桜嶺女学院
桜嶺女学院で事件に巻き込まれた探索者側のスレッドとなります。
初期段階で、学院の外で待機している探索者が居る可能性もあります。その場合、学院内に踏み込むのを躊躇うのであれば強引に、非常事態である、と宣言して学院内へ入らせ、女学生探索者と合流させるようにしてください。
また、各イベントは一応の場所も記載していますが、キーパーの判断で適宜変更するようにしてください。
- 音楽室への退避
- 桜嶺女学園の地図
- 中央東棟の廊下
- 学生寮内
- 正面広場
- 中央東棟
- 中央ホール
- スグルオの住人の襲撃
- 西教室棟
- 中央西棟
- 礼拝堂
音楽室への退避
女学生探索者は、安藤雪子とともに女学院に少し遅い時間まで残っているとしてください。
雪子は先の事件のこともあり、少々不安定となっています。学園周辺でも怪事件や、オペラ座館が無期休演状態で暇をもてあましているのも相俟って、女学生探索者を頼っています(彼女は声楽部は辞めていることもあり、あまり音楽室にも寄り付いていない状態です)。
他愛も無い話を雪子としていると、突然、耳を聾する轟音が響き始めます。
女学院は、帝都内で頻発する怪事件のせいもあって、あまり遅くまで校内に残らないように指示が出ている為、他の女学生の姿はあまり見えませんが、ほとんど生徒は何が起こったのか分からずに動揺した様子を見せています。
女学生探索者と、女学院に居合わせた探索者は、轟音の中から、何かが軋むような、金属を擦り合わせるような不快な音に気が付きます。
しかし、この耳を弄する轟音の中でこのような音が聞こえるわけが無いことに気が付きます。この異質な音の存在、スグルオの住人の存在に気が付いた探索者は、0/1D2の正気度を喪失します。
同時に、《アイデア》に成功すると、その音が『何故か青い音として視覚に感じられ』、目撃した探索者は0/1の正気度を喪失します。
この怪音に気が付くと同時に、廊下に真田が現われます。
《聞き耳》に成功した場合、真田が以下のように呟くのが聞こえます。
「この音、スグルオの住人の『翻訳機』が?」
真田が手近な生徒、女学生探索者の方へ近寄って来る中、轟音によって、学内の光景が青く滲んでいくように見えます。
「おかしい、『翻訳』が早過ぎる。
何故、もう影響が出始めている?」
珍しく真田が狼狽し、動揺しています。
(ここでは真田が近い為、特にロールの必要はありません)
しかし、すばやく同様から立ち直った真田は、「『音楽室』へ!早く!」、と女学生探索者を追い立てます。
その後、手近に居残っている生徒を急きたてながら走り、他に生徒が残っていないかを確認しています。
この時、真田に付いていこうとしても、「音楽室へ行きなさい。早く!」と追い返されます。
真田が走り去った後、《聞き耳》に成功すると、この轟音の中でどこか遠く、西の方からまるであざ笑うかのような音楽が聞こえてくることに気が付きます。この音に気が付いた場合、0/1の正気度を喪失します。
そして、その音楽はまるで真田の後を追うように、通り抜けていったことが分かります。
この後、真田は東教室棟(特別教室棟)に残っていた生徒の大半を音楽室へ誘導しますが、最後の女生徒を連れて室内に入ろうとした時、また前に聞いたあざ笑う音楽が、今度ははっきりと聞こえます。
この音に動揺を示した真田をからかうように、その音楽から凄まじい衝撃波が放たれます。この攻撃から女生徒を庇って負傷します(ルール的には1D100のダメージのものですが、からかう為に放ったものなので、直撃していないとしてください)。
この為、これ以後真田は具体的な行動を起こすことができず、探索者達にアドバイスを与えるだけになります(よっぽど困ったときだけ、無理やり動く、ぐらいにしてください)。
音楽室に逃げ込んだ真田は、怪我を押して叫びます。
「ピアノでも、何でも良いから、楽器を奏でなさい!
