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曳間の追跡 Pursue after Hikuma

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Pursue after Hikuma

「曳間の追跡」


「ハイエナや禿鷲の真似をするとは、いったいいかなる神なのだ。神ではなく、食屍鬼ではないか」
────────── C・A・スミス、「死体安置所の神」より


注意、あるいはお約束:
プレイしてみたい人、プレイするかも知れない人は読まないでください。読んで良いのはキーパーか、またはプレイする予定のない人だけです。うっかり目次を見てしまった人は、「記憶を曇らせる」の呪文でも使って忘れてください。万が一そのままプレイに参加したりすると、貴方の悪徳に誘われて隣のプレイヤーにイゴーロナクが憑依するかも知れませんよ。

そして当然ですが、このシナリオはフィクションです。
現実のいかなる人物、団体、そのほかもろもろのものと一切の関係はありません。

 本シナリオは下記のような構造となっています。
 まずはすぐ下の目次に目を通し、それからはじめにシナリオの概要と読み進み、シナリオの本体へ進むのが良いでしょう。


目次

■はじめに
 □シナリオのスペック
 □始める前に
  シナリオの傾向
  PC作成時の注意、立場
  探索者同士の関連付け
■シナリオの概要、真相、キーパー向け情報
 □キーパーへ
■登場人物(NPC紹介)
■シナリオ
 □導入部
  帝都での情報
   □怪想社、澤田大輔
   □作家、塚下治朗
   □日比谷図書館、菘絢乃
  津山へ
 □探索部:
  津山での事前調査
   □犬啼村について
   □布施源次郎
   □犬啼村への道筋
  犬啼村、施餓鬼寺
   □『施餓鬼寺』
   □妙大和尚と梓
   □本堂での食事
   □梓
   □施餓鬼寺の夜
   □寺の食事
   □地獄絵図
   □餓鬼穴
   □村の探索
  施餓鬼会の日
   □施餓鬼会
   □直会(なおらい)
   □本当の施餓鬼会
  途中で逃げる
  餓鬼穴へ
  餓鬼穴の探索
   □布施の死体
   □宴
   □教え
   □食事をする食屍鬼
   □闇に光る目
   □食屍鬼の梓
   □餓鬼穴の最深部、納骨堂の神
   □曳間との邂逅
   □地上
  逃走劇
   □脱出行
   □食屍鬼の追跡
   □曳間の追跡
   □食屍鬼のテリトリーの外へ
  光の世界、しかし・・・
 □事件の後、正気度の報酬
■データセクション
 □懐中電灯
 □村人、あるいは食屍鬼
 □納骨堂の神、モルディギアン
■謝辞、最後にちょっとだけ:


はじめに

シナリオのスペック

 本シナリオは、『クトゥルフ神話TRPG』向けであり、大正時代を取り扱った『クトゥルフと帝国』あるいは、本『帝都モノガタリ』を対象としたシナリオです。  プレイヤーの人数は2〜4人を想定しており、作りたてから数回の探索を経験した探索者向けにデザインされています。
 プレイ時間はキャラクターの作成を含まず、2〜3時間程度を想定していますが、運用によってはさらに時間を取る可能性があります(最大4時間程度)。

 また、本シナリオはダンジョン探索と、それに伴う戦闘が多く発生するシナリオとなっています。探索者は重武装、とまでは行きませんが、ある程度の武装と、戦闘関連の技能で備えてください。

始める前に

 実際のセッションを始める前に、これらのことに注意するか、プレイヤー達に直接告げてください。

シナリオの傾向

 本シナリオは、探索の要素は少なめで、戦闘とダンジョン探索が中心のシナリオとなります。
 絶望的な状況と、多数の敵、さらにはおそらく神と邂逅するという、ある意味オーソドックス(?)なシナリオです。
 今回は謎は少なく、探索者は生き残ることに主眼を置くことになります。しかし、だからといってまったく謎がないわけでもなく、探索の必要がないわけではありません。
 毎度ですが、ある程度、キーパーの方から誘導、あるいは具体的にこうすれば?と提示することも必要になってきます。
 キーパーは適宜(特に探索者の行動が止まってしまった場合等)、探索者を誘導するようにしてください。

PC作成時の注意、立場

 今回は、『曳間の肖像』からの続きを想定しています。
 この為、ハンドアウト的な探索者の注意、立場は前回より引き継ぐか、参照してください。

探索者同士の関連付け

 こちらもPC作成時の注意、立場と同様です。


シナリオの概要、真相、キーパー向け情報

 本シナリオは、『曳間の肖像』の続編となっております。
 もしも、単体で使用する場合は、導入部に独自の工夫が必要となりますので、注意してください。

 探索者達は失踪した曳間を追って、岡山の犬啼村(いぬなきむら)にある、施餓鬼寺に辿りつきます。
 しかし、そこは食屍鬼の村であり、その巣窟でした。
 彼らの祭祀である『施餓鬼会』の前に、脱出を試みるも捕られ、供物として、餓鬼穴に放り込まれてしまいます。
 探索者達は餓鬼穴からの脱出を図る中、食屍鬼の神であるモルディギアンを目撃し、そして完全に食屍鬼となった曳間と邂逅します。

 探索者たちが用心深い、あるいは臆病である場合は、村からの逃走劇となります。
 その場合は、キーパーも無理に餓鬼穴への投入は諦め、食屍鬼との撤退戦を行うようにしてください。

キーパーへ

 本シナリオは、『クトゥルフ神話TRPG』には珍しく、ダンジョン探索ものとなっています。
 事前準備に乏しい状態での探索となりますが、明かり以外の面ではあまり細かい点は気にしないようにしてください。
(演出として、時間経過による空腹を描くのは良いですが、実際のゲームに関わるペナルティ等、細かいことは基本的に無視してください)

 また、重要NPCの一人である『梓』は、キーパーの設定次第でさまざまに動きを変えます。
 これもこのシナリオの難点の一つなので、キーパーは事前に『梓』の立ち位置を決め、探索者達との関わり方を決めてください(『梓』の立場は流動的でもよいのですが、その場合は、シナリオ中の行動に矛盾が出ないように気を付けてください)。

 なお、食屍鬼を見て失う正気度は0/1D6ですが、このシナリオで失う正気度の大半は、『食屍鬼が引き起こす事象によって失う正気度』であり、『食屍鬼を見て失う正気度』と異なります。
 この点に注意して、探索者にそれぞれの正気度ロールを行うように指示してください(それぞれの事象は別々なので、食屍鬼を見るだけで慣れることはありません)。


登場人物(NPC紹介)

 ※ここに掲載されていないNPCについては、『曳間の肖像』の登場人物を参照してください。

曳間・“リチャード”・篤人(ひくま・−・あつと)、怪奇画家

 今回でもちょっとだけ登場する怪奇画家です。
 若いころに(今でも若いのですが)、イギリスに絵画の勉強に留学し、仲間内では「リチャード・曳間」と呼ばれていました。
 前回のシナリオの時点で岡山に逃避し、完全に食屍鬼となってしまい、犬啼村の餓鬼穴に、暗黒に帰って行きました。
 今回も、この餓鬼穴の中で遭遇するだけで、まだ結構な正気度を残していることもあり、探索者に対しては好意的で、逃げることを勧めてくれます。

STR 16 CON 14 SIZ 15
INT 15 POW 15 DEX 16
APP 0 EDU 16 SAN 16
耐久力 15 ダメージボーナス +1D4
武器:
 ※曳間は探索者には襲いかかってきませんが、念のため。
 かぎ爪  30% 1D6+db
 噛みつき 30% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
装甲:
 火器と飛び道具はダメージが半減します。
技能:
 穴掘り 40%、登攀 50%、隠れる 60%、跳躍 40%、聞き耳 60%、腐敗を嗅ぎ取る 60%、忍び歩き 70%、目星 80%、オカルト 80%、芸術(絵画) 90%、クトゥルフ神話 12%
呪文:
 モルディギアンの招来/退散、食屍鬼との接触、他キーパーが適切と思える呪文。
正気度喪失:
 食屍鬼となった曳間を目撃した場合、親しい立場にある人間は、1/1D8の正気度を失う可能性があります。そうでない場合は、通常の食屍鬼と同じ0/1D6となります。

