In Box In Darkness
「闇の中の箱の中」
シュレディンガー夫人が夫に叫んだ。
「あなた、あの猫にいったいなにをしたの?半分死んでるじゃないの!」
────────── 小谷太郎『サイエンスジョーク』より
注意、あるいはお約束:
プレイしてみたい人、プレイするかも知れない人は読まないでください。読んで良いのはキーパーか、またはプレイする予定のない人だけです。うっかり目次を見てしまった人は、「記憶を曇らせる」の呪文でも使って忘れてください。万が一そのままプレイに参加したりすると、貴方の悪徳に誘われて隣のプレイヤーにイゴーロナクが憑依するかも知れませんよ。
そして当然ですが、このシナリオはフィクションです。
現実のいかなる人物、団体、そのほかもろもろのものと一切の関係はありません。
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本シナリオは下記の目次のような構造となっています。
まずははじめに、シナリオの概要と読み進み、シナリオの本体へ進むのが良いでしょう。
シナリオの目次:
はじめに
シナリオのスペック
本シナリオは、『クトゥルフ神話TRPG』向けであり、基本的には時代不問ですが、舞台として大正時代『クトゥルフと帝国』あるいは、本『帝都モノガタリ』を対象としているシナリオです。
プレイヤーの人数も不問(多すぎなければOK、一人でも大丈夫!)、探索者についても不問でデザインされており、いわゆる『ボーナスシナリオ』であり、そして大きな地雷が用意してあるシナリオとなります。
プレイ時間はキャラクターの作成を含まず、1〜2時間程度を想定しています。
今回、シナリオ自体が、「え?神話ものなの?」というものとなっており、シナリオの取り回しも順に行なうだけで不親切ではないですが、シナリオの性質自体が初心者向けではないので、ご注意ください。
始める前に
実際のセッションを始める前に、これらのことに注意するか、プレイヤー達に直接告げてください。
シナリオの傾向
本シナリオは、古くは『火曜サスペンス劇場』に始まり、今は『〜ミステリ』『〜ワイド劇場』のような、ミステリドラマっぽいなにかのようなシナリオとなります。
基本的には『ボーナスシナリオ』となることを想定しており、戦闘も無く、ひどく恐ろしい状況も無い、かなり地味なシナリオですが、場合によって、探索者が地雷を踏む可能性があります。
本シナリオは、一見、謎解きのように見えますが、のように見えるだけで、実際は謎解きではありません。この点は、最初からプレイヤーに強調しておいてください(変格の推理ものだ、とでも告げてください)。もしも、真相を言い当てられた(地雷を踏んだ)場合、本気で謎解きをしているプレイヤーが激怒する可能性があります。注意してください。
本シナリオは、基本的に探索者を誘導する必要はありません。限られた選択肢を選ぶ、という流れになります。
PC作成時の注意、立場
探索者の作成時には、下記のように作成するようにしてください(FEAR的なあれですが、クトゥルフの弱点である導入部の弱さを補うには非常に有効な手段だと思われます)。
PC@ 推奨職業:探偵:
いわゆるシナリオの主人公です(今回は、主人公確定です)。
事件が発生した時点で犯人と目されている白川の知り合い、関係者として有田邸に招かれており、事件の解決をその場で依頼される立場となります。
主人公として推理を進める立場ではありますが、そこはそれ、ミステリドラマ、漫画、その他もろもろの作品で探偵や警察の立場は様々なので、プレイヤーや、そのセッション参加者の雰囲気に合わせて本物の主人公なのか、狂言回しなのか、単なる添え物なのかを決定してください。
PCA以降:
いわゆるその他のPCとなります。
PC@との絡みの他、登場するNPCの絡みで、事件の発生する場に居合わせることになります。
PC同士の関連付け
基本的に自由です。シナリオに参加する理由付けを作るようにしてください。
プレイヤーから提案を積極的に受け入れて、シナリオに参加する理由付けを作成するようにしてください。
シナリオの概要、真相(キーパー向け)
怪しげな噂の付きまとう自称心霊術家の有田純。
彼の邸宅に、彼に対して含んだものを持つ者たちが集まり、そして有田は殺されます。
この集められた人物の中の一人、白川はPC@と関係が深い人物であり、犯人に指名されてしまいますが、白川は潔白を叫び、この事件の調査をPC@へ託します。
そして、この事件の探索が開始されます。
この事件は、一見探偵もののように見えますが、実は不確定の要素を探索者自身が確定させる事件です。
つまり、探索者たちが解釈した真相がそのまま真相になるのです!
