警察関連から聞いた情報
(この情報は私立探偵、あるいは特高のPCが簡単に入手できます)
稲葉は独身です。この為、近くに住む姐や、妻木ひろを雇っており、家事一切はこの姐やが行っていました。
2週間ほど前に新曲をオペラ座館に掛けていました。これが上手くいかなく、それが原因か、稲葉はあまり人前に出なくなってしまいました。
稲葉の死因は耳を火箸で突いたことによる、内耳よりもさらに奥を傷つけたことによるショック死で、現場の状況からも自殺以外に在り得ませんが、奇妙な死に方であると言えば奇妙です。
稲葉の一般的な情報
(PCが特に浅草に詳しい場合でなくとも、浅草に関わりのある知り合い等から簡単に入手できる情報です)
「音楽で人を楽しませよう、幸せにしよう」という人で、コミックソングから訳詩まで、なんでもやっていました。
教養もあり、実は良いとこの坊ちゃんらしく、収入が無くても大丈夫のような人でした。
そこそこに才能、人気ともにあり、稲葉の名前によってオペラ座館の初日から1週間ぐらいは必ず満席になるぐらいでした。
熱狂的なペラゴロがいるが、ある事件以降、新作がかかっていません。
その事件で掛けられた新曲は賛否両論で、今もまだはまっている奴もいれば、もう二度と稲葉の曲は聞きたくない、という者もいます。
新曲は初日に暴動が起こり、当局が出動する騒ぎになった為、一日で上演中止(上演禁止?)になったといういわくつきの作品となりました。
氏家の一般的な情報
(PCが特に浅草に詳しい場合でなくとも、浅草に関わりのある知り合い等から簡単に入手できる情報です)
最初に売り出した頃は、才能が無く、単なる良いとこの坊ちゃん(華族さまらしい)が道楽で音楽とか、芸術とかやっているだけという印象でした。
あるとき、黒い男(どういう人かは知っている人は少ないが、こちらもかなり良いとこの人らしい)に会ってからは人が変わって、突然天才的な才能を発揮しだしましたが、ダダイズムに傾倒しており、攻撃的かつ反社会的な内容が目立つようになりました。
例の新作は稲葉は訳詩の手伝いを行ったのみで、編曲は氏家が行ったと言われています。
最近は浅草周辺では姿を見ていないということで、例の新曲の発表の直前は頭痛と幻聴を訴えていました。
(最初に入手済みだと思われますが、その後、氏家は脳病院へ入った、ということも噂されています)
稲葉宅に出入りの姐や、妻木ひろ
ひろは稲葉の頭で踊るシャンを目撃した為、ひどく怯えています。
《信用》か《説得》のロールに成功した場合、ひろから下記の情報を手に入れることができます。
・このごろ「頭痛」がすると、暇をもらう前は、夜型になっていた。
・ペラゴロの氏家と付き合いがあった。氏家と合作でなにか曲を上演したはず。
・前の作品(旧作、ミサ・ジ・レクイエム・ペル・シュジャイ)の時はむしろ氏家が主導に見えた。
特に昆虫、羽音等の示唆を与えた場合は、
「ああ、先生の頭に!頭に!」
といって恐慌してしまい、その後情報を得ることはできません。
何度か訪問するなど、しつこく聞いた場合は、《信用》、《説得》、あるいは《言いくるめ》のロールを成功することで、下記の情報を得ることができます。
・覚えていないが、先生が見ていると言っていた「悪夢」を見ることがある。
・一度だけ、「黒い男」の出入りがあった。
稲葉宅
一応、事件は自殺で片が付いており特に官憲の姿は見えません。
鍵も掛かっていませんので、自由に中に入ることができます。
もしも、楽譜を手に入れていない場合(その場合の方が多い?)、現場となったピアノのある部屋で、適当に束ねられた楽譜を発見します(自殺であることは明白である為、特に押収等はされていません)。
→ハンドアウト:稲葉の楽譜
家捜しをした場合は、稲葉の書斎からイタリア語版「ミサ・ジ・レクイエム・ペル・シュジャイ」が見つかります。
