山羊の花嫁 神事

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『山羊の花嫁』目次:
■はじめに
■背景情報(KP向け)
■登場人物(NPC)
■シナリオのチャート
■導入部
■八出村の探索
>八出村の神事
 □『休閑地』の鞠枝
 □神の花嫁選び
 □神事の夜に
 □直会
 □直会以降
■終幕部
■データセクション

八出村の神事

 八出村の探索部と異なり、こちらは自動的に進行していくイベントとなります。
 村の神事は神の嫁選び、翌日の直会と二日にわたって行われます。
 両方とも、村人たちが総出で行う神事ではあるのですが、神社には神職が不在である為、この儀式は近年の調査で昔のものを再現した儀式となっています(それも何かおかしな話なのですが)。

『休閑地』の鞠枝

 村を訪れた探索者が神社へ行こうと『休閑地』の前を通る場合、その中に山上鞠枝を発見することになります。
(想定的には神事の前ですが、そうでない場合はこの場面は省略するか、神事の後に行うにしてください)
 彼女は何をすることもなく、ただ茫然とそこに佇んでいます。
 探索者が声を掛けた場合、一応そちらを見ますが、どこか遠いところに目の焦点が行っています。
 お互いの反応を探るような間の後、鞠枝の方がはっとした様子で目の焦点が戻り、探索者のことを認識すると『休閑地』を出て、「ああ、いらっしゃいませ。ようこそ、八出村へ。先生、お久しぶりです」と丁寧に挨拶をしてきます。
 探索者が鞠枝と知り合いの場合、もちろん、そちらへも挨拶をします。
 山上家に世話になる場合は、鞠枝自身に案内をしてもらえます(小出が場所は知っているのですが)。歩きながら彼女と小出は当たり障りのない世間話に興じます。
 探索者が、『休閑地』で何をしていたのかと尋ねた場合、彼女は「特に、何も。時々、ああしてあそこに居ると落ち着くのです」と答えます。≪心理学≫に成功した場合、不思議なことに彼女はそのことを恥じらっているように思えます(逢引きを目撃されたかのような)。
 探索者が小出に『休閑地』と鞠枝について尋ねた場合、「彼女はあそこで血を流して倒れていたことがあるらしいんだ」と答えます。ただ、大事には至らず、その後は特に何事もなかったと聞いている、と続けます。
 鞠枝は探索者一行を山上家まで案内すると、「神社での儀式の準備があるので」と告げて、家の奥に引っ込んできます。
 探索者が山上家の当主、鞠枝の父の大三に挨拶をして、荷物を置いてくつろいでいると、鞠枝が花嫁候補としての準備を整えて、まるで嫁入りの行列のような神社からの迎えに従って、神社へと向かっていきます。
 これを見ると小出は、「そろそろ儀式が始まる時間だ。僕たちも行こう」と探索者を促します。

神事、神の花嫁選び

 探索者達が村に到着して、一通り村の説明等を受けた後、神事が始まる時間となります。
 案内されるままに神社の本殿(祭殿)へ探索者達が到着すると、古風な衣装で着飾った村の娘たちが祭殿の奥の方に並んで控えています。その中に、小出の教え子である山上鞠枝の姿を見つけます。
 この神事の最初の方は、まるで村の美人コンテストのようなものであり、神に対して自身の美しさをアピールする為に、順番に歌や踊りを奉納していきます。
 それらを一通り終えると、今度は神の前に並んで用意されている御神酒の様なものを一斉に飲み干します。
 これは、神社の前にある麦畑から採れた麦から生成した御神酒(まあ、ビールの様なものです)で、これを飲み干した神の花嫁候補たちの反応を見ることで、神に選ばれた娘が決まります。
 半分ぐらいの娘は慣れない酒を飲み干して単純に酔っぱらった様な反応を見せますが、残りの娘の中には悲鳴を上げて気絶をしたり、意識が朦朧としてふらふらと歩き回ったり、あるいは幻覚を見ているのかぶつぶつと意味を成さない言葉を話し出したりする娘も居ます。
≪医学≫、≪薬学≫がある場合は自動的に、≪(医療に関わる技能)≫に成功した場合、これらの症状が薬物中毒か、アルコールを多量に摂取した場合の反応(ようするに重度の酔っ払い)であることに気が付きます。
 その中で唯一、鞠枝だけは落ち着いた様子で御神酒を飲み干し、ただまっすぐ社殿の奥の方を見詰めて、「山の神様がいらっしゃいます」と呟きます。
 この異様な風景を見た探索者達は、0/1の正気度を失います。
 これらの反応を見た判定役が、花嫁に選ばれたのは鞠枝であると宣言します。
(村人たちはこの儀式がいわゆる出来レースであり、有力者である山上家の娘が選ばれることになっていると考えていましたが、この鞠枝の様子を見て本気で彼女が神の嫁になるのだと考え始めます)
 神に嫁ぐことが決まった鞠枝は、以降、次の花嫁が決まるまでの間、神社で暮らすことになる告げられ、本人も(形の上でも)同意し、神へ宣言します。
 そして、村のヤギの名から選ばれた一頭が神の代理として引き出され、鞠枝とともに社殿の奥へと姿を消します。