全ては有田=にゃあ様の仕業なのですが、真相を確定させる要素として探索者達が選ばれているのです。
登場人物(NPC紹介) その1
その1で紹介されるのは、箱の中に居た人物達です。
すなわち、事件の被害者と、被疑者であり、目撃者となります。キーパーは被疑者の範囲を狭める必要は特にありませんが、この『箱の中』の人物が最も犯人に近いということは、探索者に告げても問題ありません。
(探索者が望むなら、その1以外の人物が何らかの手段を持って遠隔殺人、あるいは殺害タイミングの錯誤のトリック等が真相でも問題ありません)
NPC達のデータは特に示しません。必要な場合は、キーパーが適宜決めてください。
有田純(ありた・じゅん)、心霊術家、事件の被害者
事件の被害者で、心霊術と称するいわゆる心霊治療や催眠術の類を使い、その広く、膨大な知識により様々な分野、階級の人間と交流していました。
世間一般からは、時流に乗った新興宗教の教祖のような扱いから、変わり者の高等遊民、あるいは各界に顔の利く時の人となっています。
大正時代の新興宗教ブーム、心霊ブームに乗って、その甘いマスクと言動、様々なトリックを駆使しつつ信者を獲得、弄んでいたのですが、実業家の愛人に手を出したことで今回の事件が引き起こされ、退場のついでに最後のトリックを仕掛けています。
彼はニャルラトテップの化身ですが、シナリオの本編開始時には死亡しています(死亡したことになっています)。
多門襄太郎(たもん・じょうたろう)、浅草のオペラ俳優、事件の被疑者
ワイルドながら甘いマスクの青年で、浅草でオペラ俳優をしています。
俳優稼業に甘いマスクで大層女性にモテるのですが、意外に奥手で純情な青年です。
たまたまオペラの見物に来ていた清水真砂子に何故か惚れ込んでしまい、今回の事件に巻き込まれています。
今回の事件では、真砂子に連れられて有田邸を訪れており、彼女の護衛のような役割を担っているとともに、有田、金沢に対するけん制役とも言えます。
金沢武弘(かなざわ・たけひろ)、成金の実業家、事件の被疑者
清水真砂子を囲っている実業家で、造船業を営んでいます。
真砂子が有田邸に足繁く通っているということを知り(事件の時点では、有田と真砂子の関係は冷え込んでいますが)、どんな相手かを見てやろうという鷹揚に構えているポーズを取っています。
しかし、実態は自身の持ち物に手を出した有田に対して、報復が出来るかを確認しに来ているというのが実態です。
今回の交霊会に参加したのも、トリックを見破って恥をかかせてやろう、という気持ちで参加しています。
清水真砂子(しみず・まさこ)、有田、金沢の愛人、事件の被疑者
金沢の囲われ者だったのですが、暇に飽かして心霊術家を名乗る有田の下へ入り込み、愛人関係を築いています。
人目を引くような美人ではないのですが不思議な魅力に溢れており、特に男性を引き付ける振る舞いをします。
多くを語らないにも関わらず、何故か男性が引っかかるというタイプであり、本人も享楽家、楽天家である為、金沢の愛人の立場でありながら、他の男性とも同じような関係となっています。
彼女はすでに有田には飽きており、有田邸にはあまり寄り付かなくなっています。今回は有田のたっての希望もあり、しぶしぶ参加していますが、金沢と多門という二人の愛人を連れてきています。
白川明(しらかわ・あきら)、新聞記者、事件の被疑者
PC@の依頼人で、フリーの新聞記者です。
今回、何か事件が起こりそうな予見を持ち、事前にPC@へ事件の介入を依頼していました。
白川自身はこの事件については直接的な利害関係者ではなく、単に物見高いマスコミの立場だったのですが、官憲の介入により何故か犯人に目されてしまいます。
当初の調査の依頼は、事件の解決、犯人の逮捕へと変更されます。
松浦栄(まつうら・さかえ)、有田邸のメイド、事件の目撃者
有田邸の家政婦で、有田の趣味からヴィクトリアンスタイルのメイド姿です(キーパーの趣味、セッションのノリによって、普通の家政婦でも問題ありません)。
有田邸の家事一切を仕切っており、有田の内縁の妻のような立場でもあります。
事件現場の部屋は、本来は入ってはいけないのですが、参加者の顔ぶれから何か事件がありそうだと隙間からのぞいていました。
登場人物(NPC紹介) その2
その2で紹介されるのは、箱の外に居た人物達です。
有馬貴明(ありま・たかあき)、有田の弟子
有田の弟子です。
住み込みの書生のような立場ですが、いわゆるお稚児さんのように世間には見られています。
(この辺りの詳細は、キーパーの趣味で…)
有田に依存して生活をしており、物質的、精神的な両面で有田抜きの生活は考えられない状態です。
事件の発生後は取り乱し、ほぼ役に立たない状態です。彼は、無条件に有田を援護し、今回の件は明らかに殺人であり、事故はありえない、ということを主張します。
古河純(ふるかわ・あつし)、科学者
理論物理学者です。
有田の広い顔の一端で、何故か科学者にも多くの知り合いがおり、その一人が古河です。
学者としてはまだ若い部類に入るのですが、最新の量子力学を研究しています。有田は何故かこういった科学にも詳しく、よく古河と最新の研究、最近では『シュレディンガー方程式』や、その解釈を巡る見解等についての意見を交わしていました。
古河自身は、有田の『心霊術』は別に信じておらず、トリックである可能性も承知しています。しかし、その不思議な魅力と、理論科学の分野でまともな議論が出来る相手として有田と親しくしています。
佐藤一正(さとう・いっせい)、宗教家
宗教家です。一応、カトリックの神父を想定していますが、キーパーの判断で怪しげな新興宗教の教祖的な存在にするのも面白いかもしれません。ただ、その場合は、コミックリリーフとして使うか、明らかなミスリード、単なる雰囲気芝居の為の人物として扱うのが良いでしょう(怪しすぎる、という人物で。もちろん、心霊的な何かの実行犯としてもよいのですが)。
