天文台スレッド
天文台スレッドという名前になっていますが、大半が女学生PCの自宅で発生するイベントとなっています(まあ、場所についてはGMの判断で自宅でなくともよいのですが)。
このスレッドは自動的に起動して、時系列に沿って女学生PCの前に提示されていきます(出来る限りPCが全員揃っている状態、すなわち女学生PCの自宅で情報共有が行われている場合等で行うがよいでしょう)。
浮かれる教授
なにも女学生=家が金持ち、華族と限ったわけではありませんが、多くがそうであるように女学生PCもまた、華族ではありませんが、金持ちの娘です。
とはいえ、現在の頭首である淳一は、事業の方は弟に任せて自らは天文学者として、教授の地位を得ています。
山県邸宅とは比べるべくもありませんが、それでも離れまで持った大きな家には、常に彼を慕う学生、書生、来客があり、賑わっています。
例え教授は不在でも、学生書生連が集まって何らかの議論を交わしている、教授の書斎から文献を持ち出している、ぼけぼけとしている、と言ったことも珍しくはありません。そして、教授もそれを認めており、教授宅は一種のサロン化しています。
また、女学生PCの自宅は麹町区飯田町、宮城に程近い、東京市の中心部に存在し、かなり便利です。現在の千代田区飯田橋辺りです。
久しぶりに、女学生PCが普通に起きている、そしてその他のPCもいる可能性のある状態で教授が現れます。
何か非常に浮かれており、嬉しそうです。
天文学者などという変わった職業は脇に置くとしても、やたらと最近浮かれています。
帝都天文台の職員に任命されたときもこれほど浮かれていなかったのに、その浮かれようと来たら、酔っ払いが鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気にそっくりです。
どうしたのか、聞いても特に何も答えてくれません。嬉しそうに、「いや、今は言えない」とだけ返します。
【社交】か、何らかの社交系の技能を難易度10で成功すれば、自慢げに語ってくれます。
「冥王星の軌道計算には間違いがあった。
そして、我々は今、冥王星を追い求める誰よりも早く、その星を発見することができる。
間違いない、冥王星を発見するという栄誉は我々のものだ!」
力説すると、教授はまた天文台に出勤していきます。
海王星の発見は1846年、天王星は1781年、冥王星は1930(昭和5)年です。
但し、冥王星は1914(大正3)年にパーシバル・ローウェルによってその存在が予言されています。
計算された軌道は惑星の質量の差異から、実際のもとは違っていたのですが、たまたま予言通りに発見されました。
落ち込む教授
女学生PCがまた家に居る時分に、教授が帰ってきます。
今までの浮かれぶりはどこへやら、何かひどく落ち込んでいると同時に、複雑な表情をしています。
声をかけても「何でもない」と返すだけですが、何でもないことは無いはずの表情です。ここで、【知覚】の難易度15に成功すれば、ひどく何かに苛立ち、落胆していると同時に、新たな発見があることが分かります。
また、【精神医療】か【霊感】の難易度15に成功すれば、何故か神経を擦り減らしていることも分かります(具体的に言えば、【気力】や【神縁】が少々減少している、というところです)。
ここで、【社交】か、社交系の技能の難易度12(教授は話したくて仕方ないのです!)に成功すれば、今度は落ち着いた口調で語ってくれます。
「我々の計算によって新たな天体は発見された。
しかし、それは冥王星ではなく、彗星だったのだ。我々の計算も何かがおかしい。
だが、我々は冥王星の発見程ではないが、新たな彗星を発見するという栄誉が手に入るのだ!
今は、その彗星についての調査中だ」
そしてまた天文台に出勤して行こうとしますが、ふと足を止めて、
「そうだ、たまには天文台に来てみないか?
