キャンペーンの枠組み

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『キャンペーンの枠組み』目次:

 帝都モノガタリのモノガタリ、シナリオの舞台設定をトレイル・オブ・クトゥルーのP.204から始まる第6章『キャンペーンの枠組み』に沿った形で、紹介していきます。

 各シナリオの背景に関わる設定のため、大きな影響(ネタバレ)はないものが多いですが、それでもまっさらな状態で楽しみたい方は読むことをおすすめしません。
 キーパー、マスターの予定の無い方や、シナリオを未プレイの方は、お気を付けください。

 ここで紹介する内容は、シナリオの本体と同様にキーパー、マスター各位で自由に改変、取捨選択して構いません。
 キャンペーンの設定として取りまとめてはいますが、単発のシナリオの設定に流用したり、考えるのが面倒な時になんとなく利用するのもよいでしょう。
(シナリオ毎に設定が異なる場合は、そうプレイヤーに告げましょう)

キャンペーンの枠組み『帝都モノガタリ』

舞台

 このキャンペーンの枠組みは、大正時代(1910~20年代)の日本、帝都東京を中心とした、“基地と任務”型の構成となっています(“基地と任務”型はToCの用語と思われ、で文字通り、活動拠点を中心にシナリオを解決していくタイプのことです)。
 ゲームの開始はキーパー次第ですが、大正年代を大きく外れることはないでしょう。キャンペーンの舞台となるのは帝都東京が中心となりますが、長野や岡山の山奥、東北地方に加えて満州などの大陸方面や、南洋の方面なども含めて、当時の日本人ならば(それなりに裕福である必要はありますが)大きな障害がなく旅行できる範囲であれば構いません。
 荒俣宏『帝都物語』を手本としていますが、そもそもクトゥルフ神話の作品ではないため、その他、様々な大正時代を描いた作品と、大正時代以外の神話作品を参考にしてください。
 キャンペーンは個別のシナリオを描いたものから、連作でクトゥルフ神話の大きな謎を追うことになることもあるでしょう。

スタイル

 クトゥルフ神話TRPGにおけるトーン、トレイル・オブ・クトゥルーにおいてのスタイルはキーパー次第です(あるいは、シナリオ次第)。
 トレイル・オブ・クトゥルーの純粋主義で落ち着いた雰囲気の中、帝都を静かに探索し、狂気が満ちる演出を行うのも、アメリカの狂騒の20年代には遠く及ばないかもしれませんが、法的な拘束力がまだゆるかったこの時代、多少の銃撃戦はあり得ますし、主な舞台の帝都を飛び出して満州などの大陸、南洋に足を伸ばせばパルプにも向いています。

神話

 神話がどれほど世間に知られているかはキーパー次第ですが、あまり知られていないことになるでしょう(トレイル・オブ・クトゥルーでの純粋主義が基本)。
 世界に遍く存在する神話の情報は、ときに容易に入手できるものですが、それは断片的であり、神秘主義的なほのめかしであり、意図的に、あるいは無意識に省略され、主観的な解釈がなされることで不完全かつ難解なものとなっていることでしょう。
 ミスカトニック大学の付属図書館のように神話の関連書籍を豊富に扱い、体系的に研究された機関は日本には存在していません。神話の研究には多大な苦労が伴うことでしょう。
(もちろん、キーパーの判断で専門的な研究機関があったことにしても問題ありません)

探索者

 探索者は全員、帝都かその近郊に居住しています。
 最初は神話とは無関係であるかもしれませんが、ふとしたきっかけで神話的な事件に巻き込まれて、世界の真実の姿の一端を目撃します(これらの事件はシナリオでもよいでしょうし、探索者の背景として語られるのもよいでしょう)。
 探索者たちは後述する舞台装置のどれかに所属しているか、関係を持っていることで結びついています。
 探索者たちは皆、基本的な『探索者』としての特性を備えており、神話的な存在や事象の危険性をよく理解したうえで、秘密裏に、時には危険に挑むことになります。

