天地交響曲 終幕部 天地交響曲、究極の音楽


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終幕部 天地交響曲、究極の音楽

 こちらは黒澄綾が元子やミ=ゴの勢力に捕まっておらず、それらを抑える様にした場合の終幕部です。
 綾が究極の音楽を奏でる準備が完了し、それに招かれた探索者がどう対応していくのかが中心になります。
  1. 演奏会への招待
  2. 綾の楽器、神殿の奏者
  3. 究極の音楽
  4. 大地鳴動
  5. 円錐塔の内部へ綾を追う

演奏会への招待

 9/1の朝方、探索者のそれぞれの自宅へ黒澄綾からの招待状が届きます。
 それはただシンプルに、「本日正午、北多摩の毛利家別邸へ」と書かれているのみです。
 この招待に乗るかは探索者次第ですが、北多摩へ赴かなかった場合、帝都で関東大震災に遭うことになります。

キーパーへ:
 本当に丁度正午に到着するのは避ける様に、探索者を誘導してください。
 関東大震災は9月1日11時58分の為、正午の少し前に探索者が到着しているのが理想です。

綾の楽器、神殿の奏者

 北多摩の別邸へ探索者達が赴くと、森に配置されているザイクロトルからの怪物は姿を現さず、探索者を素通しにします。
(探索者の方からわざわざザイクロトルからの怪物を探さない限り見付かりません。探した場合は《目星》で発見可能です。特に襲い掛かってくる様子はありませんが、発見すれば0/1D6の正気度を喪失します)
 探索者が正面玄関から毛利の別邸に入った場合、以下の描写を行なってください。

 以前にこの玄関ホールを訪れた時、そこは雑然とした倉庫めいた印象を受けたが、今は全くことなる。
 余計なものは全て取り除かれ、探索者には理解できない機械、装置の類が整然と並べられ、それが中央の円錐塔に接続されている様はさながらパイプオルガンのように思えた。ホールはあたかも異教の聖堂の如き雰囲気を漂わせており、厳粛で神聖であるにも関わらず、どこか冒涜的で野蛮な原初の祭祀場のようにも見える。
 円錐塔は前と変わっていないはずだったが、低く唸るような音を周期的に発しており、まるでそれ自身が明滅しているようにも思えた。
 その前にはまるで演奏会にでも赴くかのような、飾りの少ない黒いドレスに身を包んだ黒澄綾と、それとは対照的に装飾的な祭服のようなぞろっとした丈の長い黒い服を着込んだ小早川隆子と、そしてその部下と思しき人々が敬虔な面持ちで円錐塔を見上げていた。

 この異形の楽器に変貌している円錐塔を目撃した場合、1/1D4の正気度を喪失します(すでに円錐塔を目撃している場合、それを含めて最大4点までの喪失となります)。
 黒澄綾は探索者に気が付くと振り向いて、ドレスのスカートの裾をつまんで優雅に一礼してみせます。

 彼女は探索者が攻撃的でない場合のみ、話を聞く体勢を取ります。
 これが最後の綾との会話となります。探索者の疑問、質問を彼女は一通り受け付け、解答します。彼女自身が回答を持っていない、知らない場合は、小早川隆子によって補足するのもよいでしょう。
 もしも、探索者がここで黒澄綾に対して演奏を止めるように説得を試みた場合、キーパーはこれまでの経過や、探索者の綾に対する扱いからそれが可能か判断してください。
 最早この段階では綾の説得は不可能とするのが妥当ですが、何らかの手段で彼女が音楽を奏でることを諦める最後のタイミングとなる可能性があります。

 また、会話よりも前でも後でも、彼女を腕づくで止めようとした場合は、円錐塔の内部へ踏み込むことなります。「円錐塔の内部」の場面を行なってください。

究極の音楽

 会話の後、綾は音楽の開始を宣言して、軽く会釈の後、神殿の中へと入っていきます。
「さあ、始めましょう。天と地が織り成す交響曲を。
 私の最高傑作を、最後の音楽を!」

 キーパーはこれまでのシナリオの経過の清算を行ないます。
 綾が究極の音楽を奏でるのに成功する確率は基本値がINT×1の18%となります(実際には、《芸術》とのコンビネーションロールとなりますが、彼女はファンブル以外で《芸術》を失敗することはありません)。
 これに以下の分を加算してください。

・雪子スレッドで、雪子と綾が接触している場合、INTの倍数に+1。
・リンケージ「仮面舞踏会」で、明石耀、澄に、完全な『唄』を授けている場合、INTの倍数に+1。
・春子スレッドで、『春子の遺産』を探索者が回収していない場合、INTの倍数に+1。
・雅子スレッドで、雅子と合唱している場合、INTの倍数に+1。
・魔王の弟子達スレッドで、『外なるものども』を探索者が回収していない場合、INTの倍数に+1。
・ロシアからの使者スレッドで、『アザトースの種子』の欠片を探索者が入手していない場合、INTの倍数に+1。