最初は同業者的な立場で有田とも話が合っていたのですが、そのうちに人気が出てきた有田と、その奔放な言動に惑わされて、彼に悔い改めるように、と諫言をしていました。
当然、有田が聞き入れる訳は無く、今回も同じような議論をしに来たところで事件に遭遇しています。
石井顕(いしい・けん)、私服刑事、事件の進行役
有能とは言いがたいのですが、無能とまでも行かない刑事ですが、今回の事件ではお約束の狂言回しの役割です。
ただ、積極的に情報を探索者に提供したり、間抜けな発言をする訳ではないので、単純に事件を探索者に調査させるきっかけと、最後の逮捕だけの役割となります。
相棒の叶野に誘われて、これといった予備知識はない状態で有田邸に来ています。
今回の事件は、探索者の介入をむしろ面白がり、夕刻までの猶予を与えます。
叶野敬太(かのう・けいた)、私服刑事、事件の進行役の助手
脱線しがちな有馬を修正する役で、有馬の部下ではありますが助手のような役割を担っています。
部屋の中に居た全員が、殺された有田に対して殺意がある可能性があることを知っており、その為に今回の有田邸に石井とともに来ていた経緯があります。
自身に事件を推理する力がないことを自覚しており、石井の助手に徹する役割を演じます。また、キーパーによってはワトソン役としてもよいでしょう。
導入部
このシナリオはまずPC@が、依頼人である白川に伴って有田邸を訪れるところから始まります。
PC@以外の探索者は、それに同行しているか、他のNPCに連れか、あるいは有田の知り合い等として有田邸にすでに居るか、前後して訪れるかになります。
細かい導入や、個別の導入がしたい場合は、キーパーに任せます。
招かれた客
この場面は、PC@が有田邸を訪れ、交霊会の開始待ちをしているそれぞれのNPCを見る場面となります。
よくある、これから犯人っぽい人物と被害者を紹介する場面だと思ってください。
白川とともに、PC@は有田邸を訪れることになります。有田邸は、厳しいゴシック建築風の洋館であり、『心霊術家』を名乗る有田のはったり風味満点だと白川は皮肉っぽく笑います。
今日、有田が白川を含めた4人の人物の前で、交霊会を行なうことを、PC@に告げます。
その場で何か起こるかもしれないし、有田邸に来ている人物の観察をお願いしたいと白川は依頼します。
白川が有田邸のノッカーを2、3度叩くと、重苦しい音を立ててその扉が開きます。
中にはヴィクトリアンスタイルのメイド服を着た女性が立っており、白川が来意を告げると、サロンへと案内されます。
通されたサロンはかなり広々としており、あちこちに椅子へソファが設えてあり、今日ここに集った人間が三々五々、時間を潰しています。
ここには、有田を除く、シナリオに登場する人物が全員待機しています。
キーパーは一通り、白川を使ってNPCを説明してください。キーパーが多すぎると判断した場合は、交霊会に直接参加する人物だけ紹介するようにしてください。
(各場面で、各NPCに名前と年齢とかのキャプションが出る場面です(笑))
部屋の外、事件の発生前
サロンに探索者たちが揃ったところで、今日の訪問予定者が全員揃ったことになります(ここまでで、PC@以外の探索者もこの場に居るようにしてください)。
奥から有田が現れて、全員を眺めた後、松浦からコップを受け取ると、中の水を飲み干します。
その後、「さて、そろそろはじめようか」と、サロンから見える離れのような別室へと、多門穣太郎、金沢武弘、清水真砂子、白川明を誘導します。
(この時点で、探索者が「俺も参加させろ」とごねる可能性がありますが、それは一切無視してください)
最後に、サロンの扉を閉める前に有田が振り返り、「うん、今日は面白いことになりそうだね」と探索者の方を見てから去っていきます。
有田達が『交霊会』の会場となる部屋へと消えた後は、サロンは妙に弛緩した雰囲気が流れます。
松浦の用意する飲み物や、軽い食べ物を片手に、残った人々は散発的な会話をしています。探索者も手持ち無沙汰となる為、適当なNPCと会話させてください。
この場では、参加者の素性等を探索者に探らせるのが良いでしょう。
ある程度時間が経った後、サロンで待機している探索者は、《アイデア》のロールを行なってください。
成功した場合、松浦の姿がいつの間にか消えていることに気が付きます。ただし、メイドなので屋敷の中を自由に歩き回ることに特に問題はありませんが。
探索部:
シナリオのメインとなる探索部です。
キーパーへ:
ここに記載されているのは、各登場人物の事件に対する
『主観的な認識』です。
つまり、真相でも、事実でもないのです。このシナリオは、真相も事実も、探索者が決めるものとなっています。
探索者を一定の結論に誘導するつもりがない場合は注意してください。
部屋の中、事件の発生
突然、交霊会を行なっている部屋から有田の叫び声が聞こえ、続いてテーブルを倒す激しい音、そして断末魔の悲鳴が聞こえてきます。
異常に気が付いたサロンに居る人間が交霊会の会場へ向かうと、部屋の真ん中に倒れたテーブルと、目を見開いたまま絶命している有田を目撃します。この有田の死に様を目撃した探索者は、0/1D3の正気度を失う可能性があります。
そして、お約束ですが、探索者か、NPCに「し、死んでる!」とやらせてください。
これに呼応して、石井、叶野が、「警察だ。現場に触れるな!部屋から出ろ!」と指示を与えます。
この時点で、探索者がすかさず現場を調査しようとする可能性はありますが、一切の調査、交渉を許さず、石井、叶野に追い出されます。
サロンに押し返されたところで、叶野が戻ってきて、松浦に対して「電話は?」と聞きます。そして、屋敷の奥にある電話に案内されると、最寄の所轄へ連絡を入れます。
