帝都狂想曲 終幕部



トップページ-> 帝都モノガタリ-> 帝都狂想曲-> 終幕部


終幕部


 終幕部では、探偵側探索者が、『異次元通信機』を回収できたかが大きな鍵となります。
 あるいは探索者によっては、『異次元通信機』の回収自体を怪しいものとして、破壊に走った場合は春子との対決となる可能性があります。

  1. 『異次元通信機』を集めるのに成功した:
  2. 『異次元通信機』を集めるのに失敗した:
  3. 『異次元通信機』を破壊した:
  4. 事件の後
  5. 正気度の報酬

『異次元通信機』を集めるのに成功した:

 赤坂の廃屋敷、リンケージからの続きになります。
 探索者が綾や元子に対していきなり攻撃を仕掛ける等がない限り、彼女らはそれぞれの作業に没頭しており、探索者については敢えて無視しています。
 途中で帰る、というのも一応可能です。その場合は、元子が「お帰りはあちら」と出口を示して、特に止められることもありません。
(探索者が「当局に通報する」という可能性もありますが、その場合は今回の騒ぎで警察は大わらわであり、初動がかなり遅れるか、あるいはそもそも探索者の言うことが信用されない、としてください)

 もちろん、この場で綾や、元子、隆子と敵対するのも可能です。ただ、彼女らは物理的な攻撃に弱い為、探索者が強硬手段に出た場合、即座に撤退を開始します(今回の成果は十分に見届けており、今から行なおうとしていることは追加の実験のようなものです)。
 残された『異次元通信機』を探索者が破壊しなかった場合、トルネンブラが召喚されます。下の描写の2段目から綾を省いて行ってください。
 この場合は、綾の支援なしでのトルネンブラとの対決となります。
 準備が整うまで探索者が待った場合、下記の描写を行なってください。

 元子の手によって最後の装置が置かれ、綾が集められた『異次元通信機』の前に立った。
 多重に響く、異様な轟音が彼女を包み、華奢なその身体がびりびりと震えるようにも見える。
 不快な音楽に耐えるように目を閉じ、眉根を歪めた綾が、静かに歌い始めた。

 最初は綾の歌を嘲笑うように『異次元通信機』の轟音だけが響いていたが、それは次第に弱まり、代わって彼女の『歌』がその場を支配し始めた。
 目を閉じたままの綾が愁眉を開き、軽く笑んだ。
 歌の調子が変わる。それに合わせて、再び、轟音が響くが、それはただの音ではなかった。
 音楽だ。
 綾が支配し、奏でる、異界の音楽。
『異次元通信機』から流れるそれは、先ほどまでのような耳障りな雑音を発するものではなく、正確に調律された楽器のように、はっきりとした旋律を奏でる楽器となっていた。
 目を開いた綾の顔に、微笑が浮かぶ。

 この異様な綾の音楽を聴いた探索者は、《芸術:(音楽に関連するもの)》を行なってください。
 成功した場合、この異界の旋律に聞き入ってしまい、1/1D3の正気度を喪失する可能性があります。失敗した場合は、単に異様な音楽に聞こえ、0/1の正気度を喪失します。
 その後、描写を続けてください。

 綾の歌が、次の段階に入ろうとしたその瞬間、どこからか金属のような音が響いた。
 異次元の住人の、例の金属を擦り合わせるような不快な音とは別の、既存の楽器ではない、嘲笑するような声が西の方から。
 綾は狼狽したが、歌を乱すことはなかった。だが、『異次元通信機』は荒れ狂い、綾の支配下を離れはじめる。
 彼女の音楽は急速に乱され、轟音が唸り、別の音楽を奏で始めた。その音は、部屋の中だけではなかった。この音楽に応えるように、夜の嵐が急激に沸き起こり、部屋の窓を揺らし始める。
 再び目を閉じた綾が、荒れ狂う音楽を鎮めようとしたそのとき、ついに耐え切れなくなった窓の留め金が壊れて窓がすさまじい勢いで弾け跳んだ。
 冷たい風が室内に流れ込むと同時に、外にあった『音』が室内に侵入し、明らかに異質な、綾の言う音楽とも異なる異界の『音』は、室内に充満し綾と『異次元通信機』の周囲で荒れ狂った。