可能な限り正確に、機械の様に!早く!」
音楽室には様々な楽器が置かれています。ここで《芸術:(なんらかの楽器)》か、《芸術:歌唱》/2に成功すると、轟音の中に聞こえてきた異質な音、青い音の幻覚は潮が引くように退いていきます。
失敗した場合、青い音の浸食は止まず、このロールに成功するまで、正気度を0/1D2点ずつ喪失し、さらにスグルオの住人による音波攻撃を受け続けます。
(探索者達が《芸術》を持っていない(!)場合、その場に居る女生徒の誰かに60%でロールを肩代わりさせてください。
あるいは、雪子に行なわせるのもよいでしょう)
※ここでの正気度喪失は、スグルオの住人を感知したことによるものではなく、『通信機』から出る轟音に直接身を晒していることによる喪失です。
青い音が音楽室の外へ引いていくのを確認した後、真田は女学生探索者に向かって説明をします。
「あの青い音は、異次元の住人であり、音である生物です。
この轟音は、彼らをこちらの世界の音に翻訳する為の装置から出ているものです」
「しかし、そんなことより、寮に居る生徒たちが無事なのか…」
真田は呟いて、苦しげに目を閉じます。
「彼らは『正確な音』に弱いのです。
楽器や、歌で彼らを遠ざけつつ、装置を破壊するかすれば、この状況を脱せますが、見ての通り、私は役に立ちそうにありません」
真田は自身の怪我を示します。
(シナリオの流れとしては、探索者達に探索に行け!と言いたいところですが、女学生探索者の意向に合わせて、この後の展開を検討してください。
ただ、時間が経てば経つほど不利になる上に、立て篭もっていてもしょうがない、ということは伝えてください)
もしも、真田に何故そんなことを知っているのか、と聞いた場合、彼女は困ったような顔をしながら、「経験者ですから」と答えます。
この場で女学生探索者が探索を渋る場合、特に《芸術》に自信が無い場合は、雪子が「私が一緒に行きます!」と随行を申し出ます。
(実際問題として、《芸術:フルート》が80%である雪子は、ほぼ失敗することはありません。
女学生探索者に無理に付いて行かせて、バックアップ要員にするのもよいでしょう。雪子のロールは女学生探索者が代行して行なうようにしてください。
但し、雪子はフルートの演奏に専念する為、他のロールを行なうことはできません)
桜嶺女学園の地図
桜嶺女学院の地図を下記に示します。
音楽室をベースキャンプとして、女学院内の探索を行うことになります。
各イベントは大体の配置が記載されていますが、探索者の動きに合わせて発生させるのもよいでしょう。
(気が付く人はすぐに気が付くと思いますが、桜嶺女学院のMAPは自由学園明日館をモデルとしています。
マップをより詳細にしたい場合は、参考にするとよいでしょう)
逃げてくる生徒と倒れている生徒、中央東棟の廊下
探索者達は学院内の移動中、腰が抜けたようにずるずると這いずりながら逃げようとしている女学生を発見します。
その女生徒へ近寄った場合、彼女は腰が抜けており立ち上がることが出来ません。そして、ショックのあまりまともに話すことも出来なくなっています。
恐慌状態のその女生徒に対して《精神分析》を行なうことも可能ですが、彼女は探索者にすがるようにしながら、中央棟の裏の方向を指差します。
(《精神分析》を行なって落ち着いた場合でも、中央棟の裏へ探索者を誘導します)
そこにはさらに倒れている女生徒が居り、その周りをゆらゆらと青い音が蠢いているのを目撃します。
この奇怪な青い音を初めて目撃した場合、0/1D2の正気度を喪失します。
青い音はまるでその倒れている女生徒を遠巻きに観察するように蠢いています。
この女生徒を助ける為には、青い音を遠ざけるか、突っ切っていく必要があります。
突っ切っていく場合、彼らは物理的な影響力は弱いのですが、この轟音の中でまた別の音が探索者の耳に聞こえます。それはノイズのようであり、奇妙な異界の楽のようである、まるで金属を擦り合わせるような不快な音です。
この青い音に接触した場合、ダメージ等を受けることはありませんが、彼らに触れてしまうことでPOW12の対抗ロールに失敗すると、1D3の正気度と、1D6のMPを失います。
遠ざける場合は、《芸術:(なんらかの音楽)》に成功する必要がありますが、この場合は彼らが遠ざかるのに時間が掛かる為、1ターンを余分に消費します。