レギュラーNPC

『帝都モノガタリ』に登場するNPCや、場所、組織を紹介します。
 シナリオに登場しているNPCもいますが、より汎用的に舞台装置として説明します。
 NPCの名前の後ろのカッコ内は生年となります。NPCの中には設定されていないものもいます。これは探索者との関係からキーパーが適当に年齢を決めて下さい。
 また、一部のNPCにシナリオの都合上、細かい設定が詰まっている場合がありますが、キーパー各位で好きなように調整、変更してください。

古井耕一、パトロン

 ふるい・こういち、いわゆるディレッタントであり、探索者達のパトロン枠です。
 いわゆる高等遊民であり、まったく働いていません。金が金を産む状態ではありますが、不思議と彼が投資する事業、分野は当たりが多く、多くの人々が彼の資金を目当てに交流を求めています。
 本人はいわゆるディレッタントの類で、考古学や民俗学に興味はあるのですが、自らは調査せず、人に任せて帝都を出ることはほとんどありません。

 探索者の資金面での援助の他、学問や芸術は言うに及ばず、様々な分野に人脈を持っている為、探索者が自身の専門を外れている分野の専門家を頼る場合になども古井に紹介してもらうなどもよいでしょう。
 彼が頼りになるのは側面援助のみで、直接的な探索には参加することはありません。
 彼から援助を受ける事で、探索者達はその頼みを断ることができなくなるので、探索の依頼や、巻き込まれるのが楽になるでしょう。

 参考シナリオ:
 緑魔
 死女優
 山羊の花嫁
 夜に来る

菘文乃、日比谷図書館の司書

 すずな・あやの、日比谷図書館の司書です。
 重度のビブリオマニアで、女性であること以外は不明な人物です。図書館以外では姿を見ないし、何をしているかも分かりません。そんな彼女を図書館の関係者は『本の亡霊』と呼びます。
 毎日、図書館の蔵書と向かい合っていますが、本の知識もずば抜けているため、貴重な本の相談や、受け入れ時には必ず姿を現します。
 また、本の知識だけでなく、本に関わる知識も豊富であるため、非常な博学です。このため、各方面から相談を受けることもあります。
 彼女は本に対する関心が全てであり、本が絡めば何にでも興味を示します。

 探索者達が日比谷図書館に赴いても日常業務の忙殺されて姿を見せることもありませんが、彼女の興味を引くような本の話があれば、無理を押して話を聞いてくれます。
 一般向けのキュレーション業務に関わることもあるため、探索者が彼女を狙って本の相談をするのもよいでしょう。

 参考シナリオ:
 曳間の肖像
 曳間の追跡
 天地交響曲

宍戸武蔵(1882年生)、車夫、タクシー運転手

 ししど・たけぞう、明治期、大正期の前半は人力車の車夫、後半からタクシー運転手です。
 江戸っ子気質ですが時代の流れに乗って自動車の運転技術を習得するなど、新しい物好きで目端が効く性格をしています。
 明治期にはある華族のお抱えの車夫として人力車を牽いていたのですが、自動車が登場すると「次の時代は自動車だ!」と車の運転技術を学び、お抱えの自動車運転手になるまでは良かったのですが、雇用主たる華族は没落し、本人も職を失います。
 その後、その運転技術を生かしてタクシー会社に再就職しました。
 スピード狂とまでは行きませんが、客の要望に応じて飛ばすことには特に抵抗は感じません。

 タクシーを捕まえると何故か宍戸だとか、客待ちのタクシーに乗り込むと何故か宍戸だとかいう感じで、タクシーの運転手として登場させるほか、探索者に世間話として一般的な情報を伝えたり、あるいは不審な客の話をするなどするのも面白いでしょう。
 特に言及はされていませんが『曳間の肖像』に登場するタクシー運転手を武蔵にするのもよいでしょう。