 綾の音楽によって、トルネンブラが召喚されます(正確にはその音楽に惹かれて勝手にやってきたのですが)。
 トルネンブラの異世界の音楽を聞いた探索者は、1/2D10の正気度を喪失します。
 スグルオの住人たちが崇拝するこの存在は、元々、『異次元通信機』に引かれて周囲を漂っていたのですが、綾の歌に興味を示し、彼女を連れ去る為に現れます。
 ここで、もしも窓の外を確認した場合、下記の描写を行い、1/1D6の正気度を喪失します。

 そこには街の灯は見えず、闇が広がっている。
 無限の闇、動きと音楽だけの想像を絶した空間。それは地上には類縁のものすらないものだった。 

(キーパーの趣味で、窓がはじけとぶ演出を省き、探索者に「窓に!窓に!」とやらせるのもOKでしょう)

 綾を見捨てて探索者が逃げる、ということも考えられますが、ドアを開けてもそこは外へ通じておらず、窓と同じように無限の暗黒が広がっています(そして、同様に目撃した1/1D6の正気度を喪失します)。

 綾は、苦しげな表情をしながら「異音はこれだったのですね。致し方ありません」と、歌を切り替えます。
 探索者が撤退を選んだ場合、綾と元子も同じく撤退を開始します。
『異次元通信機』が無い状態ならば、綾の歌は十分にトルネンブラに影響を与えることができるのですが、この状況では綾の歌は『異次元通信機』の影響を消すと共に、トルネンブラの動きをある程度制限する程度の効果しか上げません。
 この為、本来75%で命中する衝撃波攻撃は正確な狙いが定まらず、25%の命中率で回避が可能となります(音が見える状態である為!)。
 音楽の攻撃は通常通り1D10のダメージを与えます。この攻撃に対して、《芸術:(なんらかの楽器)》か、《芸術:歌唱》に成功するとその効果を打ち消すことができます(受け流しに成功したのと同じようなものです。戦闘が厳しいとキーパーが判断した場合、この受け流しに成功することで、このラウンドの音楽の攻撃を無効化(全員分の受け流しに成功した)としてもよいでしょう)。
 この場面で、一度でもトルネンブラの攻撃の打ち消しに成功した場合、《アイデア》に成功するとその異界の音楽と一瞬でも同調、理解してしまう為、1/1D4の正気度を喪失します(トルネンブラを理解することによって喪失する正気度と合わせて、20点を超えては喪失しません)。

トルネンブラ、音楽の使者
STR N/A CON N/A SIZ N/A
INT 14 POW 60 DEX N/A
移動 音速 耐久力 60 ダメージボーナス N/A
武器:
 音楽 自動、1D10/ラウンド
 衝撃波 25%、1D100
装甲:
 なし、但しPOW、INTに影響のある呪文か、音に作用するものでのみダメージを受ける。

 この場面で探索者は二つの選択肢があります。
 一つは、トルネンブラを攻撃することですが、こちらは通常の物理的な手段はかの神は影響を受けません。精神に影響する呪文か、あるいは《芸術:歌唱》等の音楽を持ってダメージを与えることが可能です。この場合、スグルオの住人へと同じようダメージを与えます。
(トルネンブラの音楽を受け流してもよいですが、衝撃波はさすがに無理とするのがよいでしょう)
 もう一つは、『異次元通信機』を破壊することです。
 トルネンブラは綾と『異次元通信機』の合唱に惹かれてやって来た為、これが破れればかの神は興味を失い、去っていきます。こちらの場合、6台の『異次元通信機』を全て破壊する必要があります。
(探索者のアイデアによって、トルネンブラの衝撃波を誘導する、というのもよいかもしれません)