彼女らを救出して話を聞いた場合、この二人は放課後、中庭で過ごしていたところ、この怪事に遭遇し、一人が倒れてしまい、一人は腰が抜けて救援を求めることも、逃げ出すことも出来なったと語ります。
彼女らを探索者の助けで音楽室まで送り届けるには、1ターンを消費する必要があります。
桜花寮内
桜花寮内にも轟音は響いていますが、青い侵食が抑えられているように感じます。
この差異を認識した探索者は、『音が見えている』という異常事態をはっきりと認識し、0/1D2の正気度を喪失します。
寮内の生徒達は皆室内に隠れており、動こうとはしません。寮内は侵食率が低い為、この轟音が何かしら異常事態ではあるものの、自分達に関係があると思っていないことに加え、舎監である真田が姿を現さないことも手伝って、危機感を感じていないのです(彼女らのほとんどは、本当に危ないなら真田が助けに来るはずだ、と信じてきっています)。
寮生達を避難誘導する為には、《説得》が必要になります。成功した場合は2ターン、失敗した場合は+1D4+1ターンが経過します。
(《説得》の成否に関わらず、寮内の女学生達は避難を行います)
踊る女学生、正面広場
正面玄関の前、中央棟、東西の教室棟に囲まれた広場で、一人の女学生がまるで踊るようにくるくると回っているのを目撃します。
無表情に、しかし狂乱するように無秩序な音楽に合わせたその踊りは、まわりにゆらめく青い影と合間って、一種異様な、異世界の舞踏です。この女学生を間近で目撃した場合、0/1の正気度を喪失します。
《アイデア》か、《芸術:(音楽に関連したもの)》に成功した場合、その女学生の踊りは轟音とシンクロしているように思え、その周りで青い影がまるでその踊りに合わせるかのように揺らめいていることが分かります。
この女学生を物理的に止める場合、《組み付き》かそれに類する技能で動きを止める必要があります。この場合、彼女も50%で《組み付き》を受け流します。
《組み付き》に成功した後、STR10との対抗判定に成功すれば、完全に押さえ込むことに成功します。押さえ込まれた女学生は、抵抗を止めたかと思うと、気絶してしまっています。
(一応、張り倒す(ノックアウト攻撃を仕掛ける)というのもありですが、その場合でも50%で《回避》を行ないます)。
組み付き以外に、『異次元通信機』からの影響度が低い場合は、楽器を奏でることでその影響から逃れることを助けることができます。
2回続けて《芸術:(音楽に関するもの)》に成功すれば、彼女の踊りは次第にゆっくりになり、ついにはばったりと倒れます。
『異次元通信機』の影響度が高い場合、ここでスグルオの住人、女学生の周りでゆらめている青い音が、探索者へ襲い掛かってきます。
倒れた女学生はもう踊りを止めていますが、時折痙攣するように手足が動き、彼女がまだ悪夢の中で踊っていることが見て取れます。
歌う山県雅子、中央東棟
明かりの点いていない、薄暗い教室の中に、一人の女生徒が立っています。
轟音の中で、聞こえるはずの無い歌声が探索者の耳に届きます。この異様な歌を聞いた場合、0/1D4の正気度を喪失します。
教室の中には山県雅子が立っており、彼女が歌っていることが分かります。
そして、その周りには青い音が見えており、教室の中は青い空間に侵食されています。
《アイデア》か、《芸術:(音楽に関連したもの)》に成功した場合、彼女の歌は轟音とシンクロしており、おそらくそれがこの教室の侵食の早さに関連していることに気が付きます。
ここでは探索者側が奏でる音楽と、山県雅子の歌う歌が視覚的に拮抗しているのを目撃することになります。
山県雅子は虚ろな目をしており、歌う以外の行動を見せません。また、教室の中に入らない限り、青い音が襲ってくる様子もありません。
山県雅子の異質な歌は、奇妙なことですが青い音=スグルオの住人の翻訳を早めています。
この為、この場で目撃されるスグルオの住人は青い靄のような存在ではなく、うろこを持った爬虫類のような怪物に見え、0/1D4の正気度を喪失します。
この部屋の中のスグルオの住人を撃退しても、山県雅子の歌によるスグルオの住人の翻訳が早く、次々とスグルオの住人が補充されます。
山県雅子を助けるには、《精神分析》で正気に戻して教室から連れ出すか、気絶させて強制的に歌を中断させるかが必要になります。