電話の後、叶野はサロンに待機し、現場を調査している石井以外、全員をサロンに釘付けにします。
しばらくすると、警察の応援が駆け付け、現場の捜査を開始しますが、それと同時に石井が戻ってきます。
そして、そのまま白川に向かい、「ちょっと来い」と連れ出そうとし、ひと悶着を起こします。
石井は、白川を犯人と目しており、別室で言質を取ろうというつもりが丸見えです。この為、白川は激しく抵抗し、「俺が犯人じゃないのは明白だ」と叫びますが、石井は一切聞いていません。
強引に外へ連れ出そうとする石井に対して、白川が、「待て、あそこに居るPC@が俺の無実を証明してくれる!」と叫びます。
一瞬、サロンに居た全員がきょとんとしますが、すぐに白川が笑い出します。ひとしきり笑った後、「いいだろう。だが、そんなに時間はやれない。日が暮れるまでに、真犯人を探してくれ」と面白そうに言います。
そして、「もしも」と続けます。「真犯人が見つけられない場合は、予定通り、白川明、お前を逮捕する」と宣言します。
調査開始
白川の依頼により、その場での調査が開始されます。
石井が切った刻限まではわずかな時間しかありません。
探索者が3回の行動を行なうと刻限を向かえ、自動的に終幕部へと流れます。
行動は具体的に、NPCの誰かから話を聞く、現場の調査をする、のどれかになります。
石井の指示により、現場へ立ち入ること、警察から情報を得ることも可能となっています。
また、警察側も平行で捜査を続けており、現場は警察官がうろうろしています。他のNPCはサロンで待機、別室で話を聞く、という流れになります。
各登場人物の証言1(重要NPC)
事件に直接居合わせた、つまり事件の起こった部屋(箱)の中にいたNPC達の証言と、彼らの認識です。
もちろん、ここに居るNPCに話を聞かなければならない訳ではありません。探索者の選択に任せて、各種の証言、事件の情報を出していってください。
彼らには、適切なコミュニケーション手段(技能)が存在します。探索者のコミュニケーション手段に合わせて、技能ロールを行い、得られる情報が下記のようになります。
(キーパーの判断でこれらを変える事はなんら問題ありません。同時に、クリティカル、スペシャルや、ファンブルが発生することで与える情報を変えても問題ないでしょう)
探索者の選んだ技能が適切な場合、ロールに成功すればL3、L2、L1の情報が得られます。
探索者の選んだ技能が適切でない場合、ロールに成功すればL2、L1、失敗でL1の情報が得られます。
探索者の選んだ技能が不適切である場合、ロールの成否に関わらずL1の情報となります。
L1の情報は一般情報です。ロールの成否に関わらず、あるいはL3、L2が得られる場合でもL1の情報を与えてください。
また、探索者が《心理学》を取得している場合、キーパーの判断でそれを使用しても構いませんが、彼らは彼らの『主観』を話しているだけなので、基本的には嘘を感じることはありません。ただ、動揺していることと、事件の様相に戸惑っていることは感じます。
彼らは探索者に証言をすることで、証言が確定します。
つまり、一度証言した後では、以降で得られる情報や、その質が変化することはありません。
(同じ人間に他のコミュニケーション系のロールを再度成功しても、情報は変わりません!)
『多門襄太郎』の証言、見解
有田に選ばれた、箱の中に入れられたメンバーの一人です。
多門は自身が犯人でない場合は、真砂子が有田を毒殺したと考え、自身が犯人である場合は、暗闇で有田を刺殺したと考えます。
適切な手段:《説得》
不適切な手段:《言いくるめ》
・L1:
多門穣太郎、浅草でオペラ俳優をしている。
売れている訳ではないが、生活に困るほどでもない。
今回は真砂子さんに誘われて、この有田邸を訪れている。『心霊術』とかは信じていないが、有田自身は不思議な魅力があるとは思っている。
それで真砂子さんもそれに惹かれたのではないだろうか。
・L2:
交霊会の最中に、急に有田が苦しみだしたんだ。
有田が殺されたかどうかは分からない。不可解なところが多い男で、何を考えているか、よく分からない。人を引き付ける魅力があることも確かだが、同時に恨まれていることも多いと思う。
有田が死ぬ直前、テーブルの上にあった水を飲んだ気がする。
それは、交霊会等で現場の部屋を使う場合には必ず用意されていたもので、有田邸に元々あるものである。
・L3:
ただ、何故か今回の交霊会では真砂子さんが妙に有田にかいがいしく世話をしており、水も真砂子が注いだ気がする。
水自体は部屋に入った時からすでに用意されており、おそらく松浦が用意したのではないか。
真砂子は有田を嫌っていたはずだが、今日は妙に近くに居た。
そろそろずるずるとした関係を清算するつもりだと言っていたはずだ。
・犯人である場合の動機:
彼は実は何度か有田邸を真砂子とともに訪れています。
その際、真砂子とともに交霊会や、心霊治療等を受けていたのですが、有田と真砂子の関係に気が付き、真砂子に問いただしたところ、真砂子は「有田に無理やり関係を迫られた」という嘘を付いています。
この為、多門は有田をどうにかしよう、という思いを抱いています。
『金沢武弘』の証言、見解
有田に選ばれた、箱の中に入れられたメンバーの一人です。
金沢は自身が犯人でない場合は、多門が有田を刺殺したと考え、自身が犯人である場合は、空中浮揚のトリックに使う予定だったロープを使って有田を絞殺したと考えます。
適切な手段:《説得》
不適切な手段:《信用》
・L1:
金沢造船の金沢だ。
世間じゃ成金とか呼ばれているが、このご時勢にまだ生き残っている。成金と言っても金は金だ。まだまだ、これからだよ。
有田についてはよく知らないよ。『心霊術家』とか名乗っているが、単なるインチキの詐欺師だろう?