妙大和尚(みょうだいおしょう)、『施餓鬼寺』の和尚

 妙にハイテンションな犬面の和尚です。ひどい猫背で、まるで戯画のような犬が僧衣をまとっているような印象を与えます。
 彼は非常に長命な食屍鬼であり、多くの屍体を喰らっている為、膨大な量の知識を貯め込んでいます(そして、外見もかなり人に近いところまで変異しており、APPが3まで回復しています)。
 この為、妙に達観した坊主のような様子と、俗っぽい雰囲気が同居するとともに、食屍鬼らしからぬ落着きとテンションを持つようになっています。
『餓鬼穴』の管理者であり、納骨堂の神『モルディギアン』の司祭でもありますが、穴自体にはあまり降りていかず、村を統制する立場となっています。

STR 18 CON 14 SIZ 12
INT 16 POW 15 DEX 14
APP 3 EDU 25 SAN 0
耐久力 13 ダメージボーナス+1D4
武器:
 かぎ爪  60% 1D6+db
 噛みつき 50% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
 柔術   70%
装甲:
 火器と飛び道具はダメージが半減します。
技能:
 穴掘り 60%、登攀 50%、隠れる 80%、跳躍 40%、聞き耳 90%、腐敗を嗅ぎ取る 90%、忍び歩き 80%、目星 70%、人間らしく振舞う 75%、仏教 60%、回避 40%、芸術(料理) 80%、クトゥルフ神話 24%
呪文:
 モルディギアンの招来/退散、食屍鬼との接触、他キーパーが適切と思える呪文。
正気度喪失:
 和尚は普通の食屍鬼よりもかなり人間に近い為、0/1となります。
 ただし、このシナリオから生還した探索者で、食屍鬼の生態を理解し、《アイデア》ロールに成功した場合は、彼が食屍鬼の中でも特に異質であり、そこへ至る経緯を思いつく為、1/1D8の正気度を喪失する可能性があります。

梓(あずさ)、捕らわれの少女、あるいは食屍鬼候補

 12〜15歳ぐらいに見える少女です。
 表向きは身寄りがない子供を寺で引き取った、ということになっていますが、近隣の村より買われてきた少女です(その為、姓がなく、正確な年齢も分かりません)。
 彼女は、近くの村が遠いこともありますが、村は食屍鬼の群れであり、捨てられる代わりに買われたということもあり、寺に住むしかない状況です。
 今のところひどい扱いは受けていませんが、食事に『甘露』が混ぜられていることに気が付いており、まともな食事が出来ていないため、かなり不健康に痩せています。
(これについて妙大和尚は、どこまで耐えられるか楽しんでいるとともに、飢えに負けて『甘露』を食せば、もう後戻りができないことも知っています)
※本来、梓は『岡山弁』を話します。
 シナリオ製作者の都合により、シナリオ中は標準語となっていますが、キーパーは可能ならば岡山弁を話すようにロールプレイしてください。

 キーパーは以下の二つから、梓の役割を決めてください(最初に決めておかず、シナリオの流れに従って流動的に決定しても問題ありません)。

 1.食屍鬼になることを耐えている。
  まだ『甘露』は食しておらず、外部の探索者に対しても協力的であり、可能であれば外に連れ出してもらいたいと考えています。
  ただ、シナリオ中、耐えられずに『甘露』を食してしまい、洞窟から抜けたところで、食屍鬼への変異の兆候が見られようになります。
  こちらの場合は、探索者とともに『犬啼村』から逃げ出すことを目的にします。

 2.飢えに耐えられず、『甘露』を食してしまっている。
  すでに『甘露』を食してしまい、食屍鬼となっています。
  探索者達に好意的、協力的に見えますが、妙大和尚の忠実な手下であり、食屍鬼の群の仲間です。
  探索者を陥れ、モルディギアンの生贄にすることを目的としています。

 ただ、1.2.のどちらにせよ、モルディギアンの元へ誘導したり、探索者を不利にする役目を梓には負わせてください。

人間側の場合、貧しい農村の子供

STR 7 CON 10 SIZ 9
INT 11 POW 10 DEX 12
APP 13 EDU 5 SAN 38
※食屍鬼や、村の様子を目撃している為、SANが減少しています。
耐久力 10 ダメージボーナス-1D4
技能:
 隠す 70%、隠れる 60%、聞き耳 50%、忍び歩き 60%、跳躍 50%、ナビゲート 50%

食屍鬼側の場合、食屍鬼となった子供

STR 13 CON 14 SIZ 9
INT 11 POW 10 DEX 16
APP 13 EDU 5 SAN 0
耐久力 12 ダメージボーナス±0
武器:
 かぎ爪  50% 1D6+db
 噛みつき 40% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
装甲:
 火器と飛び道具はダメージが半減します。
技能:
 穴掘り 30%、登攀 30%、回避 40%、隠れる 90%、跳躍 80%、聞き耳 70%、腐敗を嗅ぎ取る 40%、忍び歩き 90%、目星 40%
正気度喪失:
 梓はまだ姿形は人間のままの為、正気度の喪失はありません。
 ただ、何らかのきっかけで梓が食屍鬼として振る舞った場合は、0/1D6の正気度を喪失する可能性があります。
(特に親しくしていた場合は、その変異に衝撃を受け、さらに+1点の正気度を喪失します)

布施源次郎(ふせ・げんじろう)、ジャーナリスト、哀れな犠牲者

 どこからか犬啼村の噂を聞きつけた、フリーの新聞記者です。
 今で言うゴシップ記者のようなもので、怪しげな噂や、奇怪な噂を取材しては面白おかしく書き立てる男で、当然、人権意識やら倫理からは程遠い男です。
 村への馬車に同乗しますが、警戒をしていた為、途中で降りて村に侵入します。しかし、村全体が食屍鬼の村であるとは思っておらず、簡単に捕えられてしまいます。
 いわゆる犠牲者NPCなので、適当に扱ってOKです。あるいはわざと探索者達と仲良くさせて、減少する正気度を引き上げるのもよいでしょう(笑)

※布施の能力値はありません(犠牲者なので・・・)。


シナリオ

導入部

 今回は導入部は特に存在していません。
 前回の『曳間の肖像』からの続きを想定している為、そのまま澤田大輔からさらなる曳間の捜索を依頼されるか、あるいは探索者達が自ら捜索を続行するか、となります。

 もしも、本作を単体でプレイする場合か、あるいは何らかの理由付けが必要である場合(新規参加の探索者が存在する等)は、以下の導入を参考にしてください。

 怪奇画家、曳間篤人が行方不明になっていることが、出版関係者の間で話題になっています。
 彼は、ここ最近話題の『食事をする食屍鬼』で有名ですが、彼の不在中に個展を開いていた銀座の画廊に、ついに官憲の手が入り、その絵の他、数点の食屍鬼を描いた絵が押収されてしまいました(風俗紊乱とかそういう理由付けで)。
 また、彼の部屋も手入れを受け、ここからも絵が押収されています。
 この絵は本人に『回帰』と名付けられており、文字通り、食屍鬼へ退化する様が描かれています。
 これらの事件から、怪想社からは、さらに絵を依頼したい為に、曳間探して欲しいと、官憲の伝よりは、犯罪者に近いので探して欲しい、というような同じような依頼を受けることになります。
 また、このような事件があった為、出版関係、芸術関係者は、曳間の行方不明が今までに無い長期に渡っていることに気が付き、捜索が必要であると思い当たります。

帝都での情報

 このパートは依頼を受けたか、あるいは探索者達が曳間の捜索を続行した場合に、まずは関係者に話を聞くところになります。
 単純に『岡山』へ行かせるだけになるので、具体的に『岡山』、『江津森』、『犬啼村』、『施餓鬼寺』というキーワードをどんどん出して行きましょう。

□怪想社、澤田大輔
 怪想社の編集部員、前のシナリオの関係者である澤田に話を聞いた場合、「おそらく、『岡山』ではないかと思うんだ。失踪する直前に、『岡山』の『施餓鬼寺』にすごく興味を示していた」と探索者達に告げます。
 また、言葉を濁しつつも「おそらく、それは前にあったことと同じように、あの怪物が絡んでいるのだと思う。でなければ、先生はすでに・・・」と言います。