彼女が正気に戻って歌を止めた時点で、スグルオの住人は補充されなくなりますが、部屋の中の青い音の浸食はそのまま定着して残り、スグルオの住人は出現したままになります。
キーパーへ:
ここで探索者が山県雅子を見捨てる可能性は無きにしも非ずですが、救出後に青い音の浸食が進んだ部分は、この轟音が鳴っている限りは元に戻らない、ということを示唆してください。
小幡とらと小早川隆子、中央ホール
中央ホールの隅、電話室の前で、二人の女生徒がもみあっている姿を発見します。
それは、小幡とらと、小早川隆子です。
どうやら、電話室から出てきた隆子を、とらが捕まえているように見えます。
「く、こんなことをやっている場合ではないのに!」
とらを必死に振り払おうとしている隆子に対して、とらが言い聞かせるように言います。
「まあ、落ち着きたまえ、隆子君。
真田女史が音楽室へ駆け込むのが見えたから、とりあずそこへ行こう。
ここは危なくていけない」
小幡とらは、例に漏れず授業をサボって中庭で昼寝をしていたのですが、寝過ごしてしまい今回の事件に巻き込まれています。
中庭に居た為、真田には発見されず、逆に中央棟の電話室から出てきた隆子を発見して、それを追う様にしています。
(彼女はこの事態を打破しよう、という考えは持っていません。明らかに安全に、この事態を気にせずに移動する隆子を捕まえて、自分の安全を図ろうと考えているだけです)
とらは女学生探索者に気が付くと、「ああ、よいところに。危険だと言っているのに、何故か隆子君が奥へ行きたがるのだ」と言います。
探索者が隆子に近づいた場合、《聞き耳》/2に成功すると、彼女からまるでメトロノームのような、規則正しいリズムを刻む音が聞こえてくることに気が付きます。
この音が、隆子からスグルオの住人を遠ざけているのです。この為、隆子にくっついているとらもスグルオの住人の影響をあまり受けずに済んでいます。
この『制音装置』はスグルオの住人を退けるようなものではありません。自ら積極的にスグルオの住人に近づいた場合は何の効果もありません。
探索者達がやって来ると、隆子は抵抗を止めて、まず探索者に、「音楽室へ避難したはずではないのですか?」と聞きます。
探索者が素直に、真田に事態の解決の為、『装置』を探しているのだ、と話した場合(あるいは、目的をぼやかしても)、とらの方を見やり、「では、私も一緒に行きます」と宣言します。
この言葉にとらは唖然としますが、「ふむ、それは、困るな。真田女史が見込んだのは君ではないよ。おそらく、我々のように逃げ遅れた生徒の救助もその指示に入っているのではないかね?」と聞きます。
探索者がどう裁定するかにもよりますが、基本的にとらは退避を主張し、隆子は探索に同行させるか、勝手にさせろ、と主張します。
二人とも、面倒が増えることを嫌がっている為、真田の権限の代理人たる探索者の主張を一応尊重し、この場ではその指示に従います。
(一旦、音楽室に退避してとらを置いてから、また探索に出る、という流れになるのが普通でしょうか)
音楽室に退避したとらは真田が怪我をしていることを確認し、音楽が青い侵食を妨げていることが分かると、彼女には珍しくため息を吐く様に呻いた後、
「これがいつまで保つかは分からないね。
我々の命運は君達に掛かっているようだ」
と、探索者に囁きかけます。
「まあ、こちらは任せておきたまえ」
頼もしいことを言う割りに、とら自身は何もせず、楽器を奏でたり、作業をするのは他の女学生ですが、彼女の指示と弁舌によって、音楽室内は多少、明るさを取り戻します。
とらの指示によって、音楽室の中はある程度組織化されます。この為、探索者が怪我をしている場合は《応急手当》を80%で行なうことが出来ます。また、音楽室においてその他のロールが必要になった場合、70%の確率でそのロールを成功させることが出来るようになります。
とらと隆子の二人を音楽室に退避させた後、隆子に禁足を命じた場合は、彼女は探索者が去った後にそっと音楽室を抜け出します。とらは、退避後は特に隆子に対しては注意を払いませんが、探索者から頼まれた場合は、『多少は』気に掛けます。
キーパーへ:
隆子は、元子(主流派)、春子(土着派)ともに通じています。
隆子の元々の性格からして、陰謀家であり、自らの労を少なくして最大の益を上げることを目的としており、蝙蝠派を自認しています。
