スレッドE 帝都の空を舞う怪異、ミ=ゴ
このスレッドでは帝都に巣食うミ=ゴ達が天狗と噂されながら活動しており、黒澄綾の音楽を止める為に彼らがシャン狩りを行なっているところに巻き込まれることになります。
彼らは探索者を事件を止められる可能性がある人間であると見なしており、音楽を止めるように仕向ける為に、黒澄綾の音楽が引き起こすと思われる結果を悪夢として送ったり、あるいは直接的に警告を与えてきます。
探索者の選択次第では、ミ=ゴと協力し、綾の音楽を止める為に動く可能性もあります。
キーパーへ:
このスレッドの帝都に巣食うミ=ゴと、『不吉の宝石、ロシアからの使者』スレッドで登場するロシアのミ=ゴは所属するコロニーが違う為、外見は全く同一のように見えますが、その中身は別の種族であると言ってよいほど異なります。
もしも、探索者が帝都のミ=ゴに対して、ロシアのミ=ゴについて告げた場合、『アザトースの種子』の欠片を巡って、ミ=ゴ同士の戦いになる可能性もあります(このパターンはキーパーの負担がさらに重くなるので、よく検討して行なってください)。
キーパーへ2:
ミ=ゴ達はシャンと敵対しているだけでなく、独自の情報や技術を持って関東大震災を予知しています。
この為、震災の原因となるかもしれない黒澄綾とその協力者であるシャン達を駆除することで、関東大震災が防げるかもしれないと考えています。
彼らは帝都からの撤退の準備も進めていますが、同時にシャン狩りを実行しているのです。
ただ、彼らにとってシャンを区別しておらず、全て同じであるように思っている為、元子派、隆子派も関係なく襲撃を繰り返しています。
また、可能であれば黒澄綾は脳缶詰にしてサンプルとして持ち帰りたいと考えています。
- 近頃、帝都を騒がす怪事件、天狗の噂(スレッドの起動部)
- ミ=ゴ達の警告、悪夢を送る
- ミ=ゴ達の警告
- 仁義無き戦い、帝都死闘編
- ミ=ゴに協力する
- スレッドの終了後
近頃、帝都を騒がす怪事件、天狗の噂(スレッドの起動部)
この場面は日常、探索者達がまだ事件に大きく関わっていない時点で行なってください。
登場する探索者も多く、何気ない日常場面的な場面とするとよいでしょう。
新聞や雑誌、あるいは世間話、雑談などなんでもない日常から得る情報が探索者に伝えられます。
・帝都を騒がす怪事件
帝都内で発見されただけでも三件のバラバラ殺人事件が起こっています。
これはすでに新聞記事にもなっており、これは連続殺人で被害者に何らかの繋がりがあるのではないか、というものから、被害者同士の関連性が薄いことから、近頃流行りの猟奇趣味かぶれの犯行で、通り魔的なものではないかとも様々な憶測がされています。
また、死体の損壊が激しかったり、発見が遅れたことなどから身元が分かっていないこと、そしてその一部が見付かっていないとも報道されています。
三流新聞、怪しげな雑誌等では、これらの殺人事件についてセンセーショナルな見出しで「怪奇!猟奇!」と騒ぎ立てており、その内容も扇情的にバラバラ殺人であり、遺体の一部、おそらく頭部が持ち去られていることが書かれています。
怪想社の発行する怪しげな雑誌では、弊誌の記者がその犯人と思しきものをカメラに捉えたが、そこには何も写っていなかった、という常識人には全く相手にされないような記事が載っています。
この記事に掲載されている件の写真は、薄暗い場所で撮られている上にかなりぶれており、確かに何か、おそらく首のようなものが宙を舞っているように見えなくも無い、というものです(白黒の雑誌である為に、さらに見辛くなっています。この為、正気度ロールを要求されるレベルのものでもありません)。
さらに記事は最近帝都で噂される天狗との関連性も取り沙汰されていますが、オカルトに興味が無い人間には全く荒唐無稽な内容にしか思えません。
・天狗の噂
帝都内で翼を広げて空を舞う謎の生物、あるいは物体が多数目撃されている、という怪しげな噂が囁かれています。
これらの噂は怪しげな新聞や雑誌、そして学生や女学生などが発信源となっています。都市伝説のようにはっきりとした根拠は無く、「友達の友達」から聞いた話だったりするようなものです。
この為、どのような姿なのか、ということは非常に曖昧で、ただ翼を持っている、空を飛ぶ、という点以外に共通点は見られません。にも関わらず、何故か『天狗』という呼ばれ方で統一されています。