 参考シナリオ:
 帝都狂想曲

有田純、オカルティスト

 ありた・じゅん、心霊術家を自称する、オカルティストです。
 大正期のオカルトブームに乗って、心霊術と称するいわゆる心霊治療や催眠術の類を使い、その広く、膨大な知識により様々な分野、階級の人間と交流しており、顔が広い人物です。
 世間一般からは、オカルトブームの時流に乗った新興宗教の教祖のような扱いから、変わり者の高等遊民、あるいは各界に顔の利く時の人と思われています。
 帝都内に構えた洋館に住んでおり、訪れる客に本物の魔術、オカルトや、トリックによる心霊現象を見せて半ば信者のようにしたてあげて、一種の新興宗教のようになっています。

 有田の正体はニャルラトテップですが、特に大それた陰謀をたくらんでいるわけではなく、頽廃的な生活を送っているだけです(ゆるやかに人々を頽廃的な、オカルト的な方向へ向けている、という感じでしょうか)。
 探索者がオカルトの有識者として頼ったり、紹介されたりする専門家とすればよいでしょう。
 また、一度知り合いになれば面倒なオカルトにまつわる事件に巻き込まれたり、神話的な事象の調査などを依頼されたりするのもよいでしょう。

 参考シナリオ:
 闇の中の箱の中
 夜に来る

探索者の探偵事務所

 是非とも、『帝都モノガタリ』でキャンペーンを行う場合(キャンペーンでなくても)、探索者の探偵事務所か、探索者が所属する探偵事務所を設定してください。
 キャンペーン自体のトーンの補強にもなりますし、補助のNPCを入れやすくなる点や、探索の拠点、事件に巻き込まれる起点、連絡場所にも使える、便利な場所となります。
 いまのところシナリオは存在していませんが、フタリソウサなどを参考にするのもよいでしょう。

探索者の実家

 こちらも華族、女学生のPCが居る場合は設定しておくと便利です。
 効用は探偵事務所に近いですが、アカデミックなサロンであったり、上流階級との窓口などに使うと面白いでしょう。
 前述のPCの探偵事務所と合わせて、シナリオのトーンやスタイルによって使い分けてください。

怪想社

 かいそうしゃ、ニッチでマニアックな弱小出版社で、団子坂の付近に事務所を構えています(大正当時、団子坂の近くには青鞜社や、森鴎外の観潮楼があったりしました)。
 明治末期、大正初期の雑誌ブームに乗って創立した会社で雑誌が中心で、最初期には学術系の民俗学や、地方の歴史、風土やらまじめな内容を扱っていましたが、その中の怪異や怪談といった話が読書の受けが良かった為、そちらに重きを置く路線に切り替えています。
 毎月、総合雑誌『怪想』を刊行しており、新人発掘に力を入れているために、一部の幻想・怪奇文学の愛好者たちに評価されています。
 怪想社の近く、団子坂に白桜軒という喫茶店があり、そこが怪想社の社員の溜まり場になっています。社内では話しにくいことや、社内に入りづらい関係者と話をするような場にも使われています。

 編集者や、出版関係の探索者が所属していたり、作家や芸術家の探索者が原稿を書いていたりする出版社とするとよいでしょう。
 真面目な報道機関からは扱われないようなニュースや、専門分野の情報なども怪想社を通して手に入ったり、報道、出版関連のコネとして使用してください。
 また、作家の探索者の担当者などが興味を引く事件を持ち込む、相談しに来るなどしても面白いでしょう。

 参考シナリオ:
 灯火の行く橋
 とある坂での密室殺人事件
 曳間の肖像

カフェ『アントライオン』

 銀座に本店、浅草に支店があるカフェです。
 両方とも震災前後を通して営業を続けており、大正初期ではカフェという新しい文化を感じる場であり、震災後、大正後期では昔ながらの営業形態を守るカフェとなります。
 銀座の方は3階建てで、上階には大小の個室が用意してあり、各種の会合やパーティなどに使用されています。小さな個室は作家が自主的に缶詰に使ったり、されたりすることがあったり、銀座周辺に拠点を持たない報道関係者が拠点に使うこともあります。
 店名はアリジゴクの意味がありますが、実はボルヘスの幻獣辞典にも登場する伝説上の怪物ミルメコレオのことで上半身はライオン、下半身は蟻の矛盾を表す怪物から取っています。カフェに来る客からは居心地の良い店内とコーヒーの味が蟻地獄のように抜け出せなくなるとも、女給の中にそういった類の女が居るとも言われます。

