結果、どうやらヴァイオレット家の礼拝所へ迷い込んだようだ。
 ここだけは特別に蝋燭が灯されたままになっているが、暗闇に浮かぶそれは不気味そのものだ。
≪情景≫で恐怖判定を行う。
 ハンドアウト『礼拝所』が公開される。
「スミー?」
 暗闇に閉ざされた屋敷を慎重に歩き回りながら、貴方はそこに潜む影に声を掛ける。
 人影を求めて扉を開けると、それから妙な手応えがした。どうやら鍵を壊して部屋の中に入ってしまったらしい。
 その部屋は使われていないようで、扉の隙間からは、埃とかび臭い匂いが漂ってきている。
 ハンドアウト『封印された部屋』が公開される。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
封印された部屋 ショック:全員 礼拝所 ショック:全員
 その部屋は埃と黴が充満しているようだった。
 だが、それよりもその部屋からは何か不吉な印象を受け、扉の隙間から見えるその部屋は完全な暗黒に包まれていた。
 少なくとも、この中にはスミーの参加者はいないはずだ。
 部屋の中には何かが充満しているようだった。
 それは死の気配とも言うべきだろうか。
 古より積もった、凝り固まったモノがこの部屋の中には存在した。
≪恨み≫で恐怖判定を行う。
 この礼拝所はヴァイオレット家個人のものだが、元々、そこにあった礼拝堂を改築して、館の一部に取り込んだらしい。
 明らかに館の年代、様式よりも古いそれは荘厳な雰囲気というよりも不気味に見える。
 この礼拝所の祭壇には何か機械的な仕掛けがほどこされている。
 作動のさせ方は不明だが、暗闇の中でそれが作動すれば、おそらく祭壇の前に立つものを害する類のものに思える。
≪罠≫で恐怖判定を行う。
 このサイクルの終了後、クライマックスフェイズに進む。
ハンドアウト 秘密 ハンドアウト 秘密
黒い少女 ショック:全員 地下室 ショック:全員
 少女は相変わらずカーテンの後ろに隠れている。
 薄い月あかりの中、その少女の輪郭ははっきりしているのにも関わらず、どこか、存在感の薄い少女だった。
 スミーのルールに従い、貴方はその少女の手を握っている。
 もう長い間そうしているというのに、その手が温まることはなかった。
≪手触り≫で恐怖判定を行う。
 このサイクルの終了後、クライマックスフェイズに進む。
 そこは雑多な道具、食料や燃料を置く為の地下室で、使用人しか使わない部屋だ。
 外部から遮断されている為に暗闇と冷気に満ちており、手探りで部屋の中を探さなければならない。
 そこは行き止まりであるというのに、どこからか風を感じる。
 それだけではなく耳を澄ませば、自分の息遣いの他に、人以外の何かが蠢く気配を感じた。
≪機械≫で恐怖判定を行う。


館シーン表:

 このシナリオで使用するシーン表です。

館シーン表(2D6)
2  館の、おそらくアーサーか、他の館の住人の部屋に迷い込んでしまったようだ。
 館の他の場所に比べて生活感が漂っており、どこか居心地の悪さを覚える。
3  館の遊戯室には、ビリヤード台やカード台、その他様々な遊戯が出来る道具が一通り揃っている。
 普段は酒か煙草を片手に誰かが居る空間だが、今は煙草の匂いすらしない。
4  廊下に面するバルコニーから外を覗く。
 さすがにこの寒さでは外に隠れていることはないだろう。バルコニーから見える荒野はうら寂しく、霧が深くなっていた。
5  館にいくつあるか分からない客室の一つだ。
 掃除も行き届いており清潔な印象を与えるが、普段は全く使われることが無いことから、人が使う部屋であるにも関わらずその痕跡が全くない違和感がある。
6  屋敷の廊下は静かで、ひんやりとしている。
 アーサーの話では、最新のセントラルヒーティングなるものを採用しているらしいが、それにしても寒すぎる。廊下には霧のような白い靄まで漂っている。
7  エントランスホールは館の中心であり、吹き抜けの広大な空間だ。
 暗闇の中でも窓の多いこの空間は月明り、星明りが多く取り込まれ、幻想的な光景を作り出しているが、同時に影の濃い部分も多い。
8  サンルームは月明りを一杯に浴びて明るいはずだったが、外気が入り込んでいるのか別世界のように霧の中に沈んでいる。
 しかし、何より、そこは寒い。外気と同じぐらいの温度だ…。
9  ヴァイオレット館には何故か階段が多い。
 元は中央にある館だけだったものを後から段々と建て増しした為だとアーサーは説明したが、果して何故こんなところにある屋敷を建て増しするのだろうか。
10  館の1階部分の高い天井にまで届く書架が林立する、ヴァイオレット家自慢の書斎だ。もはや、書斎というよりも図書館と言ってもよいかもしれない。
 元々人気のない場所だが、今は完全に静まり返っている。
11  館に招かれた客が全員入っても、まだ余裕があるほどの大きさを誇る食堂だ。
 唯一、スミーの最中でも銀の燭台の蝋燭に火が灯されているが、食堂の全てを照らすには遠い。その灯りの前で、アーサーが呆けた様子でその火を見つめている。
12  完全な暗闇に包まれる。
 館のどこかを歩いているのだろうが、それが全く分からない。

シーン間怪異表:

 このシナリオでサイクルの最後に挿入する怪異表です。

シーン間怪異表(2D6)
2  廊下の向こうから馬の蹄の音が聞こえてくる。
 青い炎に包まれた馬が、貴方にまっしぐらに突進してきて、消えた。
 生命力を1D6失い、≪殴打≫で恐怖判定を行う。
3  誰かが隠していたか、あるいは忘れ去られたブランデーの瓶を見つけた。
 琥珀色の液体は美味しそうに見えるが、いつからそこにあるものかは分からない。
 ブランデーを飲む場合、2D6で7以上で正気度が1点回復する。6以下で生命点が1点減少する。
4  何かが背後に居る気がした。
 振り返ると、館の闇よりも濃い黒い影が貴方をすり抜けて、消えた。
 狂気を1枚顕在化する(無ければ影響なし)。
5  白っぽい塊が廊下を漂っており、乾いた小枝を折るような音が聞こえてくる。
 珍しいことだが、荒地でたまに見る球電現象が屋敷の中で起こっている。
6  貴方の背後を誰かが通り抜けていった。
 …そこには通り抜ける余地などないのに。
 正気度を1点失う。
7  黒い影を廊下の向こうに見つける。
 その影は、闇より濃かった気がするが、黒いドレスである可能性もある。
8  突然、何かに足を掴まれたように貴方は派手に転んでしまう。
 転んだ後は、どこからか忍び笑いを聞いたような気がした。
 生命点を1点失う。
9  まるでネズミが駆け回るような音が壁の中から聞こえてくる。
 アーサーの言っていたセントラルヒーティングとかいうやつのせいだろうか?
10  錆びに似た、生臭い匂いが鼻を突く。
 何か湿ったものを踏む感触が続き、どこからか何かが滴る音がする。
 知覚分野のランダムで恐怖判定を行う。
11  紅茶の良い匂いが漂ってくる。
 何故か、廊下にある机にはティーセットが置かれており、湯気を立てていた。
 紅茶を飲む場合、落ち着いた気分になり正気度か生命力が1点回復する。
12  どこからか赤子の泣き声が聞こえた。それは次第に大きくなり、貴方に近づいてくる。
 廊下を見渡しても、姿は見えない。…その声は、常に背後から聞こえてきていた。
 生命力と、正気度を1点失い、≪物音≫で恐怖判定を行う。