しかし、何故かこれらの『天狗』は先のバラバラ殺人の事件と関連付けられて語られることが多く、怪しげな噂の中でもバラバラ殺人は天狗が引き起こしているのではないかという文脈のものが多く見られます。
そしてその中の一つには、バラバラ殺人の現場から被害者の首を持って飛んだ、というものもあり、一部の三流新聞、雑誌で報じられている内容との関連も窺えます。
そして、最も怪しげな怪想社の雑誌ではこの首が飛ぶという部分に着目して、さらには将門の首塚と関連付けて祟りだ、というものまで見られますが、さすがにこれは荒唐無稽に過ぎてまったく相手にされていません。
キーパーへ:
帝都の怪事件、天狗の噂は初期の頃にミ=ゴが起こした事件で、ミ=ゴ達は手当たり次第にシャンが取り憑いている人間を襲っています。
初期の頃はいつもの脳缶詰にして持ち去っていましたが、いくつかサンプルが集まった後は、シャンを追い出す装置の開発に成功しています(ミ=ゴ脅威の科学力!)。
しかし、シャンが取り憑いているかどうかは判別が出来ない為、とりあえず毛利家の関係者やミ=ゴの活動を妨害する人物、そして黒澄綾の関係者と思しき人物を優先的に襲っています。
ミ=ゴ達の警告、悪夢を送る
あまりにもやることが多くなってくると、本筋である黒澄綾の音楽のことを忘れ去る可能性があります。それを思い起こさせる為にも、ある程度早い段階でこのミ=ゴの警告を行なってください。
(ミ=ゴの警告が遅れると、探索者がミ=ゴと手を組む可能性が全くなくなることもあります。キーパーは探索者の傾向や、自身のシナリオの組み立てと合わせて検討してください)
ミ=ゴの一体は《夢を送る》の呪文を知っています。それを使って人間達に、今、黒澄綾の歌がこの惑星を危険にさらしているという事を警告するかも知れません。
この呪文はミ=ゴ全員の力を合わせて増幅されるため、一人以上の探索者がその影響を受けます。眠っている探索者達はそれぞれのPOWで、ミ=ゴの呪文の強度17に対して抵抗ロールをしなくてはなりません。成功した場合は、いかなる影響も受けなかった事になります。失敗した者は、次のような悪夢の影響を被ります。
夢の場面は昼、おそらく正午です。探索者達は帝都で普段通りの生活をしています。
どこからか正午を知らせるドンとはまた違う轟くような音に気が付きます。《アイデア》に成功すると、小規模な地震が起こっていることに気が付きます。
外に出てみても、特に異常は無く、いつもの通りの眺めです。場合によって他の探索者や、NPCと出会うかもしれません。夢を見ている探索者は日常、現実のとおりの出来事であると確信させるでしょう。
すると遠雷が轟いたかと思うまに、にわかに起こった黒雲が空を覆い尽くします。稲妻が黒雲の中に光りますが、雨は全く降っていません。そして突然、黒雲が割れ、途方もない大きさの天体が空に姿を現します。
これを目撃した者は1D10/1D100の正気度を(一時的に)喪失します。探索者が『グラーキの黙示録』か『ネクロノミコン』あるいは、『外なるものども』を読んだ事があるか、《クトゥルフ神話》に成功すれば、これが赤錆色をした惑星、グロスの姿である事を即座に理解します。
(「天球賛歌事件」「大地返歌事件」において、グロスと接触している場合は、無条件に分かってもよいでしょう)
その惑星の表面が細かく震えながら割れ、その下の赤いマグマのような裂け目をあらわにすると、そこに巨大な海の如き眼がゆっくりとしみ出すように開きます。そして稲妻が惑星の表面を覆い尽くすように走り、大地を打つべく放たれて、近くにある建物や、あるいは十二階などの高層物を爆破するかします。
この天体が次第にジワジワと接近してくるにつれて、大地はさらに荒々しく揺れ動きます。DEX×1のロールに失敗すると、夢を見ている者は地面に投げ出されてしまいます。
絶え間なくブンブンとうなり脈動する音が、この惑星のような存在から放射されています―足元の地面にも、鼓動が反響しています。《アイデア》に成功した場合、その旋律が黒澄綾の音楽と同じものであるという事を理解するでしょう。脈動は耳も裂けんばかりの大きさにまで次第に高まっていき、そして巨大な稲妻の柱が探索者達の真ん中に落ちて、あたりは暗闇に閉ざされます。そこで夢は終わったかのように思われます。
夢の中で探索者は再び目覚め、先ほどの光景が悪夢であったことに気が付きます。目覚めると夢の始まりと同じ正午に近い時間であり、再び日常が繰り返されていることが分かります。