最近はご無沙汰だったからな。ちょっとごたごたしているかもしれないが…」
おそらく、否や、ということは無いかと思いますが、一応の拒否権は存在します(笑)
承諾する旨を伝えれば、「そのうちに車を回すようにする」と言って、教授は再び(時間に関係なく)出勤していきます。
天文台にて
そのうちが来て、適当な都合がつく時に、天文台行きの車が回ってきます(何も女学生PC一人で行く必要はありません。必要に応じて車の台数が増えます)。
がたごとと、ゆっくりと安全運転で持って(制限速度は守っていませんが)東京市外にある麻布天文台へと赴くことになります。
天文台は「例の件」のこともありますが、通常業務に加え、大正3年から続く三鷹への移転作業もあり、おおわらわの状態です。
女学生PC達が到着すると、顔なじみの天文台職員が中へ案内してくれます。
「今は三鷹への移転作業もあってかなり忙しい状態なんですよ。
今、教授を呼んで来ますが、少々時間が掛かるかもしれません」
と言い残すと職員は、奥へ消えていきます。
教授が出てくるのを待っていると、どこからか職員同士が言い争っている声が聞こえてきます。
【知覚】の難易度15に成功すると、どうやら、勝手に天文台へ知り合いを入れたことが問題になっているようです。
具体的に誰を入れた、ということは分かりませんが、山本という職員が無断で知り合いを天文台の中へ入れた、ということです。
その関係で、という訳ではありませんが、女学生PC達を見る職員達の目は厳しいものがあります。しかし、実際にはそれと関係無いところで彼らが苛立っている原因があります。
教授が難しい顔つきで引越しの指示をしながら、奥から出てきます。
ついこの間までの浮かれた表情ではなく、どこと無くノイローゼの様な、他の職員達と同じような苛立った表情をしています。
挨拶もそこそこ、教授はそのまま望遠鏡の側へ案内しようしますが、突然、どこからか奇妙な楽の音が聞こえてきます。
重い扉の向こう側から聞こえている為、はっきりとした音ではないのですが、それはまるで黒澄綾のあの音色を思わせる、あの奇妙な楽の音に似ていますが、さらにはっきりとしない、奇怪な音楽となっています。
毎度のことですが、この楽の音を聞いた場合、初めての場合はショックレベル2、そうでない場合はレベル1を受けます。
このとき【霊感】の難易度15に成功すると、教授の言う装置から妙な感じを受けます。
その楽の音を聞くと、教授は忌々しげに舌打ちをし、
「くそう、またか。
あの忌々しい機械め。エーテル理論なぞ前世紀の遺物のはずなのに…」
と、腹立たしげにその音のするほうへと消えていきます。
教授が職員の一人と半ば言い争いながら戻ってきます。しばらく、専門用語の混じった難しい会話と、そして音楽が云々という会話を交わした後、その職員は音楽のする方向へと去っていきます。
「天球の音楽は止めることができない。どういうことだ。
あの妙な音のせいで皆が苛立っているというのにな…」
「ああ、済まない。あれは山本君だ。独特な知性と、イギリスへ留学の経験もあって若いにも関わらず、ここでは私の助手のよう立場なのだが、例の音を出す機会を持ち込んだのは彼なのだ」
と説明しながら、教授は今度こそ望遠鏡の側へ案内してくれます。
ここで、音について質問した場合、教授はからの解答は下記の通りです、
「山本君が言うには、エーテル理論に基づく成果だということだが、かなり胡散臭い代物だ。
なんでも、『例の彗星』から伝播していると思われる波動を、我々の耳に聞こえるように変換したものだ、という話だ」
その日は、それで例の彗星を見せてもらえますが、当然、一般人には何がなんだかわかりません。また、望遠鏡の精度もそれほど良いものでもない為、はっきりとどれがどれだ、ということは教授からの説明を聞いてなんとなく程度しか分かりません。
ここで、すでに『真田幸の論文』を読んでいる場合のみ、【才知】の難易度15に成功すると、ひどくぼんやりとではありますが、論文に登場する例の挿絵の楕円形との相似を見出すことが出来ます。
一通り、教授の説明(自慢話?)を受けると、その日は遅くならないうちに帰されます。もちろん、教授は泊り込みです。
争う二人
天文台の訪問の後、女学生PCの自宅=教授の自宅へ、山本と名乗る男が訪れます。
例の天文台で見た職員が、教授に面会を求めているようです。非常に憔悴した様子であり、その血走った目は尋常な様子ではありません。