また、旧作の楽譜が見つかりますが、清書されており、特にメモなどはありません。
タイトルは、「シュジャイの鎮魂ミサ曲(Messa di Requiem per Shuggay)」と付けてあり、編曲:氏家 訳詞:稲葉となっています。
オペラ座館
基本的に門前払いで、稲葉の名前等を出さないと相手にされません。
具体的に稲葉の名前を出した場合は、偉い人(支配人)が出てきて、以下の2点を教えてもらえます。
死ぬ前、最近は特に氏家と組んでからは「ダダイズム的な、攻撃的な反社会的オペラ」を作るようになった。ただ、完成したのは、「シュジャイの鎮魂ミサ曲」だけで、他にここで上演はしていない。
稲葉の行きつけのカフェーとして、「カフェー・アントライオン」がある。よくそこで食事をしていたようだ。
何度か複数回オペラ座館に訪問し、稲葉の前作や、あるいは氏家についてしつこく聞いた場合は、《信用》、《説得》、あるいは《言いくるめ》のロールを成功することで、下記の情報を得ることができます。
このときも、偉い人(支配人)が出てきます。
・確かに昔は社会主義者の出入りがあったり、まっとうじゃないものもやっている時期もあったが、それはオペラ座館になる前の話で、今はそういうことはない。
・稲葉先生がいきなりそういう作品を掛けよう、と言い出したのは驚いたし、何よりもあの作品は、何がどう、とは言えないが「すごい」。
・前作は、いまだに影響を受けている人もいるぐらいである。
旧作「シュジャイの鎮魂ミサ曲」
オペラ座館か、あるいは「カフェー・アントライオン」他、稲葉と関連の深い場所で、「稲葉」と「シュジャイの鎮魂ミサ曲」の二つを出した場合、下記の情報を得ることができます。
一日で上演禁止になった、いわくつきの作品で、稲葉の前作、生前の最後の作品です。
一幕二場の短いオペラながら、壮大な物語で、大災害によって滅ぶことが分かった都市の中で、多くの人々は逃げ出しましたが、
残って最後まで抵抗したある一族の物語です。
その都市に住む者たちの信仰と、それに伴う退廃的な、拷問、近親相姦等々を扱っており、およそ社会主義的でもない反社会的な内容です。
上演によって、数人の死者と行方不明者、暴動を起こし、一日で上演禁止(中止)となっています。
この楽曲に対するオペラファンの見解は、大方、「反社会的とも言いがたい内容」、「気分が悪くなる」という意見ですが、
なかには「どこがどう、とは言えないがすごい」「独創的すぎる」「意味が分からない」という意見もあります(あまり肯定的な意見は聞けません)。
カフェー・アントライオン
稲葉、氏家のよく出入りしていたカフェー(あえてカフェーで)です。
普通の人も普通に入れるカフェーではありますが、浅草においてオペラファン、ペラゴロ、そして音楽関係者の出入りするカフェーとして有名です(音楽関係者とは言いますが、作曲家や演出家、脚本家翻訳家で、表舞台に立つ人間ではありません)。
積極的に話しかけての雑談的な内容から、あるいは他の客の話に耳を澄ます程度で、下記の情報を入手できます。
・稲葉が近々新作を発表するとか、そういう噂があった。
・姐やが逃げ出した後、食事はここでしていたらしい。
・普段は人がよいし、話し好きだったが、死ぬ前は常に不機嫌そうで、むっつりと押し黙っていて話しかけられる雰囲気ではなかった。
・酔った勢いで話したときは、新曲はすでに完成していたらしい。ただ、それを演奏する人物がいない、という話を聞いた。
・落ち込んでいるかのか、ひどく青ざめた顔をしており、苦しそうに頭痛と今書いている曲が発表できるものではない、ということも言っていた。
アントライオンの女給、長井規子
アントライオンに二度以上来るか、あるいは浅草に何度か来ているとする探索者、あるいは早速女給に声を掛ける等を行った場合、女給の中でも長井規子探索者の相手をしてくれます。