この時点で、前の光景が夢であると認識する為、失われた正気度は1/10にしてください。
こちらでも前の夢と同様、他の探索者やNPCと出会うなどをするのがよいでしょう。
やはり、どこかでドンとは違う音が轟くと、今度は小さな地震ではなくガタガタと大きく揺れ始め、ついには地面に投げ出されるほどの大きな揺れとなって行きます。
DEX×1のロールに失敗すると、夢を見ている探索者は地面に投げ出されてしまいます。
揺れは建物を倒壊させ野外へ逃げ出した探索者は、それが治まる頃には火災が発生していることに気が付きます。それは一箇所だけではなく、帝都のあちこちが燃えていることが分かります。
探索者はこの地震の後、猛火から逃げ惑う人々とあちこちが崩れて瓦礫の山と化した街並みから避難し、そして異常に赤い夕陽の下に崩壊し、焼け野原となった帝都を呆然と眺めることになります。
この恐ろしい災害の光景を目撃した探索者は1D3/1D10の正気度を喪失します。
翌朝、夢を見た者達はその内容の全てをあまりにも鮮明に覚えています。同時に、それが単なる夢であることも気が付く為、失われる正気度は1/10となります。
しかし、夢の中で狂気に陥った探索者は、このシナリオの残りの期間を広場恐怖症及び星恐怖症によって悩まされる事になります。
ミ=ゴ達の警告
この場面はある程度早い時期に行い、探索者に選択肢として検討に上げるものとして示してください。
帝都で蠢くミ=ゴ達は、探索者にシャンが憑依していないことを知ると、この事態の収集に一役買わせようとミ=ゴ達が交渉を持ち掛けてきます。
すでに天狗の正体がミ=ゴであることが探索者は気付いている可能性は高い為、彼らは人間の皮を被ってきません。
襲撃時と同じように闇夜に紛れて探索者の傍に降り立ち、一応は闇の中に姿を隠しつつ探索者に語り掛けます。
それはぶんぶんと唸る様な声で、聞き取りにくい小さな声であるにも関わらず、遠くからでも探索者には何を言っているかがはっきりと分かります。
もしも探索者が何かの灯りを彼らに向けたり、よく調べようとした《目星》を行なった場合は、ミ=ゴであることが分かり、0/1D6の正気度を喪失します。
また、彼らは攻撃されたり、接近され過ぎた場合、即座に逃亡を開始します。
ミ=ゴは、黒澄綾の音楽の完成を防がなくてはならないと語ります。
前に、彼方の天体と地球を結んでいる音楽を奏でた彼女は、それをさらに発展させた音楽を準備しているとミ=ゴは言います。
それは前のグロスとの接触がなされる以上の大災害をもたらす可能性があるだけでなく、場合によってはこの星そのものが甚大な被害を被る可能性があると指摘します。
ミ=ゴは探索者を取り込む為に、黒澄綾の音楽についてや、それに協力するシャン達、あるいは自らの情報にも言及するかもしれません。
探索者に警告を与えると、ミ=ゴは夜空へと飛び去っていきます。
仁義無き戦い、帝都死闘編
ミ=ゴの警告以降、ミ=ゴがシャンを襲撃する、シャンがミ=ゴを襲撃すると言った事件が見られるようになります。
もちろん、表立っては彼らが争っているように見える訳ではないですが、探索者達からするとある程度の察しがつく状態です。
また、彼らは死んでしまってもミ=ゴはある程度時間が経つと死体が溶けて痕跡も残さずに消え、シャンも同様に陽光を浴びると溶けて消えてしまいます。
この為、帝都には天狗の噂に加えて、鳩ぐらいの大きさの奇妙な昆虫の噂や、巨大な蟹に似た生物の噂が囁かれるようになります。これらは証拠が無い為にただの都市伝説のように扱われ、一部のオカルトマニアの間で噂になる程度です。
『怪想社』のようなオカルトを扱う雑誌や新聞が面白おかしく、という訳ではないですがこれらのオカルト的な言説を載せたり追いかける程度で、あまり痕跡の残らない犯行は良識のある新聞や雑誌は不可解な殺人事件という程度の扱いになります。
ミ=ゴ達はシャンが憑依しているNPCか、それに協力しているNPCを狙って襲撃を行ないます。
探索者の緊張感を欠く場合や、調査探索が長くなり戦闘などの刺激が欲しい場合に、これらの襲撃場面を行なうのもよいでしょう。
彼らは人気のない場所や、目撃される可能性が低い場所を選んで襲撃を行ないます。また、ミ=ゴに対して交渉は出来ませんが、すでにその警告を受け取っている場合には、停戦交渉をすることも可能です(有無を言わさずに探索者が襲いかかっている場合は別ですが)。
探索者達の関連する人物で、以下のNPCが襲撃される可能性があります。