□作家、塚下治朗
 塚下も詳細は覚えていませんが、曳間から岡山に行ったという話を聞いた時、「確か、『施餓鬼寺』の『地獄絵図』を見たとか言っていた気がする。岡山のかなり山奥・・・、江津森とかいうところにある、なんとか言う村だった」と、聞けます。
 また、地獄絵図について、「例の曳間君の作品群にも影響を与えたらしいよ。本人もそう言っていた」と話します。

□日比谷図書館、菘絢乃
 岡山というキーワードを出すと、絢乃は以下のことを思い出します。
「そう言えば、関係があるか分かりませんが、曳間さんが調べていた本に、岡山の山奥にある寺、『施餓鬼寺』がありました。
 ずっとそう呼ばれていたようで、本当の名前は不明なのですが、『地獄絵図』と、それと寺の名前にもなっている『施餓鬼会』が有名らしいですが・・・、無理やり集めたような本なので、実際に有名かは怪しいところですね」
「確か・・・、(と、その本を取り出してくる)岡山の江津森、『犬啼村』だそうです」
 その本は、岡山のローカルな名刹や、文化、歴史を紹介する本であり、全く無名の本です。
 写真は無く、絢乃の言う記述が存在するのみです。

 その他のことについては、絢乃から情報を引き出すことはできません。
 あまりにしつこい場合は、『食屍鬼写本』を読んだらどうか、提案されます(もちろん、読んでも特に手がかりはありません)。

津山へ

 大正期には帝都から本州の太平洋側の都市部には列車が大体通っており、岡山方面に行くにもそれほど不便ではありませんでした。
(まあ、東京−大阪、大阪−岡山、岡山−津山と言った経路を取る必要がありますが、これは現代でもあまり変わらないところです)
 鉄道を使っても2,3日は掛かるところですが(特急を使って1日?)、ここら辺はあまり重要でないので、キーパーはあっさり端折ってしまいましょう。

探索部:

 津山に到着した探索者は、本格的な探索を開始します。
 とは言っても、『犬啼村』に到着するまではあまり時間を掛けず、探索者達の行動をある程度制限した方が良いでしょう(『犬啼村』に入ってからなら逃げ出しにくい状況になりますが、入る前に『行くのを止める』という選択肢も無きにしも非ずの為・・・)。

津山での事前調査

 施餓鬼寺のある『犬啼村』に一番近い都市が岡山県の津山となります。
 旅の疲れもあり、正確な場所も分からない為、一旦ここで情報収集の必要があります。

□犬啼村について
 津山で犬啼村について調べた場合、以下の情報を得ることができます。
 キーパーは探索者の情報収集の手段に合わせて、適宜コミュニケーション系のロールを行わせてください。
 特に隠している、難しいことでもない為、+20%程度の上方修正を行っても構いません。

 ・馬車で1日程度掛かる山奥の村。『江津森』の中の村。
 ・寒村。非常に貧しい村。ただ、岡山ではそれほど珍しくない。
 ・なんとかいう画家が何度か行っていた話がある(もちろん曳間のことです)。
 ・津山とも、近隣の村ともほとんど交流が無い。地理的にも隔絶されたところ。
 ・寺があるが、それほど有名なわけではない。
 ・週に一回ぐらい津山に出てくるが村人がいるが、ひどく無口で陰気。
  用事を済ませたらさっさと帰っていく。

□布施源次郎
 津山で犬啼村のことを調べていると、一人の男が声を掛けてきます。男は、布施源次郎と名乗り、新聞記者みたいなものだと名乗ります。
 布施も、犬啼村に行くようなことを言い、例の『地獄絵図』や、曳間のことを匂わせますが、実際、布施も犬啼村に行ったことはない為、大した情報は持っていません。
 探索者は布施と協力しても特に得られるものはありませんが、彼はとりあえず仲良くやろうや、という感じで、一緒について回ります。

□犬啼村への道筋
 犬啼村へ徒歩で行くことを考えた場合は、約3日程度山道を歩く必要があります。
 その場合、食料の確保等も難しい為、一番楽なのは、村から来る馬車に同乗させてもらうことです(探索者が気が付かない場合は、布施から提案すればよいでしょう)。
 馬車、とは言いますが、大八車に毛が生えた程度の代物ですが、歩くよりかはかなりマシになります。
 《信用》または、《説得》のロールに成功すると、馬車の御者をうまく説得したことになり、同乗が認められます。
(失敗した場合は、キーパーはこれまた布施を利用してください。『犬啼村』への往路でサバイバルをすることは極力避けるように)
 馬車は朝早く津山を出て、夕方に犬啼村に着きます。この為、交渉の翌日に出発ということになります。

 馬車が行く道は、最初から舗装もなく地面がむき出し、ほとんど山の中となります。
 徐々に森が深くなり、山を越え、途中にも村はありません。
 道々、馬車を操る犬啼村の住人から情報を聞きだそうとすると思われますが、彼は寡黙でほとんど話しません(探索者の質問に、首を振って答えるか、まったく反応しないかのどちらかです)。
 ちなみに、この村人はあまり食屍鬼化が進んでおらず、外見は犬っぽいものの、普通の人間に見えなくもありません(その為に、買い出しの任務を仰せつかっていることもあり、ここでは特に正気度の減少はありません)。
 村に行く最後の分かれ道で、布施は「俺はここまでだ、じゃな」と降りていきます。
 この最後の分かれ道は切り立った崖の間を通って行くもので、村への出入りは険しい山を越える以外は、この道を通るしかないことに探索者が気が付きます。
 この崖の間を抜け、村を見渡せる斜面の上に出るのですが、一望して『犬啼村』が見事に何もない寒村であることが分かります。

犬啼村、施餓鬼寺

 村には、夕方の日暮れの直前に到着します。
 見るからに貧しい村で、宿泊施設や、その他の商店等、そもそもお金を使うところが見当たりません。
 馬車の御者に泊まるところについて尋ねた場合は、黙ったまま、険しい山の山腹にある寺を指差します。
 すでに日暮れである為、村の探索を行った場合、真っ暗な夜となり、寺にたどり着くことすら難しい状態であることは想像に難くありません。
 探索者が野宿をすることを厭わないことも考えられますが、村にある唯一の寺が、曳間の手掛かりである『施餓鬼寺』であることは間違いない為、キーパーは探索者にまずは寺へ行くことを勧めてください。

□『施餓鬼寺』
 犬啼村にある寺で、そもそも正式な寺ではない為、正式な〜山〜寺のような名称は無く、ただ施餓鬼寺と呼ばれており、妙大和尚も施餓鬼寺と言います。
 寺は山の斜面に張り付くように立っており、奥へ行くほど高い位置にあります(つまり、『餓鬼穴』が最も高い位置になります)。
 寺はかなり古く、明らかに手入れが行き届いておらず、あちこち荒れた印象はありますが、生活感が妙に存在し、無人の荒れ寺はないことは見て取れます。
 山門も開け放たれており、奥からは食欲を刺激するなんとも言えない良い匂いですが、同時に生臭い匂いが漂ってきています。


『施餓鬼寺』MAP

 本堂・・・施餓鬼寺の本堂です。本尊である阿弥陀如来が安置されていますが、脇には他の仏像もなく、がらんとした印象を受けます。『地獄絵図』も本堂に置かれていますが、通常は閉じて奥に置いてあるので、和尚の指示がないと見ることはできません。
 宿坊・・・外来の僧や、参拝客が泊まるための施設です。板敷きで、特に仕切りも無い、大きな部屋があるのみです。床にはかなり埃が積もっており、あまり使われている様子はありません。
 僧房・・・寺の住み込みの僧、関係者が普段の生活に使う施設ですが、現在は、梓が一人で使っています(とは言っても、彼女は持ち物が何もない為、ただ寝るだけの為のスペースなのですが・・・)。
 方丈・・・和尚の個室です。中には和尚の僧衣や仏具の他、目立つものはありませんが、経文や経典に混じって、和綴じの『食屍鬼写本』が置かれています(特に家捜しをした場合に、《目星》のロールに成功すると発見できます)。
 餓鬼穴・・・『施餓鬼会』が行われる、地下へと続く洞窟の入り口です。

