罪を孕みし堕落の子ら 対峙
対峙
火葬場の最上階に到達した探索者達が、そこにある異形の、堕落の礼拝堂を目撃するとともに、正体を現した『小鳥遊暦』=『イゴーロナクの情人』と対峙する場面です。
そして、場合によって、探索者たちの堕落の具合によって、その悪徳に誘われた『イゴーロナク』自身がその体に降臨します。
イゴーロナクを退けるか、あるいはかの神が降臨しなかったか、あるいは逃走した場合は、終幕部へ進んでください。
厳重な扉を開けて階段を登りきると、そこは元は火葬場の1F施設を利用した礼拝堂らしきスペースとなっています。
礼拝堂の内部は、火葬場の玄関ホールと、焼き場、待合が一体になったもので、壁は取り払われ、かなり広く、またもともと天井も高い空間です。
しかし、窓のすべては内側から溶接されており、もとはガラス張りであったと思しき玄関は、鉄板で塞がれており外部への脱出口はぱっと見では見当たりません。
(脱出口は2F部分の窓となります)
一見、清潔が保たれているような空間ですが、そこには錆びた臭いと汚物の臭いがまざったようななんとも言えない饐えた臭いがこもっています。
火葬場の待合部分は改造され、トイレや水道、簡易キッチンも設置されています。
受付事務所の部分には、外部との連絡用の電話、内部・外部の様子を監視・観察するためのモニターが設置されており、音響設備も一通り揃っています。
また、焼き場はまだ稼働しており、最近でも使った跡があり、奥にある制御室で、火力調整をしていることが分かります。
そして、玄関ホールはさながら礼拝堂のように赤い絨毯が敷かれており、奥、つまり玄関があった位置には祭壇のようなものがあり、綺麗に歯が生えそろった口のある右手の像が置かれています。
これこそが山田の日記にあった『崇拝された手の像』であり、最も古きよりしろなのです。
手の像の前には書見台が置かれており、その上に乗せられているのは片側が留め金で閉じられ、乱雑に裁断されぼろぼろに破れた、明らかに写真複写と判る写本です。
その表紙には「グラーキの黙示録―第十二巻」という題が付けられています。写本はある特定のページを開いて置かれています。
写真複写されているのは、罫線の入ったある種の練習帳に手書きで書かれたページです。《クトゥルフ神話》のロールに成功すると、この書物が強力な魔道書である事、しかし噂では十一巻までしかないとされている事がわかります。
開かれているページを読むと、自動的に1ポイントの正気度を失います。「グラーキの黙示録」に関する詳細については、ハンドアウト(「グラーキの黙示録―第十二巻」からの抜粋(イゴーロナクに関する項目))を参照してください。
ここまでで、偽美月(暦)とたもとを分かっていない場合、「あの書物が何かヒントになるかもしれません」などと言い、これを読ませようとします。
礼拝堂の隅には、白骨死体が転がっています。
その骨には多数の釘で打たれたような痕と、丸い輪のような無数の傷跡があります。
《医学》または《知識》1/2に成功した場合、死後1年程度経っていることがわかります。
丸い輪のような傷跡は、人間か、霊長類に属する獣の噛み痕のように見えます。
(イゴ−ロナクの従者が嬲った歯型です)
この死体の男こそ、指名手配犯「山田一博」のなれの果てなのです。
さすがに、ここまで来ると、暦が怪しいか、あるいは明らかに状況がおかしいことぐらいには気が付くはずです。
暦を問い詰めた場合、イゴ−ロナクの情人となります。
あるいは、すでに暦が去っている場合は、どこからともなく現れます。
「その本を読めば、分かるのに・・・」
「ふふふ、とっても、お・も・し・ろ・い・ん・だ・よ?」
それまでの怯えたような、丁寧な話し方ではなく、まるで例の放送のような口ぶりで、偽美月(暦)は話します。
そう言いながら、美月・・・、小鳥遊暦は満面の笑みを浮かべた。
美しい、蠱惑的とも言えるその笑みは、探索者を魅了するものであったが、その姿はずるずると崩れ始めた。
いくつもの大きな噛み傷が口を開け、同時に急速にその体を腐敗が支配し、美しかった暦は、腐乱した目の無い死体と化していた。
そして、その噛み傷の幾つかは、そう、彼女の太ももの傷、わき腹の傷、肩の傷は、いやらしい赤い襞と鮫のような歯を持った口として開いる。
その口は、例の手の像と同じであり、そして地下の子供達と同じだった・・・。
イゴーロナクの情人、下級の奉仕種族、自ら望んで恋人となる事により復活した犠牲者
能力値
STR 19
CON 23
SIZ 12
INT 15
POW 13
DEX 17
移動 15 耐久力 18
平均ダメージ・ボーナス:+1D4
武器:
爪 45%、ダメージ 1D3+db(ダメージ・ボーナス)。
組みつき 55%、ダメージ 特殊+1D3の噛みつき。
噛みつき(1D3) 50%、ダメージ 1D4。
装甲:なし。ただし魔力を付与されていない物理的な攻撃からは最低限のダメージしか受けません。
呪文:〈イゴーロナクとの接触〉。
正気度喪失:
イゴーロナクの情人の真の姿を見て失う正気度は1/1D6ポイントです。
イゴーロナクの情人と性的接触を持つ事で失う正気度は1/1D3ポイントです。
イゴーロナクの情人の組みつき攻撃を受ける事で失う正気度は1/1D4ポイントです。
この、奇怪で堕落した存在を退けるのは困難です(と思いたいところですが、意外とたこ殴りにすると倒せる気も・・・)。
探索によって得られた、以下の手段が有効です(キーパーから示唆するのも、《アイデア》ロール等で気づかせるのもよいでしょう)。
・焼き場に閉じ込め、焼く。
・純度90%のヘロインを打ち込む。
・《Yの退散》を唱える。
・その他、探索者が思いつく大ダメージを与える手段
何らかの手段を持って、イゴーロナクの情人の耐久力を0にするか、退散させると、その元は暦であった怪物は、快楽の絶頂とも、断末魔の悲鳴とも取れる奇怪な悲鳴を上げながら、閃光の中に消滅します。
暦であった化け物、イゴーロナクの情人を退けた後、以下のチェックを行ってください。
・《悪徳》の累積値が15を越えている。
・グラーキの黙示録他からイゴーロナクの名を知り、口に出しているか、「グラーキの黙示録12巻」を読んでいる(あるいは、暦の毒牙に掛かっている)。
この2点を満たす探索者が存在する場合、その探索者の体に異変が生じます。
彼、あるいは彼女は、この暦の遊び場の中で恐るべき堕落を果たし、イゴーロナクを降臨させるに至ったのです!