規子はアントライオンの中ではあまり目立つ方ではないのですが、それでも十分に美人の部類に入ります。ただ、周りの女給達の頭一つ分ぐらい背が低く、それが不人気の理由になっているようです。特に性格が良いと悪いとかはなく、必要なだけ上品に振舞ったり、蓮っ葉な言動を取ったりと世慣れた雰囲気があります(そして、その分だけやはり客からはその背の高さと不釣合いに思われていることも確かです)。
、
当時、女給はなんと無給!です。この為、というわけでもありませんが、規子は極端にチップ等に弱くなっています。
アントライオンの中では人目を憚ることもある為、店内では特にこれと言った情報は得られませんが、まずは、後日(当日に余裕がある場合は、当日)の店外へ誘導されます。
店外へ誘導した後は、規子は浅草周辺の遊び場やら、食べ物やら、ねだれるだけねだってきます。
情報は小出しに、思わせぶりに、1日だけではありますが、出来る限りたかって来ます。規子から得られる情報は下記の通りです。
・氏家さんは昔はよく社会主義とか、そういう人たちと会っていた。例の曲を作った辺りでは、特にそういうことは無かった。随分前に、関係は切れたのでは。
・稲葉先生が、氏家君の頭痛が私にも伝染したようだ。虚空からの楽の音、笑い声、そして羽音がすると言っていた。
・稲葉先生の家の姐やは逃げてしまった。先生の頭に何かを見たとかと言っていたが、意味が分からない。
・稲葉先生は死の前日にもアントライオンに来ており、例の楽曲は完成した。後は安藤君次第だ、と言っていた。
この他、規子は様々な情報を知っていることにしても構いません。キーパーは適宜、情報を出して構いませんが、がっつりチップを取ったりすることと、直接の情報ではなく、間接的な指示(どこへ行くと誰がいる、みたいな)を与えるようにしてください。
黒い男の噂
何故黒い男と呼ばれているのかは不明ですが、浅草周辺で黒い男として都市伝説的に囁かれる存在です。
誰もがその正体を知らず、ただ下記のような話を『必ず伝聞形式』『不確定、予想』で聞くことができます(簡単に言えば、「友人の友人に聞いた話だが」「らしい」ということです)。
「何故か皆が黒い人と呼んでいる。
才能がある人や、見込みがある人の後援者になったり、様々な援助を与えているらしい。
最近では氏家に何か援助をしたらしい」
「確か、近衛という苗字で、おそらくあの近衛家だと思われる。本人も否定していない」
「いつも黒い服装で、年齢不詳、色の黒い美男子で、必ず良い時期に現れる、と言われる」
「ちなみに、例のオペラ座館も近衛の援助で建てられたらしい」
「最近は、黒い女と一緒にいるらしい」
駐在所
浅草寺の境内にある駐在所です。
現時点での特に有効な情報はありませんが、稲葉の旧作の上演によって引き起こされた暴動の様子を聞くことができます。
「暴動のきっかけはよく分からない。最初はよくあるオペラのごろつき同士の喧嘩だと思われていた。
とにかく、あの『シュジャイの鎮魂ミサ曲』が上演され、その最後、フルートの独奏が入る箇所で騒ぎが起こり始め、
最終的には観客も出演者も劇場関係者も全て巻き込む大規模な暴動に発展した。
皆が狂ったように、音楽に踊らされていたとその場にいた者は口を揃えて言う。
音楽が終わっても暴動は続き、結局、警察が出動し、解散を命じ、多数の人間を拘束、検挙してやっと暴動は収まった。
拘束された人々は、後になっても『音楽が聞こえる』『虚空の彼方から笑い声が聞こえる』『フルートの音が聞こえる』と訴えていた。
最終的に死者は1名だったが、その後、音楽の影響で何人かが行方不明になっている」
浅草公園彷徨者
公園彷徨者、などというとよく分かりませんが、ひらたく言うと浮浪者です。
浅草公園、その周辺部は半ばスラム街と化していることもあり、かなりの数の浮浪者が存在しています。