 あまり考えたくない選択肢ではありますが、ここでトルネンブラに綾を捧げる、という冷徹な探索者も出るかもしれません。
 この場合は、トルネンブラは喜んで綾をアザトースの宮廷へと連れ去っていきますが、彼女の歌の影響が消えた瞬間、通常通りのトルネンブラの攻撃を受けることになります。

『異次元通信機』を集めるのに失敗した:

 キーパーが指定した時間を越えると、帝都に響く轟音はさらに大きくなり今まで限定された範囲だったものが、まるで意思を持って歩きだしたかのように、範囲を広げ始めます。
 スグルオの住人達がこちら側の世界に完全に翻訳され、そして活動を始めたのです。
 彼らは、『異次元受信機』を中心に、スグルオ湾と同じ環境をこちら側の世界に構築を始めます。物理攻撃の通用しない彼らに対して、人間側はなす術はなく、帝都は第二のスグルオ湾となり果てます。
 果たして、シャンとスグルオの住人の同盟が成功したかは理解の範疇にはありません。

『異次元通信機』を破壊した:

 春子に示された『異次元通信機』を全て破壊しても、帝都に響く轟音はまだ止む気配がありません。
《聞き耳》か、《アイデア》に成功した場合、音の範囲はじわじわと広がっており、この音は三角測量の必要もなく、宮城方面から聞こえてくることに気が付きます。
 宮城方面へ車を走らせると、轟音は明らかに大きくなります。しかし、さすがに宮城の内部へ入ることは出来ません。周辺を車で走っていると日比谷公園に差し掛かり、そこが音源であることが分かります。
 日比谷公園や、その周辺では『異次元通信機』の出す音に当てられた人々や、周囲が青く見えることで恐慌をきたしている人々が満ちています。
 探索者が音を辿って、より大きな音がする場所へ、あるいはより青く浸食された場所をへ移動する場合、日比谷公園の音楽堂へ導かれます(日比谷公園音楽堂は、大正12(1923)年の7月に完成したばかりの新築です!ちなみに、八角形の小音楽堂は明治38(1905)年に完成しています)。
 音楽堂のステージにたどり着いた場合、下記の描写を行なってください。

 音楽堂のステージの上には、現代で言えば巨大なアンプ内臓型のスピーカーのようなものが四本そびえ立っている。その真ん中に『異次元通信機』が置かれ、各スピーカーにケーブルが接続されている。
 スピーカーは黒々とした柱のようであり、もったいぶった台座の上に置かれた『異次元通信機』はまるで聖人の遺体の一部を納めた神聖な函のようにも見える。その様子は、まるで神殿のような印象を与えた。
 探索者が現われたことに気が付くと、どこに隠れていたのかばらばらと東京砲兵工廠で見た昆虫人間達が飛び出してくる。

 春子を取り逃している場合は、ここで春子も登場します。
「来ると思っていた。
 私の邪魔をする奴は、誰一人として許さない。姉貴も隆子も、だ。
 何が『神殿の奏者』だ、何が『完全なる音楽』だ。そんなものは何の役にも立たない。
 この音によって帝都はスグルオ湾に通じ、そしてスグルオの民とともに私がこの地を支配するのだ!」
 春子は完全武装です。そして、シャッガイが4体に加え、スグルオ人を2体伏せています。探索者の背後を取ったり、不意を打ったりするのに使ってください。
 春子を確保している場合は、シャッガイが4体のみで、スグルオ人はキーパーの判断で登場させてください。
 ここで使われている『異次元通信機』は、貫通する攻撃に対して装甲5点、貫通しない攻撃には装甲3点、耐久力20点として扱います。スピーカーは重量が有り、構造も単純なので、破壊するのは困難であると探索者に伝えてください。
 この戦闘は、春子が居る場合は彼女を戦闘不能にするか、あるいは『異次元通信機』を破壊するかで決着を見ます。

