スレッドG 書生と魔王
書生たちの集まりの中、北一輝に師事する鈴木重兵衛に連れられて彼の師匠に紹介されることになります。
丁度、北の下へ居合わせた弟子達はシャンに憑かれた吉川春子の関係者であり、春子の死をきっかけにその動きに乱れが出てきたところでした。
北は敏感にそれを察し、鈴木にこれらの調査を依頼します。鈴木は一人ではこれを遂行することはできないと即座に判断し、探索者と協力してこれに当たることにしました。
探索者の調査の中(別の
魔王の弟子達スレッドが詳細となります)、次々と魔王の弟子達は行方不明、あるいは死亡することになり、事件の経過を見守ることになります。
- 書生仲間達(スレッドの起動部)
- 書生探索者、北一輝を紹介される
- 魔王、北一輝
- 魔王とミ=ゴ
- 生き残りの魔王の弟子
- 鈴木、魔王に報告する
- スレッドの終了後
書生仲間達(スレッドの起動部)
書生探索者は帝都に住まう同世代の書生達の集まりに顔を出すことになります。
特にこれといった目的のある会ではないのですが、それぞれの近況の他に、書生達の先生や、世話になっている家の情報を交換したり、専門分野の意見交換、議論を行なったり、単純に次に遊びに行く予定を立てるなど、常に顔を合わせている訳ではないのだけれど、たまに会って情報交換をするような間柄の集まりです。
集まりの中には高坂正信も混じっていますが、彼は難しい顔をしています。
彼が世話になっている馬場子爵の娘、晴香が転地療養に向かった後、子爵のご機嫌あまりよろしくないことが多く、彼自身も暇を持て余していることが原因です。
この場で書生探索者へ適当に現状を打ち明け、要するに暇であることを告げてください。また、彼は前の事件に関わったことで神話的な事件に対しての責任感、義務感のようなものを感じており、探索者への協力は惜しみません。
キーパーの判断にもよりますが、高坂をこの後の書生探索者の手の一つとして使うことを検討してください。
集まりには様々な大学に通う書生や、有名な学者先生に世話になっているものも居ますが、中には胡散臭い、オカルトや新興宗教の教祖のような先生の元に居るものまで様々です。
この中の鈴木重兵衛という男が、今回の議論の口火を切ります。
曰く、国家の改造について、という大それたものです。
この当時、こういったことを口走っているのが冗談でも通報されれば、特高の厄介になる可能性が十分にありましたが、特に犯罪や政治運動とは関わりのない書生たちの集まりなので、大した問題にはなりませんが、書生の中にはあまりよい顔をしない者も居ることは確かです。
それは彼の先生である北一輝の語るものと同一で大正8年に一部伏字で刊行された『国家改造法案大網』と同じ内容です。
それは「左翼的な革命ではなく右翼的な国家主義的国家改造を行なう」と述べられ、明治維新によって民主国家となった日本だが天皇と国民の一体化を妨げている官僚を排することを謳い、その為に天皇の指導を受けたクーデター、戒厳令が必要であると言います。
経済的には国民一人の財産限度を300万円として私有財産の制限を行い、それ以上は国有化を図ることで資本主義的な社会主義経済を目指すとしています。
これを受けた一部の書生たちからは、「それは大杉栄とかが掲げる赤の連中の主張と変わらないではないか」という指摘を受けますが、彼はそれだけではなく、北先生は精神的、霊的にもこの国を改善しようとしているのだ、と応酬します。
この議論は、鈴木にうんざりさせられながら、オカルト、政治、経済の多方面に及んでいきます(鈴木の話自体は酒の席にはそぐわないものですが、彼の話す内容は豊富な知識に裏打ちされており、それ自体は面白いし、興味深いもので、主義主張はともかく正しい内容なのです)。