□妙大和尚と梓
 門から声を掛けると、奥の方から妙に陽気で愛想のよい坊主が現れます。
 ひどい猫背で、でっぷりと太っていながらも、身軽な、フットワークの軽い感じと、まるで戯画のような、犬が和尚の格好をしているような印象を与えます。
 妙大和尚を見た探索者は、あまりの異相に正気度ロールを行い、0/1の正気度を失う可能性があります。
 妙大和尚は食屍鬼ですが、人界との接点として近隣の村との折衝を行っている関係上、異相ながらも愛想のよい坊主で通ってしまっています。
(近隣の村も含め、江津森では異相や異形の容貌を持った人間が多いことも一因なのですが・・・)
 もしも、『食屍鬼写本』を読んで影響を受けている探索者が居る場合、この妙大和尚からは自分と同じ感覚を覚えることを告げてください。
 探索者がよほど変なことを言わない限り、和尚は「当寺を預かる、妙大と申す。遠いところから御苦労なことで」と、基本的には歓迎をします。
 泊まるところがないことを告げれば、和尚は快く、「それでは当寺にお泊まりなされ。粗末ながらお食事も用意しましょう」と言います。
(和尚は事前に、探索者たちが村に入っている報告を受けています。その為、全く驚いた様子もありません)
 寺に泊まることが決まると、和尚は奥に向かって、「梓、御客人じゃ。本堂へ案内しなさい」と声を掛けます。
 その声に答えて、寺の奥から一人の少女が現れます。不自然に痩せていることもあり、非常に不健康な印象を与えますが、村人や和尚と異なり、犬っぽい印象はありません。
 ここで探索者は何か尋ねる可能性が高いですが、和尚は「まあまあ、まずは本堂へ。食事をしながらでも伺いましょう」と、促します。

□本堂での食事
 本堂に明りが灯されており、がらんとして仏壇以外は何もない本堂を照らしています。
 すでに人数分用意されていた食事を、案内した後に梓が運び込みます。
 食事を運び終えると梓は頭を下げて去っていきます。入れ違いに妙大和尚がやってきます(この場で、梓との会話はさせないようにしてください)。
 食事をしながら、和尚は世間話がてら、探索者達に犬啼村へ来た理由を尋ねたり、以下の寺の縁起を語ったりします。
 食事の後は、また和尚は梓を呼び寄せ、僧坊へ連れていくように指示します。
 探索者が地獄絵図が見たい、と探索者が言った場合は、「それは明日、お見せしましょう。今日はもう遅い」と、言います。
「ああ、それから貴殿らは運が良いですぞ。明後日、『施餓鬼会』が行われまする。是非とも、参加下され」と、僧坊へ案内される探索者達の背中に声を掛けます。

・寺の縁起
 過去、おそらく江戸時代において、岡山でも特にひどい飢饉があった時に、旅の途中の名もない僧侶が流れ着き、祈祷によって仏の食べ物である『甘露』を得て、村人達の飢えを癒し、救った。その徳を称える為に、建てられたのがこの寺である、ということを語ります。
 ただ、その後に、「それがですな、その後、寺を継ぐ僧も無かったようで、儂がこの寺に来るまでは荒れ放題。なんとか持たせておる次第じゃよ」と、笑います。
 さらに、「ま、当寺が施餓鬼寺と呼ばれるのも、その僧が、そう言った時期に、餓鬼が食物を食い荒らし、それを裏手にある『餓鬼穴』に鎮め封じた、というありがたい話が起源ですな」と言います。
(妙大和尚は当然偽物の僧侶ですが、説法には慣れています。しかし、この場ではざっくばらんというか、かなり罰当たりな話し方をします)

・曳間について
 和尚に曳間について尋ねた場合、「曳間殿?画家の方ですかな?前に何度か当寺を尋ねられたが、最近は見ていないですな」と答えます。
 人間の曳間は見てないので、《心理学》のロールに成功した場合でも、うそではないということになります。

・梓について
 和尚は近隣の村から、身寄りがない子供を引き取っていると答えます。
 これだけの寒村でも、まだ子供一人を養うぐらいはまだ出来る、といったようなことを言い、妙な笑顔を浮かべます。

キーパーへ:
 この寺の縁起で登場する僧は食屍鬼であり、『食屍鬼写本』を携えたモルディギアンの司祭です。
 飢饉のときに食した甘露というのは、屍食の儀式を示唆しており、彼は自らそれを行い村人にも広めました。確かに、飢えを凌ぐ為に仕方ない、ということもありましたが、儀式化した屍食の習慣は度々飢饉が襲うこの山奥の村で定着し、寺を中心とする儀式として現在までも残ってしまいました。
 それによって村自体は食屍鬼化し、また閉鎖された村での近親婚を繰り返すことで、さらにさらにその血が濃くなっています。
 また、餓鬼穴は食屍鬼化した村人達が暮らしやすい空間であり、『食屍鬼写本』に従い、モルディギアンを召喚して、その祭祀を行う場です。

□梓
 僧坊へ案内する途中、梓に話しかけることができます。
 ただ、彼女は本堂が遠くなり、僧坊の中へ入るまでは話そうとしません。探索者は彼女が何かに脅えている、警戒していることを感じ取ることができます。
 梓は僧坊に入ると、梓は聞き耳を立てるように辺りの様子を伺った後、探索者達に話しかけます。

「私はこの村に買われてきたのです。
 和尚は、身寄りのない親戚を引き取った、と仰ったかと思いますが、口減らしの為にこの村に売られたのです」

梓が普通の人間の場合:
「この村は普通ではありません。
「和尚は耳がとてもよいので、あまり話すことが出来ません。この会話も聞かれているかもしれない。
 十分に気を付けてください」

梓が食屍鬼側の場合:
「でも、それも仕方の無いことです。
 ここには食べ物があります。食べなければ生きていけません。
 前に居たところよりも、こちらの方がまだマシなのかもしれません」
 
 口早に言うと、本堂から和尚の呼ぶ声がし、梓は去っていきます。

 なお、翌日に梓の姿を探しても見つかりません。和尚に尋ねた場合は、「ああ、梓は、昼間は寺の為に働いてもらっておりましてな。寺の用事をやってもらっておるよ」と言います。
 探索者が何とかして、梓から話を聞く機会を作ろうとするかもしれませんが、基本的に梓は寺におり、和尚から探索者達の前に出ては行けないと言いつけられています。
 忍び込む、あるいは何らかの口実を設けて梓と会った場合、その後のことを考えて梓のほうから避けて行きます。
 梓が普通の人間である場合、以下の情報のみを探索者に教えます(梓も村について知っていることは少ない)。

 ・村人全員がおかしいと思う。
 ・和尚はああ見えても、村人を統率する立場にある。
 ・和尚の言うことを聞かない村人は居ない。
 ・餓鬼穴には何かがいる。

□施餓鬼寺の夜
 施餓鬼寺に泊まり込んだ夜に、夜中に起きている探索者に対して、《聞き耳》のロールを要求してください。
 成功した場合は、僧坊の近くに何か居る物音を聞きつけます。外に気を配った場合、どこからか、夜の闇の中から声が聞こえてきます。
「こんなところまで追ってきてしまったか・・・」
 無理矢理絞り出しているような声で、以前の曳間の声とは思えませんが、間違いなくそれは曳間の声です(食屍鬼化しているので、普通の言葉は話しにくいのです)。
 曳間は探索者とは会話はしません。探索者が曳間だということに気が付くと、一方的に、「この村は危険だ」、と告げ、「早く逃げろ」と言いかけたところで、他の誰かが来る足音がし。そして、曳間の気配が逃げる音がします。
 僧坊に顔を出した和尚が、「む、なにかありましたかな?」と、探索者に問いかけます。

□寺の食事
 寺では『精進』と称された食事が日に3度出ます。
 食事は梓が運んできており、「寺の自慢の精進です」と言います。
(梓が食屍鬼側でない場合は、《心理学》のロールに成功した場合、言わされていることに気が付きます)
 料理はどれも生臭に見え、実際の味や歯応え等も本物にかなり近いです(実際は、本物であり、一部が本物に似せた精進ですが、それには『甘露』が使われています)。
 夜の食事の場合は、本堂で妙大和尚と一緒に食事をすることになります。その時は、「当寺の自慢の精進ですぞ。味も歯ごたえも皆、本物のようでしょうぞ」と言います。
 キーパーは、探索者が何度村で食事を取ったか、カウントしておいてください。

