美紗崎美由、『月光教』について
彼女は江津森の庄屋的な存在であり、村を支配する『月光教』の祭祀を司る美紗崎家の跡取り娘です。
美紗崎家は珍しいことに女系の一族であり、代々の当主は表向きは男性を据えていますが、実質的には『月光教』の教祖『大鏡』である、女性の美紗崎家の人間が支配します。
この時代に美紗崎家には双子が生まれました。しかも、この双子は「母親に似すぎていた」のです。
姉の詩由はあまりにも母親に近かった為、幼い頃からシュブ=ニグラスに祝福されしものに近い形態をしており、徐々に人間としての生活に適応できなくなり、御山へと帰っていくことになりました。
それでも長子である詩由が取り仕切る必要があった為に、美由を詩由=『大鏡』として、表に出すようにしたのです。
美由は成長するにつれ、表向きはあまり変わりが無いように見えましたが、家の人間が自身を詩由として扱うことや、『月光教』の信仰により、元々少なかった正気を完全に失い、人格が破壊されて、自身が美由か、詩由か、あるいは他の誰かであるのかが分からない状態となっています。
彼女は外界から受ける刺激に反応して、美由であったり、詩由であったりするのです。これに気が付いた『月光教』を実質的に切り盛りしている天宮は、よい機会だと捉え、江津森だけの秘教であった『月光教』を外界へと進出を目論見ます。
今までは村の人間と、そこへ迷い込んだ人間のみを『月光教』の信者として、御山に潜むムーンレンズの番人の生贄として来ましたが、より積極的に信者を獲得しようと今回の帝都での活動を開始します。
美由は空っぽな状態です。ただ、在るだけ、というのが今の彼女の状態なのです。
詩由になれば『月光教』の教祖としてその教えを説き、舞台に上がれば台本の通りに演じます。美由の時は彼女にとって自由時間に近いのですが、浅草六区において、死んだか、御山の下に居ると思っていたPC@を見かけた為に、まずその様子を探ろうとします。
これは直接的に接触をしたり、あるいは彼女の使い魔であるゴーツウッドのノームを使うなどして行われ、PC@の記憶がないと分かると、今度は江津森に連れ戻す為に、つまりシュブ=ニグラスに祝福されしものへと変異させる為に動き出します。
これは珍しく彼女の一存であり、天宮にも報告はしていません。ただし、天宮の方は一度でもPC@を目撃すれば、元江津森の住人であったことに気が付きます。
浅草にて、美由の動き
美由の動きは流動的です。
キーパーの判断や、探索者の動きに合わせて、彼女を動かし各イベントを発生させたり、動かしたりしてください。
彼女は美由、詩由の両方を演じています。キーパーは複数の場所に同時に彼女が居たり、美由と詩由が伊一緒に登場するような状況が無いように気を付けてください。
また、彼女の記憶は基本的に美由、詩由で共有されていますが、無意識に共有しようとしていない記憶は共有されません。美由、あるいは詩由だけが知っていること、というのがあり得るのです。
詩由の状態では、光月町で『月光教』の教祖をしています。日中の大半は教団の施設の中で『大鏡』として過ごしている為、ほとんど自由はありません。
教団の外へ出る場合に、美由となっているのです。
PC@との接触
PC@が浅草に居る場合、敢えて姿をさらしてどういう反応を取るかを観察します(PC@が声を掛ければ寄って行きますし、声を掛けなければ気が付かなかったふりをして去って行きます)。
PC@の反応にもよりますが、基本的には良い印象を与える為にキャッキャウフフすることになり、『月光教』などについて尋ねられた場合は即座に話を逸らせたり、空とぼけたりします。
『月光教』のことは姉の詩由が取り仕切っているので、自分には分からない、『月光教』については村の秘教である為に、入門していない者には教えることができない等、美由から直接、『月光教』についての情報を得ることはできません。
あまりにも強硬な態度で美由に迫った場合、彼女は逃げ出し、以降、PC@には近寄ってこなくなります。
もしも、探索者達が暴力的な手段に訴えた場合は、彼女の護衛である『月光教』の人間が割って入ります。
PC@を探る
美由は使い魔であるゴーツウッドのノームを使ってPC@の動向を探ります。
浅草から離れたPC@の様子を見る為に、ノームを使います。
その日の浅草での探索を終えたPC@が自宅に帰るなどした後に、ゴーツウッドのノームを差し向け、妙な視線を感じると告げてください。
≪目星≫や、INT×5などのロールによって、隠れているノームを発見することが出来ます。
ノームは発見されると即座に撤退を開始します。
PC@が強いて追おうとした場合、彼らはその小さなサイズを利用して逃げていきます。探索者には、浅草方面へ逃げていった、とだけ告げてください。
ノームを追い詰めた場合、戦闘をしますが装甲が固い他は探索者の相手にならないでしょう(まともな攻撃手段を持たない探索者にとって、ノームの装甲は脅威です。ノーム側は基本的に逃走させてください)。
PC@や、探索者を探る
ノームが発見、撃退されるか、PC@が美由を疑い始める等した場合は、美由側もPC@を連れ戻すだけではなく、『月光教』を調査している存在としてPC@や、探索者の調査を始めます。
『月光教』の信者、シュブ=ニグラスに祝福されしものになっている者の中でも、変異の度合いの低いものか、ゴルゴロスのボディワープによって外見を人に近づけているものが、尾行の任に当たることになります。
探索者がシュブ=ニグラスに祝福されしもののように変異しているものだけを警戒している場合、これらの存在には気づくことが出来ません。
浅草の雑踏の中の場合、彼らは慣れている上に浅草という街の特性上、尾行されていることにも気が付きにくい為、探索者に≪聞き耳≫の判定を行わせてください。成功した場合は、何故か山羊のような獣臭がする、とだけ伝えて、近くにシュブ=ニグラスに祝福されしものが居るかもしれない、とだけ探索者に認識させてください。
夕方以降に十二階下方面か浅草公園方面へ探索者が赴いた場合や、尾行がある可能性を感じて人気の少ない場所等に移動した場合、≪目星≫等の判定で尾行に気が付きます。
尾行者側は探索者に気付かれたと感付くと、ノームのときと同じように即座に撤退を開始します。彼らの目的はあくまで探索者側の意図や目的の調査であって、無理をしてまで尾行する必要が無いのです。
彼らは『月光教』の信者で、シュブ=ニグラスに祝福されしものですが見た目は普通の人間とあまり差異はありません。
また、教団内でも下っ端である為に、大した情報を持っていないうえ、狂信的である為に、『月光教』の素晴らしさを探索者達に説いてきます。
(彼らはPCAが特高の権限を生かして拷問など行った場合、あまり痛痒を感じた様子が無く、身体が再生してしまいます。これらの様子を目撃した場合、1/1D3+1の正気度を失います)