しかし、議論は鈴木とその他の書生の対決の色合いが強くなり、鈴木の旗色が良いことと、酔った勢いも手伝って、殴り合いの喧嘩に発展しそうな様相を呈し始めます。
書生探索者が止めに入る場合、鈴木とその相手の双方は納まり、和やかとは言い難いですがそのまま宴会は継続されます。
止めに入らなかった場合は、酔っ払った書生達の喧嘩が始まり、いつの間にか書生探索者は鈴木を支援するような立場で喧嘩を行なっていることになり、やはり鈴木と仲良くなってしまいます。
この後、書生探索者に鈴木が近寄ってきて、先ほどと同じような意見を振るってから、先生、北一輝を紹介したいと意気込んできます。
書生探索者が強いて断った場合は別ですが、そうでない場合、北一輝との面会を約束してしまいます。
キーパーの判断や、時間の都合などで過去にそういうことがあったとして飛ばしてしまい、次段の「北一輝を紹介される」から始めても良いでしょう。
書生探索者、北一輝を紹介される
鈴木の案内により、市内の牛込区牛込納戸町に住む、北一輝の下へと案内されます。
その住まいに近づくとなにやら大きな声が聞こえてきます。
はっきりと北の住まいが見えるところまで来ると、それが大音量の法華経の読経だということが分かります。
ここまで来ると鈴木が半ば恍惚とした表情で、「あれは先生が読経なさっているのだ」と教えてくれます。
探索者が北の住まいへ入ろうとすると、入れ替わりになるように陸軍の制服に身を包んだ若い将校が丁寧に頭を下げて辞していくところを目撃します。
すでに飛鳥山の渋沢邸での『帝都改造計画』を調査してその参加人物を知っている場合、探索者は即座にそれが篠原國彦であることに気が付きます。
異様な読経が響く中、鈴木はそのまま自分の家であるかの如く奥へと進み、板張りの、まるで何かの道場かのような部屋へ案内します。
部屋は薄暗く、灯明が点されているだけです。
上座と思しき場所には、齢40ほどで異様に黒い髪と口髭、白衣に身を包み、片手に数珠、片手に古い経文を持ち、鋭いながらも奇妙に澄明な目を持った男が座っています(よく見れば、この男の片目は義眼であることが分かります)。
この男が北一輝です。彼は法華経の読経を続けており、その口髭が僅かに震えています。
その北から脇に少し離れた場所に一人の女性が、対面するよう四人の男が座っています。
探索者が何か言おうとすると、鈴木が小声で制します。
「しっ、今、先生は読経の最中だ。終わるまで待ってくれ」
鈴木にこの場に居る人物について(小声で)尋ねた場合、以下のように彼は教えます。
「分かっていると思うが、読経なさっているのは北先生だ。脇に居なさる女性は先生の妻のすず子さん、手前の四人の方々は先生の弟子で、小出さん、前野さん、駒井さん、脇坂さんだ」
また、先ほど表から出て行った人物について訪ねた場合は、以下のように答えます。
「あれは篠原さんだ。同じく、先生の弟子だよ」
「北先生には、たくさんのお弟子さんが居るのだ。今ここに居る方々は吉川春子さんを中心した一つのグループで、先生のお弟子さんの中でも急進的なグループだ」
探索者が急進的、あるいは吉川春子について尋ねた場合、「うん、先生の言う日本の改造、革命を起こそうという行動派だね」と、さらに小声で話します。
鈴木との会話によって、その場に居る人物の紹介が一通り済んだ後、まず探索者に北のPOW16との対抗ロールを行なわせてください。成功した場合は特に影響はありませんが、失敗した場合は北の読経に飲み込まれ、それが何か神秘的なものではないかと思い込んでしまい、0/1D3の正気度を喪失したうえに、北に対して畏敬の念を覚えます。
狂気というほどのものではありませんが、探索者にはそれに近い念が植え付けられます。もちろん、正気度の喪失が重なり、この場で一時的/不定の狂気が発症した場合は、北に対する狂信となります。
