黒澄綾、『天球音楽』
黒澄綾とは桜嶺女学院内でファーストコンタクトを取ります。
基本的に黒澄綾とは探索者自身が直接コンタクトを取らない限り、連絡が付きません。女学生PCが綾に会いに行こうとした場合、音楽室に出向くことになります。
彼女は放課後は必ずと言って良いほど音楽室に居ます(実は彼女の家はそれほど裕福では無い為、ピアノと言う高価なものが家には無いのです。また親戚の家に厄介になっている、という事情もあります)。
音楽室に行くと、そこで綾はピアノを爪弾きながら楽譜を弄っています。
ピアノに向かっていても分かりますが、綾は平均的な女子学生よりも背の高い、病的な白い肌と漆黒の長い髪を持つ、美少女です。
PCが音楽室に入っても気付いた様子もなく、そのままピアノを弾いたり、時折、何かを歌いかけては止めたりを繰り返します。
(ここで《心理学》(心理学DC:15)のロールに成功すれば、綾が見た目は平静ですが、苛立っていることが分かります)
(もし、d20の場合に、ここで《読唇術》を用いても、具体的な言葉は分かりません。この歌にはまともな歌詞が無いのです)
そのまま、綾に話しかけたり、あるいは止めるようなことをしない場合、綾の声とピアノは次第にある程度の音楽となり、奇妙な歌になり始めます。この歌(『禍歌』)を聞いた場合、SANロールが必要となり、1/1D4のSANを失います。
なお、質問等をしても一応綾は答えてはくれますが、全く相手にしません。
山県雅子について尋ねても、「確かに私は声楽部でピアノを担当しているわ。だから部員が私のピアノを聞きに来てもおかしくは無いと思うのだけど」と答えます。
また、山県雅子との関係も、「同じ声楽部員である他は、それこそ、年下の子達が言うような関係は無いわ」と一蹴されます。
その他、何を聞かれても、「私にはよく分からないわ」か、あるいは、「私と何の関係があるのかしら」と言います。
(《心理学》ロール等をしても、綾が嘘をついているように思えません。実際問題として、綾は全く山県雅子については興味がなく、今は例の『天球音楽』を完成させることだけに興味があります)。
もしも、その楽譜を見た場合、そこには『the Music of the Spheres(天球音楽)』という題名が付けられており、「深海の番のクジラ」「緋色の不協和音」と言った理解しがたい文句がいくつか並んでいます。
この楽譜について尋ねても、「霊感、というのかしら。何か、そんな気がする言葉を書き込んでいるだけよ」と言った答えが返ってきます。
PCがあまりにもしつこい場合は、綾は「申し訳ないのだけど、私はピアノの練習がしたいの。下校時間一杯までね。もうそんなに時間が無いわ」というニュアンスの言葉を伝えてきます。
探索者の相手が終わると、綾は再びピアノに向かいます。もしも、そのままその場に残る場合は、もう一度SANロールが必要になり、0/1のSANを失う可能性があります。
(再度のSANロールに対して、プレイヤーから「慣れるのでは?」という指摘があった場合は、『禍歌』が少しずつ違う、と言うようなニュアンスを伝えてください。
『禍歌』はグロスとの接触が成るか、累積してSANが50減少するまで慣れる事はありません。常にグロスとの弱い接触が行われるのです)
この後、探索者たちが何度か黒澄綾の元を訪れることがあるかもしれません。
事態が進展していない場合は、特に情報を出す必要はありませんが、遠慮なく『禍歌』を聞かせて正気度を削ってあげてください。
謳う黒澄綾、『諸人こぞりて』
(このパートはある程度シナリオが進んでから、探索者達が『天球音楽』について疑問を持ち始めたことろで行ってください。
このパートは日常と、そして『諸人こぞりて』という意味深な歌を歌わせるだけなので、このパート自体が不要と判断した場合は、特に行う必要はありませんが、
行った方がより黒澄綾に対する思い入れは深くなると思われます)
ここでは特に情報を得ることが出来ません。さすがに綾本人の前でその話をしたり、あるいは山県雅子の話をすることも憚られるためです。
他愛の無い雑談や、声楽部の話、あるいは小幡とらのどうでもよい話が聞けるだけです(ちなみに小幡とらの機嫌を損ねると追い出されます)。
再度綾に会いに行くと、珍しく綾以外の女生徒たちが音楽室にたむろしており、その中には部長である小幡とらも混じっています。
どうやら真面目に(?)声楽部の活動が行われているようです。
しばらく他愛の無いお喋りが続いていますが、小幡とらが手を叩いて促すと、皆が素直にそれに従います。