□地獄絵図
 寺の本堂に飾られている、二艘八曲の屏風です。
 地獄絵図ですが、その主題は餓鬼道であり、その様々な様子が描かれていますが、餓鬼達の多くは死体に群がってそれを食している場面となっています。
 全体に暗い色が使われている中で、地獄の火炎と、死者を喰らう餓鬼達の口周りの赤が妙なコントラストを描いており、曳間の絵とは似ても似つかない日本画なのですが、何故か同じ印象を受けます。
 それは食屍を同じくテーマにしていることもあるのですが、妙なリアリティがこの地獄絵図にはあることが、同じ印象を与えているように感じます。
 この地獄絵図を見た場合、正気度ロールを行い、0/1D3の正気度を失う可能性があります。

《知識》ロールに成功すると、通常の地獄絵図にはこのような場面が無いことに気が付きます。
 また、描かれている餓鬼達は顔が犬に似ている印象を受け、それは屍体に近ければ近いほど、その特徴がはっきり表れています。

 地獄絵図について、和尚に尋ねた場合、以下のような情報を得ることができます(観光客向け(?)の説明なので、特にロールの必要もなく話してもらえます)。
「当寺に古くから伝わるもので、いつの頃からのものかは分からないものでしてな。
 ただ、少なくとも江戸期、もしかしたら室町時代にまで遡るものかもしれない、貴重なもので、これを見る為にわざわざ遠くから来る客人もおられるのですよ」
「見ての通り、地獄を表したもので、これを持ち出して説法をすることもある」
 餓鬼が犬のようだと指摘した場合は、軽く笑いながら、「そうですかな?そのように見えるかもしれませんな」と受け流します。

キーパーへ:
 岡山などの貧しい山奥の村では、飢饉はよく起こっていました。
 犬啼村では、その中で食人が儀式化されて寺に残っており、地獄絵図はそれを物語っています。
 曳間は、それに興味を持っていたからこそ、この村の寺へ来ていたのです。

□餓鬼穴
 餓鬼穴を封じた、という穴です。山の斜面にある穴を大きな石組で補強したもので、苔むしており、寺と同じぐらい昔からあるものであることは察しがつきます。
 中の穴はかなり深く、傾斜しています(道具なしでの、登攀はかなり難しい角度です)。
 なんらかの明かりで照らしてみても、底は見えません。
 顔を近づけると、微かな獣のような香り、あるいは腐った肉のような香りがします。
《聞き耳》のロールに成功すると、餓鬼穴の底の方から風に乗って何かが蠢くような音が聞こえてくることに気が付きます。
 このことを和尚に訪ねても、「大方、野生の動物が入り込んでいるだけでしょう。山の裏手につながっておりますからな」と言います。
 また、《目星》、《追跡》のロールに成功すると、ごく最近、餓鬼穴の辺りを踏み荒らしたような痕跡に気が付きます(布施の屍体を餓鬼穴に放り込んだ跡です)。

□村の探索
 探索者が村に出て情報収集や、あるいは他に目立つものは無いか、探す可能性は十分にあると思われます。
 ただ、村人はほぼ食屍鬼であり、またこの山奥の寒村には見るべきものは寺以外にありません。
 村人の警戒心は非常に強く、情報収集にはまず《信用》のロールが必要で、さらにその上で、探索者の手段に合わせたコミュニケーション系のロールを行わせてください。
 ただ、成功しても得られる情報は基本的にありません。
 村についての一般的な知識のみで、以下の通りです。

 ・基本的に農業で暮らしを立てている。
 ・めったに外部から人が来ることはないが、この前、なんとか言う画家が来ていた。
 ・近くに村はない。
 ・村人もずいぶん少なくなってしまった。
 ・近いうちに『施餓鬼会』があると、和尚が言っていた。

 これ以外のことは、村人は特に知りません。当然、『施餓鬼会』の内容についても話そうとはしません。
 曳間について話を聞いた場合は、前に村の外部の人間が寺に来ていた、ということだけは聞き出せます。
 村人とコミュニケーションを図る努力は基本的に無駄ですが、彼らを観察している探索者は、《アイデア》のロールに成功すると、村人の多くに、犬のような特徴があることに気が付き、それはつまり食屍鬼への退化の兆候であることに気が付きます。
 また、《人類学》か、《生物学》のロールに成功すると、村人のほとんどが親戚のような肉体的特徴の相似が見られ、近親婚が繰り返されていることが明らかに分かり、同時に原始的な退化、兆候が見られることに気が付きます。

 寺と村の両方を見た場合は、《アイデア》ロールに成功すると、この村には墓地が無いことに気が付きます。
 これだけの寒村でも、さすがに墓地はないとおかしいことに気が付きます。山の方、寺を見ても、墓地らしきものは見当たりません。
 これはもちろん、村人は死ぬ前に『餓鬼穴』へ食屍鬼として入るか、あるいは死体として投げ込まれるかの二つだからです。

施餓鬼会の日

 探索者が村に着いてから二日後、『施餓鬼会』が催されます(キーパーの判断で、早めたり、遅くしても構いません。ただ、遅らせた場合は、探索が冗長にならないように気を付けてください)。
 これは、妙大和尚が本物の『施餓鬼会』を真似たものであり、屍食の儀式で、そしてモルディギアンへ供物を捧げる儀式でもあります。

□施餓鬼会
 餓鬼穴の周辺には、30人近い村人が集まってきています。その中の数人が鐘と太鼓を持っています。
 穴の前に、施餓鬼棚を作り、そこへ水(浄水)と、供物を置き、その前で和尚の読経が響きます。
 派手な太鼓と鐘の響く読経なのですが、どことなく陰気な雰囲気が漂っており、参加している村人もむっつりと黙りこんでいます。
 和尚の読経のみが響き、太鼓と鐘の音が一層大きくなる中、《聞き耳》のロールに成功すると、餓鬼穴の中から、何か獣のような叫び声が聞こえてくることに気が付きます。
 この声は和尚の読経に応えるように、響いており、読経の声が鎮まるのに合わせて、叫び声も静かになっていきます。
 村人がほぼ総出で、鳴り物ありの非常に派手な法会であるにも関わらず、どこか空々しいものがあり、読経が終わると妙大和尚もあっさりと、「さて、直会にしましょうかの」と、餓鬼穴から離れて寺へと降り始めます。

□直会(なおらい)
 直会とは、神人会食の儀式であり、神と人間が同じものを食べる、という儀式です。
(ちなみに、神社の儀式なのですが、なぜかこの寺では行われています)
 直会は餓鬼穴から寺の本堂に戻ってから行われます。この席で、甘露と、またいつもの精進が出されます。
(一応、般若湯ということで酒も出ます)
 参加している村人の多くは無言であり、貪る様に食事を進めます。
 この食事には痺れ薬が入っており、食べた場合はPOT16の毒として、CONとの対抗ロールを行わせてください。失敗すると体が麻痺して動けなくなります。
 痺れ薬が効かないか、『甘露』を食するのを頑なに拒否する探索者が出た場合、和尚は面倒なことをすっぱり諦めます。
「少々手荒になるが、ま、仕方の無いことよ」と、村人に残った探索者の捕縛を命じます。
 村人(食屍鬼)と、探索者達の戦闘になりますが、一応、降伏することも可能です。
 何らかの火力に優れた探索者が居る場合は、この場で食屍鬼達に捕まらない可能性があります。
 この場合は、素直にキーパーは探索者の捕縛を諦め、『■逃走劇』へと繋げてください。

□本当の施餓鬼会
 痺れて動けないか、捕縛された状態で探索者達は餓鬼穴へと運ばれます。
 餓鬼棚は片づけられており、餓鬼穴を直接の前にして、妙大和尚の読経が響きます。これは前のものとは異なります。
 《知識》か《仏教》のロールに成功すれば、この読経がそれらしく聞こえるだけで、どのお経にも合っていないことに気が付きます。
 《クトゥルフ神話》か、《言語学》ロールに成功した場合、この読経はおそらくインド、中国、日本と言った仏教文化圏の言葉ではない何かを、言語化したものであり、おそらくそれは、神話群の中の何かであることに気が付きます。
 なお、それに気が付いた場合は、正気度を1点喪失します。

 読経が終わると、和尚の手ずから『甘露』が村人にまかれます。争うように村人は『甘露』を奪い合い、次第に飢えた目で探索者達を見るようになります。

『甘露』がひとしきりまかれた後、和尚は探索者達を振り返って告げます。
「では、本日の締めくくり、『餓鬼穴』の主へ、とびきりの『甘露』を捧げましょうぞ!」
 和尚が言うや否や、村人が探索者達を担ぎ上げ、次々と『餓鬼穴』へ放り込んでいきます(放り込む直前に、捕縛している探索者の縄は解かれます)。
 その中には、梓も混じっています。
 この後は、『■餓鬼穴へ』と続きます。