・毛利元子
彼女は襲撃に備えている上に、基本的に隠れた護衛も存在します。彼女が完全に単独になる可能性は、北多摩の別邸に行くときのみです。
それ以外の場合は、襲い掛かったミ=ゴを手馴れた感じで排除する元子側の手際を見ることになります。
・小早川隆子
彼女も襲撃に備えはしているものの、それは逃走という手段として現われます。
隆子には特別な護衛も無く、武器も手持ちのコルトベストポケットのみで、ミ=ゴには効果が薄いことも承知しています。
この為、彼女は基本的に逃げるのみですが、目ざとく探索者を発見した場合、わざわざ無力であることを示す為に助けを求めてきます。
・山県雅子
ミ=ゴは、雅子が歌う『禍歌』から黒澄綾の関係者と見なしており、その襲撃を行なう可能性があります。
彼女は基本的に屋敷の内部に居ますが、気分転換や何らかの家の用事の為に外出することは考えられます。
当然ですが彼女は一切の戦闘力を持っていませんし、付き人も同様です(ある程度の戦闘力は持っているかもしれませんが、あくまで対人向けであり、ミ=ゴをまともに目撃した場合は役に立たない状態となります)。
雅子がミ=ゴを目撃した場合、その脆弱な精神から混乱をするか、キーパーが面倒だと判断した場合は気絶するのも良いでしょう。
・安藤雪子
雪子も雅子と同じく、黒澄綾の音楽の影響を受けた関係者と見なされています。
彼女が襲撃を受ける場面は、基本的に女学生探索者と一緒に居る場面となります。
こちらも山県雅子同様、一切の戦闘能力を持っていませんが、多くの事件に巻き込まれており、前のシナリオでミ=ゴを目撃したこともあり、そして女学生探索者が一緒に居る場合はそちらを頼ればよいと信頼しています。この為、雪子は取り乱すことなく、女学生探索者の指示に従います。
・黒澄綾
綾がミ=ゴに発見されることは基本的にありえません。
探索者などと接触するとき、不用意に目立つ場所などを選んだ場合に発見される可能性があり、探索者ごと襲撃に巻き込まれることになります。
綾はミ=ゴと接触しても特に焦ったり、恐怖したりといったことはありません。探索者は彼女の目にむしろ、何かを哀れむような感情が現われることに気が付きます。
戦闘になった場合でも、彼女は探索者が居る場合は、特に何も行動をせず、観察に徹します。ミ=ゴも彼女の捕獲が目的である為に、探索者などの抵抗が続いている場合は、彼女に対しては攻撃を仕掛けることはありません。
戦闘中、あるいは戦闘後に《アイデア》によってミ=ゴが綾を生きたまま捕獲する=脳缶詰にすることが目的であることに気が付きます。
ミ=ゴに協力する
ミ=ゴの警告を受けてその言い分を認め、協力することにした場合、彼らは綾の居所を教える必要があります。そうでなければ彼らは探索者を信用しません。彼らの目的はあくまで綾なのです。
綾の居場所を教えると彼らはそこを急襲し、脳缶詰にしてしまいます。そして、シャン達に気取られる前に、ユゴスの前哨基地へとその脳缶詰を運んで行きます。
この後の展開はキーパー次第です。
ミ=ゴと協力した場合、人間からシャンを追い出す装置を貸してもらえます。ミ=ゴと協同してシャンを順次追い出すような展開になる可能性が高いですが、ここではシナリオのフォローの範囲外とし、キーパーでミ=ゴと協力した後の展開を作成してください。
終幕部においてはミ=ゴと協力した探索者と、シャンの残存勢力との総力戦、神殿を破壊しようとする戦いになります。
スレッドの終了後
探索者がミ=ゴと協力していない場合、ユゴスよりの者共はある時期を境にぱったりと姿を現さず、襲撃や妨害工作も止みます。
彼らは帝都を襲う関東大震災を予知しており、綾の音楽を止められないと判断した時点で帝都の拠点を一時的に破棄することを決定し、帝都から離れた土地へ退避をしたのです。
探索者が彼らを探しても全く発見、気配を察することもなく、新聞や雑誌などのメディアも突然消えたような報道がなされます。
彼らは震災後に帝都に舞い戻り、復興の巷に拠点の再構築を始め、これらの作業が引き起こす怪異については、別のシナリオで語れることになります。
探索者がユゴスよりの者共と協力している場合は、終幕部において共闘した後に彼らとさらに協力することにするか、あるいは一時的な共同戦線であり、シナリオの終了後には再度敵対するかは探索者次第です。
終幕部の結果、探索者の決定に関係なく、彼らはやはり帝都に拠点を構えて、その考え、価値観に基く行動は変わりません。