教授は求めに応じて山本を書斎へ招き入れます。10分程度の短い時間ですが何事かを話し合い、最後の方は争う声が聞こえた後、山本は帰って行きます。
ここでこの会話を聞こうとした場合、【知覚】の難易度15となりますが、分厚い壁や扉からはっきりと聞き取ることはできません。断片的に「危険な」、「中止すべき」等の単語が聞こえてきます。当然ですが、女学生PCが同席もできる状況ではありません。
その後、何があったのか?と問うても、教授は特に答えようとしません。ただ一言「お互いに大人げが無かった」とだけ言います。
書斎の机の上には、例の『彗星の歴史的資料』が乗っています。
教授はしばらく何かに悩んでいる様子を見せますが、女学生PCが見ていることに気が付くと、「ああ、そうだね。明日、彼は非番のはずだ。面倒を掛けてすまないが、この資料を彼に返してくるのと、何か詫びの品物を持っていってくれるかな」と頼んできます(ついでに、他のPCも連れていくように促すとよいでしょう)。
山本の部屋を訪ねる
教授から教えられた住所は、青山霊園の南側、麻布区の辺りで繁華街が形成されている麻布十番からは離れた閑静な住宅街です。
山本の居所である長屋のような建物に近づくと、【知覚】か【霊感】の難易度15に成功するとその部屋から妙な気配がすることに気が付きます。
山本の部屋へこっそり忍び寄る場合、【隠密行動】の難易度15を要求してください。
『魔月よりの使者』に気が付いた場合
『魔月よりの使者』の存在に気が付き、山本の部屋に忍び寄ることに成功した場合、その中からどこからかくぐもった声と、それに山本がぼそぼそと応える声が聞き取れます。
「素晴らしい。君の働きはとても素晴らしいものです。さぞかし、神はお喜びでしょう。
貴方は十分に役目を果たしました。ゆっくりと休んでください。これで貴方にも天国の門が開かれます」
「貴方は、今、真に自由になるのです」
会話が途絶えると、何かが倒れる音がして静かになります。
PC達が部屋の中に踏み込むと、その薄暗い部屋の中に梁からロープを掛けて首を吊っている山本の姿と、それを見守っているような巨大な目を持った黒い球体を見ます。
その黒い球体は、一つ目を持つだけで手足も持っていません。そいつはPC達に気が付くと、口も無いのに眠気を誘うような、妙に安心させる声で話しかけてきます。
「ああ、貴方たち、邪魔をしないでください。
彼は今、安息を得ようとしています」
「最愛の人を失ってからの日々は、彼にとっては地獄のようなものだったのです。
今、彼の天国の門は開かれ、そして再び、その人と相まみえるのです」
まず、この異様な目だけの怪物を目撃したPC達はショックレベル2の恐怖判定を受けます。
続けて、この声を聞いた場合、【気力抵抗】の難易度18に失敗すると化け物の言うことに従って、その場を去ろうとしてしまいます(もちろん、憑神すれば催眠は解けます)。
正気のPCが居る場合、その化け物『魔月よりの使者』との戦闘が始まります。
『魔月よりの使者』は体力が半減すると空間歪曲を使用して逃走を図ります(GMの判断によっては、最後まで戦ってもよいでしょう。その場合は、最終場面において『魔月よりの使者』は出現しなくなります)。
山本は【体力】を20として、助けられるまで毎ターン2D6の窒息によるダメージを受けます。
山本の【体力】が0になる前に『魔月よりの使者』を追い払うか、ロープから降ろす行動を取っている場合、戦闘後に【医学】の難易度15の判定か、何らかの回復手段によって【体力】を回復させると彼は一命を取り留め、そのまま病院へ入院させられます(PC達のアーツ等で【体力】は回復させられますが、それ以外の【神縁】【気力】と言ったものは休む以外にないのです)。
『魔月よりの使者』に気付かない場合
『魔月よりの使者』の存在に気が付かなかった場合か、敢えて普通に近寄った場合、話し声は途絶えて静かになります。
来意を告げるなり、いきなり長屋の戸を引き開けても、その4畳半の薄暗い部屋の中に他の人間の気配はありませんが、【霊感】の難易度12に成功すれば何か嫌な気配の痕跡を感じるとしてもよいでしょう。
天文台や教授の家で見たのと変わらず陰鬱な様子で女学生PCの訪問を受けます。資料や、詫びの品を受け取っても彼の反応は相変わらず薄いままです。
話し声について尋ねても、とぼけた様子もなくごく自然にしばらくの間は誰も来ていないと答えます。