その後、以下の描写を行なってください。
南無妙法蓮華経
南無妙法蓮華経
…
次第に、北の読経の声が高まる。一人で読経しているというのにそれは多重に聞こえ始め、まるで十人以上の合唱であるかのようにも聞こえた。そのうちに読経は読経でなくなり、法華経の七字の題目のはずが何を読経しているのか分からなくなる。
この異様な読経は物理的な圧力を持ち、先ほどから探索者達の身体をびりびりと揺すっていたが、それ以外の何かが同時に圧力を受けているように感じる。
そんな中、脇に控えていたすず子が急に立ち上がり、宇宙遊泳中の飛行士のように中空を泳ぐとばったりと倒れた。
前のPOWの対抗ロールに成功している場合、この薄暗い部屋の中を何かがすず子に向かって飛んだとよう思えます(はっきりとは見えません)。
倒れたすず子はゆっくりと身を起こすと、どこか虚ろな目をしています。そしてわなわなと手を震わせているところへ、北が筆を握らせると、突如としてそこへ用意された紙の上へ筆を走らせます。
相変わらず読経の続くなか、すず子は一気に霊告を書き上げ、またばったりと倒れます。そして、北は法華経の読経を止めて、霊告を確認します。
この異様な霊告の場面を目撃した場合、0/1の正気度を喪失します。
「魔王!」
霊告を読む北に、一斉に四人の男達が呼びかけます(魔王、というのは北の渾名のようなものです)。
「うん、まだ帝都転覆、日本革命の霊告は出ない。
やはり時期尚早に過ぎる。皆が考えなしに暴走しないように抑えるようにしてくれ」
四人の男達はどこかほっとしたような、残念がるような様子を見せます。
「ところで、吉川はどうした?
最近、姿を見せないが」
この北の問いに、四人は何か歯切れの悪い答えしかしません。明らかに何か言い渋っています。
この様子を北は冷然と眺めると、
「…少し気になることがある。悪いが、今日はこれまでだ」
すず子を伴って家の奥へと入っていこうとしますが、鈴木に連れてこられた探索者が居ることに気が付くと、「ああ、せっかく来てもらったところを悪いが、俺はちと用事が出来た。また来てくれ」と言い、鈴木に少し話があると連れ立って奥の間へ消えます。
どことなくしらけた様子で、四人の男達は探索者の方を見はするものの、特に声を掛けることなく去っていきます。ここで《心理学》に成功した場合、彼らの革命云々と言った勇ましい態度は上辺だけのもので、何か別の不安感が漂っていることが分かります。
探索者達が北の家から出て待っていると、鈴木が興奮した面持ちで出てきて、感極まった様子で叫びます。
「先生が、俺のことを信用してくださっている。
俺は、俺は感激だ!」
探索者が彼から話を聞き出す場合、単純にちょっとおだてれば簡単に北からの話の内容を語ってしまいます(一応、場所を変えてから、ですが)。
あるいは探索者の手段に合わせてコミュニケーション系のロールで成功すれば、同じく語りだします。
鈴木は、先生が今日集まっていた弟子達の様子がおかしい、内々にその動向を調べて欲しいと自分に命じたと言い、このようなことを頼めるのは鈴木しかいないと仰った、誇らしげに語ります。
すでにこの時点で北の密命を漏らしている為、そういったことを指摘すると彼は激怒しますが、同時に探索者のことを信用している、君なら助けてくれるはずだ、と妙に強引な理論を展開します。
鈴木の協力をするか否かは探索者次第ですが、キーパーは多少うっとおしがられても鈴木を使ってこのスレッド、その関連箇所を引き回すようにしてください。あるいは、その場に鈴木が居合わせるような状況になるように検討してください。
キーパーへ:
キーパーは、鈴木が探索者に嫌われないように気をつけてください。
嫌味なインテリ風ではなく、純朴な若者でたまたま北一輝のような怪しげな人物を信奉している、有能だけど意外と間抜けとするのがよいでしょう。