 キーパーの判断にもよりますが、これらの経過による倍数は探索者にも提示して、綾の音楽の成功率を開示するとよいでしょう。
 そして、綾の音楽が成功するかのロールについても、探索者の代表にダイスを振らせるかするのもよいでしょう(出目が96以上は常に失敗ということを忘れないようにしてください)。
 綾の究極の音楽を奏でるロールの結果によって、以下のように分岐します。それぞれに従って描写を行ない、場面を続けてください。

綾の音楽が成功した場合:

 円錐塔から激烈な音が発せられたと思った瞬間、辺りを静寂が包み込んだ。
 前に円錐塔から発せられていた、唸るような定周期の音や、周りにある装置の作動音も聞こえてこない。
 音が聞こえてこなくなったのではなかった。激烈な音楽が、辺りには響いているがそれは何も揺らしていないのだ。
 静寂の中の音無き音を、果たして聴覚が感じているのか、それとも脳、あるいは魂に直接訴えかけられているのか。

 音楽だった。
 純粋な、ただあるだけの音楽。
 数学的な美しさも、調和も無い。それらを超越したもの。
 それは、原初から発せられる音の集積であり、終末へ収束し、戻っていく。
 究極の一つへ、戻っていく。

 そこにあるのは、ただ、ただ歓喜!

 あらゆるものの中心、混沌の核にして究極の存在であるアザトースの在り様が、音楽によって再現され、あらゆる法則を超えた存在であるかの邪神が、この場に音楽として顕現します。
 彼女が奏でる音楽は、呪文のようにアザトースを招来するのでも、従者の音楽のように呼び寄せるのでもありません。それは、アザトースそのものを再現している音楽なのです。
 それは色彩のある音であり、質量を持った音であり、振動しない音であり、そして雑然と、混沌としたあらゆる音を内包し、あらゆる音楽であるにも関わらず、音楽ではない音楽です。
 黒澄綾の究極の音楽を聞いた場合、1D10/1D100の正気度を喪失します(耳栓などを使っていても無駄です)。
 そして、究極の音楽は激烈な歓喜をもたらします。狂気に陥ったかに関係なく、圧倒的な歓喜の前に探索者達は動きを止めてしまいます。

綾の音楽が失敗した場合:

 円錐塔からは激烈な音が発せられ、それは『天球賛歌』や、『大地返歌』を思わせる音楽の奔流となった。
 だが、次の瞬間、円錐塔が暗く明滅し、明らかに音楽に乱れが生じた。空間を満たすそれは、綾の言う究極の音楽ではなかった。
 これまでの音楽の総括であり、それらを超えたものではあったが、完成された音楽からは程遠かった。おそらくこの世に二つとない美しい音楽ではあったが、究極の音楽からは遥かに遠ざかっていた。

 円錐塔が綾の音楽に耐え切れず、究極の音楽を奏でることが適わなかったのです。しかし、この異界の音楽の一定の到達点にある音楽を聞いた場合、1/1D10+1の正気度を喪失します(耳栓などを使っていても無駄です)。

大地鳴動

 どれほど、その音楽に浸っていたかは分かりませんが、いきなり探索者達は現実に引き戻されます。
 綾の音楽ではなく、はっきりとした唸るような轟音が聞こえており、辺りの装置からは焦げ臭い匂いが漂い、円錐塔が明滅を繰り返しています。
 隆子が生きている場合、隆子が「く、まさか神殿が音楽に耐えられないとは!」と口走るのを聞きます。
 そして、今度はそれとは別な大きな振動が大地から伝わってきます。彼女の音楽に共鳴したのか、はたまた単なる自然現象なのか、大地の揺れは、立っていることも困難になるまで大きくなります。
「綾!」
 叫んだ隆子は神殿の中へ駆け込みますが、さらに大きな揺れが襲い、毛利家の別邸の天上の一部が崩落し、神殿に接続されている装置の大半はなぎ倒されてしまいます。 
 神殿の明滅が早く、そして館と装置が焼ける臭いが辺りに漂い始めると、どこからか綾の声がホールに響きます。
「神殿が暴走を始めました。残念ながら、もう音楽を奏でることは叶いません。
 私は後始末をします。皆さんは早く安全な場所へ退避してください」
 毛利の別邸からの非難については特にロールの必要はありません。ホール自体に障害物もなく、出入り口も近い為です。
 探索者が退避している中、神殿の明滅は不規則になり地面から異常な熱が伝わってくるのを感じます(円錐塔の基部に近い部分、神殿の最奥のザエダ=グラーが起動、暴走しているのです)。
 探索者が退避すると神殿は一瞬、強く輝くとそこには何も無かったかのように消失し、ホールの地面には大穴が出現すると同時に、揺れの影響もあり一気に崩落を始めます。
 円錐塔、シャンの神殿は本来の機能を取り戻し、どこかへテレポートしたのです。
 探索者はこの後、毛利の別邸の崩壊を目撃し、そして地震の甚大な影響を知ることとなります。