途中で逃げる

 警戒しすぎたか、臆病になり過ぎた探索者達が、どこかのタイミングで逃げ出す可能性は十分に考えられます。
 この場合は、寺に居る場合、まず寺を出る前に、探索者全員が《忍び歩き》のロールを要求され、一人でも失敗した場合は、必ず妙大和尚に発見されます。
 全員が成功した場合は、次は村を通り抜けるか、裏手の山を登るかの2択になりますが、村を通り抜ける場合は《忍び歩き》のロールが3回必要とされ、失敗した場合は村人に発見され、同時に有無を言わさず捕獲対象となります。
 村人(食屍鬼)×2D6との戦闘を行い、村人を全員打ち倒した場合は、『■逃走劇』へ、探索者が場合は全員が戦闘不能となるか、降伏した場合、『■餓鬼穴へ』と続きます。
 裏手の山に逃げた場合、まず《幸運》の1/2のロールを行います(代表者1名のみ)。成功した場合は、続けて《ナビゲート》のロールを行い、成功した場合は無事に裏手の山を抜けることが出来ます。
 失敗した場合は、村に戻ってしまい自動的に村人に発見されます。こちらも同じく村人(食屍鬼)×2D6との戦闘を行い、村人を全員打ち倒した場合は、『■逃走劇』へ、探索者が全員戦闘不能となるか、降伏した場合は、村人に担がれて餓鬼穴に放り込まれ、『■餓鬼穴へ』に続きます。

餓鬼穴へ

 餓鬼穴はかなり急ではあるものの、滑り落ちていく為、大きな怪我をすることはありません。
 《跳躍》のロールに成功した場合、ダメージはありませんが、失敗した場合は、1D6点の耐久力が減少します。
 餓鬼穴を落ちる途中、落下の浮遊感とはまた別の空気の密度の違う箇所に突っ込んだような、違和感と浮遊感、酩酊を覚えます。
 『餓鬼穴』は半分、夢の世界へ沈んでいる為、このような妙な感覚を覚えるのです。この異様な感覚に、0/1の正気度を失う可能性があります。
 なお、この坂は登攀の道具があれば通常の《登攀》のロールで上ることも可能ですが、それがない場合は、-40%の修正を受けます。
 ただ、仮に上ることに成功したとしても、餓鬼穴には二人の村人(食屍鬼)が配置されている為、穴から出る前にまた突き落とされますが・・・。

 痺れ薬を飲まされていた探索者も、穴に落ちて30分も待てば、痺れは回復し、普通に行動可能になります。

 梓は、餓鬼穴に投げ落とされた時に足に怪我をしてしまい、一人で歩ける状態ではなくなってしまいます。
(梓が、食屍鬼側の人間である場合は、探索者達の足を遅くする為、そういう振りをしているだけですが、そうでない場合は、本当に怪我をしていることにしてください)
 ただ、どちらにせよ、梓は探索者達を最深部に誘導するようにしてください。それが故意なのか、無意識なのかなだけで。
(餓鬼穴は山頂部に位置しています。
 洞窟は下り勾配を持っている為、下へ下へと誘導しても、それほど怪しくは無いはずです・・・)

 探索者が梓を見捨てる可能性は皆無ではありませんが、もしも梓に肩を貸す、背負うなどした探索者は、回避を含めた各種運動系のロールに-40%のペナルティを与えるようにしてください。
(咄嗟の場合に、梓を見捨てる、という行動は可能で、ペナルティを受けずにロールはできます。この場合、梓はその見捨てられた場所に無条件で残り、その被害を受けることになります)

餓鬼穴の探索

 今回、餓鬼穴の地図は示しません。
 下記のイベント群と合わせて、キーパーで自作するか、その場ででっちあげるのもよいでしょう。
 餓鬼穴の内部では、定期的に《ナビゲート》のロールを行い、失敗した場合は、地図がうまく書けず、迷ってしまったことにしても問題ありません。
 磁石もなく、太陽も出ていない為、方角も分からない状態となります。
※餓鬼穴の中は天然の洞窟が入り組んでおり、いわゆる『通路』と『玄室(部屋)』のダンジョン構造になっています。

□布施の死体
 探索者が投げ落とされた隣の部屋に、布施の食い荒らされた死体を発見します。
 特に内臓部分がするどい牙を持つ動物に食い荒らされたようになっており、また体の各部位の欠損も激しく、一見すると人の死体のようには見えないぐらいの荒れ具合です。
 この激しく損壊した死体を目撃した探索者は、1/1D4の正気度を失い可能性があります(特に布施と親しくしていた場合は、1/1D6)。
 死体を調べた場合、《医学》のロールを行わなくとも、死体はまだ新しく腐臭はすでに漂っているものの、ここ1日の範囲ぐらいのものだということが分かります。
 《医学》のロールに成功した場合、これは死んだ後の損壊であり、傷跡はおそらく、屍体を食したのであろうことに気が付きます。
 《医学》のロールに成功した探索者は、0/1D2の正気度を喪失します(死体の状態と、村人からある程度予想の付く事実である為、正気度の喪失はかなり軽減されます)。

□宴
 前方の部屋から、食屍鬼が激しく動いている気配が伝わってきます。
 今のところ、こちらには気がついていないようなので、《忍び歩き》のロールは必要なく、こっそり部屋をのぞくことができます(一応、キーパーはロールをさせて、失敗したが相手が気付いていない、としても問題ありません)。
 部屋の中には、周りに比べて大きな食屍鬼同士が中央で争っており、周囲の食屍鬼がそれを見ている様を目撃します(食屍鬼は大型が2体、通常サイズが1D6体です)。
 争いは本格化し、片方の食屍鬼の息の根を止めてしまいます。そして、殺した方の食屍鬼がそれを喰らい始めると、周りで見ていた食屍鬼達も群がり始め、『宴』が開始されます。
 この様子を目撃した探索者は、1/1D6の正気度を喪失する可能性があります。
 彼らは食事に夢中となっている為、部屋の中に入らなければ気付かれることはありません。

□教え
 部屋の中に、1体の普通のサイズの食屍鬼と、小さな食屍鬼達が蠢いています。
 彼らはよく見るとほぼ人間の子供のようですが、人語を解さず、屍体を黙々と食しています。
 その満足を知らない食事や、小さな食屍鬼の様子は、まるで地獄絵図にあった餓鬼達を思い出させます。
 この光景を見た探索者は、1/1D3の正気度を失う可能性があります。
 普通のサイズの食屍鬼が彼らを監視しているようで、近づくには《忍び歩き》のロールが必要となります。
 ただ、小さな食屍鬼の子供たちは人語を解することもなく、姿形が人間に近いだけです。
 連れ去ろうとしたりしても、食屍鬼のように唸り声と吠え声を上げ、親たちを呼び集めます。

□食事をする食屍鬼
 部屋の中、あるいは通路の途中でうごめく食屍鬼を発見します。
 奴は何かに夢中になっており、探索者達に気が付く様子はありません。
 ある程度近い距離まで来ると、そいつが『食事』をしていることに気が付きます。同時に、そいつは食事の途中で顔を上げ、探索者達を振り返ります。
 その手に持った屍体の腕を咥えて振り向く姿は、曳間の有名な作品である『食事をする食屍鬼』にそっくりです。
 この光景を見た探索者は、1/1D3の正気度を失うとともに、例の曳間の絵は、幻想や妄想ではなく、現実を写し取っていたのだということを認識します。

□闇に光る目
 このパートは、キーパーの判断で任意のタイミングで行って下さい。
(ある程度洞窟を進んでからがよいでしょう。あるいは、最悪、パーティアタックを引き起こす可能性もあるので、行わないことも選択肢に入れてください)。
 洞窟を進んでいる途中、食屍鬼に変異することが無い探索者(『食屍鬼写本』を読んでいない、村で食事をしていない)は、《幸運》ロールを行ってください。
 成功した場合、ロールを行った探索者は、変異をする可能性がある探索者か、梓を見た場合に、その目が光っているように思えます(正確にはわずかな明かりを大きく反射している、ですが)。
 つまり、彼、彼女は『食屍鬼』としての特性を備えているのかもしれないのです。
 それは一瞬のことですが、それに気が付いた探索者は0/1の正気度を失う可能性があります。
 そして当然ですが、彼、彼女に疑念を抱くことになるでしょう。