この後のシナリオにおいて、彼自身が重要な訳ではないですが、彼が居ることで場面が引き回しやすくなります。
キーパーへ2:
この霊告、すず子のお筆先は、実はシャン達が憑依して行なっています。
シャンが憑依している人間の持つ情報網に加えて、彼らの科学力であったり、あるいは単純に憑依を用いることでもたらされる情報を、彼らが分析した結果、あるいは自分達に都合の良いように北を動かす為の情報を与えているのです。
キーパーへ3:
キーパーへ2では北の霊告はシャンによるものであるとしましたが、キーパーの趣味によっては北一輝の霊告は本物であるとしてもよいでしょう。
国家改造を志す北の下へ集った社会的、経済的にも影響のある人物が、春子と接触したことによってごっそり乗っ取られたとして、北自身は魔王とも呼ばれるその強力な霊力でシャンを寄せ付けなかった、などとすると面白いかもしれません。
この場合、シナリオの進行自体にはさして影響はありませんが、オカルトの色合いが濃くなります。
魔王、北一輝
キーパーへ:
これらの情報は付加的な情報となります。
ざっくりと探索者に教えるだけで問題ありません。単純に、北一輝が怪しげな人物ではあるよ、ということを示すだけです。
このスレッドで登場する魔王と呼ばれる北一輝は本名、北輝次(きた・てるじろう)(明治36(1903)年に輝次から輝次郎と改名)で、明治16(1883)年に佐渡島で生まれました。
眼病と家業が傾いた為に学問の道を失って上京、社会主義に共感抱き接近するものの、この時代の代表的な幸徳秋水や堺利彦などの思想とは異なり、天皇と国民の関係に注目、様々な書物を図書館に通い詰めて読破するなど独学で社会主義思想を発展させます。
若い時分の集大成として明治39(1906)年に『国体論及び純正社会主義』を発表、天皇制度を批判した内容を含んでいた為に僅か5日で発禁処分となり、北自身も警察からの監視対象となりました。
この後、孫文らが東京で結成した「中国革命同盟会」に参画し革命運動家となります。明治44(1911)年に親しくなった民族主義的革命家・宋教仁に要請され、辛亥革命で混乱する中国に渡り、革命運動を支援しました。しかし、大正2(1913)年に宋教仁が暗殺され、孫文が再亡命すると北は日本へ帰国。これらの活動は回想録「支那革命外史」にまとめられています。
大正5(1916)年にすず子(間淵やす)と入籍し、再度、上海へと渡航します。この頃から一輝を名乗ったと言われています。
大正9(1920)年に上海を訪れた大川周明、満川亀太郎らの要請によって帰国、猶存社を設立し、国家改造運動に関わるようになります。しかし、これも大川との対立が深まり、大正12(1923)年に猶存社は解散し、大化会、大行社等に関係しました。
同年、『日本改造法案大綱』を発表し、この書物は大陸浪人や壮士、青年軍人らの思想に大きく影響を与えたとされ、昭和初期の国家社会主義運動における指導者として目されました。
その後、昭和12(1937)の2.26事件の首謀者の一人として軍事裁判において死刑となります。
北一輝は国家社会主義者、国家改造運動家としても有名ですが、同時に神秘主義者の一面も持っています。
北は幼い時分から幻覚を見ることがあったと言い、眼病の治療の為に投与されたコカインの影響もあり精神が鋭敏化したと言われています。
玉照師と呼ばれる心霊術師の福永寅蔵について心霊術、そして法華経によって修を収める術を身に付け、『霊告日記』で知られるように、北は法華経の読経によって入神し、様々な霊告を受けたと言われています。
この法華経によって霊的にも国家を改造しようとする北を、一部の人々は魔王と渾名しました。
魔王とミ=ゴ
