シナリオの概要、真相(キーパー向け)
※本シナリオ内ではシャッガイからの昆虫は、シャンと表記しています。
特に断り無くシャッガイの表記がある場合は、シャンと人間の混血の昆虫人間であるシャッガイを指しています。
このシナリオは、『二重幻想的舞台』の続きであり、引き続き大正12(1923)年8月、帝都が舞台となります。
事件からあまり間もない後、探索者達は日常に復したかと思う間も無く、探偵探索者の元に社交界でも噂の吉川元子が訪れます。
彼女は、その噂に反して気弱な様子で、探索者に帝都の各所に配置されたある装置の破壊を依頼してきます。しかし、探索者がその詳細を確認しようとすると春子は自殺を試みます。
直後に、今度は毛利元子が探索者の元を訪れ、春子の依頼を破壊から回収に変えて続行するように依頼されます。
探索者がこの二人の依頼者をを前に迷っているその最中、帝都を轟音が包み、事件が開始されます。
この帝都を包む轟音には女学生探索者も桜嶺女学院で遭遇しており、真田の指示によって音楽室へ退避をします。
探索者達は轟音の元となる装置を回収、あるいは破壊しながら帝都を巡り、一方では桜嶺女学院内を探索することになります。
探索者達は全ての装置を回収した後、元子の指示で訪れた赤坂の廃屋敷で、黒澄綾に遭遇します。
そして、綾の歌と集められた装置によって、トルネンブラが召喚されてしまいます。
毛利三姉妹はシャンに憑依されており、元子と隆子はすでに正気度が0、春子も二重人格となっています。
普通、こうなるとシャン達は対象への興味を失い、廃棄されるのが一般的です。しかし、毛利三姉妹の高い社会的地位、財力を持って、シャンに奉仕させることを考えた彼らは、そのまま憑依を続け、思うように彼女らを操って一族の目的を果たそうとしています。
三姉妹に憑依しているシャン達は、元々同じコロニーに所属する、音楽好きなシャンの一族です。
彼らの船が地球に転移して以来、そのエンジンは稼動しているものの、従来の性能を発揮できず、再度宇宙に飛び出すことが不可能となっています。
シャンの一族はこのエンジンの不調を、彼らが神殿(=宇宙船のエンジン)に対して捧げる音楽が、地球に到来することで歪んでしまったとからだと考えています。
長い間、彼らは人に憑依しながら地球の音楽の研究と、そのシャンらしい悪趣味な精神の覗き見を行なってきました。
しかし、エンジンの不調を取り除くことは出来ず、一族の中には地球に土着しようと考えるものまで出る始末です。
元子に憑依しているシャンは主流派(再稼動派)で、春子に憑依しているが土着派です(隆子に憑依しているシャンは主流派に所属していますが、どちらにも通じている蝙蝠派とも言えます)。
シャン自体はこういった考えの相違があっても表立って争うことは無かったのですが、黒澄綾の登場によりこれらの状況は一変しました。
彼女がもたらした新たな知識と技術、そして彼女自身という特異な存在は、シャンの一族に新たな音楽、楽器の着想を持たせることになります。
コロニーの中でも有力者、主導的な立場である元子は、綾の音楽がエンジンの再始動の鍵になるのではないかと考えましたが、土着派の春子は人間の精神を広範に影響を及ぼすことが出来ると考え、新たに『苦悶の楽器』を作成しました。
この装置は、当初、シャンの好む悪趣味な拷問器具でした。しかし、この装置が春子自身の持っていたグラーキの黙示録による知識を使っていたこともあり、スグルオの住人の興味を引くとともに、翻訳された青い音に春子は汚染されてしまいました。
汚染された春子は、本格的にスグルオの住人を翻訳する為に、『苦悶の楽器』を改良し、『異次元通信機』としての機能を大幅に増幅させました。そして、帝都各所に『異次元通信機』を配置し、その音響を反響させることで帝都を第二のスグルオ湾にし、シャンの領域として支配することを目的としています。
シナリオは、『大地返歌事件』と同型の二つのスレッド型となっています。
主に下記のような流れとなります。
二つの日常場面
シナリオの導入部となります。日常場面から事件に巻き込まれるまでとなり、探索者達は自動的に事件に巻き込まれます。
探索部
開始された探索の共通の項目となります。
キーパーは時間経過による『青い音』の浸食度合いを記録し、探索者へその影響を伝えるようにしてください。
帝都探索スレッド(探偵側)
春子、元子の依頼で帝都を巡りながら『異次元通信機』を探すスレッドです。
回る順番は探索者次第ですが、桜嶺女学院側との合流をいきなり考える可能性があります。この場合、探索の時間制限を匂わせて合流をしない方が効率がよいことを考えさせてください。
桜嶺女学院スレッド(女学生側)
桜嶺女学院の内部を探索し、逃げ遅れた女学生を救出しつつ、『異次元通信機』を探すスレッドです。
こちらも探索の順番は探索者次第ですが、こちらはある程度登場する人物の順番に絡みがある為、キーパーはイベントの発生順に気を付けて下さい。
リンケージ
事件が収束する場面であり、このシナリオにおいて初めて黒澄綾が探索者達の前に直接姿を現します。
終幕部
黒澄綾が姿を現し、そして『異次元通信機』を前にして歌う、最終場面です。
しかし、彼女の歌は最後まで歌われることはなく、スグルオ人たちの崇拝する『トルネンブラ』が召喚されてしまいます。