今回は、真砂子が是非に、ということでこんな馬鹿馬鹿しいものに参加してみたが、この様だ。早く開放されたいね。
・L2:
交霊会はテーブルを囲んで行っていた。
私の記憶が確かなら、有田が扉の向かい、部屋の一番奥の位置に、その左から多門、真砂子、私、白川の順に座っていたと思う。
とは言え、その時、部屋の中は真っ暗で何も見えていない。席順自体は、まだ明かりが点いていた時のものだ。
その時は、それぞれの手をテーブルに置いて、お互いの小指を、小指で押さえて、トリックの入り込む余地が無いようにしていたが、そんなものはやはりトリックでどうとでもなる。
暗い中で何か気を引くようにして席を乱して、それで殺人を行い、それから元に戻ればいい。
・L3:
有田は刃物で刺されたように見えた。
有田が倒れた時、多門がそばにいた気がする。暗かったから、はっきりと分からなかったが。
彼はあの容貌だが大人しい性質だ。しかし、激発すると何をしでかすか分からない。
真砂子から聞いているが、彼は真砂子の為に有田をどうにかしたいと思っていたらしい。
今日も刃物を用意していたらしいが、実際はそれほど度胸のある男ではないと思うよ。
・犯人である場合の動機:
金沢は表面上の鷹揚な態度とは裏腹に、非常に度量の狭い男です。
自身の持ち物である真砂子に手を出した有田に対して、何らかの報復をしようと思っています。
同時に、多門に罪を着せれば一石二鳥と考えています。
『清水真砂子』の証言、見解
有田に選ばれた、箱の中に入れられたメンバーの一人です。
真砂子は自身が犯人でない場合は、金沢が有田を絞殺したと考え、自身が犯人である場合は、交霊会の会場にあった水差しに毒物を入れ、有田を毒殺したと考えます。
適切な手段:《言いくるめ》
不適切な手段:《説得》
・L1:
清水真砂子よ。
金沢と有田の愛人で、多門の恋人。調べれば分かることだから、自分で言っちゃうわね。
今日は私から金沢と多門を誘ったのだけど、それも有田に頼まれたからなの。
最近は私と有田の間が冷え込んでいたから、何か刺激か、他の伝手がほしかったんじゃないかしら。
彼は何を考えているかよく分からないのよ。今日のこの事件だって、一つの余興にも思えてしまうわ。
・L2:
交霊会の会場には、実はいくつかのトリックの用意があるのよ。
これは、有田から直接聞いたこと。本物の心霊術をやるには疲れるから、適当にあしらいたい連中にはそれで十分だ、とか言っていたわ。
その中の一つに、空中浮揚用のロープを使ったトリックがあって、その場所の真下に有田が立っていたの。おそらく、今日はそれをやるつもりだったのじゃないかしら。
まあ、ロープを応用して、何かが浮いているように見せる、というのも出来るから、そういった類かと思うわ。
今日は、金沢と、記者さん(白川)が主な『客』だったから、あの人達に何か見せるつもりだったんじゃない?
・L3:
ちょうど、ロープを引く位置に、金沢が座っていたと思う。
有田が死んだ時、金沢が何かを引っ張っていたようにも見えたわ。暗いからはっきりとは見えなかったけど。
金沢はああ見えて細かいうえに、めざといのよ。何かトリックを見つけて、有田の鼻を明かすつもりだったんじゃないかしら。
まあ、どうでもいいけど。
・犯人である場合の動機:
真砂子も最初の頃は、心霊術家という珍しい存在である有田に興味を持っていたのですが、結局、詐欺師とあまり変わらない事に気が付きました(彼の言う心霊術が本当に詐欺であるかどうかは別として、やっていることはあまり変わらないので)。
飽きてきたにも関わらず、いい加減しつこい有田に辟易しています。同時に、金沢にも有田の存在が気付かれており、そろそろこの関係を清算したいと思っています。
『白川明』の証言、見解
有田に選ばれた、箱の中に入れられたメンバーの一人ですが、直接事件には関わらない予定でした。
松浦と同じく、『事件の目撃者』となるように設定されていますが、こちらは箱の中からの目撃者です。
白川は、事件のあらましをある程度詳しく探索者に語る役ですが、それもやはり『白川の見解』です。
また、支離滅裂な証言となりますので、白川は明らかに取り乱していると明言して構いません。また、白川と親しいPC@に、彼がこんなに情報の整理が出来ずに混乱しているのは珍しいと伝えてください。
(彼は複数の事象を一時に体験した為、かなりの混乱に陥っています。今の彼にとっては全ての事象が体験した事実であるのです)
適切な手段:なし
不適切な手段:《信用》
※白川は、ロールに成功すればL1、L2、失敗か不適切な手段の場合はL1となります。
・L1:
あの暗闇の中で、有田が悲鳴をあげた瞬間、全員が動いていたと思う。
有田は、どうやって死んだのかは分からない。ただ、暗闇の中で、毒を飲んだような苦悶を上げていたような気もするし、まるで刺されたように仰け反っていたり、首を絞められているような赤黒い顔をしていたような気もするし、高いところから落ちてきた気もする。
どれがどの順番かも分からない、同時だったような気もするし、そうでないかもしれない。
・L2:
正直、よく分からないんだ。