シャンに憑かれた人物が多く出入りしていた北一輝を、ミ=ゴたちが襲撃します。
鈴木が経過報告や、あるいは北が怪しいかもしれないと踏んだ探索者が北の下を訪れる、あるいは監視しているなどの場合にこの場面を行なってください。
やはりミ=ゴ達は上空から牛込区の北一輝の邸宅を急襲します(北一輝は単独で外出することはあまり無い為に、ミ=ゴが襲撃を行なうのは自宅に居るときになります)。
探索者が何度かミ=ゴの襲撃の場面に遭っている場合、特にこれといった判定もなくミ=ゴの羽音に気が付きます(そうでない場合は、《聞き耳》が必要になります)。
北一輝は道場において法華経の読経をしている最中にミ=ゴが闖入してきます。北は動揺した様子も見せず、そのまま読経を続けます。
探索者がミ=ゴに対して戦闘を仕掛けた場合、この北の読経は奇妙な音波としてミ=ゴには認識され、彼らに動揺を誘います。この戦闘において、ユゴスよりの者どもの行動に1/2のペナルティを与えます。
そうでない場合(様子を見た場合等)、ミ=ゴたちは明らかに勝手の違う北に戸惑った様子で手にしたシャンの駆除装置を北に向けて発射しますが、何の効果も表しません。
ユゴスよりの者どものはいつもと異なる妙に動揺した様子を見せると、そそくさと撤退を開始します。
戦闘、あるいはミ=ゴが撤退した後、北一輝は探索者に気が付いてもそのまま読経を続けます。
彼の読経が終わるまで待つと、落ち着き払った様子で北は振り向きます。
「何用か?」
ここで探索者がミ=ゴについて尋ねた場合、彼は「あれか?最近になって見かけるものだ。ここまで接近されたのは初めてだが」と嘯きます。
ミ=ゴ達は北にもシャンが憑いているものとも考えていると同時に、サンプルとしても欲してはいるのですが、法華経の読経が何故か彼らに強い酩酊感を与えるような影響があり、その読経を聞くと撤退せざるを得ない状態となります。
この為、北はミ=ゴを見かけると読経を始めているのです。
探索者達の質問には一応北は答えますが、彼はミ=ゴと組んでいる訳でも、敵対している訳でもないので、ユゴスよりの者どもの目的や、何故北の家に来ているかについては分からない、知らないと答えます。
北はミ=ゴを霊的な何か、妖怪や化け物のようなものだと考えており、法華経を持って制することが出来る存在である以上、恐れるに足りないと言います。
この場で、北は一通り探索者の質問を受け付けますが、彼自身はこのシナリオにおいて重要な情報はほとんど持っていません。
弟子達、吉川春子に組みしていた者達の様子がおかしいことや、先ほどのミ=ゴの動きが活発になっていること、そして何かの大きな災厄の予兆のようなものを感じていることを探索者に語ります。
キーパーの判断で、まだ出していない吉川春子の情報や、弟子達の情報をこの場で出していくのも良いでしょう。
北にシャンが憑いていないことを確かめたミ=ゴは、以降、北の前に姿を現すことはありません。
これを鈴木は、「先生の霊力がああいった化け物を撃退したのだ!」と妙な感動の仕方をします。
生き残りの魔王の弟子
探索者が注意深く、様々な余裕がある場合は保護した北の弟子達をばらばらの場所に匿うでしょうが、大体において一箇所に集められると思われます。
多くの場合、彼らに取り憑いていたシャンは駆除されていますが、そうでない場合は彼らは隠れ場所で今後の謀議を凝らします。
元子を裏切った彼らは『神殿』へ戻ることが許されない為に、光合成によるエネルギーの補給を行なう手段を失い、徐々に活力を失いつつあります。この為に、探索者に『神殿』の場所、毛利家の北多摩の別邸について語るかもしれません。
彼らは探索者を使って元子を追い出し、『神殿』で光合成をする機会を得ようとするのです。