 導入のために呼び出されたり、事件に巻き込まれる起点となる場所、そして銀座という土地柄、カフェに行こうとなったときに使用する場所です(もちろん、銀座には様々な有名な実在のカフェが存在するので、そちらでもよいのですが)。
 シティアドベンチャーのシナリオで、探索者達の待ち合わせや、打ち合わせ、NPCの呼び出しに使ったりしたり、文芸関係や報道関係のNPCが出入りしている場所としてもよいでしょう。
 古井耕一がアントライオンのパトロンの一人であるため(経営には関わっていません)、その友人であったり、依頼を受けていたりする探索者に対しては融通を効かせてくれます。
 アントライオンの店内や、店長、女給の詳細は特に設定していません。キーパー各位で好みの店内を演出してください。

 参考シナリオ:
 月下怪奇譚
 夜に来る
 暗黒の太陽

桜嶺女学院

 神田区駿河台の辺りにあり、現在でも辺りには大学も多く、またニコライ堂(正式名称は「日本ハリストス正教会東京復活大聖堂」)にも程近い場所です(現在の千代田区駿河台、御茶ノ水駅の近く)。
 桜嶺女学院は前身を桜嶺女子塾と言い、帝都にある華族の娘達に向けた私塾でした。これが明治32(1899)年の高等女学校令を受け、2年の準備期間をおいて明治35年に5年制の桜嶺女学院となります(女学校は4年のものが多かったようですが、中には5年のものもありました)。
 桜嶺女学院となることで、一般にも門戸を解放し平民の(それなりに金持ちの)生徒が増えています。格式の高い女学校ですが、華族以外の女生徒を受け入れが進み、リベラルな雰囲気を持ちます。
 元々、私塾を開いた華族がカトリックに傾倒していた為、ミッション系の学校ではないものの、聖職者(平たく言うと尼さん)を招いてカトリックの教えを取り入れた女学校となっています。
 しかし、実際には単に授業や学校行事に多少のカトリックのイベントが入っているだけで、実質的にはあまり普通の女学校と変わりありません。
 カトリックの聖職者を招いた、というだけ当時としてはかなり変った印象を与えた女学校です。また、その為か、多くの変った経歴を持った教師が席を置いていることで知られています。

 女学生の探索者が籍を置く女学校、あるいは女学校を舞台としたシナリオに使うのもよいですし、帝都で起きる事件に巻き込まれる女学生が在籍しているとかでも。
 教師陣にも変わった経歴の持ち主が多い(元探索者のような、あるいは現役の)ため、専門的な知識や技術を提供したり、ヒントを与えたりするようなNPCを登場させるのもよいでしょう。

 参考シナリオ:
 天球賛歌事件
 大地返歌事件
 二重幻想的舞台
 帝都狂想曲
 天地交響曲
 津谷恵理子の音楽
 異説天球賛歌事件
 山羊の花嫁
 水妖奇譚
 深淵に臨み、花卉を摘む如し

真田幸(1894生)、桜嶺女学院の女教師

 さなだ・ゆき、桜嶺女学院の女教師です。
 大正7年までイギリスに留まってしましたが、大怪我を負ったり、精神的にも脆弱となりつつあったため、帰国して静養をしていました。
 帰国直後から、桜嶺女学院の恩師に、教師にと請われて教職に付いています。専門は英語となっていますが、その広範な教養を生かして、様々な知識を生徒に授けています。
 現在は半ばリタイアの状態ではありますが、若いながらも歴戦の探索者であり、知識、経験とも豊富で、たいがいのことに慣れている状態です。