 春子が居り、『異次元通信機』を破壊した場合、彼女は言葉も出ないぐらいに激怒した様子を見せますが、何かを言う前にばったり倒れます。《医学》に成功した場合、彼女は怒りのあまり気絶したことに気が付きます。
 春子を気絶、戦闘不能に追い込んだ直後、懐からコルトベストポケットを取り出すと自らの額に向けて弾丸を発射します。春子は即死しますが、その頭部から彼女に憑依していたシャンが這い出します。

 その奇怪な生物は、昆虫と同じ目蓋の無い目をしているがそこにあるの憎悪に似た何かであり、三つの口を持ち、5対の足を備え、半月方の羽が三角形の鱗に覆われたその姿は、地球上のどの昆虫にも当てはまらない。
 そいつはまるで住処から這い出した昆虫のように小刻みに動いていたが、陽光を浴びると苦悶するかのごとく痙攣を始め、そして最後には溶け始めた。

 春子の頭から這い出したシャンは陽光を浴びて溶けてしまいます。この奇怪なシャンの死に様を目撃した探索者は、1/1D6+1の正気度を喪失します。

事件の後

 事件のその後は、探索者によって語られるものですが、キーパーは事件の対処により、以下の方向性を与えてください。

『異次元通信機』を回収、破壊に成功した場合:
 アポカリプティック・サウンドが消えるとともに、帝都はいつもの平常運転を取り戻し、この広域に渡る現象も日常の雑音の中に消えていきます。
 なんら公式発表は無いままですが、特にこれといって大きな後遺症も無く、一部の三流新聞、オカルト雑誌が騒ぎ立てる他は何事も無く日常が戻ってきます。
 探索者達はこの現象の真相を知り、そして、おそらく次の起こるであろう、黒澄綾が起こすであろう事件を思います。

『異次元通信機』の回収、破壊に失敗した場合:
 帝都はスグルオ湾と地続きになり、異界の音が支配する地と成り果てます。
 その音が支配する地域は、『音によって青く染まった』汚染地域となり、その内部では蠢く『音』が目撃され、そして通常の生命体は一切確認できない地域となります。
 そこに存在した人達がどうなったのか、それは探索者も知る由はありません。
 一時は軍隊も出撃し、帝都を取り戻そうとしたこともありましたが、物理的な攻撃手段が通用しない為、何の効果も無く、そして、日に日に帝都を支配する音は大きくなりつつあります。

正気度の報酬

 この事件から生還した探索者は、以下の正気度の報酬を得ます。
 探偵スレッド、女学生スレッドで獲得される正気度を、全ての探索者が受け取ることができます。

探偵スレッド側:
『異次元通信機』を集めるのに成功した場合、1D6の正気度を獲得します。
『異次元通信機』を集めるのに失敗した場合、1D2の正気度を獲得します。
 終幕部以外で『異次元通信機』を破壊した場合、破壊した数を最大値としたダイス分だけの正気度を獲得します(4つ破壊した場合、4で1D4のように)。
 春子と敵対しておらず、最終的に彼女が生存している場合、追加で1D4の正気度を獲得します。

女学生スレッド側:
 礼拝堂にある『異次元通信機』を発見した場合、1D4の正気度を獲得します。
 桜嶺女学院内部の建物全てを巡り、女学生を救出した場合、追加で1D3の正気度を獲得します。
 女学院内でトルネンブラと遭遇した時、気絶するまで奏でた場合、その探索者は追加で1D4の正気度と、《クトゥルフ神話》+2%を獲得し、該当する《芸術》が自動的に成長します。

共通:
 終幕部で『異次元通信機』を破壊した場合、追加で1D4の正気度を獲得します。
 スグルオ人を撃退している場合、追加で1D2の正気度を獲得します。
 シャッガイを撃退している場合、追加で1D3の正気度を獲得します。
 トルネンブラを撃退した場合、追加で1D10の正気度を獲得します。