□食屍鬼の梓
 このパートは、探索者の梓の扱いが悪い場合に行ってください。
 食屍鬼との遭遇戦の最中、あるいは、他の食屍鬼の援護が得られると思われる場合、梓は突然、手近な探索者に襲いかかります。
 同時に、犬のような咆哮を上げ、付近の食屍鬼を呼び集めます。
 この梓の声に応えて、2D6+1体の食屍鬼が集まってきます。
 食屍鬼の本能を全開にした梓は、「ああ、それもこれも、食べるものが無いのが悪いのです。生きる為に他の生き物を食べる、これはみんな一緒でしょう?」と、凄惨な笑みを浮かべます。
 梓は耐久力が1/2以下になると撤退していきます。
 もしも、探索者が梓を殺してしまった場合には、元人間であったか人間と変わりない存在を殺してしまったショックから、0/1D4の正気度を失う可能性があります。

□餓鬼穴の最深部、納骨堂の神
 餓鬼穴の最深部です。生贄を持たない状態で、納骨堂へ近づくことを食屍鬼達は避けている為、付近には食屍鬼はいません。
 最深部とは言いますが、海抜で言えば0m以上はあり、地底ではないものの、餓鬼穴のあった山の中央部となります。

 そこは今までの洞窟とはまったく異なる空間です。
 明らかに人口の、柱の数多くある天井の低い部屋であり、数多くの骨壷めいた容器が石柱に置かれ、青みがかった炎が揺らめいていながらも、広い部屋を半ばまでしか照らしていません。
 部屋の中央に、黒々とした石でできた、まるで四足の食卓を思わせる、祭壇と思しきものがあります。

 探索者たちが足を踏み入れると、部屋の炎によるものではない影がうごめいていることに気が付きます。
 それは影より黒く、ぼんやりとした暗黒の塊であるにも関わらず、奇妙な眩さを纏っており、探索者の目を眩まします。
 壷から炎を吸い上げ、死と空虚で部屋を満たすように思えます。それは絶え間なく姿を変える暗黒に渦巻くエネルギーであり、時には目のない頭部と四肢のない体の魔物の巨人のようになったかと思うと、渦巻き、回転し、刻一刻と姿を変えながら、部屋いっぱいに広がります。
 この暗黒の炎の塊は、『納骨堂の神モルディギアン』です。モルディギアンを見た探索者は、正気度ロールを行い、1D8/1D20の正気度を失う可能性があります。

モルディギアン、納骨堂の神
STR 35 CON 77 SIZ さまざま INT 20 POW 25 DEX 20
移動 16 耐久力 77
ダメージボーナス:+6D6
武器:飲み込み 75% ダメージ 死
装甲:魔力が付与されていない武器によって傷つけられることはない
呪文:キーパーの望むものすべて。

 モルディギアンは基本的に死者を求めますが、空腹の場合は、その怒りに任せて生者を死者に変えて食らいます。
 ここでもその方針は変わらず、まずは死者を、いない場合は手近な探索者に襲い掛かります。
(ちなみに、この神の攻撃は75%命中に加え、ダメージが『死』とあります。探索者には、『回避』が可能であることを告げてください)

 モルディギアンは死者なら一人分、生者なら二人分の生贄を受け取ると、満足して帰っていきます。
 そうでない場合は、神殿から脱出すれば、かの怠惰な神は自ら追っては来ず、信者達に追跡を命令して帰っていきます。

□曳間との邂逅
 地上からの光が差し込む、洞窟の出口を発見した瞬間、暗がりから一体の食屍鬼が現れます。
 その食屍鬼は暗闇の中から、探索者たちに話しかけます。この食屍鬼は曳間のなれの果てです。
「早く逃げろ、ここは人間が住むところではない」
 その声はずいぶんと変わっていますが、曳間のものに間違いありません。
 彼は明るいところへ出ないように、探索者たちに話しかけています。
 追手が迫っている為、時間はありませんが、もしも曳間を連れ出したりしようとした場合、彼は「俺はもう暗黒の住人なのだ。地上には戻れない。それに、こちらのほうが性に合っている」と言い、逃げることを拒否します。

 探索者たちが出口へ向かう途中、そこから漏れる明りで一瞬、曳間の姿が鮮明になります。
 曳間は、確かに食屍鬼なのですが、汚れきった衣服がまだ体に残っており、またその犬面には人間らしい雰囲気が感じられます。
 元の曳間を目撃したことがある探索者は、その変化に対して衝撃を受け、1/1D8の正気度を失う可能性があります。
 曳間は、地上の光を眩しそうに眺めてから、探索者達に言います。
「行け、二度と暗闇に近づくな」
 そして、2回以上甘露を摂取している探索者に向かって、「お前、まさか・・・」と言います。

□地上
 出口は、餓鬼穴のあった山の裏手に出ます。
 鬱蒼と茂る森の中で、昼間に直接太陽が見えることは稀ですが、それでも明るい、生命に満ち満ちた世界です。
 ここまで来ると、食屍鬼達は追ってくる気配はありません。
 しかし、夜になればまた追跡を受ける可能性があること認識している為、疲れた体に鞭を打ち、洞窟の出口から遠ざかると、さほど遠くないところに、行きに通った街道を発見できます。
 折も良く、丁度荷物の少ない馬車を引いた農夫が通りかかります。
 ずたぼろの様子の探索者たちを見ると、農夫は大した交渉もなしに、近くの村まで運ぶことを了承します。その後は、順次、津山→岡山→帝都まで帰るだけで、特に事件も起こりません。
(食屍鬼達が足並みを揃えているのは、自分たちのテリトリーの範囲内だけで、そこから出てくることは基本的にはありません。
 前作の『はぐれ食屍鬼』は、数奇な運命と、ナビゲート0%がなせる技で、かろうじて帝都まで単独でたどり着いたのです)

 なお、梓が食屍鬼側であった場合、津山に到着する前に姿を消します。
 そうでなかった場合、津山に着いた後、身よりの無い彼女をどうするか、探索者達は決めなければなりません。

逃走劇

 逃げ出すことに成功した探索者達は、日の光の無い夜にこそ奴らが動き回ることを知ります。
 犬啼村から、人里の近く、食屍鬼のテリトリーの外までの逃走劇となります。

□脱出行
 食屍鬼のテリトリーを脱出するには、1日の最初に1回、《ナビゲート》のロールに成功する必要があります。
 このロールに失敗した場合、進むべき方向を見失ってしまい、効果的な移動ができません。
 《ナビゲート》のロールに成功した場合、犬啼村を離れ、津山の方向へと移動が可能となります。
 1日に2回の移動を行うことができますが(休まない場合は3回)、《隠れる》等を行わず、通常通りに移動した場合、《幸運》の1/2のロールを行い、失敗した場合は食屍鬼と遭遇したことになります。
 《隠れる》+《忍び歩き》のロールに成功した場合、通常の《幸運》ロールとなります(食屍鬼は臭いを頼りに追跡している為、《隠れる》、《忍び歩き》とも通常通りの効果は発揮しません)。
 合計、5回の移動を行うことができた場合、食屍鬼のテリトリー外に出たことになります。
 なお、食屍鬼側の梓が同行している場合、ロールの成否に関わらず、必ず発見されます(そして、このことは探索者に『何故か発見される』と告げてください)。
 食糧の不足と、まともな休憩が取れない状況から、1日毎に探索者達はすべてのロールに-10%のペナルティが加算されるとともに、1日が終了した段階で、1D6の耐久力が減少します。
 また、移動を強行した場合、さらに-10%と、1D3の耐久力の減少が追加されます。

□食屍鬼の追跡
 彼らはその嗅覚の鋭さと、《追跡》技能により、正確に探索者を追いかけてきます(実際にロールを行うのは探索者側で、食屍鬼側が自動的に探索者を発見しています)。
 追撃を行う食屍鬼は1D6+2体の集団であり、2体まで減少すると退却を開始します。
 逆に、探索者の側が退却を行うことも可能です。DEXの対抗ロールに成功すれば、戦闘より離脱したことになります。
 この場合は、その回の移動は、効果を得ません。