また、探索者が有用であると考えれば、自身の持っている情報(と言っても、大半はすでに探索者に吐いているのですが)を渡して、元子の排除や、隆子と渡りをつける為の行動を促す可能性があります。
キーパーは余裕がある場合は、彼らから探索者を動かすような情報を出していくのもよいでしょう。
キーパーへ:
隆子にシャンが憑いているのはプレイヤー的にはばればれですが、探索者としては確定した証拠が無い状態のままである可能性が高いです。
ここで生き残った魔王の弟子達の口から、隆子にもシャンが憑いている、と断言されるとシナリオの展開が大きく変わる可能性がありますので、注意してください。
あるいは最早、元子と隆子の対立が表面化している場合などに、隆子を頼る理由とするのもよいでしょう。
生き残った彼ら全員からシャンが除かれている場合、同じように謀議を凝らすこともありえますが、主に逃走についてであり、積極的な陰謀とはなりません。
探索者としては情報を得た後の彼らが逃走するのはあまり困らないと思われますが、場合によって逃げた者が元子やミ=ゴに捕らえられたりすることで、隠れ家が発覚するようなこともあるかもしれません。
こちらもキーパーの余裕がある場合は、彼らの行動がまた別の事件を引き起こすことを検討してもよいでしょう。
鈴木、魔王に報告する
魔王の弟子達全員の調査が完了すると(キーパーの判断や、シナリオの進行具合によっては全員でなくともよいでしょう)、探索者達は鈴木とともに再び魔王北一輝の下を訪れることになります。
普段の鈴木ならば、北の下を訪れるときにはどこか浮かれた様子があるのですが、今回ばかりは神妙な様子で探索者にもあまり話しかける様子ではありません。
無表情な北を前に、粛々と鈴木は探索者と行動を共にした弟子たちの動向を包み隠さずに語ります。事前に、探索者の方から北には伏せておいた方がよい、と言われている内容がある場合、それには触れません(シナリオ中、北は特に元子や隆子の勢力とも関係が無い為、あまりそういったことはないでしょうが)。
一通り、鈴木の報告を受けると北は探索者の方を見て、「君らの意見は?」は聞いてきます。
探索者がよほどおかしなことを言わない限り、北はやはり鈴木の報告を聞くときと同じように無言で頷きます。
「うむ、奴らがおかしなことになったのは確かに、吉川春子が入門した以降のことだ。
あれが派閥のようなものを作ったり、都合の良い霊告が出たり…」
自嘲気味に北は笑います。
「俺も修行が足りぬか。
まあ、よい。奴らは全員破門だ。二度と俺の前に顔を見せるなと伝えておけ」
鈴木に告げた後、探索者に北は向き直り、
「今回はよくやってくれた。鈴木一人の手柄ではないだろう。
礼を言うことぐらいしかできないが、ま、何かあれば俺を頼ってくれ」
とにやりと笑います。
スレッドの終了後
スレッドの終了=鈴木が北一輝に報告を済ませ、調査が完了した後は、鈴木はひとまず、高坂と同じように神話的事件に対しての興味と、探索者的な責任感を抱くようになります。
この為、スレッドの終了後、鈴木は積極的に事件に介入することはありませんが、探索者に協力する立場として、高坂と同じように自由に使われるNPCとしても構いません。
シナリオの終了後、鈴木は相変わらず北一輝に師事していますが霊的な事象に関しては懐疑的になり、全面的に北一輝を支持する狂信的な面は鳴りを潜めるようになります。
鈴木は北一輝から政治的、精神的なことを学ぶ一方で、神話的な事件にも深入りし始め、探索者的な立場となります。
北一輝はこの事件があっても、あるいは関東大震災にあってもいささかも動じることはありません。
相変わらずの読経三昧、霊告を持って自身の行動の指針を求め、日本改造、革命を信じて突き進んで行き、昭和11(1936)年に起こった2.26事件の首謀者の一人として翌年、片腕であった西田税とともに死刑となります。