 前述の桜嶺女学院絡みの事件にはほぼ登場します。
 また、若いながらに探索者として経験豊富であり、先駆者として目されていることもあり、探索者がすでに神話的な事件に遭遇済みである場合、先達として紹介されるのもよいでしょう。
 真田はシナリオ『深淵に臨み、花卉を摘む如し』の一年前、大正7(1918)年に日本に戻ってから、『天地交響事件』の直後、大正12(1923)年末には再び渡英しています。
 この理由から使い辛い場合は帰国、渡英時期を自由に調整してください。

 参考シナリオ:
 天球賛歌事件
 大地返歌事件
 二重幻想的舞台
 帝都狂想曲
 天地交響曲
 津谷恵理子の音楽
 異説天球賛歌事件
 深淵に臨み、花卉を摘む如し

オペラ座館

 浅草にあるオペラの常設館です(大正期の短い時期、実際の浅草にオペラ館という劇場がありましたが、それとは無関係です)。
 オペラ座館はオペラが流行しだす大正初期に開館し、震災の直前に人出に渡り閉鎖していますが、震災で崩落、後には何も残っていません。
 オペラ座館は名前の通りにオペラを上演する劇場です。本場パリのオペラ座を小規模にしたような、瀟洒な作りが一部の酔狂なマニアに受けて、近衛、毛利などの有名な華族がパトロンについていました。
 大正後期、震災直前にオペラの不人気に加えて、パトロンの一人の近衛が海外へ渡ってしまった為に、経営が悪化し、あえなく解散となっています。
 当時のオペラを上演する劇場によくあった少女歌劇をオペラ座館でも上演しており、劇場付きのオペラ座少女歌劇団が組織されていました。
 メンバーの入れ替わりは激しかったのですが、最盛期はオペラ座館の閉館前のメンバーであると言われています。

 浅草と言えば活動写真も有名ですが、大正前期はオペラも人気でした(本格的なオペラではなく、いわゆるオペレッタと呼ばれる短いもの(をさらに短くしたもの)や、翻案したものが中心でした)。オペラ座館はオペラの上演が中心であるため、当時の人気ぶりを示したり、オペラ座館は、当時最も繁華な浅草の光景を描写するのに使ったり、芸能関係や浅草のコネとして使うのがよいでしょう。
 また、オペラ座少女歌劇団には莫連おんな……、とまでは行きませんが、様々な氏素性の少女たちが集められています。浅草を舞台にしたシナリオで役に立つ、キーパーの好みのNPCを仕立ててみるのも面白いかもしれません。

 参考シナリオ:
 二重幻想的舞台
 天地交響曲
 彼女達の口

K機関

 けーきかん、特務部隊。
 陸軍、海軍の一部であると言われていますが、大元は古くから宮中にあったオカルト的な官僚機構が元であると噂されています。
 秘匿部隊であり、帝都、日本の霊的防衛を担っており、陸海軍の精鋭と、科学者、宮中の陰陽師から巷の霊能力者、オカルティストまで怪しげな人物が雇われていると言われています。
 先進的で実験的な最新鋭の兵装が配備されるとともに、霊的、オカルト的な装備も用意していると噂されています。
 機関の長は誰もその正体を知りません。無責任な噂では日本で最も霊的に高位にある人物が直接指令を下しているとも言われていますが、定かではありません。
 いくつあるかも知られていない個々の部隊が独立して動いているため、統括する機関と研究機関を除いては同じ部隊の隊員以外は分からない状態となっています。
 機関に所属する時点で死亡届が出されており、構成員は表向きは存在しない人間になります。

 探索者達がK機関に所属すようなことはありませんが(デルタ・グリーンやシークレット・オブ・ジャパンが翻訳されでもすれば別ですが)、機関のエージェントと接触したり、あるいはエージェントと接触している人物を通じてクトゥルフ神話に関連した情報を取引したり、探索者の手に余るような大規模な事件の後始末を行ってくれます。
 直接関わるのではなく、間接的に関わる便利設定だと思ってください。

 参考シナリオ:
 月下怪奇譚

平野機関

 ひらのきかん、特務部隊。
 元は外務省管轄の諜報組織だったと言われていますが、陸軍のオカルト的な実験を行う部隊と合流、特務部隊となり、その後、外務省、陸軍、大陸関係の利権に絡むために様々な予算が流入した結果、機関の長である平野大佐の私設部隊の様相を呈しています。
 目的のためには手段を選ばない、手段の為には目的を選ばないような組織であり、非合法、非人道的な行為も躊躇なく行います。