神事の夜に

 探索者が山上家に小出とともに泊っているか、探索者が夜の神社を訪れた場合、ヤギと共に神社の奥へと姿を消したはずの鞠枝が、ヤギに誘われるように神社からふらふらと歩み出る姿を遠くに見ます。
 小出が居る場合、「あれも儀式の一つかもしれない」と暢気なことを言いますが、遠目から見てもあまり尋常な様子ではないように思われますが、鞠枝はそのまま麦畑を抜けて『御山』の麓の森へと姿を消します。

 鞠枝を追い掛ける場合、ほぼ満月の月が出て(明日は満月だ、と分かります)いますが、森の中は暗く、まず光源の確保が必要となります。
 村は原始的な松明や行燈、提灯の類が一般的な光源となっています。これらは普通に借り受けられますが、夜の森に入るのはお勧めしない、とまた村人に諫められます。
 鞠枝はふらふらとしているわりにまるで障害物がないかのように歩いており、森に入ってから間が開く為、追おうとした場合は完全に姿が見えず、また夜の森は元々暗い森がさらに暗く、そしてその暗黒のあちこちから赤い目が見返してくることに気が付きます。
 その闇に光る赤い目を目撃した場合、0/1の正気度を喪失し、正気度ロールに失敗した場合、森の中に積極的に入っていく気が失せます。

 それでも彼女を追った場合、≪追跡≫か、≪目星≫≪聞き耳≫の1/2に成功した場合、暗い森の中をふらふらとまるで山羊に導かれるように歩く彼女を遠くに発見します。
 探索者が彼女を発見すると同時に、暗い森の中から赤い目が探索者に向けられることが分かります。
 彼女に追い付こうとした場合、DEX×3に失敗すると転んでしまい1点の耐久力を失うとともに見失ってしまいます。成功した場合は、彼女に追い付くことが出来ますが、その前に『畸形の山羊』がその前に立ちはだかります。
『畸形の山羊』を目撃した場合、1/1D3+1の正気度を喪失します(昼間に森の中で見たものと合わせて、合計で4点までしか喪失しません)。
 鞠枝は探索者に気付いた様子もなく、そのままふらふらと進んでいきます。探索者が声を掛けるなどした場合、明らかに『畸形の山羊』が不機嫌そうな鳴き声を上げてますが、鞠枝が夢から醒めたように、「あら、どうかしましたか?」と何事も無かったかのように話しかけてきます。
 探索者の反応に関わらず、正気に戻った鞠枝は何事もなかったかのように「では、社へ戻ります」とまたふらふらと歩きだします。
 探索者が強いて『畸形の山羊』と事を構えたがった場合は、鞠枝の方から「この山羊は神の使いです」と山羊の前に立って、探索者を止めます。
 探索者が距離を取って鞠枝の後を追おうとした場合、彼女が目的地の洞窟、『神の寝所』へ入り込むことによって、突然その姿を見失ってしまいます。
 探索者がそちらへ行こうとすると、森から警告を発するように山羊の鳴き声が聞こえてきます。これを無視した場合、森からヤギが探索者の前へと溢れ出て、その行く手をふさぎます。
(探索者が次の日に同じ場所へ来るのには特にロールの必要はありません。また、昼間なのでヤギの妨害はありません)