あの暗闇の中で、何が起こったか覚えているのだけど、それが正しいのか、どれが正しいのか。
全て正しいかもしれないし、全て間違っているかもしれない。
俺は目も記憶も良いはずなのに、どれも信用できない。こんなことは初めてだよ。
お前達の判断が、事件を正しく解釈できるかもしれない。
・犯人である場合の動機:
白川が犯人である場合、彼の動機は事件に対する好奇心となります。
つまり、部屋の中の状況は、自身が疑いを被らずに殺人を犯す絶好の場でした。その為、ちょっとした好奇心と、自身を馬鹿にする参加者達への意趣返しの意味も含めて、殺人を実行しました。
ただ、有田が軽い怪我をする程度で済むと思っていたこともあり、殺人にまで発展した為に、だんまりを決め込んでいます。
『松浦栄』の証言、見解
彼女は、有田に『事件の目撃者』となるように設定されています。
しかし、目撃者ではあるものの、あくまで不確定要素の中での目撃者である為、外部から真相を目撃したのではなく、不確定要素としての証言を行なうこととなります。
そして、それは有田自身が用意した、自殺というシナリオの為の証言となります。
適切な手段:『言いくるめ』以外
不適切な手段:『言いくるめ』
・L1:
有田の家内を取り仕切らせて頂いている松浦と申します。
ああ、この格好ですか?主人の有田の趣味でございます。メイド、というのでしょうか。いわゆるお仕着せで、普段着ではありません。
有田については、世間様ではいろいろと言われておりますが、サロンにお出でになる方々の顔ぶれを見ていただければ分かる通り、ただの心霊家ではなく、様々な方面に深い知識を持っております。
心霊術というのも、有田のいたずらのようなもので、人の心を捉えるのが上手い方でした。
・L2:
私も一部始終を見ていたわけではありません。
こう、虫の知らせとでもいうのでしょうか。何か起こる予感がして、部屋の扉の前まで来ていたのでございます。
その後、どうしようか迷っていたところで、有田の声が聞こえましたので、思い切って扉を細く開け、中をのぞきました。
中は暗く、はっきりとは見えておりませんが、有田らしい気配が部屋の上の方からしており、その、空中浮揚を行っていたのではないかと思います。
しかし、次の瞬間、有田が悲鳴を上げながら落ちてきて…。
それっきりでございます。
・L3:
有田は最近、さまざまなものに飽きてきたようでした。口癖のように、面白くなくなった、と言っておりました。
そろそろ店じまいにしようか、などと口走ったこともあり、田舎にでも引っ込むつもりなのかと思ったのですが。
まさか、こんなことになるなんて。
あの部屋には、いろいろな仕掛けがしてあります。もちろん、それは『心霊術』をより効果的に、劇的に見せる為の仕掛けで、決してトリックであるわけではありません。
その仕掛けを利用して、高いところから落ちたように見えました。暗かったので、よくわかりませんが。
有田はああ見えて繊細で、最近はノイローゼ気味でございました。
・犯人である場合の動機:
松浦が犯人としたい場合は、彼女は有田と内縁の妻のような関係である為、長年の鬱積を晴らす為、ということになります。
有田が自殺した場合は、衝動的な自殺、あるいはなんとなくやってみた、というぐらいの軽い気持ちです。
各登場人物の証言2(重要NPC以外)
事件が起こった際に屋敷に居た、事件の起こった部屋(箱)の外にいたNPC達の証言です。
こちらは特に技能の指定はありません。探索者のコミュニケーション手段に合わせてロールを行い、成否に合わせて情報を出していってください。
キーパーの判断で、これらの人物から得られる情報を加減してください。探索者が真相から遠い、迷っている場合は、ある程度、示唆を与えても問題ないでしょう。
『有馬貴明』の証言、見解
有馬は有田の死を受けて取り乱しており、まともな情報を得ることはできません。
彼にとって、有田は絶対の師匠であり、死ぬ理由など見当たらないのです。
ただ、探索者が話を聞こうとすれば、今回の件について、有田が自殺するようなことは有りえず、事故の線も無く、殺人だ、と言うことを主張します。
また、屋敷は広いので、現在サロンに軟禁されている人物以外が潜んでいてもおかしくない、ということを仄めかします。
有馬は、有田の自殺の可能性も示唆する役割であり、事件に関与する第三者がまだ居てもよい、ということを示してください。
あるいは、探索者の方向性をより補強するような妄言を吐かせるのもよいでしょう。
『古河純』の証言、見解
古河は今回の事件を受けて、落胆した様子を見せています。
そして、探索者が話を聞こうとする前に、まず自身の事件に対する思いを語ります。
彼の言う『心霊術』だけど、確かにトリックの可能性はある。
『心霊術』で可能なことは、全て『科学』的な説明がつく。だからと言って、『心霊術』が無いとは限らないんだ。結果が同じだからと言って、過程が全て同じ、ということにはならないからね。
まあ、そういうと『心霊術』なんて必要ない、と言う人もいるけれど、起こっている現象を説明できないのもおかしな話でしょう?