この為、彼女は桜嶺女学院で起こった事象を即座に『異次元通信機』の為であることを理解するとともに、事前に『制音装置』を用意していたのです。
現状、春子は失敗したと認識しており、元子の指示と意思を守る為に行動することに決めています。
スグルオの住人の襲撃
桜嶺女学院内では、青い音の浸食の影響は2倍で扱います。
これは山県雅子の歌という要因と、桜嶺女学院に設置された『異次元通信機』の内部に納められた首の関係によるものです。
スグルオの住人との接触、襲撃が行なわれた場合、彼らは基本的に隆子を避けて攻撃を行ないます(具体的に、ランダムで目標を決める場合に、彼女だけ確率を低く設定するなど)。
《アイデア》+《芸術:(音楽に関するもの)》で、明らかに彼女が微かに発しているメトロノームのような音がスグルオの住人を遠ざけていることに気が付きます。
あざ笑う音、倒れている女生徒、西教室棟
青い音の侵食が少ない教室で、女生徒が倒れています。女学生探索者は、女生徒が声楽部に所属する、津谷恵理子であることが即座に分かります。
彼女の得意とするヴィオルとその弓を手にしており、演奏をしている最中に倒れたことが見て取れます。
《目星》か、《聞き耳》/2か、あるいは《芸術:なんらかの音楽》に成功すると、この女生徒の周りには、青い音以外の何か別の音が漂っていることに気が付きます(繰り返しになりますが、現在の桜嶺女学院は『音が見える』異常空間です)。
探索者がこの部屋に足を踏み入れると、途端に部屋は暗くなり、辺りを圧する轟音とはまた別の音、彼方から響く奇妙な金属のような音が支配したかと思うと、ガタガタと窓が音を立て、部屋の中にその音の気配を感じます(青い音と異なり、この音は見ることができませんが、青い音を圧倒していることは分かります)。
ここで、楽器を演奏している探索者(か、おそらく安藤雪子)は《芸術:(楽器)》に成功した場合、その音がまるで演奏者に纏わり付くように移動します。そして、部屋の中で風が荒れ狂い、ガタガタと音を立て始めます。もしもここで、窓の外を確認した場合、窓の外は暗黒に包まれており、いつもの見慣れた光景が一切見えないことに気が付きます。
演奏者は、自らの意思とは関係なく、音楽をそのまま奏でてしまいます。《芸術:(楽器)》に失敗するまで、演奏を中断することが出来ません。それまでの間、演奏者はこの場に釘付けになると同時に、毎回、1/1D2+1の正気度を喪失します(この演奏中に狂気を発症するのに十分な正気度が失われていても、演奏が狂気じみてくる以外の影響はありません)。
ここでは強制的に止める場合は、ダメージを与えるほどの衝撃を与える必要があります。そうして演奏を止めた場合は漂う音=トルネンブラの機嫌を損ない、部屋の中で嵐のような音が吹き荒れ、その場に居る全員に《回避》+《跳躍》を要求してください。成功した場合は1D6-1D6、どちらかに成功した場合は1D6、両方に失敗した場合は2D6のダメージを受けます。
演奏が5回に及んだ場合、演奏者は自動的に短期の一時的狂気、気絶を発症し、その場に倒れてしまいます。
演奏を中断したか、演奏者が気絶した場合は、まるでその音は興味を失ったかのように窓を打ち破り、去っていきます。轟音の中なのにも関わらず、次第に遠ざかっていくこのあざ笑うような声を感じた探索者は、0/1の正気度を喪失します。
侵入者ミ=ゴ、中央ホールか、中央西棟
ミ=ゴとの遭遇は隆子との合流後に行なってください。
その教室の中には、見覚えのある奇妙な甲殻類のような存在が徘徊しています。
それは背丈が5尺もある、桃色の甲殻類のようだった。胴体には馬鹿でかい背びれか、羽が生えており、関節肢が複数組付いている。
甲殻類ならば頭のある箇所には、非常に短い触手に覆われた渦巻状の楕円体が付いていた。
そいつはおそらく主に使われるであろう最も大きなハサミに、まるで銃を模した玩具のようなものを持っており、探索者に気が付くとそれをこちらに向けた。
ミ=ゴを目撃した探索者は、0/1D6の正気度を喪失する可能性があります(キーパーによっては、前回のシナリオで慣れたことにしてもよいでしょう)。
ミ=ゴからは、低く唸るような音が規則正しく聞こえています。《アイデア》によって、これが隆子から放たれる音と同じような効果を持っていることに気が付きます。