円錐塔の内部へ綾を追う

 綾を力ずくで止めようとした場合、隆子とその配下が立ち塞がります。綾はこの隙に跳ね上げ戸から円錐塔の中へ消えます。
 この場合、綾の音楽が成るまでには6ラウンド(あるいはキーパーの判断の時間)が掛かり、6ラウンド後に究極の音楽が奏でられるかの判定を行ないます。
 また、キーパーの判断によっては綾が円錐塔に入った後、跳ね上げ戸が閉まり、そこへ侵入することができなくなったとするのもありです。
 この場合は、周辺の装置を破壊することで、究極の音楽の成功率を下げることができる等としてもよいでしょう。

 隆子の配下を倒すか、それをすり抜けて円錐塔に踏み入った場合は、円錐塔の構造は元子スレッドの「円錐塔の内部」を参照してください。
 円錐塔の最下部、神殿に探索者が踏み込んだ場合、その戸は、黒澄綾の入ったまま開け放たれたままになっています。
 そして、その先からは小波の様な音と、音楽が溢れており、神殿の中の開け放たれた三角戸の前で、黒澄綾がオルガンのような装置の前に座って音楽を奏でている後姿が見えます。
 三角戸の向こう側は暗黒の空間が占めています。《ナビゲート》か《アイデア》に成功した場合、三角戸の向こうは円錐塔の中央部、炉心であることに気が付きます。
 暗黒の空間の向こうから、黒澄綾の音楽とは別に小波の様な音が聞こえており、同時に何かが這いずる様な気配を感じますが、暗黒の空間の向うは見透かすことはできません。
 彼女は演奏に没頭しており、探索者が近付いても反応はありません。彼女に攻撃を仕掛けるのも、近付いてオルガンから引き剥がすのも探索者の自由です。

 黒澄綾の演奏が途中で止めた場合、三角戸の暗闇の向こう側からどこか不満そうな咆哮、威嚇するかのような壁を叩く音が聞こえてきます。
 そして暗闇の中から、ポリプ状の付属物がついた節のある円筒形の触手が這い出ます。それは、神殿の入り口にある彫像にそっくりであり、それでいながらその何倍もいやらしく蠢いています。
 黒澄綾の音楽によって正しく目覚めさせられたザエダ=グラーが、音楽が中断したことに不満を表明しているのです。
 三角戸の暗闇は次第に薄れ、ザエダ=グラーの本体が探索者の目に晒され、1D10/5D10の正気度を喪失します(先の彫像分と合わせて、最大で50点までしか喪失しません)。
 ザエダ=グラーはじわじわとその二枚貝のような体が開きつつあります。

 黒澄綾が生きている場合、これを見ると「逃げてください。神は音楽が中断されたことに怒っています」と言い、自身は再度、オルガンに向かおうとします。
 綾が再度オルガンに向かうのを止めようとした場合、「後始末をしなければなりません。貴方がたは逃げてください」と静かに言います。
 綾の邪魔をしなかった場合、彼女は再度オルガンの演奏を始めます。それは究極の音楽ではなく、どこか静かな印象を与え、あたかも葬送曲か鎮魂歌の印象を与えます。
 探索者が円錐塔から脱出すると同時に、その音楽は一段と高まった後、円錐塔が一瞬強く輝くと、そこから消失します。ザエダ=グラーが覚醒したことによって神殿の本来の機能が戻り、テレポートをしたのです(暴走は収まっていませんが)。
 次の瞬間、大きな揺れが探索者達を襲い、そこに出来た円錐塔があったはずの穴と、毛利の別邸は崩落を始めます。そして揺れは収まらず、さらに強い揺れに襲われながら毛利の別邸から脱出を試みる必要があります。
 最初の揺れに対してDEX×5か《跳躍》と《幸運》のコンビネーションロールに失敗した場合、崩落する穴に巻き込まれて2D6の耐久力を失います。さらにこれに巻き込まれると、《登攀》か、DEX×3に成功するまで穴から脱出できず、毎ラウンド1D4点の耐久力を失います。
 穴に巻き込まれなかった場合、DEX×5か《跳躍》に成功すると毛利の別邸からの脱出に成功し、森へと出ることが出来ます。5ラウンドの間に脱出できなかった場合、崩壊する毛利の別邸の下敷きになり、自動的に死亡します。
 探索者はこの後、帝都に戻ろうとすると地震の影響の甚大な影響を知ることとなります。

 音楽が中断し、黒澄綾が死亡している場合、1ラウンド後にはザエダ=グラーの中身が核爆発を起こして、その場に居る全員が1D100のダメージを即座に受けます(もしも、神殿の三角戸を閉めることができれば、これを防ぐことはできます)。さらにこの後、ザエダ=グラーは1ラウンド毎にSIZが倍化しつつ、アザトース同様に辺りを焼き払います。かの神は存分に辺りを焼き払った後、自ら帰っていきます。
 最早このパターンになると、探索者が生還する目は無いでしょう。

 綾の演奏を止めなかった場合、そのまま綾の演奏は続行され、究極の音楽の判定を行なってください。
 演奏の最中に彼女に話しかけても、演奏に没頭している為に特に反応はありませんが、キーパーの判断によって、極短い時間ですがここで彼女ともう一度話が出来るとしてもよいでしょう。