僕はそのあたりの検証をしたい、と思っていた。一昔前にあった『千里眼』なんかも、科学的な検証が本格的に始まる前にスキャンダルとして終わってしまった。
今回も、このようなことになってしまうなんて…。もう警察にも、新聞記者にも漏れているし、この件は世間が面白おかしく扱うだろうと思う。
古河から得られる情報は以下の通りです。
有田さんの行なうことについて、検証はまだしていない。ただ、先に言った通り、トリックでも可能な範囲の出来事だ。
彼は人を惹き付ける不思議な魅力に溢れている。ただ、態度がころころ変わるので騙された、と思う人が多いのも確かだ。
はまる人ははまるし、嫌いな人は寄り付きもしない、両極端に分かれるね。
そういう状態だから、嫌っている人間ならば、殺意を抱いていてもおかしくない。それを実行に移すかは分からないけど。
ただ、有田さんを殺して得をするような人間は居ないはずだから、怨恨の線の方が強いとは思うよ。
『佐藤一正』の証言、見解
佐藤は有田の死に対して衝撃を受けています。
彼自身は、有田が悔い改めるべき者だ、という意見を持っていますが、死に値するほどではありません(と、言うよりも、そこまで過激な宗教家ではないのです)。
有田とは同じ宗教家として、あるいは経営コンサルタント的な立場で付き合ってもらっていたこともあり、落胆と、そして有田と付き合っていた、と言う事実が無くなるという事態を密かに歓迎しています。
佐藤から得られる情報は以下の通りです。
有田君の近頃の行状は目に余るものがあった。
例えば、今日の参加者だ。全員が何か、有田君に対して含むものを持っている。それは有田君自身が撒いた種だ。
自業自得と言ってしまえばその通りだ。このような事件を引き起こしたのは彼自身の言動であることに間違いない。
だが、惜しい人を亡くしたと思う。彼はああ見て様々な才能と、知識、技術を持っていた。
心霊術、などと称した馬鹿げたトリックじみたオカルトに頼らずとも、なんとでもなっただろうに。
事件現場
事件現場はサロンからも見える、少し離れた位置にある部屋で、サロンとは渡り廊下を通じて繋がっています。
部屋は円形で広さは直径10m程度、扉は廊下に通じるもの一つ、2階部分まで吹き抜けになっており、細長い窓が2階部分の高い位置に付いています。
部屋の中には倒れた直径2m程度の円形のテーブルと、椅子が5つ置いてあり、その他目立つものはありませんが、部屋の壁壁際にはいくつか脚の付いたチェストが置いてあります。
探索者が踏み込むとまだ警察の現場検証は続いており、多数の警察官が部屋の捜査を行なっています。
また、有田の死体は部屋の隅にカーテンが掛けられた状態で置かれており、まだ司法解剖には回されていません。
『交霊会』の最中は窓には厚いカーテンが掛かっていたのですが、今は半分が開けられて外光を取り込んでいます。ちなみに、この部屋には照明設備はなく、蝋燭と燭台が部屋の隅に置いているのを見かけます。
犯人の目星をつけて、証拠を探す為にこの部屋に来た場合、
探索者の欲しい証拠が見付かります!
探索者が進めている推理を確認しつつ、終幕部での推理の為の証拠を、《目星》等のロールで発見させてください。
早い段階で部屋を訪れた場合、石井、叶野から話を聞くだけになります。
石井、叶野に対しては、コミュニケーション系のロールを行なう必要はありません。探索者に進んで情報を教えてくれます(彼らは、探索者から真相に近いものが得られれば、それはそれで問題ない、ぐらいに思っています)。
キーパーは、探索者に対して事件をどう考えているのか、ということを石井、叶野の口を借りて逆に聞き出すのもよいでしょう。
・死因はまだ不明。だが、死体の状況から以下の四つが考えられている。
1.刃物による刺殺。
2.毒殺。
3.何か紐状のもので絞殺された。
4.高いところから投げ落とされたように全身を強く打った。
どれも同程度の可能性で、精密な解剖をしてみないと分からない。
・白川が犯人だという理由は、以下の事象から。
1.おそらく、有田の隣に座っていた。
2.今回の件で、直接の利害関係者ではない。
(石井は、白川を叩けばほこりが出る、と信じています。この為、多少強引でもとりあえず拘留しようと考えています。
もちろん、事件が面倒になりそうなら犯人にしてしまう、ということもやりかねない男です)
・今のところ凶器は見付かっていない。
(凶器は、探索者の推理に基づいて発見される為、早い段階では出てきません!)