昼間のうちは一般の客もあり、浅草公園内にはあまり浮浪者を見かけることはありませんが、夕方以降ともなると、そのねぐらを定める為に、
浮浪者が公園内に目立ち始めます。
彼らは寝床替わりとなる公園内にあるベンチを求めて、公園ややってきているのです。
夕暮れ以降、浅草公園に来るか、日が暮れてその日の探索を切り上げた場合に、稲葉の旧作『シュジャイの鎮魂ミサ曲』による行方不明者の浮浪者を発見することがあります。
《目星》の判定に成功すれば、元はかなりよい身なりをしていた浮浪者がいることに気付きます。
その浮浪者は何かぶつぶつと不明瞭な意味不明の言葉を呟きながら、鼻歌を歌っています。
《聞き耳》に成功するか、近寄って話を聞く等の行動を取れば、(意味のある言葉ではありませんが)何を言っているか聞き取ることができます。
「また、フルートの音が・・・」
「音楽がまだ終わらない」
なお、すでに雪子の『大地返歌』の一部でも聞いている場合、《アイデア》ロールに成功すれば、浮浪者の鼻歌がそれに似ていることに気が付きます。
喧嘩に巻き込まれる
浅草にはペラゴロ、あるいは性質の悪い連中が多く存在します(特に平日昼間ともなれば)。
浅草に聞き込み、調査に来ていた探索者達は積極的に動き出す前に、カフェー・アントライオン、その他の人が集まるような情報収集が可能な場所において、性質の悪い奴らが活動写真の『船頭小唄』の批評をしているのを聞きます。
最初は、肯定派、否定派で静かな議論だったのが、そのうちに掴み合いの喧嘩にまで発展してしまいます。
(キーパーが望むのならば、この場で何ターンか戦闘を行わせても構いません)
探索者達が特にこれらの関わっていなくとも、彼らはわざわざ騒ぎを大きくして、それに巻き込まれてしまいます。
逃げ出さない(あるいは、逃げ出せない)場合、喧嘩は警察が出動するまでの騒ぎに発展し、《幸運》ロールか、積極的に弁明等をした場合は、《信用》、《説得》、《言いくるめ》の探索者の手段に合わせてロールを行い、失敗した探索者は警察に1日拘留されてしまいます。
(政治的なコネ、あるいは特高PCの示唆があれば早めに出て来れますが、そのごたごたで一日は終わってしまいます)
黒い女、黒澄綾
(この部分は、『悪夢』を見る前、近衛の噂を聞いた後に起こしてください)
黄昏時、全てがその色に染まっている只中、黒い影を人ごみの中に見ます。
全身が黒で統一された男装をしており、ソフト帽を目深に被って顔と髪を隠していますが、女学生PCは即座にそれが黒澄綾であることに気が付きます。
しかし、気付いたときにはすでに人ごみに消えようとしているところです。
《追跡》のロールか、あるいは《DEX》×3のロールに成功した場合は、彼女を追いかけることができますが、常に角を曲がる直前の彼女に追いつくだけで、その後姿を捉えるのがやっとです(人が多い浅草ですが、その黒い姿は目立ち、見間違えることはありません)。
そして浅草からある程度外れて、人影も少ない、寺町と怪しげな街の境の辺りの、夜になれば人が見られるようになる地域で完全に見失ってしまいます。
黒い男
(雪子の症状が最終段階、悪夢を見た次の日にこの部分は起こしてください)
いつものように浅草に情報収集へ訪れ、そして昼休みや、あるいはカフェー・アントライオンに行くと、
そこには『黒い男』がいます(ちなみに、彼を見ても正気度の喪失はありません(笑))。
特に話しかける為に何かする必要もなく、まるで全て分かりきったように、近衛の方から声を掛けてきます。
「ああ、申し訳ない。
今はちょっと忙しくてね。夜でよければ、お話を伺いますよ」
(浅草に程近い場所の住所を教えてもらえます。そして、その場所は、以前に黒澄綾を見失った場所に程近い場所です)
それだけ言うと、近衛はカフェーを出て行きます。例え尾行をしても簡単に撒かれてしまいます(何しろ、彼はあらゆる技能を100%成功するのですから)。