直会

 神の嫁選びの翌日、選ばれたヤギは『休閑地』で神への捧げものとして殺される儀式に引き出されます。
 前日の夜に鞠枝が『御山』の『神の寝所』へ入っている場合、彼女が奥殿から消えていると騒ぎが持ち上がります。
 探索者達にもこの話は回ってきて、捜索を手伝って欲しいと依頼を受けます(依頼がなくとも、小出の辺りが積極的に探すことを提案します)。
 鞠枝の在不在に関係なく、昼頃になると祭祀を中途半端にするのはよくないという意見が採用されて、直来が実施されます。
 このことは山上家と村の古老が決めている為、探索者達にも知らされます。

 鞠枝が居る場合は彼女とともにヤギが、居ない場合は前夜に彼女と奥殿へ入ったヤギではないヤギが引き出されて来ます。
 ヤギは普段は荒々しいのですが、この場では妙にしおらしく、大人しく村人の振るう刃の下に倒れます。彼らの血は『休閑地』に染み込んでいき、どこか赤いというよりも、黒いという印象を受けます。
 犠牲となったヤギはこの後は簡単に調理されて、鞠枝が居る場合はまず花嫁である彼女に供され、その後の直会で神と人の両方へも振る舞われることになり、参加している探索者にもヤギの肉が振る舞われます。
 キーパーは、探索者が直会で供されたヤギを食べたかどうかを記録しておいてください。

 これらはすでに形骸化した儀式であり、半ば観光客相手への興行に近いものとなっています。
≪民俗学≫、≪歴史≫、あるいは探索者が八出村の出身の場合、これらの儀式は古くから存在するものであり、古い時代にあった人身御供の儀式が、ヤギを捧げる儀式に変化したものではないかと推測できます。
 すでに山頂付近を探索しており、八出村が隠れキリシタンの隠れ里の性格を持っていたことを知っている場合、このヤギを捧げる儀式が古いカトリックにある犠牲の羊に近いものではないかと思い当たります。
 その前の、神の嫁ぐ儀式、特にヤギとともに一夜を過ごすことについては、カトリック云々ではなく、元々村にあったか、あるいは隠れキリシタンの土着信仰と結びついた、ねじれた信仰であるか、隠れキリシタンではなく、もっと古い原始的な犠牲を伴う土着信仰ではないかと気が付きます。

 鞠枝が居る場合、直会には花嫁である彼女もその場に立ち会いますが、神事に立ち会う人びとに囲まれており、話しかけることはできません。
 彼女は上気した顔で儀式を見詰めており、何度か切なそうなため息を吐きます。
 彼女をより近くで観察していた場合、彼女の様子がこれまでにない、何故か艶めかしく感じます。≪心理学≫に成功した場合、彼女がこの儀式に対して、興奮していることが分かります(それが何故かは分かりませんが)。
キーパーへ:
 直会とは神と人が同じものを食べる儀式のことですが、八出村の儀式は明らかにキリスト教の犠牲の羊を捧げる儀式を模倣したものであり、食料が少なくなった時代に山羊を食べたことへの言い訳のようなものです。
『山の神』の一部を取り込んでいるヤギを村人たちが食することによって、彼らにも神の一部が取り込まれて、同化するという意味をもっています。
 村人たちの皮膚が黒ずんでいるのは、代々彼らが神の一部を取り込み続けた結果です。


直会以降

 鞠枝が『神の寝所』へ赴いていない場合、直会以降、彼女は神の嫁として再び神社の奥殿に籠ることになります。
 特にこれといった役割がある訳ではないので、探索者が接触しようと思えば神社に行けば可能です。
 ただ、彼女は神の到来を待つ身となっており、奥殿で静かに端座しているのみです。
 探索者が特に会話を望んだ場合、質疑には応じますが、積極的に彼女から話すことはありません。
 キーパーはある程度探索者を誘導したり、神事の意味を考えさせるような台詞を彼女から直接口にさせるのもよいでしょう。