キーパーへ:
この部屋では、実は『輝くトラペゾヘドロン』が鑑識に証拠品の類として押収されています。
探索者が知り得る情報ではありませんが、念の為、キーパーは認識しておいてください。
終幕部
タイムリミットを迎えるか、もっと早いタイミングで探索者自身が真相を告げる場合、シナリオの終幕部を迎えます。
終幕部は殺人現場、交霊の部屋で行われます。ただ、事件当時と異なり、全てのカーテンは開け放たれており、窓から差し込んでいる薄い月明かりと、燭台に点された蝋燭の炎だけが室内を照らしています。
お約束ですが、この場には、事件に関わった全員が立ち会っています(まあ、要するに「犯人はこの中に居る!」という状態です(笑))。
・探索者が解釈を語った場合:
探索者が、どのような結論であれ自身の推理を語った場合、それが真実となり、事態が確定します。
基本的にはキーパーの判断によりますが、どんなに荒唐無稽でも無理でも無茶でも、問題ありません。いきなり第三者が居ることを指摘すれば第三者がその通りに登場しますし、実は自殺でも、機械的なトリックでも、心霊的なトリックでも全て推理どおりの真相となります。
その後は 犯人が真相を語って自殺しようとするのもよし、実はまだターゲットが居て襲い掛かるもよし、泣き崩れて大人しく警察に捕まるもよし、キーパーと、そのセッションの参加者の好みに合わせて、自由に展開を進めてください(残念ながら屋敷の中なので、崖はありませんが)。
・探索者が解釈を出来なかった場合:
探索者が推理を語れない場合か、あるいはキーパーが駄目と判断した場合は、真相はうやむやになります。
最初から犯人と目されていた白川がその場で逮捕され、以降は粛々と事態が進むだけです。
真相は明かされず(確定されていないので、真相自体が存在しない、が正解なのですが)、真犯人も出ないまま、白川が犯人として事件は処理されていきます。
・探索者が真相を言い当てた場合(地雷を踏んだ場合):
探索者が、この事件には真相はなく、真相を確定させるのが真相だ、と言い当ててしまった場合、まずその事実に気が付いた探索者は、1D3/1D10+1の正気度を喪失する可能性があります。
その後、現場にまだ残してあった被害者の死体が起き上がります。この死者が起き上がる様を見た場合、1/1D6の正気度を喪失する可能性があります。
そして、起き上がった有田は、「ああ、参るねえ。まさか、本当のことを言い当ててしまうなんて」と、蒼白な死体のまま苦笑いを浮かべます。
「面白い遊びだと思ったけれど、やはり玄人は居るものだ。
今回は僕の負けだ。勝ち負けがあれば、の話だけど。では、優秀な探偵諸氏、僕はこれで失敬するよ」
死体の有田がそう言うと、部屋の中は闇に包まれた。燭台の蝋燭がいきなり消えたのだ。
折しも月が厚い雲に隠れ、目の前に手をかざしてもそれと分からない濃い闇が部屋の中に満ちた。
次の瞬間、有田らしき笑い声が響き、そして有田の居たと思しき場所には、三つに分かれた赤く燃える眼が現れる。
その場に居た全員が凍りつく中、まるでこうもりと人間のあいのこの様な、そして闇よりも濃い暗黒の影が、大笑を残しながら空を駆け去っていった。
有田の正体、『闇の跳梁者』を目撃した場合、1D6/1D20の正気度を喪失する可能性があります。
(もしも『闇の跳梁者』に対して戦闘を仕掛けた場合、彼は遠慮なく対象を掴み、投げ落としてから去っていきます)
データが必要な場合は、『マレウス・モンストロルム』のP.224を参照してください。
事件の後
事件後は、基本的に探索者によって語られますが、最後の探索者の行動によって以下の方向性を与えてください。
・真相を語った場合:
その後、探索者の推理どおりに全てが進み、指摘した犯人が逮捕されます。
石井達も証拠が出ればあっさりと自説を捨てて、該当の人物を逮捕します。
・真相を語れなかった場合:
予定通り(?)、石井が白川を署へ連行します。
その結果、白川は犯人として逮捕され、無罪を主張しますが聞き入れられることなく、そのまま投獄されてしまいます。
・地雷を踏んだ場合:
その後、再度捜査が開始されますが、肝心の死体が消えている為、事件自体が存在しなかったことになります。
居合わせた全員が、違和感を持ちつつも、どうしようもないという諦めが支配し、現場から離れて日常に戻ることになります。
正気度の報酬
探索者が終幕部で事件の解釈が出来たかで、キーパーは正気度の報酬を判断してください。
事件の真相を解釈した探索者は、1D10の正気度を獲得します。
特に上手く解釈できたとキーパーが判断した場合は、さらに+1点の正気度を追加で得ます。
事件の真相の解釈に失敗した場合は、1D4の正気度を獲得します。
地雷を踏んだ場合、1D12+1の正気度を獲得します。
地雷を踏んだ場合、真相を口にした探索者はさらに+1D6の正気度を追加で得ます。
データセクション
シナリオ中で使用されるデータや、その他の項目をまとめたものです。
成金
将棋で敵陣に入った駒が金に成ることから、それになぞらえて急に金持ちになった人々を成金と呼びました。
(ちなみに、正式な将棋の用語ではないらしいです)
大正4(1915)年からの大戦景気で沸いた時代、日本は輸入国から輸出国へ、債務国から債権国へと転換しました。
この中で、造船、鉄工、炭鉱、そして商社は数多くの成金を輩出し、それぞれの職種をとって、造船成金、鉄工成金等と呼ばれました。
そして、大戦景気の収束とともに、これらの多くの成金も歩に戻っていきました。
千里眼事件
こちらを参照してください。
千里眼事件
謝辞、あるいは参考資料
本シナリオは、芥川龍之介『藪の中』、黒澤明『羅生門』、そしてOinkGames『藪の中』が参考となっています。
その他、いろいろなミステリ、探偵ものの小説、漫画、ドラマ、映画もろもろの作品が参考ですので、キーパーの好みの作品のノリ、流れを参考にシナリオを流すのがよいでしょう。
もはや恒例になりつつありますが、本シナリオのテストは大阪でお世話になっているサークル様で実施しています。関係の方々に感謝を。
最後にちょっとだけ
たまにはボーナスシナリオをと思い、よくあるミステリ、サスペンスなノリを楽しむだけで十分ですが、しっかりと地雷も仕掛けておきました(笑)
シナリオ的には非常に簡単な構造、単純な流れですが、キーパーの解釈が進んでいないとなかなか難しいシナリオとなる可能性があります。ただ、キーパーもその場で探索者たちに合わせてわいわいとやって、事件を作っていくのも良いかな、と思います。