女学生探索者が隆子を同行している場合、ミ=ゴは問答無用とばかりに手にした渦巻き型の銃のようなものを向けます。
オペラ座館で聞いた不明瞭な、ノイズのような声で詰問します。
「この音を発する装置はどこにある?」
探索者が応えに関わらず、ミ=ゴは警告します。
「まだ気が付いていないのか。
この音は異世界の振動だが、いずれは『神殿の奏者』によって」
ミ=ゴの警告を遮って、隆子が懐から取り出したコルトベストポケットを発射します。
(隆子に禁足を命じて別行動を取っている場合、隆子はどこからか現われて、銃撃を行ないます)
「あれの言うことを聞いてはいけません。
あれは、敵です」
隆子は有無を言わさず、そう宣言します。
探索者が戸惑う可能性もありますが、ミ=ゴは等しく探索者も含めて目標にします。ミ=ゴは耐久力が半減すると逃走を開始します。
ミ=ゴ STR 15 CON 13 SIZ 14 DEX 14 POW12 DB+1D4 耐久力 14
武器:
ハサミ 30%、ダメージ 1D6+DB+組み付き
渦巻銃 20%、ダメージ 2D6 1ラウンド1回の射撃
装甲:
なし。ただし、貫通する武器からは最低限のダメージしか受けない。
ミ=ゴを撃退するか、逃走した後、隆子から再度、「あれは敵です。あれは、あれの目的の為に動いているに過ぎません」と、探索者に警告を与えます。
隆子にミ=ゴについて訪ねた場合、「あれは地球上の資源を狙っている宇宙からの泥棒のようなものです。信用してはいけません」と応えます。
もしも、ここで隆子に疑問を抱き問い詰めた場合、彼女は大体以下のように回答します。
隆子自身は今のところ探索者と敵対する意志はありません。むしろ、協力してことにあたった方が楽に進むと考えています。
可能なラインで情報を開示して、探索者の疑問を解消し、隆子と同行するようにしてください。
(隆子を探索者のような立場だと思わせるのが一番楽かもしれません)
何故銃を持っているのか?
「これは、護身用として持っているものです。
最近は物騒なうえに、不審な事件もこの近所で多いですからね」
ミ=ゴを知っているのか?
「あれは敵です。
あれを信用する余地はありません。私も貴方がたと同じようなことに遭ったことがある、と言えば分かりますか」
この事件は?
「分かりません。
ただ、姉上から事前に何かある、とは聞いています」
(ここで《心理学》に成功した場合、嘘ではないですが、本当のことをぼやかしていることが分かります)
『異次元通信機』の発見、礼拝堂
礼拝堂の奥、中央にある祭壇の上には、円筒形に近い、ダイヤルの無いラジオのような装置が置かれています。
部屋の中には轟音が満ち満ちており、青い音が溢れていることに気が付きます。
装置に近づこうとすると、それを守るように青い音が移動することが分かります。装置を回収しようとした場合、青い音=スグルオの住人3体との戦闘になります。
スグルオの住人を撃退し、装置を破壊しようとした場合、隆子が止めに入ります。
「待ちなさい、待って。
それを破壊されるのは、困ります。姉上から、それを保護するように言われているのです」
小早川隆子が、幾分不本意な様子でそう言います。
「とにかく、詳しいわけは私も分かりません。
ただ、姉上からその装置を回収するように言われています。これは、毛利の家長からの命令であり、私にとっては絶対なのです」
《心理学》に成功した場合、彼女の言葉は半分が嘘(詳しいことを知らない)であり、半分が本当(装置を回収すること)であることに気が付きます。
探索者が反対した場合、隆子としては多勢に無勢、しかも物理的には弱者である為、打つ手がありません。諦めきった表情で、「私には打つ手がありません。どうぞ、ご自由にどうぞ」と言い、去っていきます。
(キーパーによっては、隆子の《言いくるめ》等のコミュニケーション系の技能を行なわせてもよいでしょう)
隆子の意見を容れた場合、「ありがとうございます。恩に着ます」と言います。
「さて、後は姉上の到着を待つだけですが…。
装置を運び出すのを手伝ってもらえますか?」
『異次元通信機』を正門まで運び出し、元子の車か、探索者を待つことになります。
やってきた元子のベルリエVE型か、探索者の車に同乗しても、特に降りるように言われることも無ければ、気にされているような様子にもなりません。