□曳間の追跡
 何度目かの追撃戦の中で、《アイデア》ロールに成功すると、探索者は追跡をしてくる食屍鬼の中に、いまだに人間臭い、そして衣服もまだ残っている奴がいることに気が付きます。
 また、そいつは積極的に戦闘には参加せず、遠巻きにこちらを観察しているだけです。
 何らかのタイミングで、そいつの他の食屍鬼が居なくなった場合、そいつは逃げようとせず、探索者の方へ近づいてきます。
 闇の中で光る眼は確かに食屍鬼のそれですが、他の奴らと異なり、まだ理性と理知が残っているように見えます(要するに、正気度が残っているということです)。
 暗闇から出ようとはしませんが、そいつは探索者が攻撃をしかけてこないようならば、話しかけてきます。
「こんなところまで追いかけてきてしまったか・・・。
 今はとにかく逃げろ、追撃はなるべく抑える。逃げるんだ」
 その声はずいぶんと変わっていますが、曳間のものに間違いありません。
 明かりの中へ進み出て来た曳間は、確かに食屍鬼なのですが、汚れきった衣服がまだ体に残っており、またその犬面には人間らしい雰囲気が感じられます。
 元の曳間を目撃したことがある探索者は、その変化に対して衝撃を受け、1/1D8の正気度を失う可能性があります。
 探索者の反応を十分に楽しんだ後、曳間は「俺はもう暗黒の住人なのだ。人の世界には戻れない」と告げ、「こちらの方が性に合っている」と付け加えます。
 探索者達を一通り、その姿を眩しそうに眺めてから、探索者達に言います。
「行け、二度と暗闇に近づくな」
 そして、2回以上甘露を摂取している探索者に向かって、「お前、まさか・・・」と言います。

 曳間との邂逅後は、食屍鬼との遭遇が《隠れる》+《忍び歩き》に成功した場合は《幸運》ロールは不要、失敗しても通常の《幸運》ロールとなります。

□食屍鬼のテリトリーの外へ
 合計、5回の移動に成功すると、食屍鬼のテリトリー外へ出て、もはや追ってくる気配はありません。
『□地上』と同じく、程なくして道が見つかり、津山に戻ることになります。

光の世界、しかし・・・

 探索者が無事に人間社会に戻った場合、下記を行ってください。

 極限状態を抜けた探索者は、村での出来事を思い出し、そして例の食事、『甘露』が屍体の一部であることに気が付きます。探索者が『甘露』か、村で食事をしている場合、食した回数分、1/1D3の正気度を喪失します。
 ここで、不定の狂気に陥った場合は、『自分は食屍鬼の仲間になってしまった』という狂気に陥ることになります。
 回復後は、『暗闇恐怖症』か、『食肉恐怖症(?)』の後遺症が残る可能性があります(キーパーの判断による)。
 また、『食屍鬼写本』を読んでいる探索者は、食した回数分、2/1D6+1の正気度を喪失します。

 食屍鬼の生態を十分に目の当たりにした探索者は、《アイデア》ロールを行ってください。
 成功した場合、寺の妙大和尚の正体について、非常に長命を保っている食屍鬼であり、特に異質な存在で、そこへ至る経緯を思いつく為、1/1D8の正気度を喪失します。

事件の後、正気度の報酬

『犬啼村』での探索者達の行動によって、正気度の報酬は異なります。
 以下に従って、事件後の報酬を与えてください(今回の探索の失敗=死である為、失敗時の報酬は記載していません)。

『餓鬼会』に立ち会い、餓鬼穴に放り込まれ、生還した:
 探索者には、1D10の正気度報酬と、おそらく食屍鬼を打ち倒した分の+1D6を得ることができます。

逃げ出し、逃走劇となった:
 早い段階で探索者が逃げ出した場合、正気度報酬は1D6となり、食屍鬼を倒している場合も同様に+1D6を得ることができます。

 探索者が梓を見捨てている場合は、その罪悪感や、その後の梓の行く末を想像して、正気度の報酬を-2してください(梓との仲が険悪となり、襲われた場合も同様です)。
 逆に、助けている場合、正気度の報酬に+1点を加えてください(食屍鬼側であった場合は、姿を消すところまで連れてきた場合)。


データセクション

 シナリオ中で使用されるデータや、その他の項目をまとめたものです。

懐中電灯

 現在のような棒状の懐中電灯は大正末期まで存在していませんでした。
 砲弾型の電池式ランプが大正12年に松下から発売されます(さらにこの後にナショナルランプが開発されます。ナショナルランプも棒状ではないですが・・・)。
 電池自体は明治18年に開発されおり、その後の戦争において戦場での利用、発展を経て発達しています。
 ただ、電池による照明器具は性能に問題があり、砲弾型以前でも評判が悪いながらも存在していたようです。

村人、あるいは食屍鬼

 犬啼村の住人は全て食屍鬼か、食屍鬼になりつつあるかです。
 外見的にはまだ人間に見えなくもないレベルのものも存在しますが、思考はすでに食屍鬼のそれとほぼ同じであり、外見が完全に食屍鬼化した場合に、餓鬼穴への参入が認められます。
 村人については、ルールブックのP181のデータを参照し、適宜能力を決定してください。
 また、各種の攻撃の命中率が30%である為、体格の大きな食屍鬼や、あるいは小隊を率いる食屍鬼は戦闘で使用する技能を+10〜20%してもよいでしょう。

サンプル食屍鬼(小型):
STR 12 CON 10 SIZ 10
INT 14 POW 15 DEX 16
耐久力 10 ダメージボーナス±0
武器:
 かぎ爪  50% 1D6+db
 噛みつき 50% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
装甲:
 火器と飛び道具はダメージが半減します。
技能:
 回避 40%

サンプル食屍鬼(標準):
STR 16 CON 13 SIZ 13
INT 13 POW 13 DEX 13
耐久力 13 ダメージボーナス+1D4
武器:
 かぎ爪  30% 1D6+db
 噛みつき 30% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
装甲:
 火器と飛び道具はダメージが半減します。

サンプル食屍鬼(大型):
STR 20 CON 15 SIZ 16
INT 10 POW 12 DEX 13
耐久力 16 ダメージボーナス+1D6
武器:
 かぎ爪  40% 1D6+db
 噛みつき 40% 1D6+db+牙でいたぶる(1D4)
装甲:
 火器と飛び道具はダメージが半減します。

※サンプル食屍鬼は共通の技能として以下を持ちます。
 穴掘り 75%、登攀 85%、隠れる 60%、跳躍 75%、聞き耳 70%、腐敗を嗅ぎ取る 65%、忍び歩き 80%、目星 50%

納骨堂の神、モルディギアン

 この納骨堂の神が何故現在において、犬啼村で信仰されているかは不明です。
 ただ、屍体のあるところにこの神が現れ、屍体を喰らえなくなるまではそこに留まる、という特性を持っている為、犬啼村で長期にわたって滞在していることは確かなようです。
 詳細は『マレウス・モンストロルム』のP247を参照してください。


参考資料、謝辞、最後にちょっとだけ:

 本シナリオは特にこれという資料はありませんが、HPLの「ピックマンのモデル」、CAスミスの「納骨堂の神」と、そのほか、食屍鬼の登場する様々な作品が参考となっています。
 このシナリオのテストプレイは、毎度ですが大本のバージョンをF.G.のメンバーで、改版後、再改版後を大阪でお世話になっているサークル様で行っております。
 関係の皆様方に感謝致します。

 一応、曳間の追跡はここで終了しますが、曳間と、そして妙大和尚はなかなか楽しいキャラクターです。HPLの作品に倣って、次は夢の国で『曳間の冒険』に続けるのもいいかなあ、とか思ったり。

 筆者は岡山に恨みがある訳ではないですが、横溝正史先生のお陰か、神話的事件が起こる田舎=岡山、という図式が、心の中で成り立っています。
 最初の舞台の説明にもありますが『江津森』は、いわゆる横溝正史的な架空の岡山であり、本来の岡山とは全くかけ離れています。
 本作には全く出てきていませんが、『江津森』はシュブ=ニグラスとそれ関連した神性と関係が深い土地となっており、その祭祀を行う村が『江津森』となっています。
 いまだ未公開ですが、『天球音楽もの』に並び、『江津森もの』としていくつかのシナリオを公開できるといいなあ、とか思っています。