綾の伴奏による賛美歌の練習が始まります。綾はピアノを弾いていはいますが、歌ってはいません。
小一時間ほど練習は続き、一旦休憩という事になります。
休憩が終わりごろ、一人の女生徒が綾に「何か歌って欲しい」というお願いをしているのが聞こえてきます。
綾はちょっと面食らったような顔をしていますが、その言葉に声楽部全員の期待のこもった眼差しが集中します。
しばらく悩んだ後、綾は観念し、やれやれと首を振った後に、おもむろに演奏を始め、そして『諸人こぞりて』を歌います。
諸人こぞりて むかえまつれ
久しく待ちにし 主は来ませり
主はきませり 主は 主は きませり
『禍歌』からは想像もつかない、天使の歌声と言う言葉を思わせる、よく響く高音で、澄んだ、それでいてボリュームのある歌声です。
伴奏もいつもの鬼気迫るものは無く、純粋に音楽を楽しんでいる感じがします。
歌は最後まで続き、終われば誰とも無く拍手が始まります。
歌い終えた綾はしばらくこの賞賛に驚いていますが、照れた様子で「練習を続けましょう」と言います。
この日の練習は滞りなく夕方に小幡とらの合図で解散するまで続き、終わった後部員は綾を含めて全員が帰っていきます(小幡とらが音楽室の戸締りを行う為、半ば強制的に追い出されてしまいます)。
再び黒澄綾、白昼夢
(このパートはある程度シナリオが進んでから、探索者達が『天球音楽』についてある程度理解してから行ってください)
再び、綾に会いに行くと、相変わらずピアノを前にしています。
そしてまたしても、例の歌を歌い始めますが、今回はさらに変った調子です。
もしも、この歌に聞き入ってしまった場合は、MPを1点消費し、下記の白昼夢の様な幻覚を見ることになります。
(ある程度理解しているので、黒澄綾の『禍歌』が始まった時点ですごい勢いで逃げていく、ということも可能ですが、なるべくそういうことは認めないようにしてください(笑))。
君は宇宙の彼方にいて、目の前には白と青の美しい惑星が見えています。
《知識》(【知力】DC:10)のロールに成功すれば、それが地球であることがわかります。
見ているうちに、地球に向かって別の惑星が宇宙から転がるようにして近づいていきます。
この惑星は地球より小さくて、恐ろしい赤い色をし、表面には髪の毛のように細くて黒いスジがヒビ割れのようにたくさんついています。
惑星がさらに地球に近づいて行くのを見ていた君は、大きなショックを受けます。惑星の海が突然四方の陸地におおわれて閉じてしまったからです。
君は真実を理解します。ソイツは、地球があまりに目の前に近づいたので、思わず目をつぶったのです!まさに悪夢の怪物です。
悪夢がさらにさらに地球に近づいていき、君は気を失います。
白昼夢を見た場合、SANを1/1D6失う可能性があります。また、《クトゥルフ神話》のロールに成功したとしても、ただ「この惑星怪物は今までにまだ知られていない旧支配者に違いない」ということがわかるだけです。
白昼夢が終わると、綾が満足げな、しかしどこと無く難しい顔をしています。
「・・・・・・まだ・・・・・・、もう少し、何かが足りない気がする。私の求める楽には、まだ、何かが・・・・・・」
黒澄綾の行方不明
四度(あるいはそれ以上)、黒澄綾に会いに行くと、何故か音楽室にその姿が見えません。
声楽部の部長の小幡とらか、真田幸に綾のことを尋ねると、しばらくは音楽室に姿を見せていないどころか、学校にも来ていない、ということが分かります。
特に綾が体調が悪そうだとか、そういうことは無い為、部長も真田も心配しています。
また、いつものとおりの無責任な風評では、「綾の周りに黒い洋服を来た怪しげな人を見た」「黒い洋服を来た怪しげ人が綾について聞き込みに来た」「フォードに乗り込む綾を見た」等、奇妙な情報も流れています。
綾の家については真田等から教えてもらえます。
綾の家は神田区、下町では無いものの、川向こうにある家です(現在の千代田区外神田の辺りになります)。
なお、教えてもらったのは実家ではありません。綾は帝都にいる親戚の家に厄介になっているのです。
もしもこの親戚の家を訪ねた場合、綾が行方不明になっていることを告げられます。
ここでは、その他の情報は手に入りません。一応、警察に届けてはいる、といった情報がもらえるだけで、親戚はあまり綾の捜索に熱心ではありません。
その他には、「黒い洋服を来た不審な男が綾を尋ねてきた。珍しく自動車(フォード)に乗っていた」、ということが聞けるだけです。