 K機関がある意味で正統派の抗神話組織、人類と秩序の為の秘密組織であるのに対し、平野機関は特撮ヒーローにおける悪の秘密結社のようなものです。
 こちらは探索者と敵対的なオカルティックな組織として利用してください。

 参考シナリオ:
 雑踏に囁くもの

毛利三姉妹、音楽好きな一族

 毛利元子(もうり・もとこ)、吉川春子(きっかわ・はるこ)、小早川隆子(こばやかわ・たかこ)の三姉妹です。
 華族の名門、毛利の家系に連なる一族で、政財界に絶大な影響力を持っています。
 現在の当主は元子で、春子は吉川家へ、隆子は小早川家へ嫁いでいます(ちなみに元子は出戻りです)。
 三姉妹とも狂的な音楽好きで有名で、自ら楽器を奏でたり歌ったりすることもありますが、音楽関係者のパトロンとなったり、様々な影響力を駆使して催事などに協力しています。
 三姉妹はシャッガイからの昆虫(シャン)に憑りつかれています。
 彼女らの神殿(宇宙船)は地球に来訪したことで稼働が停止しています。それを再稼働させて、再び宇宙に飛び出すことを目的としています。
 彼女らの音楽はアザトースに奉げられたものであり、それによってザエダ=グラーが喜ぶことで神殿が稼動しているのだと考えています。彼らにとって音楽は生活の一部であるとともに、祭祀であり、神殿を稼動させる為の手段でもあるのです。

 こちらも悪の秘密結社のような存在となります。
 前述の平野機関が具体的な形を備えた組織であるのに対して、こちらはシャッガイからの昆虫という人に憑りついて思うように操るという特性を生かして、地位のある人物や邪魔な人物に憑りついて浸透していく組織となります。

 参考シナリオ:
 大地返歌事件
 帝都狂想曲
 天地交響曲

帝都改造計画

 その名称自体は関係者の呼称のようなもので、正式な名称は存在していません。
 文字通り、帝都東京を首都機能の観点から、政治的、経済的、軍事的、そして霊的な機能までも考慮した完璧な都市として作り上げることを目的とし、帝都の郊外、王子飛鳥山の渋沢栄一邸に集まり、議論を行っています。
 この計画には渋沢栄一をはじめ、後藤新平、寺田寅彦、大河内正敏などの政財界の著名人から、陸軍の関係者、気象台関係の官僚、陰陽師までが参加しています。
 この『帝都改造計画』は明治40(1907)年に初めて画策され、帝都の市区改正等に影から影響を与えましたが、時流には勝てず一旦は立ち消えになりました。
 しかし、渋沢は諦めず、再びこの『帝都改造計画』を再起動させ、大正の世に再び、政治、経済的には東亜の中心地であり、軍事的にも防衛面、そして霊的にも祝福されたあらゆる意味で完全な、先進的な都市に帝都を改造しようと考えています。

 特に怪しげな組織ではありませんが、キーパーの好みによっては政治的な背景を持った秘密結社とするのもよいでしょう。
 組織そのものは正体不明、全容はまったく見えないのに政治的な配慮を求める謎の人物が探索者の前に現れて警告を発する……、ような意味ありげなだけの使い方が面白いかもしれません。
 あるいは、はっきりと姿と目的を現して『霊的な』事件の調査、解決の協力を求めて来る組織でもよいでしょう。

 参考シナリオ:
 天地交響曲

ルールの改変

 基本的なルールの改変はありません。
 新クトゥルフ神話TRPGにおいて、大正の探索者の作成には『大正探索者創造指南書』を参照してください。

キャッチフレーズ

「帝都物語」から「はいからさんが通る」、「サクラ大戦」まで、いろいろ。
 帝都モノガタリは、貴方の帝都でのモノガタリをサポートします。