(この条件を満たす探索者が存在しない場合か、あるいはキーパーの判断で、小糸融か他の生き残りのNPCを登場させ、イゴーロナクを降臨させても構いません。彼らは、暦に選ばれた候補者なのですから)
その姿は、前に闇の中で朧に見えた姿だった。
その体はぶよぶよと膨張し続け、着ていたものを引き裂きながら膨張を続けるが、頭は膨張せず埋没していく。
そして、頭があった箇所には内部から裂け、のこぎり上の歯が並んだ口が形成された。
彼(彼女)の両手のひらが内部から裂け、いやらしい肉襞の穴が開き、巨大な歯が生え並んでいく。
探索者たちが呆然とその様子を眺める中、彼(彼女)の肌は大きな息遣いとともに闇に浮くように異様に白く輝き、その体躯は徐々に膨張を続け、溶けかかった蝋人形の巨人を思わせる忌まわしき人外の存在と成り果てていた。
(この変異には1ラウンドの時間を要します。
探索者が襲い掛かった場合、イゴーロナクは1ラウンドの間は行動できずに殴られます)
この世にもおぞましい変身を見た探索者は、1D6/1D20の正気度喪失チェックを行って下さい。
イゴーロナク、グレート・オールド・ワン
能力値
STR 25
CON 125
SIZ 25
INT 30
POW 28
DEX 14
移動 10 耐久力 75
ダメージ・ボーナス:なし
武器:
* タッチ 100%、ダメージ 各ラウンドで1INTと1POWを喪失。
* むさぼり食う 100%、ダメージ 治癒不能の1D4ダメージ。
装甲:なし
呪文:《従属/召還》および《接触》の呪文、そのほかキーパーが適切と考えた呪文
正気度喪失:
イゴーロナクを見て失う正気度は1/1D10+1ポイントです。
人間からイゴーロナクに変身するのを見た場合に失う正気度は1D6/1D20ポイントです。
イゴーロナクは自分の名を呼んだ探索者には憑依の対象として、精神攻撃を仕掛けます。
同時に、その両の手から『誘惑』の呪文を唱え、探索者達を堕落させ、自らの名を呼ばせようとします。
探索者がイゴーロナクに襲い掛かった場合、遠慮無しに応戦します。この場合でも、『誘惑』の呪文が途切れることはありません。
呪文の効果は暦のそれの比でなく、毎ラウンドの最終に1時間経過後と同じ効果を与えます。
また、同時に、どこからともなく2D12体のイゴーロナクの子供たちがゴキブリのように沸いて出てきます。
もしも、かの神の名を呼んだものが居ない場合、途端にやる気をなくしたイゴーロナクは、探索者たちには特に興味を示さず、帰って行きます(もしも、暦を倒した後に、イゴーロナクの名を呼んだ探索者が居ない場合は、イゴーロナクを登場させなくともよいでしょう)。
攻撃を仕掛けた場合も、かの神は耐久力が0になるまでその場に留まります。その巨体から、そのままの姿で地下へ行くことはできませんが、子供たちは追って来るうえに、一旦、人間の姿に戻り、また変身する光景を目撃するという事態が待っています(再度の、正気度ロールが必要になります)。
イゴーロナクの退散方法については、暦の場合と同じです。
但し、同じ手段は二度と通じない為、キーパーは注意してください。
もしも、イゴーロナクに大量のヘロインを打ち込んだ場合、その白い肉体が明滅を繰り返した後、爆散します。
この場合、悪臭を放つゼラチン状の肉の塊や黒い血液、そしてぬめり光るリング状の内臓を浴びせかけられる事になり、1/1D6ポイントの正気度を失います。
イゴーロナクの情人、あるいはイゴーロナクから逃走を選ぶことも出来ます。
この場合は、1Fの玄関ホールで、《目星》か、《追跡》、あるいは《アイデア》のロールに成功すると、ホールの吹き抜けとなっている2F部分の溶接された窓が扉になっていることに気が付きます。
ここを開けて外に出ることができますが、キーパーの判断のラウンドの間、逃走に時間が掛かる為、通常の戦闘ラウンドの進行が行われます。