この場で山本と会話をしても大体が要領を得ません。また、何を聞き出そうとした場合、ごく自然にそのことを忘れています。
後日、彼が部屋で自死しているのが発見されます。
この件を警察等に問い合わせても不信な点はありません。
天文台から自宅に戻った山本は一度風呂に入った後、自室の梁に帯を掛けて首を吊った、というものです。
この件は事件として扱われてはおらず、単なる自殺と見られています。
山本の部屋の家探し
山本を助けた場合はその時に、そうでない場合では後日に彼の部屋を家探しすることになります。
山本の部屋はいかにも書生あがりの、机と布団、それと汚れた着物等と書物以外は何もありません(これらは几帳面に整理されており、汚れ物はそれ用の行李に収められています)。
押入れが一つありますが、これの中身も似たようなものです(着物と書物だけです)。
書物の大半は天文学に関わる学術的なもの、世界各地の天文に関わる神話のものです。
【知覚】か、【書物】の難易度15に成功した場合、あるいは特に押入れの中を調べると指定した場合、星の再臨会発行の聖書の偽典が見つかります(内容的には秋山の話す『再臨』についての内容です)。
押入れの中にはこの他に、例の天球音楽受信装置について山本の所感を記述した覚書が見つかります。内容は下記の通りです。
『秋山氏が英国から入手したという奇妙な機械。
細部については不明。
例の新天体からの波動を感知し、駆動するなりや。謎。
電源無し。先日、突然音を発する。凄まじい轟音、奇妙な楽の音にも聞こえ、近所より苦情。
秋山氏の懇望にて、天文台へ持参する。
教授、意味が分からず、困惑。他の職員も苛立っている模様。
(後日に追加された文)
楽の音に合わせて、例の新天体が観測される。秋山氏の言うことが正しいのか。
偶然ということも十分ありうる。教授を説得し、観測を続ける。
日が経つにつれ、益々楽の音は大きく、怪奇。
(後日に追加された文)
天球の楽の音、さらに大きくなる。快美。他の者は理解なきや。
(大きく日付を空けて追加された文)
天球音楽。神の歌。訪問近し。』
これ以上の手がかりや、あるいは事件はありません。
山本が生きている場合は、病院に担ぎ込んだ後は面会謝絶となり、話を聞くことが出来ません。ただ、命は助かったということを伝えてください。
山本が死んでいる場合は、かろうじて連絡が取れた田舎の遠い親族の手で葬式が出された後、荼毘に付されてから郷里へ戻っていきます。
後日、教授等に天文台に置いてあった『天球音楽受信機』について訊ねた場合は、以下の様な回答を得ることができます。
「どうも、山本君が自殺の前にどこかへ運び出したらしいんだ。
あれ以来、例の奇妙な機械は所在が不明になっているが・・・・・・、職員の皆は相変わらず例の奇怪な音が聞こえる気がする、 と口を揃えているよ」
教授、帰る
この間までの浮かれ具合はどこへやら、憔悴しきった様子の教授が戻ってきます(もちろん、山本の件がショックだったことも大きいのですが)。
娘(女学生PC)が声を掛けても、ああ、とか空ろな声で生返事をするだけです。
ばさばさと荷物を落としながら、教授は奥の書斎へと入っていきます。
この荷物の中には、『真田の論文』他、各種の『彗星に関する資料』が含まれています。
そのまま教授は書斎に篭ってしまいます。
この場面は、また資料を見ていない場合に『真田の論文』、『彗星に関する資料』をPCに示すものです。
教授、事故に遭う
女学生PCが自宅に居る場合に、書生が駆け込んできます。
「教授が、車に!」
書生は教授が車に轢かれて病院へ運ばれた、ということを切れ切れに伝えてきます。
女学生PCの自宅は一時混乱の極みになりますが、その後、家を訪問した巡査が、「制限速度を守っている車に轢かれた為、大事には至らなかった」という話を伝えます。
家は落ち着きを取り戻し、見舞いに病院を訪れると、教授は事故よりもむしろ神経衰弱が激しい状態です。
ここで【精神医療】の難易度15に成功すれば、【気力】がかなり減っていることが分かります。同様に、【霊感】の難易度15に成功すれば、【神縁】が同様に減少していることに気が付きます。
原因としては、やはり例の『天球音楽受信装置』のせいである、ということは推測できます。
良い機会なので体調が戻るまでは入院をさせる、ということになりますが、教授はベッドの上でも気もそぞろな状態でたまに見舞いに来る天文台の職員たちに例の天体の話を聞こうとします。